表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/370

132)ダイオウヤイト討伐-5(追跡)

 ダイオウヤイトに攫われたミミリを助ける為、ティア達は森の奥へと駆ける。そんな中先頭を走るクマリが声を上げる。


 「……良いか、お前達! ギナルの連中はお前達が考えているより遥かにヤバい! だから、一瞬たりとも気を抜くな!」


 「は、はい! 師匠!」


 クマリの掛け声に弟子のティアが力強く答える。


 「ク、クマリさんよ! アンタに俺ら追従してるが、コッチで方向合ってんのか!?」


 「周りを良く見ろ、少年! あのデカブツが進んだ跡がアチコチ有るだろ! それを辿れば奴に追いつくのは道理だ!」


 バルドの問いにクマリは大声で答える。確かに彼女が説明した通り、ダイオウヤイトが移動した跡は、折れた枝や、傷付いた木の幹に残されていた。


 「なるほど! 所で結構走っているが、奴らとは近いと思うか!?」


 「分らん! だが、ダイオウヤイトは本来待ち伏せして得物を狩る魔獣だ! 素早い動きだとしても馬みたいに長くは走れない! それにあの巨体だ、森を抜けるのは容易じゃ無い筈!」


 クマリの説明に納得したライラが、彼女に接敵について問う。対してクマリは自らの経験に基づいて予想を述べた。


 「おしゃべりは終わりだ! 平地に出る、警戒しろ!」


 「「「「応!!」」」」



 クマリは森の奥に出来た平野を見つけ皆に警戒を呼び掛ける。


 森の平野は山火事か伐採で出来た木の少ない草地である。障害物が無い為狙われやすい事をクマリは懸念したのだ。


 ティア達が森を抜け、開けた平野部に入った途端――。


 “ヒュン! ピシュン!”


 鋭い風切音と共に矢が彼女達を襲った。どうやら待ち伏せされていた様だ。


 「狙われている! 身を低くして分散し、弓兵を討て! 私は右の奴を倒す! ライラとバルドは左側の奴を頼む! ティア、私に付いて来い!」


 「は、はい!」

 

 「「応!」」


 クマリの掛け声により、ティア達は二手に分かれて行動した。


 ティア達を襲った敵は二方向に分かれて矢を放ってきた。同じタイミングで敵を討たなければ、残った片方から狙い撃ちされるとクマリは考えたのだ。


 戦力不足は承知の上だが少しでも勝率を上げる為に、騎士として実力のあるライラと実戦経験が有るバルドを組ませた。


 対してティアは秘石による高い戦闘力が有っても実戦経験が無く素人同然だ。


 足を引っ張る可能性が高いと判断して自分と共に来る様に命じたのだ。弓兵を討つ為、駆けながらクマリはティアに指示を出す。


 「ティア! ライラ達を援護しろ! お前の魔法で左側の奴を牽制するんだ。私は前の奴を討つ!」


 「はい! ……“原初の炎よ 集いて我が敵を……”」


 クマリに指示されたティアは駆けながら詠唱しつつ右手に意識を集中し、秘石を起動させた。


 “キイイイイイン!”


 「火砕!」

 「風破斬!」


 ティアは右手から左側の弓兵に対し火炎魔法を放ち、クマリも同時に前方の敵に向け風魔法を放った。


 

 “ドガアアン!”

 “バシュン!”


 「うわあ!」

 「ウギャアア!」


 放たれた魔法は彼女達の狙い通り命中し、襲撃者達の断末魔の叫びが響く。



 「行くぞ、ティア! このまま蹴散らす! お前は私から離れるな!」


 「は、はい!」



 クマリはティアに声を掛けながら、両手の鉤爪を装備する。残党を蹴散らす心算だ。


 対してティアは大きな戸惑いの中、彼女に付き従う。


 “ギイィン!”


 「予想通りだ! 潜んでやがった! ティア、遅れを取るなよ!」


 弓兵を蹴散らして突き進もうとしたクマリの前に数人の野盗が剣を持って取り囲んで立ち塞がる。


 味方の弓兵が倒されても動じず、ティア達を始末する心算の様だ。


 “ギン! キン!”


 クマリは両手の鉤爪で野盗に対し激しい剣戟を繰り広げる。


 対して野盗は特級冒険者のクマリに対して遅れを取らずに切り結ぶ。どうやら、野盗に扮した兵士の様だ。


 「くそ! コイツ等、腕が立つぞ! ティア、私から離れるな!」


 クマリは複数の野盗に一人で応戦しながらティアに叫ぶ。対してティアは……


 「は、はい! 私は大丈……」


 ティアはクマリに対して返答している最中に地面に転がる“有るモノ”が目に付いて固まってしまった。



 それは……先程クマリの風魔法で切り刻まれた野盗の死体だった。



 魔法で切り刻まれた野盗の体は首と右手が無く、胴体にも大きな傷が見られ大量の血を流している。


 周囲に生臭い血の匂いが広がっている。その状況を見たティアは……。


 「う、うぷ」


 嗅いだ事の無い異臭と、今迄見た事が無いバラバラとなった死体を見て、強烈な吐き気に襲われ蹲った。


 その状況を襲撃者達が見逃す筈が無く、野盗の一人が蹲ったままのティアに襲い掛かったのだった……。



あけましておめでとう御座います! 本年もよろしくお願いします!


相話投稿日は1/8(水)予定です、宜しくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