第6話 消えない傷(コンロの油汚れはなかなか消えないですね)
どうもお久しぶりです。
一カ月ほど前から受験の方がかなり忙しくなってきていて、しばらく休んでいました。
ですが、無事に終わりましたのでぼちぼち投稿の方も再開していこうかなと思います。
今回は復帰初回なので内容は軽めです。
そろそろ太郎まじで死んでんだろ!!って思う方もいるかもしれませんが、そこは作者の匙加減というところでやっていきたいと思います。
え~とあとなんか募集してますみたいなことを書いていた気がするんですが、久しぶり過ぎて忘れました。
というわけで募集してま~~す。
意見、感想、評価、ブクマ、レビューなど、ドシドシお待ちしてまーす。
そんなはずがない、聞こえるはずがない。なぜならあいつは、利悲はもう存在しない筈なのだから。そう自分に言い聞かせるが、ほんの数秒前に聞こえてきたあの声が頭を離れない。そればかりか、利悲の存在を近くに感じているのか身体が緊張し強張っている。
「り、りかなのか・・・??」
『・・・・・』
返事は返ってこない。ただの屍であったのならよかったのだが、あの異質な雰囲気が段々と自分に近づいているように、否、少しずつ近くにいることを感知させられるように感じた。それと同時に、鐘を頭の中で打ち鳴らされているような頭痛が襲ってきた。
「お、おい!!!りか!!!!いるなら返事しろよっ!!!りかっ・・・ぁあがぁっ!!」
俺が利悲の名前を呼ぶたびに頭痛が増しているような気がするが、今は何かを考える余裕など微塵もなかった。
「ちょ、ちょっと燐ちゃんどうしたの急に!?」
「言ってることが・・・テンプレ・・・です」
「頭がおかしくなっちゃったんじゃないかなぁ~」
突然何もない場所に叫びはじめた燐を見て、陽菜乃は動揺していた。ほかの二人はいつものように燐を小ばかにしたことを言っていたが、いつもなら大げさなツッコミで返してくる燐がそれを全くせずに本当に何かにおびえている様子をみて、少しづつだが異様な状況に気付き始めていた。
「おい!!!出て来いよりか!!!・・・ぐっ!!!」
まるで頭が割れているのではないかと思うほどに、頭痛はさらに激しくなっている。
「燐ちゃん落ち着い・・・」
「りかぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」
『ふふふっ』
「!?!?!?!?!?」
(ドサッ)
最後に利悲の名前を叫んだ時、激しい頭痛とともにやけに耳に残るあの笑い声が聞こえた気がした。なぜ未だこの世界に利悲が存在するのか、なんとかしなくては陽菜乃たちまで危ないと考えていた時には、俺はすでに意識を失っていた。
「「りっ・・・」」
「燐ちゃんっっ!!!」
突然倒れた燐に一早く駆け寄ったのはやはり陽菜乃だった。陽菜乃は燐の身体に異常がないかひとしきり確認し終えると、燐を抱きかかえる腕に力を込めて一滴の涙を零した。その顔の表情までは分からなかったがそんな陽菜乃の様子を見て、翠は「そ、そこにベッドが・・・ある・・・です」と告げてから加山を連れて部屋から退室した。
「(りっ・・・燐ちゃんっっ!!!)・・・変な気持ち・・・です」
急に倒れた燐に駆け寄ろうとしたあの時、陽菜乃にそれを遮られて何かを感じたのだろうか。或いは、突然様子のおかしくなった燐を見て動揺しているだけなのだろうか。どっちが正解なのかは分からないが、翠の心には確かに違和感が残っていた。しかし、その違和感の正体はまだ翠には分からなかった。
「翠ちゃんはきっと動揺してるんじゃないかなぁ~」
「はうっ!?!?!?!?!?」
口にも出していないことをズバリ言い当てられて(無意識に呟いていたことは自覚していない)、身体を思い切り強張らせると、猫の様に素早く壁の裏へと逃げ込み加山に対して大慌てで言い訳をし始めた。
「べ、べべべべべつに!!!!な、なにもさっきのことで動揺なんて!!!し、してない!!!・・・・です」
加山に対して言っているのか、翠自身に対して言っているのか分からないような、まるで自分に言い聞かせるように翠は騒いでいた。
