145)ダイオウヤイト討伐-18(迫る危機)
いつも読んで頂き有難う御座います!
マリアベルとティアは互いに憎しみ合う関係では無く……挑み合う姉妹の様な関係で有るべきと思いまして、この展開です。
次話は2/23(日)投稿予定です! よろしくお願いします!
マリアベルに抱き締められた上に頭を撫でられて慰められたティアは、今だ混乱して真っ赤な顔をしていたが、そんな彼女の前に事の成り行きを見守っていたクマリとライラがやって来た。
様子のおかしいティアにクマリが労いの声を掛ける。
「ティア、災難だったな……」
「!? い、いいいいえ! べべ別に問題ありません!」
“ぐるるるるう!”
ティアに話し掛けたクマリに対し、混乱の最中に有った彼女は盛大に慌てて上ずった大声を上げる。
気を抜いた為か、ティアの残念副作用も炸裂し、大きなお腹の音が同時に鳴り響いた。
そんな様子のティアを見たクマリは……。
「ククク……流石のお前も、姫殿下が放つ強力無比の魅力には勝てない様だな? マリちゃんは無自覚に同性をベタ惚れさせる恐るべき特性が有る。ティア、お前も毒されちゃった?」
「クマリ殿! ティアお嬢様に向かって失礼な事を言うのは止めて頂きたい!」
慌てるティアを見てクマリは彼女を冷やかすが、すかさずライラが噛みつく。
クマリは長い間マリアベルのストーカーを務めている為、意図せず同性の心を簡単に射止める天然ジゴロなマリアベルにティアが“撃ち抜かれた”かと思ったが、赤い顏をしながらティアが必死に否定する。
「そ、そんなんじゃないです! マ、マリアベルはレナンを奪い取った仇敵です。……仇敵ですが……でも……」
クマリの冷やかしにティアは声を上げて否定する。しかし徐々にその声は小さくなった。
「ティアお嬢様!? ま、まさか本当に毒されちゃったのですか!?」
「だ、だから違うって! ただ……思ってた程……悪い奴じゃ無いって……。いや、寧ろ……良い人だと……思う。姫様なのに、危ない役引き受けて……皆の為に戦ったり、それに……私の事……凄く気を遣ってくれるし……。私が“こうなりたい”って憧れていた英雄そのものって言うか……、色んな面で、凄いって思ったの……」
脳筋なライラが本気でティアを“撃ち抜かれた”かと案じるが、ティアは両手をブンブン振って否定する。
そして話しながらマリアベルに対する認識が変わった事を告白した。
「……確かにマリちゃんは凄い。長い間、あの子を見て来た私は良く知っている。マリちゃんは姫殿下だけど、亜人故にずっと孤独だったんだ……。
誰も見向きもされない中……彼女は腐らず、負けなかった。マリちゃんの母親も亜人でね、その母親が先代黒騎士だったんだ。マリちゃんを残して早くで逝っちまった様だが……。
マリちゃんは、その母親を目標に必死で戦い続けて来たんだ。一人で戦い続けたマリちゃんは、やがて誰もが認める英雄になった。……レナン君は、長く孤独だったマリちゃんがやっと出会えた運命の人だ。だからこそ、彼女は絶対にレナン君を手放さないだろう……。それでも、お前はレナン君を諦めないんだろ?」
「……そうです。幾らマリアベルが本当の英雄でも、強くて凄い人でも……私はレナンを取り戻します。エンリさんにも、そう誓って……この秘石を手にしたから!」
クマリはマリアベルの生き様を話した後ティアに問う。対してティアはアクラスの秘石を宿した右手を前に出してグッと握りしめる。
彼女の中では今までマリアベルに対して、抱いていた憎しみや怒りと言った暗い感情は、もはや消えていた。
今、ティアの胸に有るのは真の英雄騎士であるマリアベルと言う高い峰に、挑める挑戦心と高揚感だった。そんなティアの様子にライラが目を潤ませて呟く。
「……ティア様……立派になられて……!」
「それでこそ、お前だよ。フォローは任しな。だから……正々堂々マリちゃんに挑むが良いさ」
「はい! これからも宜しくお願いします!」
クマリの激励を受けたティアは元気一杯に答えた。そんなやり取りをしていたティア達だったが、そこにオリビアと話していたマリアベルが向こうからティア達を呼んだ。
「お前達、ちょっと集まって貰えないか? 急ぎ話を聞いて欲しい!」
そう叫んだマリアベルの声は何処となく緊張しており、彼女の周りに居るオリビアや部下の騎士達の顔にも強張っている。何か分かった様だ。
「……ああ、今行くよ、マリちゃん!」
マリアベルの呼び掛けにクマリは短く答え、傍に居たティアとライラと共に彼女の下へ向かうのだった。
◇ ◇ ◇
「……皆、先ずはこれを見てくれ」
皆に呼び掛けたマリアベルはティアが入手した白紙を見せる。
「それ、ティアが持って来た奴だろ? 見てくれって……何も書いて無いじゃねぇか?」
「ちょ、ちょっと! バル君、騎士様相手に失礼だよ!」
マリアベルが示した白紙を前に、近寄って来たバルドが無遠慮に話す。そんなバルドに白騎士オリビアが睨むが、その様子に気が付いたミミリが彼に注意した。
「……確かに、コレは只の白紙に見える……。だが、この端に薄く書かれてる丸印に……こうしてエーテルを込めると……」
マリアベルはバルドの態度を気にせず、彼の問いに答えた。そして…彼女が自ら話した通り白紙の端を摘まんでエーテルを込めた。
すると……。
「!? 何か浮かんで来たぞ……これは文字か? 何々……ロデリアの邪教徒共に……鉄槌を!? な、何だコレは!?」
「……ふむ……ククク……成程、連中が考えそうな事だな……」
マリアベルが表した白紙をライラが覗き込み、読み上げている内に大声を上げた。
対してクマリが顔を出して書かれていた内容を見て、嘲る様に笑った。
「し、師匠……どういう事ですか……?」
「……私が説明しよう、ティア……。ここに書かれている事は、ギナル兵達による作戦計画……。奴らはダイオウヤイトの群れを……このロデリアの王都に解き放つ心算だ……」
「!? そ、そんな!?」
マリアベルが伝えた恐るべき計画を聞いたティアは驚いて叫ぶのであった。