第2話 ドキドキ!恐怖の館でかくれんぼデスマッチ(ポロリもありますよ)
今回で物語も少し動き始めたかなといった内容になっております。
前回も読んでいただいた方は、是非。
「あぁ~~だるい、くらい、遠い、足痛い、疲れた~。もう歩きたくないぃ~」
「燐は体力がなさすぎる・・・です」
「まだ間に合うよ?引き返すならここらがちょうどいい感じだよ?やめとこうよ~、さすがに見に行くのはやめとこうよ~」
「なにうだうだ言ってんですか。大体、あんたが証拠見せろだなんだ、それを見つけたのは何時何分世界が何周回った時ですかぁ~、とか言うから見に行くことになったんじゃないですか」
というわけらしく、俺たちはコトリバコの実物を見るべく、村長の屋敷へと向かっていた。村長の屋敷は、お寺から徒歩で一時間程なのだが、この道程が険しすぎる。余りに疲れすぎて、記憶まであやふやになってきた。
「あれ、俺そんな懐かしいこと言ってたっけ・・・、記憶にございませ~んっ!!テヘッ!!」
「燐・・・十分元気そう・・・です。それなら・・・屋敷まで・・・いける・・・ですっ!!」
「なんか翠ちゃん、いつもよりテンション高いみたいだね」
どうやら、相当なオカルトマニアの翠は、コトリバコを見れるとなってテンションが上がっているらしい。普段は大人しい子が、こうしてルンルンと歩いていると、いつもよりもかわいく見えるのはなぜなのだろう。
「やっぱり・・・捨て犬を保護するヤンキー然り、ジャイ〇ンを捕まえて『あんたって子は・・・やっぱりバカだね・・・』と抱きしめ涙する母ちゃん然り、人間とは、普段とは違う一面に萌えてしまう生物なのだな・・・・・」
「さ、さすがに母ちゃんには萌えないんじゃないかな~・・・」
と苦笑しながら加山は言った。そんな他愛のない会話で、長すぎる旅路に折れそうな心を支えていると、翠がより一層声を躍らせて言った。
「・・・はっ!!!見えた!!見えたよみんな!!・・・なのです」
「はぅあっっ!!!!!」
まるで二次元作品でよく見るような、初期の緑色大魔王様や、とがってた頃の戦闘民族の王子が「気」を練っているときの背景のような、そんな禍々しいオーラを放ってしまっている屋敷を見た瞬間、身体が本能的に近くの垣根に飛び込んでしまっていた。
「翠ちゃんホントに楽しみなんだね~。燐ちゃんはすご~く怖がってるみたいだけど?」
そんなドストレートに心中を見透かされた言葉に、未だ恐怖の拭い去れない声で反論した。
「べべべ別に怖くないし。いやこれはあれだから、なんかちょっとフカフカそうな垣根見つけたから、身体が思わずダイブしちゃっただけだから。勘違いしないでよねっ!!」
意味の分からない言い訳に、ほぼほぼ呆れた声で太郎は言った。
「いや思いっきりケツに枝突き刺さってんですけど・・・・・勘違いする前に見え見えなんですけど・・・」
「燐くん・・・それは無理があるんじゃないかな・・・・・」
こうも全員にビビっていることを見抜かれてしまっては、どうしようもないだろう。俺は心の底からビビっていることを認め、屋敷に潜入するのはよしておこうと提案した。
「あーはいはいはい分かりました、わーかーりーまーしーたぁ~。ビビってますよえぇ、心の底からビビりまくってますよはい。で?それが?なにかいけないんですか?」
「あんたが一番ビビってることを気にしてんでしょ・・・」
痛いところを突かれた。このパターンはあれだ。クラスの女子にやれあの子は顔のバランスが悪いだ、やれ髪型が悪いだなんだ言っている奴は、大概ブスかそこまで容姿のいい奴ではない。自分にコンプレックスを感じているからこそ、他人のその部分に注目し、貶めることで安心感を得ているのだ。
今の状況はまさに、その反対だ。
「・・・・・き、気にしてないし」
「気にしてる・・・です」
「・・・気にしてないし」
「気にしてるんじゃないかな~」
「だから・・・気にしてないから」
「燐ちゃん気にしなくていいんだよ?」
「だから気にしてないって・・・」
「気にしないでください」
「気にしてねぇって言ってんだろぉがぁぁぁ!!!ハァッハァッ・・・!!」
思わず大声をあげてしまった。村長の屋敷が目の前にあるというのに、こんなに騒ぎ立てたら間違いなく何かが来る。
「ハァッ・・・ハァッ、とにかく!絶対ヤバいからこんなとこ!!だってほら見て!!昼間と全っ然様子が違うじゃん。お昼は眠たくてトロ~んとしてて可愛いけど、夜になると突然奇声上げながら死体食い漁るタイプの奴じゃんこれ!!されちゃうよ~、死体にされちゃうよ~、いやもうこれ完全に死体だよ、もう絶対ここに住んでるジジィも死体だよ~・・・・・確かに思い返してみると歩く死体みたいなとこあったもんな~村長」
「いや全然意味わかんねーよ」
(ヒュヒュヒュヒュヒュンッ・・・ストトトトトッ!!!!!!!)
