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トリガー  作者: KEINA
第1章 コトリバコ
4/7

第3話 【_/3Riei5Ug(f】(急に澤野〇之みたいですね)

どうもケイナです。

初回投稿から前回投稿までの期間は、かなり空いてしまいましたが、今回はまぁまぁなペースで執筆できたかなと・・・・・すんませんもっと頑張ります。

毎回のことながら、拙い文章でありますが、是非一度読んでいただいて感想、アドバイス、アンチコメントなどをいただけたら幸いです。

どんどん叩いてください、叩いてっ!!もっと!!もっと叩いてっ!!もっとぉぉぉぉ!!

 —————『も~~い~~~~~よっ!!!きゃははっ!!!』

 

 ・・・・・かくれんぼの開始を告げたあの不気味な笑い声が、今も俺の頭の中を離れずに響き続け、その度に太郎の命がかかっていることを思い出させ、焦燥感を駆り立てていた。俺はそんな焦りを拭い去れないまま、村長の屋敷の大きな扉を開いた。

 

(ギィ・・・・・)

 

 扉を開くと、まるで地平線の彼方まで続いていると思わせるような、途轍もなく長く広い廊下が現れた。

 

「な、なんだよこれ・・・・・!?」


「ま、前に見学に来た時と違う・・・・・です」


「え、そうなの。最初からってわけではなさそうなのはさすがにわかるけど・・・これも『ナニカ』の仕業なのか?」

 

 この辺の中学校や小学校は、社会科見学的な行事でこの村長邸を見学するのがお決まりなのだが。小学校高学年から現在に至るまで、運動会、文化祭、その他諸々の行事、ないし学校に行っていない俺にとっては、完全に未知の領域だ。

 

「こんなに長い廊下・・・歩ききるだけで朝になっちゃよ~・・・」

 

 陽菜乃の言う通りだ。こんなに長すぎる廊下を何の手立てもなく探すより、この異変が『ナニカ』の仕業と仮定して、この廊下を突破する作戦を考えた方がいいだろう。そう考えた俺が周囲の壁や床を確認していると、加山は少しの間、頭の中の何かを探すように考え込んでから口を開いた。

 

「でも外から見た屋敷はいつも通りだったんじゃないかなぁ~」


「確かに言われてみればそうだな」


「が、外見は・・・こんなに長くなかった・・・です」

 

 もしも仮に今、外に出てもう一度屋敷の外見を確認したときに、最後に見たときと外見が一致するというのならば、この長い廊下は奴らの見せている夢か、あるいは幻覚なんてこともあり得そうだ。この長い廊下が幻覚だった場合、どう幻覚を破ればいいのだろうか。行き止まりは見えないが、手前に見えなくなっている壁が存在するのだろうか。

 

「まぁ、試してみるしかないか・・・!」


「試すって、何を試すの?」


「まぁ見とけって」

 

 そう言って俺は前方に向かって、思いっきり石を投げた。

 

(ドゴンッ!!!!)

 

 勢いよく放った石は、見えない壁に激突し粉々に砕け散った。

 

「ちょっ、燐ちゃん何してるの」


「こうでもしなきゃ本来の構造が分からないだろ?ほら見てみろよ、あの壁」

 

 俺以外の全員は未だ半信半疑だったが、石のぶつかった壁を間近で確認すると、俺の言っていたことがやっとわかったようだった。

 

「ここだけ・・・ぶつかったところだけが壁に”戻って”る?」


「そう。石のぶつかった部分だけが、奴らの作り出した幻覚が剥がれて本来の壁が露わになってる。ただ一つ厄介なのが・・・」

 

 と俺が説明している間にも、興味津々と言った様子で壁を調べていた翠が、何かに気付いた。

 

「こ、この壁、も、戻ってない部分は、通り抜けられる・・・?です?」


「どうやらそうらしい・・・・・一部分でも幻覚を破壊しちまえばいいのかと思ったんだが。ここに壁があると思って手をついてみたら、何もなくてびっくりしたよ」

 

 あるはずの壁によっかかってバランスを崩す仕草をしながら答えると、陽菜乃がひび割れた壁を見つめながら言った。

 

「じゃあなんで石はぶつかったの~?」


「そこがわからないんだよなぁ~。無機物は通さないとかか・・・?」

 

