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綿菓子

作者: 春宵桜

祭りの屋台では大抵隅にポツリとあるそれは物淋しそうな雰囲気の中にどこか懐かしさを感じる


石畳上にポツリと屋台は立っている

同じ様にポツリと屋台主がいる


子どもたちがあれよこれよ無垢な瞳をキラキラさせながら綿菓子に手を伸ばすと強面の屋台主は重たい口を開ける


「子どもに売る物はない」


ふわふわの綿菓子に似合わず屋台主の性格はがっしりしている

屋台主の性格を例えるなら綿菓子というよりはザラメである

角があり硬い


そうこうしている内に綿菓子は次々と出来ていき子ども達はまた集まる


甚平を来た子からふりふりの浴衣を着た子ども

皆綿菓子が好きなのだろう


だが屋台主は頑なに売ろうとはしない


「おじちゃん。これ一つ頂戴」


ふと赤い着物を着た十ばかりの女の子が小銭を手に屋台にやって来ていた


長く綺麗な黒髪は後ろで一つ結われて

提灯袋をさげている

幼くもどこか落ち着きがあるようなそんな女の子だった


「あいよ。1つでいいのかい?お嬢ちゃん」

「うん。大丈夫だよ。」


女の子は握りしていた小銭を屋台主に渡すとニコッと

微笑み下駄を鳴らしながら走って行った


「おじちゃん!私にも1つちょうだい!」

「子どもに売るものはない」


屋台には大量に綿菓子が並べられているが頑なに売らない


ただ一言

子どもには売らない…


雲のようなふわふわな綿菓子は風に吹かれ揺れている


「ねえ、おじちゃん。何で売ってくれないの?」

「子どもに売るものじゃないからだよ。お嬢ちゃん」


そうこうしていると祭りは賑わい始めた

人の手には金魚が入った小袋やりんご飴が握られている

祭り特有の香り

哀愁溢れる甘い匂い


「お人形さん取れてよかったはね」

「うん!」


小さい子に握られた可愛らしいお人形

黒髪がなびきニコッと笑いかける


宵は深まり物静けさが漂う


祭り特有の香り

哀愁溢れる甘い匂い―



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