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121)残念令嬢VS悪徳令嬢-6

 「氷刃斬!!」「火砕!!」


 ソーニャとティア、互いが放った強力な魔法。


 ティアにはソーニャの大きな氷の刃が、ソーニャにはティアの恐るべき火球が迫る。


 二人には護符による防御が掛けられているとは言え、魔法が命中すれば唯では済まないだろう。



 ソーニャとティアは激しい戦いの結果、二人の間には距離が有ったが彼女達が放った魔法は凄まじい速さで放たれた。


 その状況に二人の戦いを見入っていたクラスメイト達や、審判役のイアンも動けずにいた。


 

 ティアの控えとして付き添っていたリナやジョゼも例外では無かったが……彼だけは違った。


 誰もがティアとソーニャに迫る危機に呆然としていた時、放たれた魔法が交差する場に白い影が突如現れて、その場に立った――。


 

 その白い影は、レナンだった。



 その事に驚き魔法を放ったティアとソーニャが悲壮な顔を浮かべて叫ぶ。



 「レナン!!」

 「レナンお兄様!!」


 二人は同時に叫ぶが、その声も空しく訓練場の中央に立つレナンに魔法が炸裂した。


 “ドガアアアン!!”


 そんな大音響と共に爆風が訓練場を襲う。見学していたクラスメイト達やリナ達は爆風で座り込んでしまう。


 戦い合っていたティアとソーニャも同じくだった。



 座り込んだ皆は大音響がした方を思わず見上げると……天高い頭上に巨大な火球が形成されていた。


 それはティアの極大魔法が炸裂した結果だった。



 一瞬呆気に取られた皆が次いで地上を見ると、訓練場の真ん中にレナンが突っ立ていた。


 彼は魔法が交差するあの場に居たにも関わらず、全くの無傷で平然と静かに一人立つ。


 そんな彼の足元にはソーニャが放った氷の刃が粉々にされて転がっている。



 気だるげに立つ彼の右手は異形へと形を変え、右手甲に備わった菱形の宝石状の器官が甲高い音を立てて光を放つ。


 “キイイン!”


 レナンはティアとソーニャの魔法が交差し炸裂寸前だったあの時――。


 レナンは凄まじい速度で、魔法が交差する場に立ち入った。


 そして、先ずはソーニャが放った氷の刃を右手の刃で切り崩した。


 その後、刹那にティアが放った極大魔法の火球を異形の右手で叩き上げ……空中で炸裂させたという訳だ。



 全てが一瞬で終わった状況にクラスメイト達やイアンが唖然とする中……訓練場に一人立つレナンに向かい声を掛ける者が居た。


 「……レ、レナン……だ、大丈……う、うう……」


 訓練場の真ん中に立つレナンに声を掛けたのはティアだ。


 彼女は自分が放った極大魔法の前にレナンが立ち塞がったのを見て生きた心地がしなかったが、彼が無事だった事を見て安堵した様だ。


 その為か秘石の力を使い過ぎていたティアは、気が抜けて倒れ込む様に両手両膝を付いて四つん這いになった。


 「ティア!!」


 そんなティアの様子を見たレナンが大慌てで彼女の下に駆け寄る。その様子を快く思わない者が唯一人いた。……ソーニャだ。



 「……レナンお兄様……はぁ、はぁ……そ、其処をどいて下さい……ぜぇ、ぜぇ……私達の戦いは……終わっていません」


 「いいや、ソーニャ……模擬戦は終了だ……。ティアはもう戦えない……。君だって立っているのがやっとじゃないか……」


 疲れ切った声を放ちティアに迫ろうとするソーニャに対し、レナンは静かに諭した。


 何故なら戦いを続けると言ったソーニャの足はブルブルと震え、無理をしているのが丸見えだったからだ。



 しかし、レナンに諭されたソーニャは……。



 「わ、私は! まだ! 戦えます! はぁ、はぁ……ティア フォン アルテリア! 私は貴女にだけは! 負けられない! “源なる水よ 礫となり……”」


 ティアとの戦いに固執したソーニャはあくまで決闘を続行させようと、蹲るティアとその横に居るレナンに向け下級魔法を放とうと詠唱を始める。


 普段の冷静なソーニャからは想像も付かない程の短慮な行動だった。



 水魔法が放たれようとしているのにも関わらず、レナンは落ち着いてソーニャに向かい静かに呟いた……。


 「……ソーニャ……今の君は冷静さを欠いている……少し落ち着いた方が良いよ……」


 「う、うるさいですわ! レナンお兄様はお姉様のモノ! ぜい、ぜい……そ、それなのに、ティアの事ばかり! この魔法で少し頭を冷やすべきですわ! “……我が敵を打ち倒せ! 水撃衝!”」


 ソーニャはヒステリックに叫んでレナンとティアに向けて水魔法を放った。しかしレナンは……。


 “ヒュン!”


 “ズパン!”


 ソーニャが放った水魔法の礫に立ち塞がり、瞬く間に発露させた異形の右手剣で一瞬でその礫を切り捨てて呟く。



 「……済まない、ソーニャ……生真面目な君を心配させて……追い詰めた様だ」


 そう呟いた後、レナンは一瞬でソーニャの背後に迫り、彼女の首筋を軽く打った。


 “トン!”


 「うっ……」



 レナンに首筋を打たれたソーニャは静かに崩れ落ちレナンが優しく抱きかかえた。


 こうしてティアとソーニャの決闘は幕を閉じたのであった。


いつも読んで頂き有難うございます。


 追)一部見直しました!

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