風を切る鋭い音が聞こえた瞬間、五人全員の足元に一本の矢が突き立っていた。
「「「「「え?」」」」」
「こんな時間に騒がしいと思って来てみれば。誰が歩く死体じゃばかもんが。そんなにされたいなら死体にしてやろうか。まったく、死体死体言うから、またどっかの婆さんが死んだのかと思ったわい」
何かが来る、なんてかっこつけて言ってたけど・・・・・村長かよぉぉぉぉぉ。マズいことになった。さすがにこの状況に危機を感じたのか、陽菜乃も翠も加山もチラチラと俺を見て何かを訴えていた。この場を俺一人の力で切り抜けることは不可能なため、俺たちは村長を少し待たせ、木陰に隠れ作戦会議を始めた。
「り、燐ちゃんマズいよぉ~、どうしよう」
「どうするも何もごまかすしかねぇだろ」
それしかないんじゃないかな~、と相槌を打ち、一拍おいて「あっ」と何かに気付いたように囁いた加山に、俺たちが期待の目を向けていると加山は言った。
「って言ったって、どうやってごまかしたらいいのか俺にはわからないな~」
「はぁ~~っ、そんなことだろうとは思ってたよ・・・」
「で、でも。確かにす、翠も思いつかない・・・です」
確かにスイの言う通りだった。実際のところ、俺だって全くもって考えがないのだから、加山を責めることは出来ない。とは言えどもどうにかしなくては。このままだと村長が手にしているあの立派な弓矢で、射貫かれるに違いないと、必死に思考を巡らせるのだが・・・・・。
「う~~ん、なにかいい手立ては・・・」
「もうさ、燐ちゃん行っちゃいなよっ!!」
「はぁっ!?おまっ、急に何言いだすんだよ!!」
「だってもうどうにかできそうなの燐ちゃんしかいないもん!!」
こいつは本当に何を言っているのだろう。
「いやっ、だから俺も思いついてないって・・・!?」
「燐、行ってきちゃえばいいんじゃないかな~」
そう加山が言いながら、有無を言わさず俺を村長の前に投げ飛ばした。思い切り地面に腰を強打して俺が痛がっていると、その顔を村長がじっと覗き込んできた。
「大丈夫かの」
「そ、村長さん?・・・あ、あっはは~、ききき奇遇ですね~こんなところで。何してるんですか?」
「いやわしが聞きたいんだけど」
「お、俺もよくわからないというか・・・あっはは~・・・」
ごまかしきれないことを笑ってごまかしていると、太郎がおもむろに口を開いた。
「あ~、それがですね、僕村長さんにっ・・・!?」
俺はとっさに太郎の口へ、近くに落ちていた拳サイズの石をねじ込み黙らせていた。この状況をどうにか切り抜けようと、必死に思考を巡らせているというのに、太郎という男はなぜここまで空気を読めないのだろう。一方突然口に石を詰め込まれた太郎は、息を詰まらせ地面に突っ伏し、陽菜乃たちに介抱されていた。
「うわぁ~、突っ伏しじゃ~ん」
「大丈夫じゃないかな~」
「太郎死ぬな・・・です」
そんな陽菜乃たちの様子を見て困惑した村長が、真顔でボケる佐藤二郎のように言った。
「え、急になにしとんのお前」
まさか、村長に隠し事というか、潜入しようとしていたことなどバレるわけにはいかなかったとは言えず。俺は口ごもりながら言った。
「こ、ここここいつが急に、村長さんには死体になってもらいますとか言い出すから」
「えそうなの?いやぁ~、そんな風には聞こえなかった気がしなくもないんじゃがの~」
「あ、あれーお、おおかしいなー、確かに言ってたんだけど、なー」
「あ、そう?じゃあちょっと、殺られる前に殺っとかなきゃいかんの」
—————ギクッ!おいおいおいマジかよこのジジィ!!登場の仕方も言動も行動も、どれをとっても完全にサイコパスじゃねぇかっ!!
