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011 衝撃の出会い

長らくお待たせいたしました。ついにちょっとだけ本題に入ります。

 その日の夕方、近づく食事の時間にヨウタが憂鬱の度を深めていると、メイドではなくミゲルが部屋のドアを開けて入ってきた。


「侯爵閣下が到着された。一緒に来てくれ。ああ、おまえは何も話さなくていい。難しいかただからな。自信があるわけではないが、おれとフリードさまに任せてくれ」


 ヨウタは初日のミゲルとフリードのやりとりのあと、家の人間にはあのメイド以外の誰とも接触していない。だから、任せるも何も状況はヨウタにはいっさいわかっていないし、彼らがヨウタをどうするつもりなのかもハッキリは知らない。なにか話そうにも話す材料がない。




 初日と同じようにミゲルと一緒に玄関前でひざまずいていると、屋敷の中から人が二人ほど出てくる気配がした。


「ミゲル、それがフリードが言っておった奴隷か? なんとも貧相だな。役に立ちそうには見えんぞ」


 ヨウタはその声に思わず反応し、顔を上げようとした。横にいるミゲルがその気配を感じてヨウタの頭を押さえつける。確かに、許可を得ずに奴隷が貴族の顔を正面から見るのは、その場で斬り殺されても文句は言えない無礼である。ヨウタはミゲルの動きに逆らうことはせず、再び顔を伏せた。


 が、顔を伏せる直前の一瞬に目の前の男の顔を盗み見て動揺したヨウタの耳には、そのあとの男とミゲルのやりとりはまるで入ってこなかった。


(あ、あれは間違いなく、クレアの父親だ!)


 ヨウタはこんらんした。


(爺さんはたしかに、いつ、どこに出て行くことになるかは決められない、というようなことを言っていたな。まさか、死んだときとほとんど同じ時になるなんて……)


 そこまで考えたところで、ヨウタはひとつのことを思い出した。


(たしか、あのとき爺さんは「これを引き当てるとは」とか、「引き寄せた」とか言っていたな。爺さんはあの時点ではもう、おれがどうなるか知っていたのか。おれが望んで引き寄せるものなんて、美少女との縁ぐらいだものな)


 ヨウタはクレアが自分の近くにいることを確信した。


 だが、単純には喜べない。問題は、今の自分がクレアとどのくらい年齢が離れているか、である。せっかくのクレアとの縁も、彼女が少女期を終えたあとではあまり意味がない。高等科に進んだあとのクレアには、ヨウタは率直に言ってあまり興味がないのだ。自分が死んでからさほど時間がたっていないことを祈るのみである。


(それにしても、リープフェルト侯爵がみょうに若々しいのが気になるな。とてもじゃないが、あのあと力をつけていける器じゃないと思ったんだが……)




「あなた、どうなさったのですか? 奴隷の処分などサッサと決めて、私たちを落ちつかせてくださいな。ヨハンもクレアも疲れていますのよ? わたくしも早くくつろぎたいのですけど……あら?」


 ヨウタはこの声も覚えていた。こんどは顔を確認するまでもない。やはり死ぬ直前に会ったリープフェルト侯爵夫人だ。あのときに感じたとおり、侯爵は尻に敷かれ気味であるらしい。


 ヨハンという名前については,クレアの長兄でいちおう跡継ぎと目されている子供だということしかヨウタは記憶していない。全く興味がなかったので,それ以外の情報は必要なかった。


「拾ってきた奴隷というから、そんな汚らしいものはさっさと捨ててくるようにお願いするつもりだったのですけど……思ったよりこぎれいにしていますわね」


 クレアが平民に対してとっていた態度を思えば、拾ってきた「ゴミ」に対する夫人の第一印象がさほど悪くなかったことにヨウタは少し驚いた。まさに「汚いから捨ててこい」と言われることも想定していたからだ。あのメイドが過剰なくらいに磨いてくれたことに感謝すべきかもしれない。


(これは……うまくいけばこの家に潜り込むことはできるかもしれない。あとは、クレアが何歳になっているかだが、最悪、クレアを生み出した遺伝子に期待するという手もある)


「顔を上げることを許します。ミゲル、顔を上げさせなさい」


 場は、完全に夫人が仕切り始めた。侯爵の存在感は急速になくなっている。死の直前に夫妻と話をしたときに、夫人の発言力が強いことは感じていたが、これがこの二人の力関係だとヨウタは理解した。


 ミゲルは「すまんが我慢しろ」とささやいて、ヨウタの髪をつかんで頭を上向けた。自然とヨウタの目が夫人の姿をとらえる。

 まず顔、見覚えているとおり極上の美しさだ。ほっそりとした顔立ちに少し甘えたような流し目が似合う宝石のような碧い瞳。手入れの行き届いた長い金髪を右の肩から流している。しかし、それはヨウタには意味がない。出産を経験した女性は興味の対象外だ。

 首から肩の細くなめらかな曲線は万人が受け入れる芸術だろう。ヨウタもそれは評価する。

 胸は……たいそう凶悪である。ヨウタにとっては文字通り悪い意味で凶悪である。肉感はロリコンの敵なのだ。

 腰は……これまた凶悪にくびれているが、こちらは受け入れる余地があるため、少しじっくりと……じっくりと……何かが夫人の腰にしがみついていることにヨウタは気づく。


(年格好として四、五歳の女の子……女の子……お、おんなのこ……?)


 ヨウタがその相手を見間違えるはずもない。あり得ないといわれようがどうしようが、夫人の腰にしがみついて立っていたのは、彼をかつて一瞬で虜にしたクレア・リープフェルトだった。 


お読みいただいた方へ。心からの感謝を!


申しわけありません。ほんとうに、さわりだけ本題に入りました。

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