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129)ダイオウヤイト討伐-2(不可解な遭遇)

 楽しげな? 雰囲気だったティア達一行は、馬車のタズナを握るバルドの叫び声で一瞬の内に現実に戻された。



バルドの声を聞いたクマリが彼に問い掛ける。


「……一体どうしたんだい、少年……?」


 「あ、ああ……クマリさん、アレを見てくれよ」


 クマリに問われたバルドは戸惑いながら、自分達の馬車が進んでいた街道の先を指差す。


 其処には横倒しになった馬車らしい残骸が転がっていた。


 元は馬車だったソレは黒く立派な作りだったが、両断され半分になっていた。無残なのは馬車だけでは無い。


 大柄な馬が二頭、酷い傷を負って絶命している。街道上には上等そうな鎧を纏った騎士達や、汚い皮鎧を着たガラの悪そうな連中が何人も血を流して倒れていた。


 

 異常な状況に驚いたバルドの叫びを聞いたティアが大きく身を乗り出しクマリに問う。


 「し、師匠! アレって!?」


 「……ああ、この状況から見て……ダイオウヤイトが現れたんだろう……。殺された馬や破壊された馬車は奴の仕業だね。だけど……地べたに転がる野盗みたいな連中は何だい? 騎士達に野盗が襲い掛かった最中に……ダイオウヤイトが乱入した? バカな……不自然過ぎる……」


 ティアに答えながら、クマリは納得出来ない状況をブツブツ呟きながら整理する。



 そんな中……。


 「……うぅ……」


 大破した馬車の奥から呻き声が聞こえてきた。


 「……生存者か……トラブルはお断りしたいが……流石に無視出来んだろう。助けに行こうか……」


 クマリはそう言って身を乗り出したままのティアに声を掛けながら馬車を降りた。ティアやライラ達もクマリに続く。


 「オッと、周囲に警戒しな! 残党が居るかも知れない。馬車を奪われたら終わりだよ!」


 クマリは皆が馬車を降りた際に、大声で叫び注意喚起した。


 クマリの声を聞いてライラが警戒態勢に移り、バルドやミミリは何時でも馬車を出せる様に控えている。


 三人の様子を見届けたクマリは破壊された馬車を覗き込むと……。脇腹から出血した騎士が辛そうに座り込んでいる。


 良く見ればその騎士は若い男だが、体の至る所から出血していた。男の姿を見たティアは思わず呟く。


 

 「……ひ、酷い……」


 「慣れないなら……向こうに行ってな、ティア……」


 青い顏を浮かべて狼狽えたティアに対し、クマリは気遣い声を掛けた。対して彼女は首を横に振りこの場に居る事を望んだ。


 そんな弟子をチラ見した後、クマリは酷い状態の騎士に話し掛ける。


 「……よう、アンタ……大丈夫かい?」


 「う、うぐ……お、俺の事は……、ハァハァ……構わない……だ、だが……あの御方と……仲間が……」


 クマリの問いに、声を掛けられた若い騎士の男は息も絶え絶えに答える。


 「……大地と空より与えられし生命の光よ、彼の者を満たし救いたまえ……“癒しの光”」


 クマリはそんな騎士に回復魔法を掛けながら、彼に尋ねた。


 「……ちったぁ、マシになったかい? アンタ……此処で、何が有ったんだ?」


 「あぐ! うぅ……俺達は……ダ、ダイオウヤイトの……討伐任務に……向かっていた……。その道中、ハァハァ……い、行き成り……襲って来た……」



 クマリの問いに騎士の男は辛そうに答える。クマリの回復魔法で致命症は癒えた様だが、酷く消耗している。


 

 「襲って来た? 野盗の連中か? それともダイオウヤイトか?」


 「……りょ、両方だ……。一緒に襲って来やがったんだ……。魔獣に……馬車が……れ、連中は……人攫いを……。奴らに仲間が……! あ、あの御方も! うぅ……」


 クマリに対し騎士の男は苦しみながら答えたが、やがて体力の限界が来た様で、話している途中で気を失ってしまった。


 「気絶したか……。この出血じゃ無理も無いな……。しかし……、ダイオウヤイトと野盗が……一緒に行動するなんて……有り得ない……。何が……起こってるんだ?」


 「……し、師匠……一体、どういう事ですか?」


 理解出来ない状況に呟くクマリに対し、戸惑ったティアは彼女に尋ねる。



 「……分らんか、馬鹿弟子。お前の故郷ではヘビとカエルが仲良く散歩するとでも?」


 「? えっと……ヘビとカエルは……一緒には居られない……?」


 理解が追い付かないティアの質問にクマリは呆れながら逆に聞き返した。


 ティアは彼女の比喩を受けて想像しながら答える。


 「そうだ……。喰う側のヘビと、喰われる側のカエルは一緒に居られない。5分も経たない内にカエルはヘビの腹の中に納まるだろうよ。

 それと同じで……人間を捕食するダイオウヤイトが……餌である人間、つまり野盗と一緒に騎士達を襲う……。知能の高い魔獣なら調教出来るだろうが……子ネズミの頭にすら劣るダイオウヤイトじゃ絶対無理さ……。どう考えても有り得ん状況だ……」


 クマリは首を振りながら、理解出来ない状況を弟子のティアに説明したのであった。


 いつも読んで頂き有難う御座います! 中々原稿を書き上げるのに時間が掛かってしまい、遅れがちです。何とか以前のペースに戻れる様頑張ります。


 次話は12/29日です。宜しくお願いします!

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