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12)腐肉の龍-8(異界の民の力)

 キンググリズリーの遺体を村に持ち帰る為にホルム街道までやって来た死体回収班だったが、ホルム街道中央に倒れている巨大なキンググリズリーの死体を見て、一斉に恐怖の声が聞こえてくる。


 「な、何だ!? こ、この魔獣は!?」

 「ホルム街道の、森奥深くには……こんな魔獣が……」

 「と、とんでもねぇ……!」


 その中でレナンとティアの剣術指南役でも有るライラが声を震わせながらレナンに問う。


 「……こ、ここ此れを……本当に……レナン様が……!?」


 ライラの声にティアが声を大にして反論する。


 「オッホン! ちょーと違うかな! あの魔獣の首は! 私の鮮やかな火炎魔法でモゲ落ちたの! レナンはちょっと押しただけ!」


 「ええー? あの……ティアお嬢様……この首の切断面は鋭利な刃による……」


 ライラが脱力しながらティアに反論しようとした時、レナンが割って入った。


 「……ティアの言う通りだよ、ライラ……この魔獣は皆で倒したんだ」


 レナンはそう言いながらライラに片目を(つむ)って見せた。


 その様子を見たライラは全てを察し、横に居た近衛騎士副隊長ダリルを見遣った。するとダリルはライラの考えを見透かし、レナンの方を見ながら何度も(うなず)いて見せた。


 それを見たライラはこのキンググリズリーをレナン一人で倒した事に感嘆しながら考えを整理した。


 (あの巨大なキンググリズリーを御一人でレナン様は倒されたのか……私が剣術指南をしている時……レナン様は明らかに本気を出していなかった……御爺様からレナン様の出生について聞いていた為に注意をしなかったが……成程……本気など出せる訳が無い。レナン様が本気なら、私等直ぐに叩き潰されるだろう……此れが異界の民の力……)


 ライラがそんな事を考えている内に冒険者のバルドがレナンに(たず)ねる。

 

 「おい、レナン……このデカ物どうやってバラスんだよ? レナンがやるって言うから安心してたけど……改めて見ると、コイツ……重すぎて動かす事も出来ねぇぞ」


 「そ、そうだ! 荷車沢山用意しろっつうからこうして来たが……コイツをこのまま運ぶのは無理だぞ?」


 「何だよ……無駄足かよー」


 バルドの問いに便乗して荷車を曳いてきた村人達が不満を(こぼ)す。対してレナンは笑顔で皆に答えた。


 「大丈夫です! 皆さんにご迷惑を掛けません……危ないから少し下がって下さい!」

 「レナン……アンタ、何する心算よ?」


 横たわるキンググリズリーの前で文句を言っていた村人を(なだ)めていたレナンに対し、ティアが問い掛ける。


 「心配無いよ……初めてやるけどたぶんいけるから……それじゃやるよ……大地に満ちたりし生命の息吹よ、我が身に力と加護を……疾風豪腕!」


 レナンが唱えたのはキンググリズリーを倒した身体の強化する魔法だ。唱えた途端レナンの体は薄く白く輝いた。


 ここまでならさっきと同じだったが、レナンは更に続けた。

 

 「疾風豪腕! 疾風豪腕!!」


 レナンは身体強化の魔法を3重掛けした。


 身体強化の魔法は効果を継続させる必要が有り、エーテル保有量が限られている普通の人間ならあっという間にエーテルが尽きてしまう。

 

 しかし隔絶した存在であるレナンには関係無い。


 普通の人間ならあっという間にエーテルが尽きる筈の身体強化の魔法を3重掛けしたレナンは、その体が(まばゆ)く白く輝いている。


 「……上手くいったみたいだね……それじゃやるか……」


 レナンは眩く白く輝いているその姿に満足し、キンググリズリーの死体の前に立った。


 腰にはセネ村で用意した刃幅の広いブロードソードを差していた。レナンは目の前に横たわるキンググリズリーの巨体を両手で持上げようとした。


 “ズズズ!”


