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120)残念令嬢VS悪徳令嬢-5

 ソーニャの“巻き上げ”により木剣を飛ばされ無くしたティア。



 対するソーニャは身体強化魔法で強化された一撃をティアに放つ為に、木剣を右下段に構える。右下から上段にティアの胴部を切り上げ心算だろう。


 対して絶体絶命のピンチのティアは――。



 「這い蹲って終わるのはアンタの方だ! 秘石よ、私に力を!」


 “キイイイイン!”



 ティアの想いに応えたのか秘石はより甲高い音を立てる。



 するとティアの右手に赤い光が発せられ、炎の様な揺らめきを持ち纏わり付いた。


 彼女の右腕には木剣はもう無い。しかしティアは拳を握り素手で立ち向かう心算だ。


 彼女は右拳を大きく振り被って、真っ直ぐと突き出す。


 “ゴオウ!”


 右拳は赤い光が揺らめきながら放たれ、さながら燃えている様だ。



 ティアが放ったのは唯の右正拳突きだったが、秘石がもたらす力の為か恐るべき速度でソーニャに迫った。


 対するソーニャは赤い光を纏いながら迫り来るティアの拳に焦った。


 「くっ!?」


 ソーニャは焦りながら切り上げ様としていた木剣を何とかティアの拳に合わせる。


 “ガツン!!”


 鈍い音がしてティアの右拳とソーニャの木剣が激しくぶつかる。


 すると……。


 “バギン!!“



 大きな音を立ててソーニャの木剣が折れてしまった。


 そしてソーニャも木剣が折られた衝撃をその身に受けて、後方に飛ばされた。


 

 ”ドザァ! ゴロゴロ……“


 遠く転がされたソーニャは地面に転がり横たわった。刃の根元より折れた木剣は空を舞い、地面に突き刺さる。


 ”ズガ!“



 「「「「…………」」」」


 派手に転がされたソーニャと遠くに突き刺さった木剣の刃……。



 その様子を見たクラスメイト達は押し黙っていたが……。




 「「「うおおお!!」」」

 「「「キャアア!!」」」



 突如割れる様な歓声が鳴り響いた。その歓声に反するようレナンが叫ぶ。



 「ソーニャ! 大丈夫か!?」


 そんな中、審判のイアン教官は試合の続行が可能か確認しようと横たわるソーニャの下に向かった。


 対してティアは右腕を赤く光らせながら、身を低くして立っている。


 消耗が激しいのか彼女は、カバンに入っているマンジュを齧り、その呼吸は荒い。ティアにも限界が近い様だ。


 

 「ソーニャ、試合を中止するか?」


 イアンの声掛けにも横たわるソーニャは、目を覚ましたのか起き上がろうとする。


 しかしその動きは鈍く、明らかに無理をしている。流石に試合中止と思われた中、レナンの声が響く。


 「ソーニャ! 無理をするな!」



 その声を聴いたソーニャはダメージを受けて重い体を引きずりながら、何とか立ち上がって呟く。


 「……さ、流石に……首輪を通じて見ている……お姉様に……み、みっとも無い所は……見せれませんわ……」


 

 ソーニャはレナンの首輪を通じて見ているマリアベルだけには、自分が這い蹲っている姿を見せたくない様だ。


 彼女はダメージを受けて重い体を無理やり立たせた。しかしその息は荒い。



 「「「「「うわあああぁ!!」」」」」


 ソーニャが立ち上がった姿を見て試合を見学しているクラスメイト達は大盛り上がりだ。



 “ぐぎゅうう!”


 「……はぁ、はぁ……モグモグ……んぐ。アンタ、まだやる心算なの?」


 大きな腹鳴音を響かせたティアは赤い顔を浮かべてマンジュを齧りながら、立ち上がったソーニャに問う。


 戦いが長く続いた為か、補給を続けているにも拘らずティアの息も荒い。



 対してソーニャも……。



 「ぜい、ぜい……私が貴女に負ければ……はぁ、はぁ……お、お姉様にご迷惑を……だから絶対! 貴女には負けない! “源なる水よ 集いて全てを切り裂く白銀の刃となれ!”」


 勝ちに拘ったソーニャは興奮した為か、ルールを無視して水属性の中級魔法を放とうとする。


 対してティアは……。



 「……上等じゃない、ソーニャ……はぁ、はぁ……私だって! アンタには負けないわ! “原初の炎よ 集いて 我が敵を打ち砕け!”」


 ソーニャが中級魔法を放とうとする様子を見ティアも同じく魔法で応戦しようとする。


 しかし、ティアの魔法は下級とはいえ秘石の力で強化され上級魔法を超える威力となる。


 ソーニャとティアが放とうとする威力の高い魔法。



 二人に高まる強いエーテルを感じてか、審判役のイアン教師が二人に向け叫ぶ。


 「ダメだ!! 二人とも、その魔法は強力過ぎる!!」



 しかしイアン教師の叫びも空しく、二人は合図とばかり魔法を同時に発動してしまう。


 「氷刃斬!!」「火砕!!」


 

 放ったそれは、互いが殺傷するレベルの強力な威力の魔法だった。ソーニャが放った氷魔法は岩すら切り崩す強力な氷の刃だ。


 対してティアの放った火球は詠唱こそ下級だったが、彼女の右手からと飛び出した巨大な火の玉はソーニャどころか校舎すら吹き飛ばす程の威力を秘めていた。


 二人が放った必殺の魔法を見て見ていたクラスメイト達にも動揺が走り、リナやジョゼも叫ぶ。


 「ティア! 止めろ!」「ティアちゃん!」


 彼女達の叫びも空しく、強力な氷の刃と、恐るべき火球はティアとソーニャに迫るのだった。


いつも読んで頂き有難うございます!



 追)一部見直しました!

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