表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/33

17話 非リア充のすゝめ

 ―――――――――――――――今目の前に立ちはだかった問題に対し、取れる行動は二つだ。一、「前向きに検討します」と言って本田先輩に相談する。二、「俺は嫌だ!」と言って逃げ出す。俺の取った行動はもちろん前者、本田先輩に相談する、である。俺の独断と偏見で決められることではないし、何よりそれには”BOOKS FIVE”全員の合意が必要だったからだ。

 文化祭も残り約二週間後と差し迫った今日、十月十日、火曜日。全校生徒の九割九分九厘が支持していると言われている、現生徒会長、三年五組の角川夏樹(かどかわなつき)先輩に詰め寄られたのは、バレー部の朝練が終わった直後のことだった。何故俺に声を掛けたのかは知らないが、兎角、角川先輩が言うには、

「“BOOKS FIVE”で出し物をしてほしい」

ということらしい。本当はもっと暑苦しい、名前に似合わない演説を聞かされたのだが、思い出したくないので割愛。俺の独断で決められる訳がないので、本田先輩に会ったときに話をしておくとだけ伝え、お引き取り願った。

 約二週間で出し物とは、無茶ぶりも程々にしてほしい。俺はすべてのことに万全の準備をしたいし、どうせやるなら、完璧を目指したい。しかし、“BOOKS FIVE”の面子を考えると、この頼みを無下にすることは憚られる。

「ほーんーまーせーいーごーくーん」

俺の目前に笑顔で現れたのは、角川先輩の愛人と噂されている生徒会副会長、三年六組の飛高冬海(ひだかふゆみ)先輩だった。

「朝は夏樹……会長が失礼したね」

目が合って、ぞわっとした。言葉には表せないが、この人はヤバい。そんな気がする。

「本田白川カップルに先程遭遇してね。なんと出演OKを取り付けた」

宜しく頼むよ、と言って隣を通り過ぎていく飛高先輩からは、不思議な空気を感じた。俺の苦手なタイプだ。すべてを見透かしたように、自分からは行動を起こさず、じっと見ている様な。

「…………白川先輩に伝わってしまったか」

だが、それよりも問題なのは、このことが白川先輩に伝わってしまったことだ。あの人は“BOOKS FIVE”の生みの親。誰よりも、俺たち全員の面子が潰れないことを優先するだろう。

 放課後、“BOOKS FIVE”に緊急招集がかかった。行ってみれば案の定、文化祭の話だった。乗り気なのは本田先輩よりも白川先輩だった。

「失墜した信頼は自分たちで取り戻すしかないの!私のせいで地に落ちた信用は私が取り戻すッ」

生徒会の目論見とは全くベクトルは別だが。そもそも“BOOKS FIVE”の信頼は地に落ちたのだろうか。“マドンナ事変”のことを言っているなら、それは白岩帯の自滅だということは誰もが知っていることだし、寧ろ白川先輩と本田先輩を応援する声は多い。白川先輩の心配性は、どんな時でも変わらないらしい。

「と、いう訳で君たちにはこれをやってもらおうと思う」

白川先輩の持っていたスマートフォンから流れる動画は、今をときめくディライト事務所の五人組アイドル、“ANGELS(エンジェルス)”の代表曲のミュージックビデオだった。煌びやかな衣装、一糸乱れぬ振り付け。完璧という言葉がぴったりだと感じた。

「“ANGELS”の中で一番ダンスが簡単、かつみんなが知っていて、女子人気も高い。これしかない」

白川先輩は必死だった。本気で、あの“マドンナ事変”が、俺たちの風評に関わったと思っているのだろう。そしてその状況を、本田先輩は面白がっている。それでいいのだろうか。

「という訳だ。俺たちの信用が落ちたかはともかく、これをやることで都合がいいことも沢山ある」

生徒会に口利きしてもらうとか、と呟く本田先輩は、兎に角恐ろしく、そして美しかった。

 経緯は滅茶苦茶だが、そういうことで“BOOKS FIVE”はめでたく文化祭でアイドルごっこをする運びとなった。俺も、本郷も、二本木も、本条先輩も、全く乗り気ではないということは、墓場まで持っていかねばならぬ秘密となってしまったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