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109)宴の後

 木漏れ日亭に集まった皆はクマリからティアに関する今後の方針について伝えられた。



 一つ目は8か月後に行われる“武術大会”に参加し決勝でマリアベルを倒す事。


 二つ目は、武術大会の参加条件であるギルド推薦を得る事だった。



 クマリの方針を聞いたティアは、自分の為に此処まで考えてくれた彼女に深く感謝する。


 「……し、師匠……私の為に……こんなにも考えてくれて……ぐすっ……ほ、本当に……有難う、御座います!」


 「あー、礼には及ばないよ……、元々マリちゃんを倒して国王に願いを……って言う策は、元々私がする心算だったんだ。秘石を取り込んだ上でね……。

 でも、これは……お前がやるべき事だと思ったんだ。秘石の事も含めてね……。

 もう一つの策は、武術大会に参加する為に必要って事も有るけど……秘石の力を正しく使う為……お前には必要な事だと思う。私もお前に秘石を渡した責任も有るから……お前に付き合うさ」



 「あ、有難う御座います! これからも宜しくお願いします!」



 クマリの言葉を受けたティアは感激し、彼女に深く礼を言った。そんな二人のやり取りを聞いていた木漏れ日亭の女将が、クマリに尋ねた。


 「……クマリちゃん、アンタがこのティアちゃんの為にやろうとしてる事は分った……。でも、私やシアは此処でアンタらの飯作る位しか出来ないよ? それで良いかい?」


 「ああ、それで良いよ……女将さん達には大量に喰うティアの食事を何とかして貰いたい。その為の金と食材は……ティアと私等が報酬で賄うよ! 

 それと女将には……戦闘中とかでもティアが戦いながら食える様な食料を是非考えて貰いたいんだ。腹が減って動けない、って事は少ない方が良いからね」


 「……うーん……食事はともかく……戦いながらねぇ……難しい注文だけど……何とか考えてみるよ……」


 クマリの言葉に女将は首を傾げながら呟いた。


 女将の前向きな言葉を受けてクマリはティアに話し掛ける。


 「おい、ティア……皆。お前に為に頑張るって言ってんだ。一言何か言いな!」


 「は、はい師匠!、み、皆……! ライラにリナ、ジョゼ……ミミリにバルド、それから女将さんとシアちゃんまで……、私の為に協力してくれて……本当に有難……」


 “ぐぎゅるるるううう!”


 ティアが話している最中に、もはや当然の様に彼女のお腹が鳴り響いた。


 

 ティアは恥ずかしそうにパンを齧りながら話を続ける。


 「……モグモグ……ゴクン……はぁ、落ち着いた……。こんなになってしまった私だけど……自分なりに精一杯頑張って……必ず、レナンを取り戻します! 皆、宜しくお願いします!」


 「ティア様! 私も微力ながらお手伝いします!」


 「……まぁ、面倒くさいけど……手伝う位なら良いよ」

 「私も頑張ります!」

 「わ、私もです!」

 「……ヤレヤレだよ」



 ティアの言葉にライラ達、ティアの仲間が声を挙げた。その様子にクマリが大声を出す。


 「皆、感謝するよ! 今日は前祝だ! 私が奢るから好きなだけ喰って飲んでくれ! 女将、後頼むよ!」


 「あいよ! シア……手伝っておくれ!」

 「はーい、母さん!」



 ――こうしてクマリの声を木漏れ日亭ではティアの活動を応援する宴会が始まった。



 酒が飲めるライラとクマリは大酒を飲み、ティアは食材が尽きるまで料理を注文し、食べ空くすと電池が切れた様にテーブルに突っ伏して寝た。


 そんなティアを横目にバルドやリナが騒いで、それをミミリやジョゼが窘めていた。



 一通り楽しんだ後、明日の授業が有るリナとジョゼはティアを無理やり起こした後、彼女を引き摺る様にして寮に戻って行った。


 残された皆は遅くまで飲み食いしていたが、ライラが飲み潰れた時点で宴会は終了になり、クマリは元男爵別邸に帰る事になった。


 飲み潰れたライラはシアとミミリが、介抱しながら部屋に連れて行った。



 「女将ー! 今日は御馳走様! これからも頼むよ!」

 「あいよー! お休みー!」



 クマリは一人木漏れ日亭を後にするが、……出た直ぐ角で呼び止められた。



 「……クマリさんよ、ちょっアンタに聞きたい事が有るんだが……?」


 「おお、何だいバルド少年?」



 帰ろうとしていたクマリを呼び止めたのはミミリの恋人でレナンの親友バルドだった。



 「アンタが言ってた作戦で……武術大会で優勝って案だけど……最終戦で黒騎士に勝つってのは分ったよ……。

 それに国王に頼み込むってのも……策が無い中では良いだろう。……でも、この策に……肝心な奴の名前が無かったよな……?」


 「……誰の事だい? ソーニャちゃんかな?」



 バルドの真剣な問いに、クマリは惚けて返答するが、彼は合わせず静かに話す。



 「……分ってんだろ、アンタ? ……そう……レナンだよ。

 黒騎士なんかより全然強ぇ、アイツ……。そのレナンが黒騎士の後に出場する事は無いのかよ?  アンタ……その事、分らない筈が無いだろう?」


 「ああ、その通りだよ。分ってて言わなかった。そして君の予想通り……。

 国王だって馬鹿じゃない。“何でも叶える”なんて言ってんのは……唯の客寄せさ。もしマリちゃんが負けた後、確実に国王は……レナン君に出場する様に命令するだろうね……。そして、彼は其れを断れない」


 「それじゃ、何で言わなかったんだよ!」


 クマリの答えにバルドは本気で怒る。対してクマリは落ち着いて答えた。



 「……そんなの決まってる。マリちゃんをどれ程圧倒したとしても……、そして秘石が有ろうが無かろうが……レナン君だけには何をしても……絶対に勝てないからさ……」


 激高したバルドの叫びに、クマリは静かに言い切ったのであった……。


 いつも読んで頂き有難う御座います! 



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