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21話 白泉覆と本条黄色の邂逅

 珍しい来客に目を奪われたのは、それが学校で話題の超絶美少女、白泉覆ちゃんだったからではなく、覆ちゃんが水曜日に図書館にやって来たから、だった。

 元々、覆ちゃんは図書館によく来る方だから、私もちょっと話したことがある。喧騒が嫌、という理由で、いつも“BOOKS FIVE”の当番の日には図書館に行かない、と言っていたのに。今日は十一月一日。紛れもなく水曜日なのだった。

 今日の一番人気は本条のカウンターである。本条目当ての女生徒は兎に角多い。端正な顔に人当たりの良さが合わさって、成績優秀スポーツ万能、まさに完璧、というのが世のイメージらしい。私に言わせれば奴はただのチャラついた小賢しい男だ。

「返却だよね」

「え、っはい、そうです」

覆ちゃんが本条のカウンターに並ぶなんて、しかも本条と話して頬を染めているなんて。覆ちゃんは風邪をひいているのではなかろうか。

「この本、難しいもんね。時間かかったんだ」

顔を真っ赤にして、覆ちゃんが無言で図書館を出ていく。なんてことだ。覆ちゃんの照れ顔は滅多に見られるものではない。そういう意味では本条に感謝せねばならないが、それにしても覆ちゃんの様子は変だ。そして本条は覆ちゃんに見向きもせず、通常営業。本条は普通に応対しただけ、ということか。

 業務が終わっても、本条はやはりいつも通りで、覆ちゃんだけがおかしいということが浮き彫りになるばかりだった。もしかして覆ちゃんは、本条に惚れてしまったのだろうか。

「そ、そんな……ッ!あんな純粋な子の純情があんな奴に奪われてしまうなんて……!思い直せ……ッ」

「何言ってんの白川ちゃん」

思わず奇声を上げてしまった。しかも本条に聞かれてしまった。赤哉ならまだしも。

「……あ、それ。白泉覆が返してたやつ」

本条は私の持っていた本を取り上げ、じっと見つめた。それは覆ちゃんが今日返していった本で、貸し出しの時は私が手続きをしてあげたので、よく覚えていた。“愛の名の下に罪を犯すことは”。

「あの子、恋してるんだね」

本条の浮かべた笑みは、どこか自嘲的で、物憂げだった。私でも手の届く場所にしまわれているその本は、本条の手によって元の棚に戻された。

「何で恋してるって分かるの」

私の問いに、本条は、

「これは熱々の恋の話だから。……一度でも失恋を経験したら、この本は読めない」

まるで自分が失恋したかのように、語るのだった。

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