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151)ダイオウヤイト討伐-24(二人の戦い)

 王都正門前の大広場に蠢くダイオウヤイトの群れ……。


 ティア達としてはこうなる前に止める筈だったが、思わぬ敵の妨害に遭って来襲されてしまった。



 ティアは友人のシアを早速危険な目に遭わせた事が悔しくて歯噛みしながら敵を見据える。対してマリアベルは大剣を掲げ叫ぶ。


 「ティア、先程の勝負! 忘れるなよ! オオオオオ!!」


 彼女は大声で叫んだ。するとその体に赤黒い光が纏われた。赤黒い光が彼女を包んだ後、激しく輝くと……マリアベルは鬼の力を開放した。


 真の力を開放し見上げる程の巨躯となった彼女はダイオウヤイトに向け駆け出す。


 「先ずは一匹!!」


 マリアベルは短く叫んで大広場で次の得物を探して彷徨っていた一匹のダイオウヤイトの背後から斬り掛かった。


 “ブオン!”


 しかし……。


 “ザザザ!!”


 死角にも拘らずダイオウヤイトは器用に避けた。


 「な、何だと!?」


 マリアベルは驚いて叫ぶが、その時ダイオウヤイトの背に何か黒いモノが動いた。


 「……成程……後ろにも目が有ったと言う訳か……。忌々しい……!」


 マリアベルはダイオウヤイトの背に乗る者の正体に気が付き毒づく。それは背に乗る其れは装束を纏ったギナル兵だった。


 この兵がダイオウヤイトを操っている様だ。



 軽く攻撃を避けたダイオウヤイトはマリアベルの方に向き直り、長い尾を彼女の方に向けた。強力な酸を吹き掛ける気だろう。


 その様子を見たティアはマリアベルを案じて叫ぶ。


 「マ、マリアベル! 危ない!」


 「この馬鹿、お前も一緒だよ! 気を付けな!」


 マリアベルに気を取られるティアに対し、クマリは大声で叫び注意喚起する。


 クマリの指摘通り、ティアの背後に別なダイオウヤイトが忍び寄る。最初に魔法でダイオウヤイトを倒したティアを危険視している為だろう。


 「い、いつの間に!」


 「お前はそっちに集中しな! マリちゃんには私が付く! ライラ、バルド、ミミリ! ティアを頼んだよ!」


 背後から現れたダイオウヤイトにティアは驚き叫ぶ。対してクマリは彼女にハッパを掛けながら大声で指示を出す。


 

 そして自身は今まさに酸を噴き出そうとして尾を構えるダイオウヤイトに向かい走り出した。


 彼女は自身の体に風魔法を付与して人外の速さを身に付け、怪物の尾に切り掛かった。


 「シッ!!」


 “ザシュン!!”


 クマリが両手の鉤爪にて尾を切り捨てると……。


 “ズリュウ、ボトボト!”


 ダイオウヤイトの尾は幾重にも切り裂かれ……その切断面から強力な酸が振り撒かれた。



 その結果、ダイオウヤイトの背に乗っていた黒装束のギナル兵にも酸が降り注いだ。



 「うわ!? うぎいいいぁ!!」


 酸が掛かったギナル兵は酸に焼かれ驚く間も無く悶え苦しむ。その様子を見たクマリは叫んだ。


 「マリちゃん! チャンスだよ!」


 「礼を言う、クマリ! オオオ!!」


 クマリの声を受けたマリアベルは鬼の力を開放し、赤黒い光りを纏わせた巨大な大剣を頭上に構え飛び上がった。


 そして迷い無く剣を振り降ろしてダイオウヤイトを切り捨てる。


 “ズパン!!”


 マリアベルが放った斬撃は鬼の力で人外の威力を発揮し、ダイオウヤイトは頭部から腹部に掛けて綺麗に切断された。


 怪物の背に乗っていたギナル兵も唯では済まず、肩口から両断され物言わぬ肉塊となって絶命した。


 「フン……鬼の力を開放して、漸くレナンの真似事が叶ったか……。何たる未熟……」


 マリアベルは、かつてレナンが片手間にメガワスプを両断した時の事を思い起こし、彼との力量差を嘆いた。



 しかし……マリアベルの恐るべき斬撃を見た周囲の者達は、余りの凄まじさに声を失い固まった。


 「「「「…………」」」」



 それはダイオウヤイトの背に乗るギナル兵達も同じであった。瞬く間に二体のダイオウヤイトが倒された事も心外だったのだろう。



 ティアを後方から襲おうとしていたダイオウヤイトを駆るギナル兵も戸惑っている。



 その隙をクマリは見逃さず、すかさず弟子達に指示を出す。


 「ミミリ、黒装束の奴に矢を! ライラ、バルドは休む間も無く横から攻め続けろ! ティアは力を溜めてデカい奴に放て!! お前達、尾が放つ酸には気を付けな!!」


 「「「「応!」」」」


 クマリの指示は適切だった。彼女の指示を受けたティア達は一斉に応え、自分達がするべき事を迅速に行った。



 ミミリは弓を構え、ダイオウヤイトの背に乗る黒装束の兵に矢を放つ。


 「えい!」


 “シュシュン!”


 彼女の可愛らしい声に反し、その矢は鋭く黒装束の兵の手や足に命中する。


 “ビス! ドス!”

 

 「アギャア!」


 矢に穿たれたギナル兵は痛みで叫び大きく身を捩った。こうなるとダイオウヤイトは統制が取れず、無防備で雑な動きを見せる。


 「バルド、私は左を! お前は右から攻めてくれ!」


 「ああ!」


 ライラは叫びながら怪物の左側に回り、切り掛かる。バルドも答えながら右側から攻めた。



 ダイオウヤイトは指示する者を失った為、左右からの同時攻撃に大ぶりな攻撃をするばかりだった。



 その隙にティアは……。左手を添え右手拳を握りしめて胸の前に掲げる。



 「……アクラスの秘石よ、私に従え!」


 ティアに叫び秘石は甲高い音を立てて光り出す。


 “キイイイイン!”


 右手の光はいつかの様に紅い光が発せられ、炎の様な揺らめきを持ち纏わり付いた。


 ティアは紅い光を纏った右手を構え、ダイオウヤイト目掛け駆け出した。



 彼の怪物はバルドとライラの攻撃で我を忘れ、迫るティアに対し全くの無防備だった。



 「ウオオオ!!」


 “ブオオン!”


 ティアは叫び声と共に振り被っていた右拳を、真っ直ぐと突き出す。


 ティアの右拳は真新しい包帯が巻かれているが、紅い光が揺らめいて纏わり燃えている様だ。


 秘石の力により強化されたその拳は人外の速さでダイオウヤイトの頭部に突き刺さった。


 “ドギャアン!!”


 大きな破砕音と共にダイオウヤイトは吹き飛ばされ大広場の花壇に激突する。


 “ギシャアアアア……”


 ティアの強力な正拳突きで巨大なダイオウヤイトは後方の花壇に派手に激突し、消え入りそうな断末魔を上げたのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 

奇しくも今日はあの震災から9年目……。美里野自身は被災地には住んでいませんでしたが、震災後直後に津波が襲った現場に入り、数か月居た事が御座います。また、今現在も帰宅困難地域に携わる機会が多々あり……あの震災は自分にとっても大きな意味を持ちます。被災された方はまだ苦しみの最中かと思いますが、何とか頑張って頂きたいと、と切にお祈りします。


 次話は3/15(日)投稿予定です! よろしくお願いします!

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