143)ダイオウヤイト討伐-16(隙)
無事再会を果たしたミミリとバルド……。
その二人が柵越しでは有るが再会を喜ぶ姿を見て、ティアも心から安堵して親友に呼び掛ける。
「ミミリ! あぁ……本当に良かった!」
「ティアちゃんも! ぐすっ……心配掛けてゴメンなさい……」
ティアも心配していた親友の無事に涙を流して再会を喜び、対するミミリも泣きながら謝罪する。
彼女達の姿をライラとオリビアは微笑ましげに見ていたが、攫われた者達の中からオリビアに話し掛ける者達が居た。
「オリビア様! 遅れを取り申し訳有りません!」
「……お前達、無事で何よりだ」
声を掛けて来たのは数人の騎士達だ。ダイオウヤイト討伐にマリアベルと共に参加した彼らは、街道を進む内に襲撃され連れ去られて此処まで連れて来られたのだ。
「……オリビア様……、急ぎマリアベル様に伝えたい事が御座います。何卒マリアベル様にお目通しを」
「分った……、先ずは全員を此処から出そう……。皆、手伝ってくれ」
部下達の言葉を聞いた、オリビアはティアやバルドに声を掛け、囚われた者達を開放するのだった。
◇ ◇ ◇
こうして攫われた者達はティアとマリアベルの活躍によって助けられた。
寺院を占拠していたギナル兵達は大半がマリアベルによって殲滅された事より、攫われた者達は寺院の外に出て広場に集められていた。
そこでマリアベルは囚われていた騎士から報告を受けている。
「……そうか、奴らには別働隊が居たと……しかも、多数のダイオウヤイトの存在か……」
「はい、此処に連れて来られる際に、ギナルの者共が話しているのを確かに聞きました……」
報告を受け呟くマリアベルに対し、説明していた騎士は断言する。
「マリアベル様……どう思われます……?」
「……気になるな……別働隊に、多数のダイオウヤイト……そんな戦力が有るなら、何故このアジト防衛に廻さない? ……一体何を企んでいる?
だが、奴らの狙いが読めない事には動きようが無い。……先ずは捕虜としたギナル残党を尋問しろ。それから、この寺院に何か痕跡が無いか調べるんだ。クマリ、済まないが……寺院の方はお前達で調べてくれ」
オリビアに問われたマリアベルは状況を整理しながら各々に指示を出す。
「あいよー、行くよお前達ー!」
「はい!」
「ああ」
寺院を調べる様指示を受けたクマリはティアとライラに声を掛ける。ちなみに心労で疲れたミミリは離れて休んでおり、バルドは付き添っていた。
マリアベルに調査を頼まれたクマリは有る寺院の前に立ち地面をジッと見つめる。
「この寺院が人の出入りが激しかった様だ……」
「……つまり……どういう事ですか……?」
クマリが寺院前の地面に沢山付けられた足跡を見て呟くが、それが何を指し示すか分からないティアは額に手を当て問う。
「はぁー、お前の頭は食う事しか考えて無いんじゃないか? ライラ、教えてやんな!」
「クマリ殿! ティアお嬢様を馬鹿にするのは止めて頂きたい! いいか、ティアお嬢様の頭はな、食い気以外にレナン様の事で一杯だぞ、認識を改めろ! ちなみに私も何を示すのか分からん!」
ティアを馬鹿にしたクマリに対し横に居たライラが噛み付くが、ティアのフォローになっておらず、しかもライラ自身が、おバカで有る事を晒した。
「……馬鹿は伝染する様だね……はぁ、まぁ良いよ。いいか、お前達……この足跡が示す事は、唯一つ。此処が重要な拠点だったって事だ! 恐らくは、此処に指揮系統が集まっていたんだろうよ。何か探すなら先ず此処さ」
「「おおおー」」
クマリの説明にティアとライラは声を揃えて感嘆する。
そんな二人にクマリは心底呆れながら、その寺院の中に入る。
中は単純な石造り構造だったが、各部屋に窓が有り、外からの光で内部は意外に明るかった。
此処でクマリが手分けして、部屋の内部を調査する様に指示した。ティアの担当は一番奥の部屋を探索する事となった。
彼女が奥の部屋に入ると、小さな間取りの部屋にどこから運んで来たのか簡易的なダイニングテーブルが有り、その上に無造作に置かれた数枚の書類が散らばっていた。
よほど慌てた為か椅子は倒れ、コップ類も落ちて転がっている。テーブルの上の整理もされていない。
ティアは置かれた書類を手に取って見ると……それは何も書かれていない白紙だった。
「……これから書く心算だったのかな? うん? よく見れば、右端に薄っすら丸印が書かれている……。何か気になるな……皆に見せよう……」
そう呟いたティアは怪しげな白紙を折り畳んで懐にしまった。
◇ ◇ ◇
一頻り寺院を調べて廻ったクマリ達はマリアベルの元に報告に向かった。
調査の結果、決定的なモノは何も無かったが、白紙が気になったティアはマリアベルに見せる事にした。
オリビアはクマリやライラから話を聞き、マリアベルの周りには攫われた者達が一ヵ所に集められていた。
マリアベルはティアから貰った白紙を受け取りながら呟いた。
「……ほう……白紙の書類とな……」
「うん……何か書く心算で置いてあるのかなって思ったけど……テーブルの上には書くモノが何も無かったの……、だから何か気になって……」
マリアベルはティアから渡された白紙を手に取って見つめていると……その背後に集められている一団から商人風の男が刃を振り上げマリアベルに向かい切り掛かった。
肝心のマリアベルは白紙を見ており気付いていない。
仇敵である彼女の危機に……ティアは迷う事無く、剣を取り前に駆け出すのだった。
いつも読んで頂き有難う御座います! この章ではティアらしさ、マリアベルらしさを出来るだけ出したいと考えています。
ティアはアホで残念ですが……迷いながらも自分信じた道を歩める子だと思います。
次話は2/16(日)投稿予定です! よろしくお願いします!