 仮にそうだとしても、なぜ無機物であるはずの衣服は通過できるのか。有機物の触れている無機物は通過してしまうのか?そもそもその観点からの推測は正しいのか?考えれば考えるだけまとまらなくなってきた。そんな俺の様子を察したのか、加山がひとまずの折衷案を出した。

 

「とにかく、手ごろな鉄の棒的なモノを使って、壁だったっぽいところを殴って進むしかないってことじゃないかなぁ~」


「そ、そんなのどこにも、な、ない・・・です」


「あ、それならある。これ」

 

 若干のドヤ顔をしながら俺が取り出したのは・・・・・。

 

「たらららったら~、ゆ”ぅみやぁ~~~」


「そんなのいつ!?ってもしかしてあの時の?」


「渾身のオタエもんはスルーかよ・・・。いやまあどうでもいいんだけどさっ!!さっ!!」

 

 ツッコミ係不在の中、誰も突っ込んでくれない事に拗ねていると、陽菜乃が解せぬといった表情で問いかけてきた。

 

「燐ちゃん何拗ねてるの?」


「あぁ、いやなんでもないよ」


「ほんと?」


「ほんとほんと。でまぁこの弓矢なんだけど」


「そ、村長から追いはぎ・・・です?」

 

 まさか翠にまで、俺がそんな酷いことをする人間だと思われているのだろうか。いつも「燐、燐」と懐っこく甘えてくるのだが、本当はそんな風に・・・・・と若干のショックを受けながら俺はまた口を開いた。

 

「人聞き悪いこと言わないでくれる!?いやまぁあながち間違ってはいないんだけど。奴らが攻撃してこないとは限らないしな。武器が欲しいと思ってちょいとね」


「でも、おかげで役に立つんじゃないかなぁ~」


「そうだね!これで探しに行けるよ燐ちゃん!!」


「だな!よしっ!いざ太郎蘇生の旅へ!!」

 

 と意気込み、見えない壁を叩きまわっては見たものの、これといった手がかりは掴めなかった。唯一見つかったのは「e(e1」と書かれた鍵のかかった部屋だった。全く意味が分からなかったのだが、一応メモだけはとっておいた。これに似たような文章が各部屋の扉に書かれていたのだが、どれも最後に「ei」と書かれている以外、規則性や共通した部分は見当たらなかった。

 

「ストーップ!!やめやめやめやめーっ!!こんなんじゃ埒が明かない・・・いつまでたっても見つからないぞ」


「じゃあどうするの~?」


「グッ・・・・・」

 

 このまま壁を叩いて本来の屋敷の構造を把握しても埒が明かない。しかし、新しい策を講じなければといっても、何も思いつかない。なにかしなければと考えすぎてしまえば、無情にも時は刻一刻と過ぎてしまう。太郎の生命力が吸われ続けているこの状況においては、長考などしている余裕もない。すると、翠が小さく息をのみ、これは中々の発見なのではと期待にそわそわしながら口を開いた。

 

「か、壁の向こう側にいる可能性・・・です」


「「「ああ!!!」」」

 

 なぜそこに気付かなかったのだろうか。最初の異様な雰囲気に恐怖感を駆り立てられて、危険を回避することばかりに気を取られていた。そもそも『ナニカ』の主催したかくれんぼで、わざわざ『ナニカ』の用意したであろう長い廊下に、奴らが隠れていないわけがないのだ。途方もない長さという点のみで、それを陽動だとしか考えなかったこと自体が、陽動にはまったと言えるだろう。

 

「部分的にとはいえ、破壊したはずの幻覚がまだ効果を保ち続けていることに目を向けるべきだった」


「得体の知れない場所に踏み込むのはちょっと怖いけど、太郎くんのためにも行かなきゃね」


「早く見つけないと・・・です」


「そこにいるとしたら、大分時間を無駄にしちゃったんじゃないかなぁ~」


「まぁ、とりあえずそこの壁から先に進んでみよう」


 その壁は、まだ一部分も欠けていない、完璧な状態の幻覚空間への入口だった。今は最初の廊下から上がった2階に居るのだが、見たところほとんど1階の長い廊下と変わりなかった。


