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123)次なる道

 ティアとソーニャの決闘から3日が過ぎた週末の午後、ティアはクマリが所有する別邸に居た。


 「行きます、師匠!」

 「オウ、馬鹿弟子! さっさと来な!」


 ティアは掛け声と共に駆け出す。対してクマリは迫るティアに対しハッパを掛けて構えた。

 

 “ガン! ガツ! ガギン!”


 ティアは迷い無くクマリに木剣を振るうが、クマリは手にした鉤爪で難なく彼女の剣をさばく。


 「どうした! この程度か!? もっと本気を出してみろ!」

 「は、はい! ハァァ!!」


 “キイイン!”


 クマリに煽られたティアは右手の秘石に意識を傾け、その力を引き出す。


 すると秘石は甲高い音を立ててティアの意思に沿って強力な力を発動する。


 秘石によってティアは身体能力が急激に高まり、剣戟の速度と力が急激に増した。


 “ガギン! ガシン! ガァン!”


 「フン! 馬鹿弟子の癖に! 手数が増したね! ならコイツは、どうかな!?」


 クマリはそう叫んだ後、後ろに飛びティアに向け懐に潜ませていた小さな木剣を4本、ティアに向かい投擲する。


 “ヒュヒュン!”


 投げられた木剣に対し、ティアは秘石の力を借りて後ろに大きく跳躍して躱した。


 「飛んで躱したか、ならコレはどうだ? “大地渡る風よ 我が前に集いて敵を引き裂く刃と化せ 風破斬!”」


 「う、うわ拙い! ええと、 い、威力を弱めて……“原初の炎よ 集いて 我が敵を打ち砕け! 火砕!”」


 クマリは攻撃を躱したティアに対し、嬉しそうな表情を浮かべて中級風魔法を放つ。


 対してティアはクマリの魔法を相殺すべく、自身も魔法を放った。二人の放った魔法はぶつかり合い……爆発を起こした。


 “ドガアン!”


 ティアの魔法は下級だったが強力過ぎた為、込めるエーテルを抑えて威力を弱めた。


 それでも彼女の放った魔法は、強力でクマリの中級風魔法を消し飛ばした上に、大音響を立て爆発した。


 「や、やった……。うぐ……力が抜ける……」


 “ぐぎゅるるるうう!“


 魔法を放ったティアは力を使い果たしたのかふら付きながら座り込んだ。同時に彼女の細い体から似合わない大きな腹鳴音が鳴り響いた。


 「フン……ちょっとはマシな戦いが出来る様になったが……戦う時間としてはあんまりだね……」


 「は、はい……スイマセ……」


 “ぐるるるるぅ!”


 説教するクマリに対し、ティアは素直に答えていたが、話している途中にまたも盛大に彼女のおなかは鳴り響く。


 「「…………」」


 何とも言えない残念感が支配して二人の間に沈黙が流れたが……。



 “ぺシン!”


 「あいた!」


 クマリがティアの頭を持っていた木剣の腹で軽く叩いた。


 「全く……空気と言うモノが読めないのかね、お前の体は……」

 

 「ゴ、ゴメンなさい……」


 呆れた顔で話すクマリにティアは小さくなって呟く。そんなティアに対しクマリは両手を広げて見せて話を変えた。



 「まぁ、いいさそれにしても……お前と妹ちゃんの決闘……残念なお前にしては随分食い下がったじゃないか?」


 「……はい、ソーニャには絶対に負けたくありませんでしたから……。って師匠、私とソーニャの戦い、まさか見てたんですか?」


 二人の決闘をまるで見てきたように話すクマリに、ティアは疑問に思って聞き返す。


 「まぁな……お前が妹ちゃんとやりあう事は、お前自身から聞いていたからな……校舎の屋根からじっくり見させて貰ったさ!」


 「気に掛けて貰って、有難うございます!」


 戦いを見ていたと言うクマリにティアは嬉しくなって礼を言った。そんなティアに対しクマリは……。



 「だがな……確かにお前は強くなって現役の白騎士である妹ちゃんとマトモにやりあえるようになった……。だが……やはりレナン君は別次元の存在だな……。お前も分かっただろう? あの戦いの最中、一瞬でお前と妹ちゃんの間に入り……お前達の魔法を弾き飛ばした……。

 ソーニャちゃんの魔法はともかく……お前の魔法は規格外だった筈だ。それを事も無げに……。その後、妹ちゃんを一撃で気絶させたな。分かるか、ティア……レナン君にとってお前達の決闘なんか、取るに足らない児戯に等しいだろう……」


 「……はい、離れてから……余計に良く感じます……レナンの強さを……今の私なんかじゃ、全然歯が立たない」



 真剣な口調で語るクマリに対し、ティアも冷静に返す。



 だがその表情はどこか嬉しそうで誇らし気だ。


 「ククク……愛しい男の凄さを思い知って惚れ直したって感じか?」


 「!? そ、そそそそんな事は!?」


 冷やかすクマリに対し、ティアは大慌てで否定する。



 「惚気はその辺にしろ。お前が目指すべき道は遥かに遠い……。彼の背中を見て思い知った筈。お前は立ち止まってる暇なんて無い。本気でレナン君を取り戻したいのならな……」


 「は、はい!!」


 慌てるティアに対し、クマリは釘を刺した。対してティアは元気に答える。


 「……良い返事だ。一応自覚は有るようだな……。そんなお前に次なる道を指し示すぞ」


 「……道ですか?」


 真剣な口調で話すクマリにティアは問い返す。


 「そうだ……お前には、有る依頼を受けて貰う。飛び切りリスキーな奴をな……」


 聞き直したティアに対し、クマリはニヤリと笑って不穏な言葉を呟くのであった……。


いつも読んで頂き有難うございます! 


追)段落見直しました。

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