表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/370

148)ダイオウヤイト討伐-21(その頃の彼女達)

 街道横の森から突如現れた巨大な黒い影。


 迫り来る凶悪な何かが、敵襲だと直感した門番コルトは大慌てで城門を閉じ始めた。


 “ドズズウン!!”


 大きな音を立てて王都城門は締め切られた。巨大な城門は閉まり切る迄に時間は掛かったが、何とか来襲者を城内に入れずに済んだ。


 巨大な鉄製のカンヌキが通され、城門の守りは強固となった。敵が何者かは分らないが、此れで時間が稼げると判断したコルトは叫ぶ。


 「敵の侵入を防止した! 誰か急ぎ王城へ……」


 “ドジュウウ!!”


 コルトが叫んでいる最中に城門の向こうから何やら音が響く。


 彼は音がした城門の方を振り返ると、頑丈だった木製の門が、みるみる黒く変色している所だった。


 「な、何が……!?」


 “ドガガン!!”


 彼が変色する城門を見て困惑している最中、大きな破砕音と共に城門が砕け散った。




 破壊により巻き起こる土煙……、阻む事が出来なくなった城門の奥には……真黒い巨大なダイオウヤイトが群れを成し、犇めきあっていた……。





   ◇    ◇    ◇





 王都城門がダイオウヤイトにより破壊される半時程前――。



 ティア達は街道を馬で駆けていた。


 一行は王都を襲うダイオウヤイトを事前に倒す為、馬の速力を生かせる街道をひたすら進んだ。


 クマリの読み通り、ダイオウヤイトの群れは街道を通った形跡が無い。予想通り森の中を進んでいるのだろう。


 ティア達の考えでは先攻するダイオウヤイトの群れよりも速度の速い自分達が、王都襲撃前に追い着く筈だった。



 「良し! このままなら我々の方が先に王都へ着く! レナン達と協力して奴らを事前に迎え撃つぞ!」


 馬で駆けながらマリアベルはティア達に向け叫ぶ。


 「そ、そうね! 夜はとっくに明けちゃったけど、な、何とか間に合いそう!」


 マリアベルの後ろを駆けるティアが馬に激しく揺られながら答えた。ティア達がそんな事を言い合っていると街道は大きなカーブが見えた。


 そのカーブを曲がり切ると、正面に王都が見える筈だ。



 もう少しで王都に到着する……、一行の誰もがそう考えていたが……。



 “ザッ!”



 街道を駆けるティア達一行の前方に、野盗の団体……、いや野盗に扮したギナルの兵団が現れた。



 「まさか、待ち伏せか!?」


 「狂信者のギナル兵にしちゃ丁寧な仕事するじゃんか! よっぽど襲撃を成功させたいみたいだ!」


 前方に突如現れたギナル兵達にオリビアが叫んで、クマリも答えた。


 「時間が無い! このまま押し通すぞ!」


 「「「「応!」」」」


 マリアベルの号令で全員が応えた。襲い掛かって来たギナル兵に対し、馬で一気に駆け抜け王都へ向かおうとしたのだ。


 しかしギナル兵達はそれを防がんと弓を構え、矢を放ってきた。


 “ヒュンヒュン!”


 一斉に放たれた矢をマリアベル達は剣で払うが……全ては止め切れ無かった。


 “ドシュ! ヒヒイーン!”



 放たれた矢が、何頭かの馬を穿つ。


 矢に撃たれた馬は痛みで激しく暴れ、それにより他の馬達も足を止めてしまった。


 「しまった! 奴ら、馬を狙っているぞ! お前達、我に続け!」


 敵の狙いが馬に有ると分ったオリビアは騎士達を連れ、前方から矢を放ってきたギナル兵達を蹴散らす為駆け出す。


 しかし、これが裏目に出てしまった。


 オリビア達が前に駆け出した隙に、街道横の森から新たなギナル兵達がマリアベル達を取囲んだ。


 オリビア達とマリアベル達は分断され、しかも其々がギナル兵達に囲まれてしまったのだ。


 「やられた! コイツ等、最初から此れを狙ってやがったんだ! このままじゃ拙い!」



 「ティア! お前は後方のギナル兵を魔法で薙ぎ払え! バルドとライラは左方の敵を討て! ミミリは矢と魔法で牽制! クマリは右方の奴らを倒せ! 私は前方の奴らを蹴散らして、オリビア達を援護する!!」



 敵の策に嵌り、囲まれた事実にバルドが悔しそうに叫んだ。対してマリアベルは状況を分析して素早く指示を出した。


 「行くぞ! 貴様ら、我が前に立つな!!」


 皆に指示を出したマリアベルは叫びながら大剣を振るい、前方のギナル兵を薙ぎ倒した。


 その一撃が合図となり、皆は一斉に迎撃を行う。


 「……“原初の炎よ 集いて我が敵を打ち砕け!” 火砕!」


 “ドガアアン!”


 ティアは得意の魔法を後方に回り込んだギナル兵達に向かい放った。


 「ぎゃあああ!」


 ティアの魔法により後方に居たギナル兵達は吹き飛んだ。余りの火力に他のギナル兵達が怯んだ隙をクマリ達は見逃さなかった。


 クマリは得意の風魔法で右方の敵を蹴散らし、バルドとライラは左方のギナル兵達を倒す。


 騎士のライラに対しバルドは騎乗戦は不慣れだったが、恋人のミミリが丁寧に弓でフォローする。


 前方に孤立してしまったオリビア達だったが、一騎当千のマリアベルが支援した事であっという間に形勢逆転した。


 「オリビア、お前達! 纏めて奴らを蹴散らすぞ!」


 「「「ハッ!」」」


 “ザン! ザシュ!”


 「ウガアァ!」

 「ヒイィ!」


 マリアベルの加護を受けたオリビア達は力を振るい残ったギナル兵達を一掃する。


 ギナル兵達は悲鳴を上げて力尽きた。


 こうしてティア達を足止めしたギナル兵達は一掃された。しかし……。


 「……不覚……! こんな傷など!」


 最初に取り囲まれたオリビアが足に傷を負ってしまった。


 オリビアだけで無く、別な騎士も手傷を負った。そればかりか馬も何頭か傷を負い走れない。


 「……マリアベル様、我等を置き……急ぎ王都へ!」


 オリビアは悔しそうな顔を浮かべながら、マリアベルに懇願する。優秀な騎士である彼女は何を優先させるべきか、心得ていた。


 「……済まぬ、火急の事態ゆえ先に行く! オリビア、暫し待て!」


 マリアベルはオリビアの肩に手を置きながら、短く答える。


 「此処は構わず……! お前達……申し訳無いが、王都を、マリアベル様を頼む!」


 オリビアはマリアベルに応えながら、ティア達に声を掛ける。


 対して彼女達は力強く頷いて……王都へ向かうのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 今、日常ではコロナウィルスが猛威を振るっております。皆さま、お体には十分注意して下さい!


次話は3/4(水)投稿予定です! よろしくお願いします!


追)一部見直しました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