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118)残念令嬢VS悪徳令嬢-3

 模擬戦と言う建前の決闘中のティアとソーニャ。



 時折秘石の力を使い人外の攻守を見せるティアに対し、ソーニャは冷静に対処する。


 しかし、ティアの規格外の力により、徐々にソーニャは押され始めた。


  “ガギン!”


 ティアの木剣を何とか受け止めたソーニャ。



 「……貴女が得た、この力……大した膂力ですね、ティア……。貴女がレナンお兄様を取り戻したいと言う執念……感服しますわ……」


 「フフン……驚いた、ソーニャ? 今の、私は! 以前の私じゃ無い! 生まれ変わったのよ!」



 “キイイン!”


 “ガギン!”



 素直に称賛するソーニャに対し、ティアは答えながら木剣を水平に薙ぐ。


 秘石の力で強化されたティアの斬撃は強大で、両手で構えた木剣にて受けたソーニャは、反動で後方に動かされる。


 “ズザァ!”



 「ぐぅ! た、確かに……以前の貴女とは違う様です……。しかし……全ては無駄と言うモノです……」


 「は? 自分が負けそうになったからって負け惜しみ?」


 不敵なソーニャの言葉に、ティアは言い返す。



 「いいえ……貴女のレナンお兄様を取り戻したいと言う行動は……申し訳有りませんが徒労です。何故ならお姉さまは……本気でお兄様を愛しておられるからです……そして……他ならぬレナンお兄様も少しずつお姉さまを愛し始めている……」


 「!? な、何を馬鹿な事を! ふ、ふざけないで!」



 心底申し訳無さそうな表情で語るソーニャに、ティアは大声で叫んで否定する。


 但し否定しながら彼女は、秘石を取り込んだ日に見た悪夢を思い出し、ソーニャの言葉に恐怖した。



 ソーニャは動揺を隠せないティアを見ながら静かに続ける。



 「ふざけてはいません……ティア。あれは……巨獣を討伐した日の事……。レナンお兄様を生涯に渡り愛すると覚悟を決められたマリアベルお姉様は……、大勢の騎士や冒険者が居る前で……他ならぬレナンお兄様を抱擁し、その上でお兄様の唇を奪いました。

 ……そしてレナンお兄様は……その行為を拒絶せず、その身で持ってお姉様の愛を受け取ったのです……」


 「!?……う、うそ……そんなの……嘘よ……」


  ソーニャの言葉を受けたティアは驚愕し動揺して呟いた。その様子を見たソーニャは……。


 「……嘘では有りません……。マリアベルお姉さまとレナンお兄さま……二人の心は緩やかに、確実に寄り添おうとしています……。だから、ティア……貴女にはお兄様の事、忘れて貰います!」



 ソーニャはそう叫んで、ティアに駆け寄り彼女に迫る。対してティアはレナンの事を聞かされて動揺し、完全に隙だらけだった。


 動揺し木剣を下げたティアに迫ったソーニャは、彼女の木剣を水平に薙いで払った。



 “ガギン!”


 次いでそのままの勢いでガラ空きとなった彼女の胴に、鋭い回し蹴りを放った。


 “ドオウ!”


 「あう!」


 ソーニャの回し蹴りを喰らったティアは不意を突かれた事もあり派手に転ぶ。


 

 ソーニャはその隙を見逃さなかった。



 「……悪いわね、ティア。“源なる水よ 礫となり我が敵を打ち倒せ! 水撃衝!”」


 ソーニャは転んだティアに対し、水属性の下級魔法を唱えた。


 ソーニャがティアに対し、敢えてレナンとマリアベルの口付けについて話したのは、ティアの動揺を誘い戦いを有利に運ぶ為だった。



 ソーニャが放った水の下級魔法は、大気中の水を集め小さな礫となり、猛スピードで飛び放たれた。


 放たれた水の礫は今だ転がされて体勢が整っていない。丁度起き上がろうと膝を立てたティアに対し、容赦無くソーニャの水魔法が迫り……。



 “ズドン!”


 「あぐぅ!」


 ソーニャの策にまんまと嵌ったティアに、魔法の水の礫は容赦なく襲った。ティアはその衝撃で悲鳴を上げ、再度床に転がされる。


 先程、不意打ちでソーニャに回し蹴りを喰らった時と異なり、ティアは今回の水魔法をまともに喰らった。



 いくら衝撃を緩和する防御用の護符を身に着けていても、この攻撃は強力で、魔法を喰らったティアは転がったまま立ち上がれない。


 「ティア!」

 

 「しっかりしろ、この馬鹿!」


 「ティアちゃん!」



 攻撃を受けて立ち上がれないティアに対しレナンやリナ達は、大声で呼びかける。


 対するティアは応答が無く審判のイアン教師が彼女に近づき、様子を伺う。


 彼が戦えないと判断すれば模擬戦はソーニャの勝ちとなる。





 誰もがティアが負けるか、と思われる中……肝心のティアは……。




 (……う、動けない……痛い……私……何で、こんな苦しい事を……このまま……寝ていたいな……)


 ティアは朦朧とした意識の中、横たわりながら、薄っすらと目を開けると……



 遠くから心配そうに……レナンが見つめていた。



 その姿を見たティアは――。



 「……アイツが見てるのに……寝て……られるか!!」


 心配そうなレナンを見たティアは、そう叫んで手を付きながら立ち上がる。



 「ティア……試合は続行出来るか?」「は、はい! 戦えます!」


 “キイイン!”


 イアンに向け、そう叫んだティアの強い気持ちを表すように右手の秘石が高い音を響かせるのであった。


いつも読んで頂き有難う御座います!


追)語尾および段落を見直しました。

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