24話 白泉覆と本条黄色の恋愛
学校中を賑わせたのは、生徒会新役員の発表でも、男子バスケットボール部が地区大会を勝ち抜き、関東予選に出場するという吉報でもなく、本条黄色と白泉覆が恋仲になったというスキャンダルだった。
聞くところによれば本条から告白したらしいが、本条が覆ちゃんのことを恋愛感情として好きだなんてことは一度も聞いたことが無い。一体何があったというのか、確かめずにはいられなかった。
今日は十一月十七日、金曜日。何もしなくても本条は図書館に現れるのだった。私は本条を見つけるなりすかさず、覆ちゃんについてストレートに問い合わせた。
「告白したの?何で?」
私の問いに、本条は暫く考えた後に、
「ちょっと白川ちゃんに似てたからかな。美人で面白い」
と言って、けらけらと笑った。どういう意味か、と聞くと、本条は、そういう所だよ、と答えるのだった。いまいち問と答が合っていない気がする。
「今までの女の子よりずっと、価値観が合うって思ったからだよ」
本条は穏やかな笑みのまま、本音を言ったのだと思う。本条が柔らかい顔をしたのはその一瞬だけで、すぐに営業モードに入ってしまったのだった。
閉館時間が迫ってきた頃に、覆ちゃんがやって来た。本条を見るなり硬直してしまうあたり、まだ本条には慣れていないと見受けられる。そんなところも可愛いと思う。美少女は何をしても許されるから狡い。
「もうすぐ終わるから、裏で待ってて」
見たことのない本条の顔だった。あんなに優しくて綺麗で、厭味の無い、こう、清廉な顔つきをしたことが、一度でもあっただろうか。さらりと図書委員専用のテリトリーに覆ちゃんを入れてしまうのはいただけないが、しかしあの顔をされると……。
「もしかして俺に惚れちゃった?」
本条の一言がすべてを台無しにした。あんな顔をされてもその一言ですべてはおじゃんだ。何も格好良くない。ただのチャラついた小賢しい男だ。
「何言ってんの。あんたより赤哉の方が百億倍格好良いわ」
私の言葉に、本条はニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべて、そうかそうか、と相槌を打った。
「じゃあ、俺たちの未来は暫く安泰だな」
腰に手を回されてようやく気付く。背後には赤哉が居たのだ。赤哉の目の前で赤哉の自慢をするなんて、なんてこっ恥ずかしいことをしてしまったのだろう。顔によく血流が巡って、熱くなるのが分かった。赤哉にも本条にも、笑われている気がしてならなかった。




