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149)ダイオウヤイト討伐-22(集う者達)

 ダイオウヤイトが王都正門を突破した頃……王都の学園に通うレナンは教室内を見回し、目当ての少女が居ない事に溜息を付きながら呟いた。


 「……ティアは来ていないか……。ダイオウヤイトの討伐……大丈夫かな」



 レナンは教室にティアが居ない事で、危険な依頼に挑戦した彼女の身を案ずる。対して彼の横に居たソーニャがゲンナリしながら答えた。


 「また、いつものソレですか……。今回は全くの杞憂ですわ、お兄様……。何故ならその討伐にはマリアベルお姉様が参戦しているのですから」


 心配性のレナンに対し、ソーニャが呆れながら答えるが……。そんなソーニャに突っ込む声が背後から上がった。


 「……お前の姉ちゃん依存症も相当のモンだな」


 「ちょ、ちょっと! リナちゃん、そんな事言ったら駄目だよ……」



 ソーニャの背後から思わず突っ込みを入れたのはリナだった。そんな彼女をジョゼは青い顔して止めようとしている。


 「……あら? リナさん、随分な言い掛かりね?」


 「言い掛かりじゃ無いよ。お前四六時中、姉ちゃんの事ばっか言ってんじゃんか」


 思わぬ攻撃を受けたソーニャは黙って居られずリナを睨みながら言い返す。対してリナは構わず呆れながら呟いた。


 一触即発な感じの二人にジョゼは青い顏のまま、オロオロしていたがレナンは苦笑を浮かべて立ち上がって制止した。


 「二人共、ケンカしちゃダメだ……。え!? 何か……聞こえる……。これは悲鳴!?」


 レナンは二人のケンカを仲裁している時に、突如動きを止めて窓の方を食い入る様に見つめ呟いた。


 人外の存在である彼には他人には無い感覚を持っている様で、何かの音を感じ取れた様だ。


 彼は窓の方に駆け寄り感じた“音”の方を見つめる。唯事では無い様子のレナンを見てソーニャが彼に問う。


 「レナンお兄様、どうされたんですか!?」


 「……甲高い女性の悲鳴……怒号……。間違いない、王都で何かが起きている! これは……正門の方か」



 ソーニャの呼掛けに、レナンは独り言の様に呟いて答えた。二人の様子にクラスメイト達も騒然となり一斉に窓の方に集まった。



 すると……。



 “ドガアアン!”


 まるでタイミングを合わせた様に、レナンが見つめる正門の方で爆音が響いて火煙が上がった。



 「「「「…………」」」」


 見ているクラスメイト達は絶句して言葉が出ない。そんな混乱した最中、タイミング悪く担任の女性教師ユニが入って来た。


 「な、何ごとですか、皆さん!? もう授業が始まり……」


 「先生、王都正門で爆発が生じました。ユニ先生は学園長に指示を仰いで生徒達を避難させて下さい」


 慌てて叫ぶユニに、レナンは彼女に間髪入れず指示を出す。 


 「……疾風豪腕、疾風豪腕!」


 次いで彼は身体強化の術を多重掛けし、その体を眩く輝かせた。


 「……白く光ってる……」

 「だから、白き勇者か……!」


 その様子にその場に居た同級生達は驚き呟いたが、それに構わずソーニャは彼に問う。


 「……レナンお兄様、まさか……行かれるのですか?」


 「ああ、僕はマリアベルに王都の守護を頼まれている。だから放っては置けない! ……ソーニャ、君は急ぎ王城に連絡し、騎士達との連携を!」


 レナンはソーニャに短く答えて窓から飛び出した。


 “ヒュン! ザシュ!“


 

 「あ……窓から……」


 窓から飛び出したレナンを見てユニは呆然と呟いた。ティア同様注意すべきだった事を思い出したのだろう。


 そんな彼女を尻目にクラスメイト達がレナンを見ると……、彼は体を白く輝かせながら人並み外れた跳躍力で、飛び上がって学園を出る所だった。爆発音がした正門へ一人、向かう心算なのだろう。


 「……マジ、凄ぇ!」

 「ああ、本物だ! 彼は!」


 そんなレナンの後姿を見てクラスメイト達は口々に称賛した。


 

 そんな中ソーニャは……。



 「……ユニ先生、私は白騎士として王城に連絡を取り、お兄様同様現場に急行する必要が有りますので……この場で失礼させて頂きます」


 「え!? ちょ、ちょっと待って、ソーニャさん……!」


 教師であるユニに静かに短く話した後、さっさと教室を出てしまった。事態が良く分っていないユニは彼女を追い掛けてしまう。


 教室に残された生徒達は顔を見合わせながら興奮した面持ちで話し合った。


 「おい、正門の方に行ってみようぜ!」

 「ああ、面白そうだ!」


 ユニが不在となった事を良い事に野次馬根性を出した生徒達は半数近くが教室を飛び出してしまった。レナンの活躍を見る為に正門に向かう心算だろう。



 残ったリナとジョゼはと言うと……。



 「……私達も行こう……。何となくだが……タイミング的に、あのバカ(ティア)が絡んでる気がする……」


 「えええ!? ちょっと待って、リナちゃん……!」


 確信を持って呟いて教室を出ようとするリナにジョゼは慌てながら後を追うのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は3/8(日)投稿予定です! よろしくお願いします!

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