 キンググリズリーの巨大な死体はレナンの腰までは持ち上がったが浮き上がるまではいかなかった。


 「うーん……まだ……足りないか……だったら! 疾風豪腕! 疾風豪腕! ……疾風豪腕!!!」


 “ブワッ!!”


 身体強化の魔法を6重掛けしたレナンは有り得ない腕力を発揮し、総重量4t近く有るキンググリズリーの巨体を放り上げた!


 「よし! 次は切断だ!」


 レナンはその様子見て嬉しそうに叫び、腰のブロードソードを構えた。


 その体はさっきよりも更に(まばゆ)く輝いており、直視出来ない程だ。


 “ダン!!”


 軽く地面を踏んで飛び上がったレナンは自身が投げ上げたキンググリズリーより高く舞い上がった。


 そして手に持ったブロードソードを刹那に幾度も振り抜いた。早過ぎて一閃した様にしか目居ない程だ。


 “ザザザン!!”


 そんな切断音と共に切り裂かれたキンググリズリーの死体は一瞬で複数の肉塊に成り代わり、地面に落下した。


 “ドサ! ドン! ドズン!


 そんな中、レナンは軽やかに地面に着地し笑顔満面で皆に言う。


 「はい、皆さん終わりました! それじゃ荷馬車に積んで下さい!」


 「「「「「…………」」」」」


 レナンは血が付いたブロードソードを頭上で振りながら笑顔で話したが、レナンの規格外な行動にその場に居た全員が固まって言葉を失うのであった……。




 レナンによりぶつ切りにされたキンググリズリーの肉塊を荷車で運ぶ一行達。荷馬車も有り荷馬車にはライラやティア達が乗り、男衆は荷車を曳いた。


 もっともキンググリズリーは重た過ぎる為人間の力では余り運べない。


 仕方が無い為、レナンが身体強化の魔法を重ね掛けしてキンググリズリーの肉塊が山積みされた荷車を曳く事になった。


 馬が馬車で運べる限界が2tと言われるが、レナンが引く荷車もそれ以上の重量は有りそうだった。


 普通なら絶対運べない重量だが身体強化魔法を重ね掛けしているレナンは鼻歌交じりで運んでいる。




 その様子を呆れながら見ていたバルドが荷馬車に乗るティアに聞いた。


 「なぁ、ティア御嬢さんよ……アンタまさかアレ見ても自分の方が強ぇとか言わねェだろうな?」


 「甘いわね、バルド……私は何度だって言うわ! 私の方がレナンより圧倒的に強い! これからレナンがどんな剣技や魔法を身に付けても、未来永劫私には敵わない! それはね……私がレナンの姉だからよ!!」


 やけに自信たっぷりなティアに対しバルドはレナンを指差し諦め顔でティアに言う。


 「何だよ……その謎理屈……だってアレだぜ……? アイツなら真面目な話、龍だって一人で狩れんじゃねぇか?」


 「まぁ、レナンなら出来るかもね? 私はアイツを誰より傍で見て来た。レナンは一度だって本気になった事無いし、さっきのブツ切りも余裕でやっていた。だけどね、私がレナンの姉である以上、レナンは私には絶対に勝てない……そうでしょレナン!?」


 バルドとティアの話をにこやかに聞いていたレナンは荷車を曳きながら迷わず答える。


 「ああ、僕はティアには勝てないよ! ティアの方が女の子だし口ゲンカ強いからね!」

 「相変わらずだな、お前の言う事……もうそれで良いよ……」


 レナンの言葉を聞いて呆れるバルド。そんな話をしながら一行はキンググリズリーの肉塊をセネ村に運んだのであった……



いつも読んで頂き有難う御座います! 本日事情により(出張の為)早めに投稿させて頂きました!

次話投稿は明日(3/29)の早朝です。宜しくお願いします!


 読者の皆様から頂く感想やブクマと評価が更新と継続のモチベーションに繋がりますのでもし読んで面白いと思って頂いたのなら、何卒宜しくお願い申し上げます! 精一杯頑張りますので今後とも宜しくお願いします!


追)サブタイトル見直しました!

追)一部見直しました!

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