「にしても不可解な現象過ぎるだろこれ」


「勝手に幻覚空間なんて呼んじゃってるけどね~。もしかして私達、とんでもない事に巻き込まれてるんじゃない?」


 今更過ぎることを2人で話していると、少し鼻息の荒い翠が。どうやら少し興奮しているようだ。


「今更・・・です。で、でも、ちょっと楽しい・・・です!!」


「オカルトオタクもほどほどにしとけよ?何があるか分からないからな」


「はい・・・です」


 太郎の命を弄ぶような奴らだ。遊びとは言っていたが、その異常性は計り知れない。


「そろそろ読者さんも、お前ら入口前で話しすぎだろって思ってるだろうし行くか」


「今更・・・です。ど、読者いじりはもう、う、ウケない・・・です」


「あ、なんか屋敷に入って初めてツッコまれたから安心する・・・。なんだろうこの気持ち・・・」


 そう、屋敷に入る前に太郎が戦線離脱した為、どんなボケをしようともツッコミをしてくれる奴が居なかった。普段よりも静かで、物事を思考しやすかったのだが、どこか落ち着かない気持ちが常にあった。そんな時に翠の、あの幼いウィスパーボイスでツッまれるとは。至極。太郎なんてもういいんじゃないだろうか、と思い始めた時加山が動いた。


「さっさと行っちゃえばいいんじゃないかなぁ~」


「ぅおあっ!?!?!?」



(ドサァッ!!!!!!!)



「いってててて、何すんだよいきなりっ!!!」


「これで安全確認ができたんじゃないかなぁ~」


「確かにできたけど、物理的に痛いわっ!!!」


 そういえば村長の時もそうだった。思い返してみれば、それ以前の記憶にもちらほらと心当たる部分がある。いつもはのほほんとしているくせに、こういう時だけ手荒になるのはどうにかならないのだろうか。まぁ、危険なことが起こるとはさほど思ってもいなかったのだが。それでも未だ俺の心は複雑だったが、陽菜乃が「大丈夫?」と手を差し出してくれたので、これはこれで悪くないかもしれない。


「幸せなら、OKです!!!」


 俺に突然そう言われた加山は、あんまり意味が通じていないようだったが、まぁいいだろう。すると、陽菜乃が俺を引っ張り上げながら言った。


「立ち入っても何にも起こらないみたいだし、やっぱりこの先にいるのかな~」


「まあ、先に進んでみないとわからないし、急ごう」


 俺の身を賭した安全確認もすみ、一同は先に進んだ。探し始めておよそ15分も経ったころ、六部屋程の探索を手分けして行ったのだが、未だ手がかりも『ナニカ』も見つかっていなかった。唯一見つかったのは、タッチするとスマホの入力画面のようなものが出てくる金庫だけだった。


「金庫のパスワード全く分からなかったね~」


「そうだな、開けられれば何か、手がかかり的何かが入ってると思ったんだけど。はぁ~あ・・・この部屋も何もなし、かぁ~」


 と部屋を後にしようとした俺の裾を、翠が引いた。


「ま、待って燐、と、扉・・・です」


「ん?」


 そう言って翠が指さす扉を見やると、そこには見覚えのある数字とアルファベットが記されていた。


「e(ei・・・・・はっ!!これって二階の部屋の扉にも書かれてたよな」


「・・・・・です」


 最初に見つけたときは、手がかりとしてさほど気に留めていなかったのだが。ここにきて同じものが見つかるとは、この意味の分からない文字にも意味があるのではないのだろうか。そもそも、扉などに書かれる文字は、その部屋の呼称を記すものだ。


「つっても、アルファベットと数字と記号で呼ぶ部屋なんて聞いたことないしな・・・それにどう読むんだ?これ。」


「う~ん、い~かっこい~あい?」


「いやまぁそうなんだけど違うだろうな・・・・・とりあえず、ほかの部屋の扉にはなんて書いてあるか調べよう」


 間違いなく何かの手がかりだろうと確信し、手分けして周囲の部屋の扉を確認した。すると、それぞれの扉にこう記されていた。



「[e8Ud#][_/3Riei][3U(h8U/ei][a#Bei][7U5U_b][4U#z]」



 これらの暗号は、すべて部屋内部の写真とともにスマホにメモを取った。記号と見比べ、その部屋の様子から意味を推察してみるが、なんとなく思い浮かんだのは[4U#z]の「トイレ」だけだった。更に、写真を撮る際に見つけた、五十音とアルファベット二十六音それぞれの記された二枚の重なった紙の一枚目には[e8USd#=ひらがな~アルファベット]と書かれていたが、全く意味が分からない。


