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110)真の策

 レナンを取り戻す為に、武術大会にマリアベルを倒し武術大会に優勝するという作戦……。



 その大会にレナンが参加すれば何をしても勝てないと言うクマリの言葉に激高するバルドだったが……、対するクマリは冷静に返答する。



 「……君だって知っている筈だ……、レナン君の強さを……。彼の強さは大災害級さ……。

火山の噴火や、大地震と同じ……亜人であろうが何であろうが……相手出来る存在じゃ無い……。そんな彼に秘石を付けた程度で勝てる? ははは、馬鹿言っちゃイケないよ」


 「じゃあ、何で……あんな作戦を持ち掛けたんだ! 勝てないと分ってんのに! お前もアイツを騙すのか!?」



 自嘲気味に笑いながら答えるクマリに対しバルドは本気で怒り詰め寄る。


 彼からすればフェルディやソーニャに騙され、酷い目に遭ったティアがこれ以上傷付く事は許せなかったのだ。



 そんなバルドの様子にクマリは感心した様に、彼の肩をポンポンと叩いて話し出す。



 「アンタ……良い奴だな……。ミミリって子も幸せだが、アンタみたいな友達を持ってティアも恵まれているな……」


 「……別に、ティアの為って訳じゃ無い。レナンに俺は借りが有る……返せない様な程の借りを幾つもな……。だからこそ、アイツが居ないこの場で……アイツが大切にしてたティアを守ってやりたいんだ!」



 そう言い切ったバルドはクマリの手を振り払い、剣を掴んでクマリに凄む。



 「だから……アンタの返答次第じゃ、幾らティアの師匠だろうが何だろうが……唯では済まさない……」



 剣を持って迫るバルドに対し、クマリはこうした修羅場は慣れているのか、冷静に返す。



 「落ち着きなよ、少年! 私はティアを騙しちゃいないさ! レナン君にティアが勝てなくても……アイツの望みは、ティアだからこそ……叶う!」


 「……どういう……事だ?」


 「……国王がマリちゃんとレナン君を結婚さす事は……絶対に覆らない。マリちゃんが強いってだけじゃ無いのさ。国王は、王家の総力を掛けてでも……何が何でも2人を結婚させる筈だ……。

 事情を知らないと君も納得しないだろう。一応君にもマリちゃんの……真実を伝えておくよ……」



 クマリは生半可な説明ではバルドを納得させれないと判断し、マリアベルが国王の姪である事と……レナンとマリアベルの結婚を厳命している事情を説明した。



 「……何てこった……! あ、相手は姫殿下かよ……。強さ云々の話じゃねぇ……。こんなの、ティアに最初から勝ち目なんて無いじゃねぇか……」


 クマリの言葉を聞いたバルドは真実を知って脱力しながら呟く。


 

 対してクマリはそんな彼に向かい力強く話す。



 「同じ話をティアにも最初に伝えた……。でも、アイツは諦めなかった。だったら、師匠として出来るだけの事をしてやるだけさ。

 だからこそ、秘石を手にしたアイツの為に策を練ったんだ。諦めないアイツならマリちゃんにも喰い付くだろう」


 「しかし、アイツが幾ら頑張った所で……」



 自信満々に話すクマリに対しバルドは怒りが収まり、逆にティアのやろうとしている事が如何に厳しいが理解し肩を落とす。


 「確かに難しい……。だが! この作戦、他ならぬティアだから、上手く行くのさ!」


 「何言ってんだよ……相手は王族だぞ? 伯爵家のティアが逆らえる訳ねぇじゃんか」



 「そう……それだよ! 王家の策に嵌って婚約者だったレナン君を取られた貧乏伯爵家のアホで残念な令嬢……。

 国民はティアがレナン君を捨てた、と思ってるが……実は“騙された”と知れば見方も変わるだろう。そんなティアが足掻き足掻いて、元婚約者の白き勇者レナンを取り戻す為に、命を賭ける! 

 その姿は賛否両論だろうが、間違いなく盛り上る」


 「…………」


 熱く語るクマリの言葉にバルドはじっと黙って聞いている。



 もう彼の中ではクマリを疑う気持ちは無い様だ。クマリは説明を続ける。


 「そのティアが武術大会でマリちゃんを倒したとなれば! 国王としてはティアを絶対無下に出来ない。例え、その後レナン君にティアが一瞬で負けたとしてもね! 

 逆に……かつて愛し合った二人が戦った、なんて姿に国民は大いに盛り上がるだろうよ! 

 それに、そんな命を下した国王に対する批判が生ずる筈さ……。だからこそ国王としても、国民の感情を無視は出来ない。必ずティアの要望を聞くだろう。

 そのティアが国王の前で“レナンを返して下さい!”って涙ながらに言えば……、一体どうなると思う?」



 自分の作戦を自信満々で伝えたクマリに対し、バルドは……。



 「ハハハ! クマリさん、アンタ凄ぇや! 恐れ入ったぜ! アンタを疑って済まなかった。俺も全面的に協力させて貰うよ!」


 「ああ、当てにしてるよ! 早速、今度の休みから依頼を受けて貰う!」



 クマリの考えを聞いたバルドはすっかりと安心仕切って、手を振りながら木漏れ日亭に戻って行った。


 彼はクマリから聞いた話をミミリやライラにも伝えるだろう。



 対して一人残ったクマリは……誰も居なくなった夜道で一人呟く。



 「……“どうなると思う?”って……フフフ……この作戦、上手く行って……マリちゃんが正室で、ティアは側室って所が精一杯だろうね……。

 でも……あの残念令嬢様なら、何やらかすか分らんからな……結果は分らんか……ハハハ」


 クマリは一人笑いながら呟いた後、風の様に走り去った。


 今日この日より、ティアの挑戦が始まったのであった……。


いつも読んで頂き有難う御座います! 

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