「完全に動揺している人のそれなんじゃないかなぁ~」
「してない!!!・・・・・です」
初めて見るとてつもない勢いで反論する翠の姿を見て、加山は少し驚き言った。
「す、翠ちゃんがそんなに取り乱すなんて・・・珍しいんじゃないかなぁ~」
「・・・す、翠にだって・・・取り乱すことぐらい、あ、あります・・・です」
「ほ、本当に珍しいんじゃないかなぁ~・・・」
いつものクールな様子から一転して、大きく戸惑ったり、激しく反論したり、とても恥ずかしそうにしながら照れたり初めて見る翠の姿に、加山は心の底から戸惑っていた。
「と、とにかく・・・早くナニカを見つけないと・・・です」
「燐くんは陽菜乃ちゃんがいれば大丈夫なんじゃないかなぁ~とは思うけど、太郎君のことを考えたら残された時間はもうないんじゃないかなぁ~」
結局一人目の手がかりとして渡された暗号を苦労して解いた割には、辿り着いたこの部屋でも突然燐が意識を失い、戻ってきたと思えばまた意識を失ったのみで、『ナニカ』を見つけることは出来なかった。もしかしたら、燐は『ナニカ』と何らかの接触があった、または今も尚続いているのかもしれないが、残りはあと『二人』と考えても問題ないだろう。
「ま、まずは・・・他のナニカのて、手がかかりを探す・・・です」
と翠が投げかけると、加山は「それでいいんじゃないかなぁ~」と相槌を打ち燐と陽菜乃の二人を残してきた部屋の方をじっと見つめ気合の入った表情で言った。
「多分だけど・・・燐くんは今もナニカと戦ってるんじゃないかなぁ~。だから・・・」
「翠たちも頑張る・・・です」
自分の口から発せられるはずだった言葉を先に言われて、先ほどとは逆に翠に心の中を見られているような気分になった加山は「あははっ」と笑うと翠に向かってこう言った。
「僕も翠ちゃんも燐くんも陽菜乃ちゃんも太郎くんも、これだけ通じ合ってるんなら残りの二人もすぐに見つかるんじゃないかなぁ~」
「あ、当たり前のこと・・・です。燐は絶対に大丈夫・・・あ、あとは翠たちが、ナニカを二人とも見つけて・・・た、太郎を助けて帰るだけ・・・です」
そう翠が言い放つと、二人は互いに頷き合い館の奥へと進み始めた。一方残された陽菜乃は横たわる燐の隣に付きっきりでいた。
「ねぇ・・・燐ちゃん・・・」
そう呟く陽菜乃は、心底燐のことを心配している様だった。
「どうして燐ちゃんはいつも一人で何でも抱え込んじゃうのかな・・・・・あんなに苦しそうなところを見たら・・・私・・・・・」
陽菜乃が黙ると、部屋には燐の呼吸をする音と陽菜乃がすすり泣く声だけが響いていた。
「・・・って、今言っても聞こえてるわけないよね・・・えへへ」
と短く照れ笑いをすると、今度は少しだけ起こったような表情をしながら燐に優しく言葉をかけた。
「でもいっつも心配かけられる私の身にもなって欲しいな、もうっ。仕方ないから、起きたらしっかり話を聞かせてもらうんだからね」
そう言うと陽菜乃は燐の横に添い寝をする形でもぐりこみながら「ふぁ~あ」とあくびをした。こんなに危険なかくれんぼの最中に絶対に寝てはダメだと思いはしたのだが、安らかな顔で眠り続ける燐の顔を見ていたら無性に眠たくなってきたのだ。
「こ、これはあれだから・・・寝たいからと・・・かじゃ・・・なくて・・・・・い・・・しょに・・・・・い・・・・・なきゃ・・・・・zzzzz」
やはり襲ってくる睡魔に勝つことは出来なかった。どのみち燐を一人にすることは出来なかったが、他の二人は『ナニカ』を探しているのに申し訳ないと思いつつも陽菜乃は夢の世界へと落ちていった。
「燐・・・ちゃん・・・・・た、すけ・・・て」
二人の寝息だけが響く部屋の中で、俺は夢を見ていた。夢の中で俺が立っていた場所は見覚えのある校門だった。その前には、忘れもしないあのおさげの少女が立っている。
「おっ!!玲ちゃんおはよう!」
そう俺が話しかけると、少女は決まって気まずそうに返事をするのだ。
「楪くん・・・お、おはよう」
玲はそう挨拶を返すと足早に校舎の方へ走り去っていった。これは俺がまだ小学生で輝いていたころの、まだ不登校になる前の夢だ。