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137)ダイオウヤイト討伐-10(アジトへ)

 ティアを背負うマリアベルを見て、すかさず従者のオリビアが制止する。


 「マリアベル様……、何も貴女様がその少女を背負う必要が有りません。クマリ等か、何なら私が背負わせて頂きます」


 「気遣い無用だ、オリビア……。だが、これは作戦上、必要な選択だ。この中で戦鬼の私だけが、この娘を担いだまま……敵とマトモに戦えよう。この娘が目を覚ますまで待っている暇は無い。そう言う訳だから気にするな。先に進むぞ……」


 オリビアの制止に、マリアベルは事も無げに答えティアを軽々と背負い先に進む。


 彼女の顔は厳めしい兜で見えないが、話す言葉は冷静で自信に満ちていた。マリアベルの言葉通り、彼女ならティアを担いでも難なくダイオウヤイトにでも戦えるだろう。


 マリアベルの言葉が正しいと悟ったオリビアは先に行く彼女の背を見ながら悔しそうな口調で呟く。


 「……マリアベル様は、余りに御優し過ぎます……。お前達、これ以上マリアベル様の足を引っ張るな!」


 オリビアはマリアベルの後を追いながら、傍に居たクマリやライラ達に叱った。



 オリビアとしては高貴な血筋のマリアベルが身分の低い者達の為に、動いては欲しく無かった。


 だが、騎士としての正しい矜持を持つマリアベルには、その想いは届かないだろう、とオリビアは分っていた。


 だからこそ、クマリ達の乱入は面白く無かったのだ。



 「へいへい……分りましたよー」

 

 「ふん! 分れば良い!」



 オリビアの叱責に、いつも通りクマリが気の抜けた返答をする。オリビアはクマリ達を睨みながらマリアベルの後を追った。


 「何だ、アイツは!? 自分が白騎士だからと言って偉そうに!」


 「「…………」」


 オリビアが去った後、残されたライラは彼女の言い方に憤慨する。



 しかし何故かクマリとバルドは沈黙していた。



 「む? どうしたお前達?」


  普段なら二人共、真っ先にオリビアに抗議する筈だが、何故か今回は神妙な態度だ。



 「……なぁ、クマリさん……。これってライラさんにも言っといた方が良いんじゃないか? 後で不敬罪で捕まっても拙いし……」


 「そーだな……、流石に黙っとく訳に行かないな……」


 「何の事だ?」



 マリアベルの正体を知っているバルドとクマリは話し合うが、何の事か分らないライラは首を傾げる。


 「……ライラ、アンタにも説明しておこう。マリちゃんの本当の正体はね……」


 「何だ、大層だな。私は何を聞いても驚かんぞ?」


 「それじゃ言うよ……マリちゃんは実は……ゴニョゴニョ……」


 「ふんふん……え? ええ!? ええええ!!?」


 声を低くして話すクマリに対し、ライラは軽口を叩いたが……、マリアベルが姫殿下と知らされた時は驚愕の余り絶叫したのであった……。




  ◇   ◇   ◇




 戦いの最中、秘石の副作用で力を使い果たして眠ってしまったティアは漸く目を覚ました。


 「……ううん……は!?」


 目を覚ましたティアが辺りを見回すと、いつの間にか彼女は横に寝かされ、傍には黒騎士マリアベルが片膝を付いて座っている。



 周りは森の中で、クマリやライラ達並びに白騎士オリビアすら居なかった。


 ティアが目を覚ました事に気付いてマリアベルが声を掛ける。



 「……目が覚めた様だな、ティア フォン アルテリア……」


 「此処は何処!? 師匠やライラ達は!?」


 話し掛けて来たマリアベルに対し、不審に思ったティアが大声で問うが……。



 「静かに! アレが見えるか、ティア……」


 大きな声を上げたティアに対し、マリアベルは彼女の口を塞いで制する。



 マリアベルが言った方向を見ると、そこには……。



 マリアベルが示した先には、朽ちた古い寺院が見えた。


 その寺院は無人化して随分と時が過ぎた様で、外壁に太い蔦が這い苔だらけだった。


 古代の民が土着の神を祭ったのであろう。


 寺院はその寺院は複数の棟に分けられており、森が開拓しており広範囲に平地が広がっていた。



 そこには……野盗に扮したギナル兵達が、寺院の周囲を徘徊していた。


 更に寺院の脇に設けられた大きな柵に一匹のダイオウヤイトが入れられている。



 この古い寺院こそが襲撃者達のアジトだろう。ここに攫われた者達が集められて居る筈だ。



 「……ここに捕まった人達が居るのね。 ミミリは無事なの?」


 「ああ、恐らく……。攫われた者達が連れ込まれたのも、つい先程の様だからな……。そなたの友人だけで無く、我々の部下達も捕まっている。此処から遠見の魔道具で見る限り、連中に大きな動きは無い。今の所、捕まっている連中も無事だろう……」


 ティアの問いに答えたマリアベルは静かに呟く。対してティアは一先ず無事な様子の親友に安堵しながらクマリやライラ達が居ない理由を尋ねた。


 「そう、良かった……。所で、師匠やライラ達は何処に行ったの?」


 「彼女達は、オリビエと共には寺院の周りを探っている。寺院のどの棟に攫われた者達が居るか知る為にな。……ギナルの者達が野盗に扮し、我が王国民を攫っている理由は分らんが……ろくでも無い事だけは確かだ。

 いずれにしても、オリビア達が戻るまで暫し待ちとなる。そこで……折角の機会ゆえ、そなたとは話し合いたいと思うてな……」


 「え……ちょ、ちょっと!?」


 

 尋ねたティアに対して答えたマリアベルは、此処で話をいったん切り……唐突に厳めしい兜を外し始めた。


 マリアベルの行動にティアは驚いて声を上げた。


 だが……驚く彼女の前に現れたマリアベルの美しい素顔にティアは……更に驚き、度肝を抜かれたのだった……。


いつも読んで頂き有難う御座います!

 遂にマリアベルとティアの本当の意味の直接対決が始まろうとしています。女同士の戦いって奴です。


 次話は1/26(日)投稿予定です! よろしくお願いします!


追)矛盾が生じそうな所を見直しました!

追)不自然な点を見直しました!

追)一部見直しました!

追)一部見直しました!


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