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15)腐肉の龍-11(レナンの戦い)

 やがてティア達一行は、腐肉の龍の元に辿り着くが、そこでは……


 「源なる水よ 集いて白銀の牙と為れ! 氷槍波!!」


 “ガガガガガガ!!”


 明るく照らす二つの月明かりの元でレナンが上級氷結魔法を繰り出した。無数の氷の槍を生み出し、腐肉の龍を攻撃している所だった。


 レナンの体は身体強化の魔法を重ね掛けしている影響で白く光っているが消耗している様子は全く無く、このまま朝まで余裕で戦えそうだった。


 対して腐肉の龍はレナンの剣によるモノか、左の翼が切断されていた。そしてたった今レナンの放った氷の槍で体に無数の傷が生じたが傷は見る間に修復していく。


 龍は衰える様子は無く、今の攻撃で怒り狂っている。


 腐肉の龍は、突如その巨大な顎門(あぎと)を開き、口内から眩い光を放ち出した。


 光はあっという間に収束し、燦然(さんぜん)と輝いている。腐肉の龍はレナンに狙いを定め真白く輝く光線を放った!


 “キュドッ!!”


 レナンは腐肉の龍が顎門(あぎと)に光が生じた時点で攻撃を予測し、放たれた光線を強化された脚力で難なく避けた。


 光線はレナンが居た地面と背後の森を軸線上に焼いた。


 光線は通過した地上に赤く(ただ)れた灼熱の痕跡を描き、超高熱で焼かれた森は炎が上がっている。


 光線を(かわ)したレナンは怯む事無く、腐肉の龍に駆け寄り怪物の眼前で高く舞い上がった。他重掛けした身体強化の魔法によりレナンの体は白く美しく輝いている。


 舞い上がったレナンはキンググリズリーの首を落とした時の様に龍の首を目掛け刃を一閃した。


 “ザギン!!”


 キンググリズリーの首を落とした際よりも鋭く強く剣で首を薙いだにも関わらず、龍の首は健在だ。深い切り傷が生じたが“ズブズブ”と音を立てその刀傷を再生していく。


 「……ダメか……流石は腐っていても……伝説の怪物って訳か……今度は……角度を変えて狙おう」


 レナンはそんな風に呟いて、再度飛び上がり龍に斬撃を与え様とした。


 対して龍はレナンの攻撃を予想していた様で、凶悪な顎門(あぎと)でレナンに食らい付こうと襲い掛かった。


 レナンは体を空中で(ひね)って(かわ)し、逆に龍の額に一閃を加える。


 “ザン!”


 腐肉の龍に与えた一閃は致命的では無かったが怪物の怒りを買うには十分だった様だ。龍は甲高い叫び声を上げる。


 “ギシャァアアアアア!!”

 

 そうして腐肉の龍はレナンを食い殺そうと姿勢を低くして今にも飛び掛からんと四肢に力を溜めている。対してレナンも油断なく剣を構えて龍を見据えていた。


 “ギュウオオオ!!”


 力を溜めた龍は津波の様にレナンに襲い掛かったが、彼は上空に飛んで回避しながら魔法の詠唱を行った。


 「天の光顕現し 紫電となりて 裁きを与えよ! 崩雷撃!!」


 “ギガガガガン!!”


 レナンの上級雷撃魔法が炸裂し眩く光る無数の雷撃が龍を貫いた。


 こんな攻撃を受けて絶命しない生物は居ない筈だが……龍は雷撃により腐肉は焼け焦げたが、見る間にそれは再生されていく。


 そしてレナンを襲うべくゆっくりと動き出す。

 

