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12話 白川VS白岩-Round 2

 ―――――――――――――もう二度と、栞と目も合わせられないのかと思っていた。白岩が妙に俺と距離を詰めようとしてきた頃から、栞との距離が遠くなった気がしていたのだ。そして同時に、白岩と緑音の関係もおかしくなった。きっと白岩は、俺のことが好きでたまらなくて、距離を詰めるための苦肉の策として緑音を選んだのだろう。汚らわしい話だ。白岩が何と言おうと、白岩は白岩以上の何者でもない。白岩とはどんな関係にもならない。

「栞」

定例集会が終わって、他の図書委員が全員出て行った後のこと。俺が名前を呼ぶと、栞は涙を流すのだった。何を泣くことがあるだろうか。悪いのはいつも、気づいていながら行動を起こさない、俺の方なのに。

「どうして泣くんだ」

「どうしてって……ッ、分かんないけど……」

書庫に閉じ込められた時の様な大泣きとは違う。騒ぐように泣くのではない、こういう時は大抵、言いたいことが言えない時なのだ。言うべきか、言わざるべきか。するべきか、せざるべきか。

「ねえ、赤哉」

栞はあっという間に泣き止んで、俺を真っ直ぐ見つめるのだった。小さい頃を思い出す。俺の前に立って、いろんな場所へと連れ出してくれた、あの頃を栞を。

「私、赤哉のことが好きだよ。……好き、愛してる」

いつもそうだ。自分の言いたいことは、いつも栞が先に言ってしまう。俺たちの気持ちは、だいたいいつも寄り添っていて、同じようなことが多いのだ。互いの好きなものは互いに好き、互いの嫌いなものは互いに嫌い。だから俺たちは、滅多なことで対立しあわない。

「……それはいつか、俺から言う気だったのに。俺も栞が好きだよ、愛してる」

白岩に、告げねばならないことが沢山ある。緑音のこと、栞のこと。俺自身のことも、白岩には教えてやる必要があるかもしれない。俺が栞を傷つけたことも事実だが、白岩が栞を傷つけたことも同じ事実。白岩とは決着を付けなければならない、なるたけ早く。

「だから、白岩とちゃんと話を付けよう。……俺も、栞も、白岩とは因縁があるはずだ」

栞は勢いよく頷き、俺のことをきつく抱きしめるのだった。温かい栞の体温が、じわり、じわりと、負った心の傷に染み入って、俺まで泣きそうになった。

 帰り道、栞と並んで歩くのは、高校に上がって以降珍しいことになってしまった。第三者が作り上げた、俺に対するイメージと栞に対するイメージのせいでもあり、それらに縛られた俺と栞の責任でもあった。

「栞」

栞の手を握ると、栞も握り返してきた。可愛い微笑みを浮かべ、栞はいつものように、ちょこちょこと歩く。純粋で、まだ他人の目も、自分のことすらも理解していなかった頃の俺たちが、戻ってきたようだった。

「温かいね、赤哉の手」

いつも通りの帰り道が、今日は一段と輝いているように見えた。夕日が沈んでいくのも、二人の間を吹き抜ける風も、全てが特別だった。

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