「トイレとこの文字の関連性が全く分からないな・・・・・暗号であるにしても解き方がいろいろあるしな」


「さ、さっき見つけた、か、紙の意味も分からない・・・です」


 ぐるぐると思考を巡らせていると、同じく「んぅ~~」と考え込んでいた陽菜乃が何か閃いたようで、口を開いた。


「あいうえおの下にABCって、間違ってホチキスで閉じちゃったのかな~」


「それはないだろ、わざわざ机の上に置かれてたんだ、何の意味もないはずがない」


 陽菜乃の頭は悪くない筈なのだが、天然というか楽観的というか。おかげで考えすぎる人間である俺や翠は、空気的な面でも精神的な面でも和ませてもらっているのだが。


「ひらがなの下にアルファベット・・・・・ん~・・・・・」

 

 陽菜乃で和んだものの、紙の意味や記号の解き方を考えていると、どこからか声がした。

 

『ふふふふふふふっ!!』

 

「「「「・・・っん!!!」」」」

 

 目視する限り所在はつかめないが、響く笑い声の正体は、その不気味さから姿を見なくても『ナニカ』だと直感させられる。その笑い声の出どころを必死に探し、辺りをキョロキョロと見回すと、その様子を嘲笑うかのように『ナニカ』は高笑いした。

 

『ふふふふふふふっ!!ぶはぁーっはっはっはっは!!』


「お前っ!!!どこに隠れてやがる!!!」


『ぶはっ!!面白いねあんた、かくれんぼの鬼が、隠れてる奴に居場所を聞くなんて!!それじゃ遊びにならないじゃないか!!はぁーっはっはっはっは!!!』


「うるさいっ!!こっちは大切な仲間の命がかかってんだ、遊びなんて気分じゃねぇんだよ!!」

 

 この言葉を聞いて、『ナニカ』は少しの間沈黙した後「それじゃあぁ~」と依然、へらへらとした態度のまま前置きをしてこう言った。

 

『このままメガネの奴にただ死なれても面白くないし。あんたたちにヒントをあげるよ』


「ヒント?」


『そう、ヒント!!あんたたちヘボすぎて俺たちのことなんか一生見つけらんなそうだからさぁ~』

 

 そう言った直後に短く大笑いしてから、更に言葉をつづけた。

 

『このまんまじゃリカたちもつまんないだろうし。全く、仕方ないなぁ~~もぉ~~』


 リカ?『ナニカ』のおよそ三人のうちの一人の名前だろうか。


『いやぁ~~でもなぁ~~~、どうしよっかなぁ~~~~』


「早く言いなさい」

 

 焦らしながらこちらの反応を見て楽しんでいる『ナニカ』に、陽菜乃が冷たく言い放つと、少し気圧されたのか調子のいい笑い声は消え、しどろもどろとしながら強がった。

 

『バ、バアァァァァァカッ!!!ぜ、全然怖くなんかないからなクソばばぁっ!!・・・・・まっ、どうでもいいけど。あっ、そうそうヒントだっけ?えーっとねー、一回しか言わないからね。よぉ~く聞くんだよぉ~?』

 

 とヒントまでの間を作る。一瞬時が止まったような錯覚をした後、全員が唾をのみ込む音が聞こえたのと同時に、『ナニカ』は口を開いた。

 

『あ、別に言葉で言うわけじゃないよ?ヒントはこれ、はいあげるよ。』


「お前が一回しか言わないって言ったんだろ」


『う、うるさいっ!!!』

 

『ナニカ』がそう告げると、この場にはいない筈なのに、頭上からひらりと一枚の紙が落ちてきた。

 

「なんだこれ」

 

 落ちてきた紙を拾い上げると、そこにはこう書かれていた。


 

【_/3Riei5Ug(f】


 

「あ、こ、これ、見たことある・・・です」


「やっぱまったく意味がわかんないなこれ」

 

 記号と数字と大小アルファベットの入り混じった文章は、何度見ても、まるで澤野弘之のタイトルのように意味が分からなかった。

 

「何かの暗号じゃないかなぁ~」


「いやまあ暗号だろうと思って今まで考えてたじゃん」

 

 確かに澤野弘之のタイトルも、一見、全く意味の無いように見えるが、しっかりとしたからくりがあって意味がちゃんと込められている。この文章にも、同じように意味が込められているかどうかは定かではないが、ヒントと言って渡したからには、意図して作られた暗号なのだろう。

 

