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104)挨拶

 レナンとソーニャの前に姿を現したクマリ。対してソーニャは驚いた様子で問い詰める。


 「あ、貴女はクマリ!? な、何故こんな所に!?」


 「……久しぶりだね、妹ちゃん……。ココに来たのはレナン君への挨拶と……野暮用ってとこかな……」


 ソーニャの詰問に対し、クマリは呑気に答える。



 対してソーニャは余計に苛立ち、強い口調で問い掛ける。


 「貴女は、あの巨獣討伐の折に突如行方不明に! 今まで一体何処に行っていたのですか!?」


 「うーん……あの戦いの後、色々想う事が有ってね……西の方へ観光に……。まぁ、そんな事どうでも良いじゃん! ねぇ、聞いて! 私、最近……弟子を取ったんだ!」



 嬉しそうな口調なクマリに、レナンは有る事に気が付き静かに問う。


 「……その弟子の事と……先程感じた外の騒ぎとは関係有りませんか?」


 「ククク……アハハハ! 本当、君には驚かされる! 答えは……想像にお任せするよ」


 レナンの問いにそう答えたクマリは後ろに飛んで廊下の窓に腰掛けた上で、話を続ける。


 「よっこいしょ! ……所で……私が弟子にしたのはね……。アホで単純で残念な奴さ……。だけど……有る宝物を取り戻す事だけには……信念を貫く奴なんだ。その残念な奴は……案外君達やマリちゃんも知ってる子かもねー?」



 軽い口調で話すクマリに対し、レナンは弟子が誰か予想され、口調を変えクマリに迫る。


 「……もしかして……その弟子は……」


 「オッと! 此処は学園だよ? 暴力反対! そう焦らないでも私の愛弟子が……君やマリちゃんに……勝負を挑むかも……。フフフ……今から凄く楽しみだよ! それじゃ、その日が来る事を期待して待っててね!」


 クマリはそう叫んで、窓から飛び去ってしまった。



 残された二人だったがレナンが冷静にソーニャへ指示を出す。


 「……ソーニャ、済まないけど……今すぐティアが寮に居るか確認してくれないか?」


 「ええ、分ったわ……寮長のベスさんに確認を取りましょう」


 レナンの指示はティアがクマリに連れ出されていないか懸念した為だった。



 彼の指示を受けたソーニャは学園を通じて寮長のベスにティアの状況を確認する様依頼する。


 学園からの事務員がティアの様子を寮に確認に行き、寮長のベスが応対した。


 食堂でティアと昼まで一緒だったベスは、ティアが自室に居ると、使いの事務員に伝えたのだった。


 その報せをレナンが受けたのは放課後前だったが、状況を聞いた彼は取敢えず安堵する。




 しかし……本当の所はティアが寮を抜け出し、秘石の力で屋根を飛び走ってクマリの元へ向かった事は……流石のレナンも知る由も無かった。




  ◇   ◇   ◇




 レナンの元を訪れていたクマリが立ち去った頃……。



 丁度、訓練場での自習時間が終わりリナとジョゼは更衣室へ向かっていた。


 「ふあぁ……だるかったなー、剣技の授業……。頭脳派の私にはどうにも好きになれないよ……」


 「確かに、イアン先生……熱血過ぎだよ。あのテンションで授業するから……少し疲れるね……」


 二人は剣技の授業について各々の感想を楽しげに語る。



 「イアン先生と言えば……レナンって……マジで凄かったな……」


 「そうだね……イアン先生って、この学園に来る前は有名な騎士だったんでしょ? それをあんな簡単に……。私もびっくりしちゃった」


 「ああ、私もそれは思ったよ。クラスの奴らも……初めはキャーキャー騒いでたけど……先生負けたら、流石に固まってたもんな」


 二人は放し合いながら訓練場から裏庭を抜けて校舎へと向かう。



 裏庭には造園の為に小さな納屋が有り、丁度二人が納屋の前を通ろうとした時だった。


 “グイ!”


 二人は突如引っ張られて納屋に押し込まれる。


 「キャア!」

 「な、何!?」


 「しぃ! 静かにしてくれるかな、お友達諸君……」


 突如納屋に押し込まれて悲鳴を上げた二人を制したのは、仮面を被ったクマリだった。


 「あ、あんた……クマリ!?」

 「どうして、こ、こんな所に!」


 「まぁ、驚かしてゴメンね! 実はティアの件で、君らに凄く大事な相談が有るんだ……」


 驚くリナ達に対し、クマリはティアの実情を説明する。


 彼女が“とある事情”で酷い空腹と睡魔に襲われる様になった事を説明し、その上でリナ達に協力を乞うたのだ。


 「……そんな訳で……ティアには助けが必要だ。君ら以外にも声を掛ける予定だから……授業が終わったら木漏れ日亭に来て欲しいんだ。そこでティア自身から事情を説明させるよ! ティアの為に必ず来てね!」


 クマリは明るく二人にそう言い放つと、風の様に納屋の窓から飛び出して行った。


 残されたリナとジョゼは顔を見合わせ、互いに呟く。


 「……どうする?」

 「ちょっと怖いけど……ティアちゃんの事なら……」

 「そうだよな……行ってみるか……」


 こうして、リナとジョゼはクマリの誘いを受け放課後木漏れ日亭に向かうのだった……。


いつも読んで頂き有難う御座います! 

この話ではクマリがレナンの元に挨拶を行います。次話は「105)残念副作用」で10/20(日)投稿予定です! よろしくお願いします!

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