136)ダイオウヤイト討伐-9(善戦)
ミミリを助ける為、仇敵のマリアベル達と共闘する事を決めたティア達一行――。
彼女達がマリアベルと合流した後、いきなり共闘の機会は現れた。
野盗に扮したギナル兵達が、襲って来たのだ。ティア達はダイオウヤイトが残した痕跡を追って森を進んでいた。
体の大きなダイオウヤイトは、けもの道を利用して移動している様で、後を追うティア達も深い藪に足を取られる事無く進む事が出来た。
そして……森の奥まで進み、残された痕跡が比較的新しいと一行が感じた時……襲撃されたのだ。
マリアベルは先頭に立ち、迫り来るギナル兵達を手にした大剣で容赦なく切り捨てる。
ティアはクマリに言われた通りマリアベルの傍に着き彼女の戦い振りを見ていた。
するとマリアベルの左方から新たに迫らんとする野盗(野盗に扮したギナル兵)達が見える。
「待ち伏せされたか! ティア フォン アルテリア! お前の魔法で左前方の敵を蹴散らせ!」
「わ、私に命令しないで!」
マリアベルに指示されたティアは怒りながらも右手に意識を集中して、秘石を起動する。
“キイイイイイン!”
秘石に力が十分集まった所でティアは魔法を解き放つ。
「……“原初の炎よ 集いて 我が敵を打ち砕け!” 火砕!」
“ゴオオウ!!”
ティアは巨大な火炎弾を左前方の野盗に向けて放つが……人を殺したくないティアは野盗の少し手前を狙った。
“ドガアアアン!!”
「うぎゃあ!」「ひいいぃ!」
放たれたティアの魔法は下級とは言え強力で、炸裂した火球の爆発力で左前方から接近しようとしていた野盗をまとめて吹き飛ばした。
吹き飛ばされた野盗達は悲鳴を上げて地面に叩き付けられた。恐らく唯では済まないだろう。
魔法を放ったティアはその事に一瞬気を取られかけたが……。
「ぼさっとするな! 次は後方だ、お前の仲間が危ないぞ! 先制して連中を吹き飛ばせ!」
「わ、分ったわよ!」
マリアベルは自分達一行の後方から迫る敵を指差し、ティアに指示を出す。
対してティアは懐のカバンからマンジュを取り出し齧りながら魔法の詠唱を始める。
クマリはティアの隙を守るべく彼女の前に躍り出て、近付く野盗共に切り掛かった。後方で白騎士オリビアと共にバルドやライラも、野盗を斬り付ける。
「……火砕!」
“ドドオン!”
「うあああ!!」「ぎゃああ!」
詠唱を終えたティアが魔法を放ち、後方に群がっていた野盗を吹き飛ばす。
「良くやった、ティア嬢! 残りは僅かだ! 一斉に蹴散らせ!!」
ティアの魔法で後方の敵が蹴散らされたのを見たマリアベルは、大剣で野盗共を切り捨てながら皆に指示を出した。
マリアベル達を襲った野盗は数十名程だったが、マリアベルの斬撃とティアの魔法で粗方片付いた。
残りの敵もクマリやオリビア達の奮闘で間も無く倒されるだろう。
そして……全ての野盗に扮したギナル兵達が沈黙した時、マリアベルが周囲を見渡しながらティアに声を掛ける。
「……良くやったな、ティア フォン アルテリア! 初陣とは思えぬ働きだったぞ!」
「…………」
マリアベルは強力な魔法を放ったティアを称えたが、対するティアは何も言い返さず頭をグラグラ揺らす。
「小娘、マリアベル様が声を掛けて頂いていると言うのに……!」
「構わん、オリビア。……どうした、ティア嬢?」
マリアベルが話しているのに答えないティアを見て、脇に居た白騎士オリビアがティアに向かって声を荒げる。
対してマリアベルはそんなオリビアを制して、ティアの肩に手を置き問い掛けるが……。
“グラァ、ドサッ!”
突如ティアは体勢を崩し、倒れ込んでしまった。咄嗟にマリアベルが彼女を抱き抱える。
「お、おい! ティア嬢!?」
「……すー、すー」
倒れたティアを見てマリアベルが驚いて声を掛けるが……、肝心のティアは眠っている様だ。
「……あーあー、遂に出ちまったか、残念副作用が……。特訓して大分持つ様になったんだけどなー。立て続けの戦闘で、事切れちまったのか……?」
眠っているティアを抱きながら膝を付くマリアベルは何が何だか分らない様子だったが、そんな彼女の頭上からクマリが溜息を付きながら呟いた。
「副作用……? どう言う事だ?」
「それはちょっとねー、ティア本人のプライバシーに関わるからな……。幾らマリちゃんにでも、私の口からはちょっと話せないよ?」
マリアベルの問い掛けにクマリは、のんびりとした口調で誤魔化した。
対してオリビアはクマリの態度が気に入らず叱咤する。
「クマリ! マリアベル様に対し非礼であろう!?」
「良い、オリビア。所で、クマリ……。さっきから私が揺さぶっても、この娘は一向に目を覚まさんが……、起きるまで暫く掛かりそうか?」
「まぁねー。その内、目を覚ますと思うけど……ちょっと掛かるかも?」
マリアベルの問いにクマリは呑気に答える。それを聞いたマリアベルは……。
「そうか、そう言う事なら仕方ない。かと言って……此処に放置する脇にいくまい……。この娘は私が背負おう」
クマリの曖昧な返答を聞き、マリアベルは副作用で眠ったティアを背負うのであった。
いつも読んで頂き有難う御座います! 難しい展開でしたが何とか形にする事が出来ました。
次話は1/22(水)投稿予定です、宜しくお願いします!