『頭の悪いあんたたちじゃあ、まだ理解できてないみたいだから、特別に大ヒントをあげよう』


「?」


『それは全部”ひらがな”だよ』


「「「「は?」」」」


『じゃ、待ってるからぁ~。せいぜい足りない頭ひねって頑張りなよ。さてさて、僕はス・マ・ホでFGOでもしながら気長にまってようかなぁ~~~、はぁーっはっはっはっは!!』

 

『ナニカ』はそう言い残すと、また高笑いしながらどこかへ行ってしまった。『ナニカ』が最後に言い残した「全部ひらがな」という言葉があらわす意味が全くわからない。それに、いやに強調していたスマホという言葉が、なぜか引っかかる。


「記号は記号だしなぁ~・・・アルファベットをひらがなに変換って言っても、トイレの扉の暗号からして合わないしな」


「暗号って言えば、金庫にもパスワードみたいなの必要だったよね~」


 その陽菜乃の何気ない発言でスマホが気になっていた理由が分かった。


「あぁぁぁぁあ!!!分かった!!!スマホを使ってひらがなにすればいいんだよ!!っていうか俺、ひらめき早っ!!!すごっ!!」


「ど、どういうこと・・・です」


「よくよく考えれば割と聞いたことあるんじゃないかなぁ~」


 加山は理解したようだが、翠と陽菜乃はまだ理解できていないようなので、「オホン」と咳払いをしてから、自慢げに説明を始めた。


「それでは説明しよう」


「うざ・・・です」


「・・・・・そ、それでは説明しよう。『ナニカ』が最後に言い残して言った言葉が重要だ」


「全部ひらがな?」


「確かにそれも大ヒントだったんだけど、本当のヒントはこっち。ス・マ・ホ、だよ。奴はヒントの裏にヒントを隠したんだ。あ、ここから長台詞入りま~す。」


「燐ちゃん誰に言ってるの?」


 お決まりの展開をしたところで、いよいよ説明に入ろう。


「それは気にしなくてよしっ!!でまぁスマホと暗号の関係なんだけど、つまりはスマホが暗号を解くための道具なんだよ。なぜかって言うと、机の上に置いてあった紙がそれを現してる。あの紙にはこう書いてあった[e8USd#=ひらがな~アルファベット]。つまりこれは、暗号の打ち込み方なんだ。翠、スマホちょっと貸してくれるか?」


「はい・・・です」


「とりあえずメモ欄でも開いて・・・これ!!このスマホのキーボード。これが暗号を解くカギなんだ」


「なんでスマホのキーボードなの?」


「陽菜乃も言ってたろ、金庫のパスワードの打ち込み画面。あれもスマホと同じ仕様だった」


「あっ!!」


「ん~と、じゃあ試しにトイレってひらがなでフリップすると、アルファベット画面の12マスを、まず左上から右下にかけて1,2,3,4,5,6,7,8,9、10とする。そして、最初の文字は「と」だから4番目のGHIマスを下方向にフリップする、でもそこは文字が振られていないから4番目の下方向「4Under=4U」と記す。で二文字目の「い」は、1番目の@マスを左方向にフリップで「#」。最後は9番目のWマスを右方向にフリップで「z」。これで「トイレ」が「4U#z」に変換できた。どう?」


「あー!!やっとわかったよ!!つまりひらがなで打つ言葉をアルファベットの画面で打ち込むだけってことでしょ?」


 やっと陽菜乃も理解できたようだった。翠も実際にやって見せればわかったみたいだし、これで本題に入れる。


「じゃあ【_/3Riei】をひらがなに直すと・・・・・出来た!!」



【おうせつしつ】



「これで、一人は見つけられるんじゃないかなぁ~」


「そうだな!!!やっと前進だ!!」


 なんとかヒントを理解して暗号を解けた喜びを、少しだけ加山と味わっていると、翠がそれならばという面持ちで言った。


「ま、まだ、応接室はみ、見つけてない・・・です。だ、だから、早く先にす、進まなくちゃ・・・です」


「少しでも喜び合ってる場合じゃなかったな。太郎が消えかかってるって時に・・・・・よしっ行こう!!」


 俺がややかっこつけ気味に熱い友情をアピールした瞬間、いつの間にか場を離れていた陽菜乃が、のんきな声で俺たちを呼んだ。


「みんな~、あったよあったよ~!!こっちこっち~!!」


「・・・・・」


 やはり陽菜乃はこういう時に限ってファインプレイをしてくる。地味な俺が一生懸命目立とうとしているというのに、そんな気持ちは露知れずというか。目立とうなんてことは、陽菜乃にとって意識することですらないのだろうから、責めることはできない。