 レナンと腐肉の龍の戦いは両者、一歩も譲らず激しい攻防を繰り返している。


 龍は焼き払う光線や、全てを砕く顎門(あぎと)で攻撃を仕掛けるが、レナンはその攻撃を見切って強力な斬撃や魔法を仕掛ける。


 しかし腐肉の龍には異常な再生力が有り、深い傷を与えてもあっと言う間に修復するのだ。





 レナンに支援する為に来たティア達一行は彼の戦い振りを見て絶句していた。


 「「「「…………」」」」


 鍛え抜かれた歴戦の騎士でもレナンの様には戦えない筈だ。あの恐るべき龍に一分でも立ち向かえれば大したものだろう。


 その事はレナンと龍の戦いを呆然と眺める事しか出来ないライラやダリル達現役の騎士の様子から明らかだ。その近衛騎士副隊長のダリルから呟きが聞こえる。


 「な、なんだ……あの戦いは……人の戦いには……到底思えないな」

 「そうっすね……俺らが手出し出来る隙が見つからない……」


 ダリルの呟きに、レナンの戦いを見て呆然としていた近衛騎士のベルンも相槌を打つ。そこにティアが割って入った。


 「隙が無けりゃ、作るまでよ! 確かにレナンと龍の戦いは拮抗(きっこう)してるわ。だったら私達が加勢すれば勝つのは私達の方よ!」


 ティアはそう言って呪文の詠唱を始めた。


 「原初の炎よ 集いて 我が敵を焼き払え! 豪炎!!」


 “ボボボオォ!!”


 ティアの放った中規模火炎魔法は腐肉の龍に命中し、その体を一瞬炎で包んだが全く効いていない様で、怪物を(いら)つかせただけだった。


 ちなみにティアの攻撃魔法は火炎魔法しか使えない。豪炎を浴びた腐肉の龍はレナン以外の獲物に気付いて耳を劈くような叫び声を上げた。


 “キシャアアアアアァ!!”


 そして龍は悠然とティア達の方を向き、突如駆け出した。



 ティア達に向け猛然と駆け出す腐肉の龍。ティアの中途半端な魔法に怒り矛先をレナンからティア達に変えた様だ。


 その様子に慌てたのはレナンだ。彼は怒りながらティアに叫ぶ。


 「ティア! この馬鹿! アイツに魔法なんて効かないんだよ!? 第一何で来た!?」


 レナンの叫びに今度はティアが反論する。


 「うるさい!! レナンの癖に! あんな小さくて泣き虫だった癖に! 調子乗んな! お前は! 私に守られときゃいいのよ!」


 ティアの叫びも空しく腐肉の龍は迫る。レナンの所為で片翼となっている為、空は飛べない様だ。



 迫り来る怪物にライラは必死で恐怖を抑えながら皆に叫ぶ。


 「み、皆! 一か所に固まるな! 散会して森の奥に逃げ込むんだ!!」


 ライラの叫び声を受け、ティア達はバラバラに逃げ惑う。しかし腐肉の龍は火炎魔法を放ったティアを追う。


 「ギャアアアアア!! コッチ来るな!!」


 ティアは令嬢らしからぬ悲鳴を上げて走る。


 そんなティアに対し、龍は巨大な顎門(あぎと)を開き、口内から眩い光を放ち出した。


 全てを焼き切る破壊光線を撃つ心算だろう。


 「ちょ、ちょっと……何アレ……ヤバそうなんですけど!?」


 ティアは走りながら後ろを一瞬振り返り、光を口内に溜めている龍を見る。刹那に口内の光は収束して輝き、今まさにティアに向け光線を放たんとした時…… 


 “バズン!!”


 そんな音がした事よりティアが走るのを止め腐肉の龍を見ると、龍の頭上に剣を突き立てる者が居る。それは―-レナンだ。


 レナンは身体強化の魔法を多重掛けしている状態で腐肉の龍の背を足場にして飛び上がり、光線を放たんとしている龍の(あご)を頭蓋ごと剣で突き刺した。


 レナンは剣を突き刺した後、クルリと前回りしながら地上に軽やかに着地する。


 一方の龍の様子がおかしい。顎の当りが激しく光っているのだ。そして、頭部全体が膨らんだかと思うと……。


 “ドパアアアアァン!!”


 そんな爆発音を立てて腐肉の龍の頭部は爆発して吹き飛んだ。口内の光線が剣を突き刺された事により暴発し爆発したのだろう。


 “ズシャアア!!”


 頭部が爆発した龍は四肢を投げ出して崩れ落ちた……しかし……脅威は去ってはいなかったのだ……。

 


 いつも読んで頂き有難う御座います! 次話投稿は明日予定です。宜しくお願いします!


読者の皆様から頂く感想やブクマと評価が更新と継続のモチベーションに繋がりますのでもし読んで面白いと思って頂いたのなら、何卒宜しくお願い申し上げます! 精一杯頑張りますので今後とも宜しくお願いします!


追)サブタイトル見直しました!

追)一部見直しました!

追)一部見直しました!

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