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128)ダイオウヤイト討伐-1(不毛な争い)

 「……平和だな……、魔獣狩りに向かっている事を忘れちまいそうだ……」


 馬車のタズナを握りながらバルドが呟く。


 「ホントだね、バル君。まだ暑いけど……風が強いから気持ち良いよ」


 バルドの呟きに隣に座っているミミリが微笑みながら答える。


 

 そんな二人は仲睦まじい恋人同士だ。そんな二人を後方の荷台から見つめるティアは一言恨み言を漏らす。



 「……あいつ等……見せつけやがって……この馬車には一人モンばっかりだっつうの……。貴女もそう思うでしょ、ライラ?」


 「お、お言葉ですが……ティアお嬢様、私はお嬢様にお仕えする為に……敢えて独り身を……」


 暗い目をして呟いたティアに、ライラはゴニョゴニョ言いながら言い訳をした。


 

 「……へぇ……私の所為で結婚出来ないと? 分りました、お父様に、この件相談してみましょう」


 「い、いえ! そ、そそそそれには及びません!」


 言い訳をしたライラに暗い瞳のまま笑いながらティアが意地悪を言った。対してライラはティアに縋って許しを請う。


 「ほら、私をダシに言い訳するから返答に困るんです。独り身を私の所為にするとは……とんだ裏切り野郎です、反省しなさい!」


 「だから、私はお、お嬢様の為に……」



 おどけた口調でライラを弄るティア。対してライラは不満そうな口調で呟く。



 そんな二人のやり取りを後ろで見ていたクマリが呆れながら呟く。ちなみに彼女はいつもの仮面を被り素顔は見えない。


 「……それ……五十歩百歩だろ、お前達。 全く緊張感の無い連中だね。これから危険な依頼に挑むって言う時に、気を抜き過ぎだ……。聞いてる私まで恥かしくなるよ!」



 クマリの言葉にジト目でティアは答える。


 「……師匠なんて、一世紀以上独り身じゃないんですか? そんな師匠こそ……五十歩百歩……」


 「あ? 何か言ったか、小娘? 裸にひん剥いて吊るすぞ?」


 「ひぃ! じょ、冗談ですよ! 場を和ます気の利いたジョークって奴です、ハハハハ……」



 軽い冗談を言った心算のティアだったが、クマリの逆鱗に触れた様で、ドスの利いた低い声で叱られる。


 慌てたティアは必死で誤魔化すが緊張の余り、ティアの残念特性が働き盛大にお腹の音が鳴り響く。


 “ぐうううううぅ!!”


 そんなティアの様子に脱力したクマリが仕方無さそうに答える。


 「何だよ、締まりの無い腹だね、お前の腹は! ふぅ、まぁいいさ。……所で、私が独り身を貫いている理由は……海より深い訳が……そもそもアレは200年程前……」


 ティアの冗談に大人げも無く反応したクマリは腰に手を当て昔語りを始めた。


 クマリの昔話を聞かされているティアとライラは死んだ目をしながら適当に聞き流す。


 なお、ティアは巨大なパン齧りながら空腹を紛わしていた。



 そんな不毛な空間と化した馬車の荷台とは対照的に、タズナを操るバルドとミミリは肩を寄せ合ったりと甘々な世界を作っていた。



 幸せな二人をまるで見ない様に背を向け、昔語りを始めたクマリに、“何でこんな事になったのか”と疑問を浮かべながら、ティアとライラはクマリの話を聞き流した。


 

 「……そんな訳で……特級冒険者で高尚な私に……吊り合う奴がこの世界には中々居なくてね……。だって私の目に叶うのはマリちゃんとか、レナン君みたいに凄い奴じゃないと……。そんな中、哀れで矮小なお前と出会って……仕方なく……」


 「何ですか、ソレ! 適当に聞き流した心算ですけど、それでも耳に入った事纏めると……師匠の場合、二百年近く! 選り好みした挙句、好き勝手に生きて婚期逃しただけじゃ無いですか! レナンとか追っ掛けみたいな事をしてる最中に、私の事面白いからって……絡んで来て……」



 クマリの一人語りを聞き流していたティアだったが、余りのお粗末な内容に我慢出来ず立ち上がって突っ込んだ。


 ティアが思わず突っ込んだのは、クマリの生き方が婚期を逃す女性の特徴を全て網羅(高飛車、理想高い、趣味に生きる等々)していたからだ。



 無謀とも言えるティアの言葉にクマリは……。



 「……ほほう……師匠であるこの私に……言ってはならぬ暴言の数々……。大した度胸だ。骨は拾ってやる!」


 「ぼ、暴力反対! ギャー!!」


 「ティアお嬢様! 今加勢します! クマリ、其処に直れ!」



 取っ組み合いのケンカを始めたクマリとティアとライラ。


 狭い馬車の荷台は激しく揺れ、ミミリと仲良く御者をしていたバルドは大人げ無く暴れる3人を白い目で見ながら思わず呟く。


 「……全く、良い大人が揃って何やってんだか……、これから大物狩るって時に……ちょっと気抜き過ぎじゃ無いか?」


 「まぁ、まぁバル君……きっと、3人共色んな事が有って寂しかったんだよ……。だからそっと見守っていよう?」


 「何か……可哀そうだな……。うん?、な、何だアレ!?」



 後ろで暴れる3人組を尻目に生暖かい視線を向けて大人の対応をしていた二人だったが、バルドが賑やかで平和なひと時をぶち壊す“場”に出くわし叫び声を上げたのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! この話までは和やかな感じでしたが……次話から荒事が増えて参ります。


次話は12/25(水)に投稿予定です! よろしくお願いします!


追)一部見直しました!

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