「どうしたの~?こっちだってば~」


「り、燐、行こう・・・です」


「燐ちゃぁぁぁん?」


「だぁぁぁぁっもうわかった行くってば!!!」


 そう言って、俺は少し地団太を踏みながら陽菜乃の見つけた応接室へ向かった。『ナニカ』が出てくるまでにも、この周辺は捜索していたはずなのだが。どうやら見過ごしていたらしい。そしてついに、その部屋の前までたどりついた。


「【_/3Riei】・・・・・確かにここが応接室みたいだな。にしてもこういうのって、大体ヒントをもらってから苦労するもんだろ?それをあっさりと、まあ早い方がいいに越したことはないんだけどさ」


「あはは~、コメディー補正的なものが働いちゃって~・・・テヘッ」


「いつの間にそんなこと言うようになったんだよお前・・・」


 にしてもテヘッが可愛かった。もう一度見たい衝動に駆られるが、グッと我慢して扉を開いた。


「燐・・・は、早く開ける・・・です」


「そ、そうだな、気を取り直して」


(ギィィィ・・・・・)


 扉を開いた先には、誰もが予想だにしない衝撃の展開が!!!!!!!!!!!!というわけでもなく、ただ平然と世間一般的に知られている、至って普通な応接室が広がっていた。


「なぁ~んだ、なにもないんじゃないかなぁ~」


「まぁまぁ、そう早とちりするなよ。さっきの暗号には、応接室以外に別の単語も付け加えられてただろ」


 俺のその言葉を聞いていた翠は、素早く暗号の書かれた紙を取り出して、スマホを使って解読し始めた。


「5番目の、し、下の・・・・・で、できたです!!」


 解読し終えた翠は、久しぶりに見せる満面の笑みで言った。この世のものとは思えない可愛さで微笑む翠の顔を見て、思わず声を漏らしてしまった。


「んふぅ~えらいなぁ~翠、かわいいなぁ~もぉ~」


「も、もっと、ほ、褒めて欲しい・・・です」


 そう恥じらいながら求めてくる翠を見て、より一層んふぅ~してしまったのだが、その様子を見ながらあきれ顔で加山が言った。


「んふぅ~とか言っちゃう燐くんは、かなり気持ち悪いんじゃないかなぁ~」


「う、うっさいわっ!!大体お前だって、小声でかわいいって呟いてただろうが!!」


「それは気のせいなんじゃないかなぁ~」


「い~やっ!!絶対言ってましたぁ~、俺は聞いてましたぁ~」


 どうでもいい争いを、俺と加山が繰り広げていると、二人の方にポンッと手を置いて無言の重圧を放つ者がいた。


「燐ちゃん?」


「は、はいっ!!!」


 燐ちゃんと発言した時点で、無言の重圧ではないのだが、それは気にしない。


「ここまで来たんだから、ね?」


「は、はいぃぃぃぃ!!す、すんまっせんしたぁぁぁ!!」


「わかったなら良し!!太郎くんの命もかかってるんだからね?それで翠ちゃん、暗号の答え教えてくれる?」


 いつの間にか話の進行係が変わってしまったが、何も戸惑うことなく、翠は陽菜乃の要望に答えた。


「【_/3Riei5Ug(f】こ、これは・・・おうせつしつのたんす・・・です!!」


「よしっ!!タンスだ!!タンスを探せ!!」


 無理矢理とも思えるが、話の進行係に戻った俺の指示を聞いて、他の三人もタンスを探し始めた。案の定、家具の中でも大きい部類であるタンス(別名:た〇し城)はすぐに見つかった。


「はぁーっはっはっはっは!!!やっと尻尾をつかんだぞ~、よしっ!!じゃあせーので開こう!!」


「「「うん」」」「・・・です」


 この時の燐たちは、なぜか少しだけ達成感や高揚感に似た気持ちでいた。しかし、燐たちは思い知らされることになる。自分たちが既に元の生活には戻れないところまで『ナニカ』に踏み込んでいることに。


「せーのっ」


「「「「みーつけたっ!!!」」」


(ギギィィィ・・・・・)


『・・・・・ニヤッ』



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