108)武術大会
武術大会でマリアベルを倒して優勝し、国王に願いを叶えさせる――。
それでレナンを取り戻す作戦だったが、クマリは“ティアはマリアベルに勝てない”と言い放った……。
その言葉にリナがクマリに噛み付いた。
「ちょっと待ってよ! 言い出したアンタがそう認めちゃったら……、この話、終わっちゃうぞ!?」
怒るリナにクマリは両手を広げて呆れた様に話す。
「……だってさー、このポンコツ娘だよ? 秘石を取り込んで強くなったけど……、それでも私に勝てない位じゃーなー。私だって、本気になったマリちゃんには敵わないし。そんな状況で、英雄騎士のマリちゃんには実戦じゃ勝てない」
「師匠!?」
「おい、貴様! 無責任な事を言うな!」
クマリの言葉に、ティアは憤慨した様に叫び、その様子を見たライラがクマリに詰め寄る。
「まぁ、落ち着きなよ! 話は最後まで聞くモンさ……。私は“実戦じゃ勝てない”って言ったんだ。マリちゃんは本気になれば、亜人としての力を開放する。それこそ人外のね……。その状態になったら絶対勝てないよ」
クマリの言葉を聞いていたミミリは有る事を思い出し、隣に居たバルドに話し掛ける。
「そ、そう言えば……バル君、前に街道でレナン君と戦った時……あの人、大きくなって……凄く強くなったよね」
「ああ、急に動きが早くなったり、丸太を片手で振り回してたな……ありゃヤバかった」
バルド言葉を聞いたクマリは、頷いた後に話しを続ける。
「確かに、亜人として真の力を開放したマリちゃんは超強い……。巨獣を跪かせる位だからね。……だけど……武術大会なら、別さ」
「ど、どういう意味ですか?」
クマリの言葉に、ジョゼが聞き返した。その問いにクマリが答える。
「……簡単な話さ……大会の規約でね、参加者は全員、相手の命を奪う様な技や行為は禁止されてる……、だから、マリちゃんは本当の力を使えない。
また、大会には試合ごとに時間制限が有るんだ。だからこそ、チャンスが有る!
私の作戦はこうさ。試合時間は30分……。その間、ティアはマリちゃんの攻撃を何とか凌ぐ。耐え忍んだ後……コイツが持つ秘石の力を開放し……一気にマリちゃんを圧倒する! って訳さ!」
「おおおー!!」
「「「「…………」」」」
クマリが伝えた作戦に、ティアが手放しで称賛し、他の皆は口に出さず考え込んでいたが、ライラがクマリに尋ねた。
「クマリ殿……その作戦だが、幾ら黒騎士が本気を出さないとは言え……ティア様が黒騎士の猛攻に耐えれるだろうか?」
「無論、今のままじゃダメだ……。その為に……コイツを鍛えに鍛える! ライラ、アンタにもやって貰うよ?」
「……ああ、任せろ。貴女に言われるのは癪だが……ティア様の為なら何でもしよう……」
クマリの要請にライラは力強く答えた。そんな中、リナがクマリに問う。
「……クマリさん……貴女の作戦は分った……、上手く行くかどうかは別にして……。それで……私達は何をすれば良い?」
「ああ、アンタ達にも、コイツの為……沢山働いて貰う。 女将やシアちゃんもね! 何の為に、皆を集めたか……今説明するよ!
さっきまで話してた、武術大会だが……、その大会に出るには……有る条件が必要だ。今のままじゃ、ティアは武術大会に参加出来ない。そこでもう一つの作戦が必要になる……」
リナの問いに対し、クマリは皆を見渡ながら説明を始めた。
ティアが武術大会に参加させる為の作戦についてだ。
彼女が言うには武術大会に参加する条件として、真の実力者を集める為と犯罪防止の為に周囲が認める実績や推薦が必要だと言う。
騎士ならば上官からの推薦と実績が有るなら参加出来る。ティアは冒険者である為に実力とは別に冒険者ギルドの推薦が必要だと言う。
「……と言う訳で、このポンコツ娘を参加させる為に実力も必要だが、何よりギルドの推薦が必要だ。対してティアは冒険者になったばかりの5等級冒険者だ。当然推薦なんてされる訳がない。
そこで……それを覆す為に、ティアには……難度の高い依頼をバンバン受けて貰う!
誰もが見送る危険な魔獣討伐とかね……。それらを確実に達成する事でギルドの評価も上がるだろう。そして皆には……コイツの残念な副作用を助ける為に、パーティを組んで欲しいんだ。
高難度の依頼を受けるって事は危険も多い。だから当然、私も入る。……アンタ達は……ティアの為に無茶やってくれるか?」
クマリが皆に向かって頼むと、ティアの仲間達は迷いなく頷くのであった。
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