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23話 白泉覆と飛高冬海の密談

 衝撃的なシーンを目撃してしまったのは、不幸にも私だけだった。十一月十四日、火曜日の出来事である。

 覆ちゃんと飛高さんが秘密の談合をしている所に巡り会ってしまったのだ。しかも、飛高さんが、

「それは恋だね」

などと供述しているところに。なんということだろう。本条についてなのだろうか、内容は本条黄色についてなのだろうか。非常に気になる。盗み聞きという行為は道徳観に欠ける行為だが、致し方ない。幼気な美少女を救うための手段だ。

「……や、やっぱり、そうなのかな……」

「本条を見ているとドキドキが止まらなくなって、胸が苦しくて堪らなくなるんだろう?じゃあそれは恋さ」

飛高さんの妖艶な笑みと、覆ちゃんの真っ赤に染まった顔を見ていると、なんだか怪しいお姉さんがウブな少女にいらない知識を植え付けているように見える。しかし先程の一言で分かった。覆ちゃんは本当に本条に恋しているのだ。しかも本条はそれに気づいている。なんということだ。

「ど、どうしよう……、私これから、どんな顔で……」

可愛い。女の子は純粋な方が良いに決まっている。私の様に捻くれていなくて、素直に物事を捉えられる、まさに覆ちゃんの様な女の子を、世の男性は求めているに違いない。ともすれば赤哉は変態なのだろうか。自分で想像しておいてなんだが、ちょっと悪寒が走った。

「自分の気持ちに素直になりなよ。……“好き”って言えばいいのさ。私みたいに」

やっぱり飛高さんは角川くんとデキているのか。美男美女だしお似合いだと思う。私とは大違い。

「こ、告白しろと?……冬海ちゃんみたいな度胸はないよ……」

ああ、これは重症だ、覆ちゃん。気づかれないうちにここを立ち去ろう。そして赤哉に相談しよう。一人の美少女が危機を迎えていると。本条にあの子の純情が弄ばれることがあってはならない。

 ―――――――――――――――と、先刻あったことを赤哉に言ってみると、

「黄色は野蛮な奴じゃないから、自然にくっつくのを待ったらいい」

と言われた。なんということだ、赤哉は男だから本条の恐ろしさを知らないのだろうか。とはいえ私も本条の恐ろしさは知らないのだが。

「黄色はむやみやたらに手を出す奴じゃないよ。……ちゃんと、恋したいと思った時しか、手を出さないから」

赤哉に言われると何でも、そうか、と思ってしまうのは、おかしいのだろうか。私ももしかしたら、赤哉に弄ばれているのかもしれない、と思うと、覆ちゃんの気持ちも、何となく分かるような気がした。

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