殺っとかなきゃいかんの。そう言って村長は、弓を引いた。太郎を介抱していた陽菜乃たちも、村長のその姿を見て咄嗟に太郎に覆いかぶさった。
「ちょちょちょちょちょ!!!タイムタイム!!村長さんストーップ!!」
そう俺が叫ぶと村長は弓をおろし、二カッっとした笑顔をしてこう言った。
「いやぁ~はっはっはっはっ、冗談冗談。ビビった?ねぇビビった?ビビったじゃろぉ~ンンン?にゃぁーっはっはっはっはっは。」
俺も陽菜乃も翠も加山も、全く状況が呑み込めないでいた。そんな四人の姿を嘲笑うかのように、カラスが鳴きながら、太郎の頭にフンを落としていった。その様子を見て、またも村長は大笑いし、言った。
「にゃぁーっはっはっはっはっは。しかしすまんのぅ。屋敷の周りをうろつく不審な連中がいるってばぁさんが言うもんでなぁ。どれ懲らしめてやろうと思ったんじゃが。けど、すこしやりすぎてしまったかのぅ~、にゃぁーっはっはっは」
「ちょちょちょちょちょ!!!タイムタイム!!」
「なんじゃ、もう弓はおろしたじゃろう。」
「いやそうじゃなくて・・・」
俺は深くため息をしてから、更に深呼吸をして言った。
「じゃあ今までのは全部芝居だったの?」
「だからそうじゃって言っただろうに。よほどわしの演技が上手かったんじゃな~、にゃぁーっはっはっはっ」
そう言って満足げに笑い続ける村長に対して、陽菜乃が今までにないオーラを放ちながら、短く声を発した。
「は?」
「はっはっはっ・・・へ?」
「へ?じゃねぇだろクソジジィ。お前、そんなもん持って人を怖がらせておいて、なに楽しそうに笑ってんだ?不審者を懲らしめようとそんなもん撃ってんなら。自分がやられる覚悟もちゃ~んとしてあるんだろうなぁ?」
久しぶりにこのモードの陽菜乃を見た。俺や、その周辺の仲間に命の危険が訪れたと陽菜乃が感じた時、稀にブチギレるのだ。なお、このモードになった陽菜乃は、声はいつも通りだが戦闘力が、精神と時の部屋での修行を終えた悟飯並みに上がっている。
「ほらどうした!かかって来いよ!じゃねぇとこっちからいっちまうぞ!!かぁぁぁぁめぇぇぇぇはぁぁぁめぇぇぇ・・・・・」
やはりこの状態の陽菜乃は違う、火力が違いすぎる。
「いや、じゃからそのあれは冗談でその、弓矢足元に撃ったことなら謝るからだからほらそのあ・・・」
「魔貫光殺法!!!」
「ぐわぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・ラ・・・ラディッ・・・・・ツ・・・・・ガクッ」
「今ラディッツって言ったよね」
「「うん」」
「・・・です」
こうして陽菜乃は、亀仙流魔貫光殺法で村長を気絶させると、元の陽菜乃に戻った。元に戻った陽菜乃にケガはないかと心配していると、先ほどまで気絶していた太郎が目を覚ました。
「・・・んっ、んぅぅぅぅっ・・・。あれ?ここは・・・・・」
「村長の屋敷だろ」
「屋敷・・・あっ!!そうか!!コトリバコを見に来て、それで確か・・・?」
と言って、太郎は何かを思い出したように俺を見つめた。
「い、いやぁ~あ、あぶなかったなぁ~、ほほほほんと陽菜乃がいてくれて助かったや~」
「あんた・・・今度やったらケツに溶けた鉛ぶち込みますからね」
「そんなことしたら、太郎くんが陽菜乃ちゃんに魔貫光殺法ぶち込まれちゃうんじゃないかなぁ~」
「間違いないの・・・です」
というやり取りをしていると、太郎は屋敷の庭に転がる村長を見つけて言った。
「あの~・・・あれ何ですか?」
「村長だよ~」
「い・・いや村長って・・・」
「村長だよ~」
「一体どうしてあんなことに・・・!?」
ここでいちいち太郎に説明するのも面倒だ。それに太郎は陽菜乃のあの姿を知らない方がいいだろう、と思い俺は適当にごまかした。
