125)火花再び
クマリの指示でダイオウヤイトの討伐を行う事になったティア。
その翌日の王都学園の昼休み……。ティアは友人のリナとジョゼに嬉しそうに話す。
「……そんな訳で、今度の休みにダイオウヤイトの討伐に向かう事になったんだ!」
嬉しそうに話すティアに対しリナは心底呆れながら呟いた。
「はぁぁ……、馬鹿ティア……。お前ダイオウヤイトって化け物がどんな奴か知っててクマリさんの話、受けたのか? とんでもない奴だぞ、ソレ」
そう言ってリナはティアにダイオウヤイトの説明を始めた。
やれ、ハサミ状に発達した触肢は岩をも砕くとか、馬より素早く動くとか、特に長く発達した尾の先端から吐き出す酸は浴びると骨まで溶かすとか……。
博識なリナが知っている情報を伝えた。
リナが伝える情報以外にダイオウヤイトは、体長5mの巨体と頑強な装甲を持つ怪物だ。
危険すぎる魔獣の情報を知ったジョゼは既に涙目で震えている。
そんな中、渦中のティアは……。
「リスクは承知! それを跳ね返してこその勝利だわ! ハハハハ!!」
「ア、アホかー!!」
「ティ、ティアちゃん……」
“ぐぎゅううぅぅ!!”
リナの脅しにも拘らず、包帯を巻いた右腕を握り締めて笑う。彼女の気持ちに反応したのか又もティアのお腹が鳴り響く。
そんなティアを見てリナは激怒して叫び、ジョゼは狼狽した。
相変わらずの3人に鈴の様な美しい声が背後から響く。
「……相変わらずね……貴女達は……」
3人が振り返ると其処には……呆れた顔を浮かべるソーニャと、彼女に付き添うレナンが立っていた。
「レナン! ……それと……ソーニャ……」
「レナンお兄様に比べ……私の名を呼ぶ時は何で嫌そうなのかしら?」
「あら? そう聞こえた? 意外に勘が良いのね?」
嫌そうにソーニャの名を呼んだティアに対しソーニャは嫌味を言う。
ティアはそんなソーニャに噛みつく。
二人のやり取りを苦笑しながら見ていたレナンはリナとジョゼに挨拶した後、ティアに話し掛ける。
「アハハ……ティア、もう調子は良くなったみたいだね」
「う、うん……もう大丈夫……」
ティアを案ずるレナンに、喜びを隠し切れ無いティアは素直になれず、曖昧な返事を返す。
対するレナンは気になっていた事を問い掛ける。
「所で……今、君達が話していたダイオウヤイトの討伐……。何だったら僕も手伝おうか? その魔獣……中規模災厄指定魔獣だった筈……。なら僕が……」
「それには及びませんわ、レナンお兄様。今やレナンお兄様は国防の要……。先月の巨獣討伐で騎士達にも損害が多く出てしまいました。そんな中、例え災厄指定魔獣とは言え……お兄様に、おいそれと動いて頂く訳に参りませんわ」
レナンの言葉を聞いたソーニャがきっちりと釘を刺す。
「だけど……それではティアが……」
「大丈夫よ、レナン! この討伐は……私がやらなくちゃダメなの……。でも心配してくれて有難う! だけど問題無いわ! 今の私は、其処の意地悪な妹騎士より強いから!」
ティアを案ずるレナンに、ティアは自信を持って答える。
「……へぇ……その意地悪な騎士って、まさか私じゃ無いわよね?」
「……さぁ、誰かしらね?」
ティアの皮肉に対し、ソーニャは顏を引きつらせて反論した。
対するティアも不敵な笑みを浮かべて言い返した。
火花を飛び散らす二人だったが、ソーニャが溜息を付いて話す。
「ふぅ……、無駄な時間は止めにしましょう。レナンお兄様、弱っちいティアが気掛かりでしょうが……心配は無用ですわ。かの討伐任務には頼りになる騎士団が支援に回ります。5等級の最弱ティアが出る幕も無く……討伐は完了するでしょう」
「な、何だと! もういっぺん言ってみろ! 腹黒ソーニャめ!」
「……はぁ? 何ですって?」
ティアを案ずるレナンを余所に又しても言い争いを始める、ソーニャとティアの二人。
そんな彼女達を苦笑しながら宥めるレナンだった……。
いつも読んで頂き有難う御座います。もう直ぐ出張が終わり元に戻れると思います。長い間ご迷惑をお掛けしました!
次話は12/15(日)投稿予定です! よろしくお願いします!