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155)ダイオウヤイト討伐-28(後ろ髪)

 その頃……学園を早退したソーニャは馬を駆り王城に居た白騎士隊を引き連れ王都正門に急いでいた。


 「ソーニャ様、正門にレナンが居ると言うのですか!?」


 「ええ、その筈……」


 共に駆ける白騎士レニータの言葉に、ソーニャが答えた時だった。



 “ドドドドドオオン!!”



 突如向かっている正門方面に轟音が鳴り響いた。


 「な、何事だ!?」「敵の攻撃か!」


 突然の轟音に他の白騎士達も動揺する。


 「……皆、冷静に! 其処にはレナンお兄様も居ます。それにマリアベルお姉様も必ず王都に戻る筈です! 先ずは一刻も早く辿り着きましょう!」


 馬を走らせながら叫んだソーニャ。彼女を見て動揺していた白騎士達緒は頷き合うのだった。




  ◇   ◇   ◇



 

 一方、大音響が生じた王都正門前では、今だ混乱が生じていた。


 ダイオウヤイトの襲撃から始まり、黒騎士やティアの活躍に湧き……そして最後に現れた白き勇者によって圧倒的な力により、城壁に大穴が開いて背後の森も斬り裂かれた。



 当然生じた混乱の最中、民衆達が口々に呟き始める。


「……アレが……白き勇者の力……、と、とんでもねぇ……」

「レ、レナン様……凄い……」

「か、彼さえ居れば! お、王国は安泰だ!」


 彼等は口々にレナンの力を褒め称えるが、レナンは口々に上がる民衆の称賛を居心地悪そうに感じながら、大広場を見渡す。


 するとダイオウヤイトに襲われて蹲る者が何人か居る事に気が付いた。レナンは迷わず彼等の元に駆け寄り、治療を始めた。


 その姿を見た民衆を始めとする他の者達も、襲われた者達の介抱を始めるのであった。




 「ふぅ……大体、これで全員か……」


 「こっちは終わったよ、レナン」


 重傷を負った民衆の治療を終えたレナンがそう呟くと、同じく治療をしていたティア達がレナンの元に集まって来た。


 ダイオウヤイトの被害は、ティアやマリアベル達が迅速に抑えた為、幸いにして最低限で済んだ。



 大災害は彼女達の活躍で未然に防がれたのだ。



 レナンの元に来たティアやバルド達は、感謝と久々に会えた事の喜びを伝え合った。皆で話し合っていると、横に居たクマリが何かに気づいてレナンに声を掛ける。


 「……盛り上がってる所、アレだけど……そろそろ解散かなー」


 クマリはそう言って彼女の背後で、静かに立っているマリアベルを指さす。マリアベルは再会を喜ぶレナン達を見守っている様だ。


 彼女は自らレナンとティア達を別れさせてしまった過去より、声を掛ける立場では無いと分かっているのだろう。


 その様子にレナンは小さく溜息を付いて呟く。


 「ティア……、そして皆……、今日の所、僕は帰るよ……」


 そう小さな声を話してレナンはマリアベルの下へ向かう。そんなレナンにティア達は掛ける言葉が見つからなかった。


 「「「「…………」」」」



 彼は故郷のアルテリアとティア達家族を守る為、マリアベル等国王派に従属する事となった。


 レナンが国王の命に従わなければ、父であるトルスティン卿は重罪で罰せられ、アルテリア伯爵家は御家断絶と為っていただろう。


 そうなるとアルテリア伯爵領は他領に徴収され滅茶苦茶になっていた筈だ。



 彼の犠牲と覚悟でティア達は皆、救われた――。



 そんなレナンに安易に“戻るな”とは言えなかったのだ。しかし、足を引き摺る様にマリアベルの下に向かうレナンの後ろ姿を見たティアは……。


 「レ、レナン……あ、あの!」

 

 「マリアベルお姉様!!」


 彼女は悲し気なレナンの姿を見て黙ってられなくて声を掛けたが、その声は遠くから響いた大声で掻き消された。


 ティア達が響いた声の方を見ると、ソーニャが白騎士を引き連れてマリアベルの下へ駆け寄っていた。


 

 黒騎士マリアベルに一斉に集った麗しき白騎士達――。そこに今は白き勇者まで居る。王都の民衆は興奮を抑えきれず、英雄達の名を叫び取り囲む。



 「英雄黒騎士と白き勇者レナン万歳!!」

 「レナン様ー!!」

 「白騎士までが一堂に!」


 王都から危機が去った事と、レナン達の活躍により民衆の歓声は収まる事が無い。


 

 すっかり蚊帳の外となったティア達……。



 興奮する民衆達の様子を遠目で眺めながらクマリが呟く。


 「……今日の所は撤収だねー。なんか白けちまったから、木漏れ日亭で慰労会しようかー?」


 クマリの声と共にティア達一行はこの場を離れようとした。



 そんな中、ティアはレナンとマリアベル達を囲む民衆達を見ると、そこにクラスメイト達の姿を見た。


 今は授業中の筈だが、どうやら彼らは抜け出して来た様だ。彼らは他の民衆達同様、レナン達の姿を一目見ようと人垣の周りに集まっていた。


 

 その後ろの方にリナとジョゼが居た。彼女達はクラスメイト達に混ざらず、周囲を見渡し誰かを探している様だ。


 ティアは、リナ達の様子を見て声を掛けようとした。


 「おーい、リナ、ジョゼ、こっち来……え!?」


 リナ達を呼び掛けたティアは、彼女達の背後に蠢いている者を見て、驚愕した。



 ……それは、黒装束を纏ったギナル兵だ。



 ティアが右拳でダイオウヤイトをぶっ飛ばした際、地面に転がって動かなくなっていた兵の様だ。死んだと思わせて機会を伺っていたのだろう。


 ギナル兵は這い蹲っていたが、ゆっくりと起き上がりリナ達の背後に迫る。


 周りの民衆達は一応の危機が去った事とレナンとマリアベル達が居る為か、歓喜しお祭り騒ぎとなっており、ギナル兵の動きに気付いていない。


 「リナ! ジョゼ! 危ない!!」


 ティアはリナ達の危機を察知し、叫びながら駆け出すのであった。


一部見直しました。

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