「それが、コトリバコの怨念だかなんだかであんな姿に・・・・・な、なあみんな?」
そう翠と加山に同意を求めると、二人は慌てながらも頷いた。そんな二人の同意に、太郎はショックを受けたように言った。
「・・・そんな・・・コトリバコにそんな力があったなんて・・・・・」
「だろ?コトリバコにこんな力があったなんて・・・クソッ!!俺たちには何も出来なかった・・・何もできない以上、心苦しいがこんな危険な場所からは、一刻も早く離れた方がいいだろう」
そんな白々しいことを俺が話していると、太郎が何かを呟いた。
「・・・・・なきゃ・・・・・」
「なんて?」
「・・・・やらなきゃ・・・・」
「なにを?」
そう俺が聞き返すと、太郎はまっすぐと屋敷を見据えこう言った。
「・・・・・やらなきゃ・・・僕たちが・・・コトリバコの怨念を晴らさなきゃ!!」
「おまっ、なに言ってんだよ!!無理に決まってんだろそんなもん!!!ダメ!!帰るよ!!」
謎の使命感に燃えている太郎を、俺が駄々をこねる子を引っ張る母親のようになだめていると、翠が悲しそうな声でつぶやいた。
「えぇ・・・コトリバコ見れないの?・・・・・です」
「いや、でも今回はさすがに・・・」
ここで陽菜乃が余計な一言を挟んだ。
「せっかくここまで来て村長もやっつけたんだし、わたしもみたいな~!」
「え?今陽菜乃さん。村長をやっつけたとか言ってませんでした?」
「言ってない言ってない気のせーい!!やっぱりお前どこか強く打ったんじゃないじゃないか?メガネとか」
「メガネ打っても変わらんわっ!!まったく、さっきまで気失ってたんですから、少しは労わってくださいよ」
「そんなツッコミできるくらいなら大丈夫そうだな。どこも変わりはな・・・・・」
—————か、変わってるぅぅぅぅ!!メガネのフレームが怨念の塊みたくなってるぅぅぅ!!なにあれ、あんなメガネ見たことないんですけど・・・あれ?よく見ればレンズにも・・・・・なんか血の指紋みたいのいっぱい付いてるぅぅぅ!!おいおいおいまじかよ、コトリバコの怨念感染力強すぎるんですけど!!、なんで太郎は全然平気なんだよ・・・・・はっ!!いやかすかだけど太郎の肉体の方が・・・・・透けてるぅぅぅ。
どうにかせねばと思い、俺は太郎に向かって質問した。
「あ、あの~太郎く~ん、そのメガネ、レンズがだいぶ汚れてるみたいだけど?」
「・・・・・」
聞こえなかったのだろうか。
「た、太郎く~ん。俺たちのこと見えてる?」
「・・・あぁ、レンズが汚れていて顔がよく見えんな・・・」
「だ、だから言ったろ~?ちゃんとレンズくらい綺麗にしとけよ」
「だがしかし・・・今ならよぉ~く見えるぞ?」
なにやら太郎の様子がおかしい。
「太郎くん?」
「お前たちの死ぬ未来がなぁぁぁぁ!!!!」
「「「!?!?!?!?」」」
「で・・・ですーーーっっ!!!」
太郎?正確には、某ヴィジュアル系バンドの閣下のような姿をした太郎は、そう言って俺たちに突然襲い掛かってきた。しかし、俺の身の危険を一早く察知した陽菜乃は、またあのモードになっていた。
「ひ、陽菜乃さまぁぁぁ!!助けてくれ・・・!!」
「魔貫光殺法!!!!」
陽菜乃の放った魔貫光殺法は、見事に太郎のメガネを打ち抜いた。一方、メガネを打ち抜かれた太郎閣下は、その勢いを失くし地面に倒れると、元の姿へと戻った。こんなにもあっさり倒されるとは、やはり太郎は閣下になっても太郎だったという事か。しかし太郎のもとへ駆け寄ると、メガネは粉々に砕け散り、太郎の身体の透過がどんどん進んでいた。
「太郎!!おい太郎起きろよ!!」
「太郎くん早く起きた方がいいんじゃないかなぁ~」
そして陽菜乃は粉々になってしまったメガネを集めて言った。
「太郎くん、しっかりして太郎くん!!」
「それは太郎だけど太郎じゃないから!!今はそんなことしてる場合じゃ・・・!!」
「太郎・・・起きてほしい・・・・・です」
翠は今にも泣きだしそうだ。こんな状況下で、泣きたくならない方がおかしいだろう。まさか太郎の本体が本当にメガネだったなんて。そんなことは誰も知らなかったのだから。それになんだか、この屋敷に着いたときのような、若干コミカルだったあのおぞましさが無くなり、コナンの、ある図書館回のような恐ろしさへと変質している。そんな異変に皆が気付き始めたころ、突然、背筋を冷たい舌でなめあげられるような不快感に駆られ、後ろを振り向いた瞬間。気を失っていたはずの村長が不可思議に立ち上がり、白目を剥き、気を失ったまま話し始めた。
『ねぇねぇお兄ちゃんたちさ、なんか楽しそうだから私も混ぜてよ。きゃははっ!』
その声は完全に村長の物ではなかった。だが、口調は幼そうな少女なのだが、それとも別のモノのような『ナニカ』だった。
「お、お前は誰だ・・・!!」
『んなこたぁどうでもいいだろ。それよりお兄ちゃんたちさぁ、遊んでくんないならこれ。返してあげないよ?』
そう言った『ナニカ』の声はまたも変わり、口調もまた男の子の様なモノに変わっていた。そして『ナニカ』が手にしていたのは、太郎のメガネだった。
『友達は三人くらいいるんだけど、三人じゃできる遊びも少ないんだ・・・お兄ちゃんたちを入れれば七人!!これならかくれんぼが良いかな!!よ~しじゃあ、特別にお兄ちゃんたちが鬼でいいよ!私たち隠れるのが上手いから。きゃははっ!』
どんどん話を進めていく『ナニカ』は、楽しそうな足取りで屋敷へと向かっていった。
「ちょ、ちょっとまて、お前・・・お前たちは一体・・・・」
『つべこべ言ってないで早く私たちを見つけないと、そのメガネのお兄ちゃんが消えちゃうよ?私たちはこのメガネを通してそのお兄さんの生命力を吸ってこの場にいるんだよ。だから、急いだほうがいいんじゃないかな~。きゃははっ!』
そういう事だったのか。いや、未だに理解不能というか思考がついていけていないが、それは他の三人も同じようだ。ただ、普段メガネにかけられている太郎が、本体であるメガネと離れたことによって何らかの反応が、なんていう考えは間違っていたようだ。とにかく、太郎が本当に消えかかっている以上、『ナニカ』の遊びに参加し、メガネを取り返して生命力を吸われるのを止めるしかないようだ。と考えていると、『ナニカ』からかくれんぼに参加する意思確認が来た。
『で?お兄さんたち。やんの?やらないの?』
俺はもちろん決まっているのだが、一応みんなの方に顔をを向け確認した。
「みんな、やるしかなさそうだぜ・・・」
「「「うん」」」
「です・・・!!」
翠も理解は出来ていないようだったが、友を救うためとあらば覚悟を決めたようだ。その証拠に、点々よりも前に「です」がきて、更にビックリマークが付いていた。
『よしっ!!じゃあ決まりだね!隠れていいのは屋敷の中だけ!制限時間はメガネのお兄さんが消えるまで!ちなみに、一度消えきったらもう二度と戻れないからねっ!それじゃあ十秒数えたら「もういいかい?」って言ってね!よ~しじゃあ数えて!』
そう言い残して『ナニカ』は屋敷へと隠れこみ、村長の身体はまた力を失い倒れた。村長と太郎を安全そうな場所へと寝かせ、俺たちは十秒を数え始めた。
「「「「い~ち、に~い、さ~ん、し~い、ご~お、ろ~く、し~ち、は~ち、きゅ~う、じゅう・・・・・もうい~かい?」」」」
『も~~い~~~~~よっ!!!きゃははっ!!!』
たった今、もういいよの合図とともに、不気味な笑い声がすっかり暗くなってしまった夜空に響き渡り、太郎の命を懸けた『ドキドキ!恐怖の館でかくれんぼデスマッチ』が開幕したのである。