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魔界な人々

平魔界武官な私と超高位魔族な幼なじみ

小説家になろう投稿四周年記念作品です(正確には2012年11月16日が初投稿です)

「やっと見つけた、ライ」

「え? 何? 」

後ろから抱きしめられたので肘鉄を入れて体勢を崩したところを投げたら金の長い髪の超美形でした。


目を回してるよ……あ~しかも見た顔だぁ。


「アムリント武官、その方は魔王陛下の兄上様だ!! 」

上官が青くなって飛んできたところで私の方が気を失いたくなった。


なんで魔界軍の修練施設に超高位魔族がいる〜。

たしかに故郷の知り合い(幼なじみ)だけどさぁ〜。


あんたがめんどくさいから故郷にかえんないんじゃないかよ~。


「ライがことごとく僕の求婚無視するからじゃないさ」

魔界軍平武官の私はうるさい上官にせめられているうちにヘラヘラと起き上がった幼なじみを睨みつけた。

「イレギオン様、申し訳ございません」

上官が私の頭を地面につけさせるように無理矢理下げさせながら自分も頭を下げた。

「大丈夫だよ、ライは相変わらずスパイシーな性格してるなぁ」

ヘラヘラとイレギオンが笑った。


翠本家(すいほんけ)のイレギオンは当代魔王陛下イルギス様の兄上で超上級人型魔族だ。


私はその魔界の翠地方の出身の上級人型魔族がメインのちょっとだけ竜人の女だ。

上級人型魔族は女が生まれにくいので男が大事にするあまり囲い込んで家から出さない、混ざってる私も例外でなく……でも竜人混じりの活発さで町に出て襲われそうになってるイレギオンを助けたのが出会いだった。


当時は先代魔王が滅して次代魔王争いの真っ最中だったから最有力候補の兄が人質にと狙われたらしい。


「まだ……求婚……玉ねぎの方が食えるからいいよ」

「アムリント! 兄上様になんという事を! 」

上官が怒鳴りつけた。


あ~グランド負荷つけて10周ですか?

面倒くさい。


「僕はライと話てるんだけど? 」

冷ややかにイレギオンが上官を見た。

失礼いたしましたと慌てて上官が逃げていった。


こいつも別に弱いわけじゃないからね。

金の長い髪に翡翠色の目の優男風(・・・)の容貌のせいで誤解されてるけど。


あ~面倒くさい……後々うるさいだろうなぁ。

ため息をついて修練場から叩き出した。


「私の邪魔しないで! 」

こいつから逃げるためにどんだけ苦労したと思ってるんだ。

「ライ〜」

うるうるしたってだめなんだからね。


はあ……面倒くさい。




「それでアムリントが珍しく罰修練してたのか〜」

ひとしきり笑って栄養ジュースを口に含んだ同僚で吸血族のピアリールを睨みつけた。


魔界軍の食堂は本日も盛況である。

量だけはドーンとある料理にスプーンを入れた。


「先輩ってお嬢様なんですね」

後輩でウサギ獣人族のハウーラが感心したように人参スープのマグカップを持った。

「私は一般魔族だよ」

父ちゃんはハーフ竜人でご当主様の護衛してたけどね。

母ちゃんは……上級人型魔族なのにどこで父ちゃんとあったんだろう?

「魔王さまのお兄様に求婚されるんですからお嬢様だと思いますけど」

「イレギオンとは幼なじみなだけだよ」

うるうるした目でハウーラが私を見上げたので視線をそらした。

ついでにカツカレーをすくった。


あ~面倒くさい。

私がクオーター竜人ってくらい面倒くさい。


腕に浮かぶ緑の鱗を見ながらため息をついた。

いい加減居直って半袖も着られるようになったけどね。

人型魔族の体型に竜人の鱗って目立つんだよね。

普通は他種族に性別がわかんない体型なのが竜人族だしさ。

顔に鱗がないだけいいかとカツカレーを口に運んだ。


今日もこの食堂のカレーはスパイシーで美味しい。



アムリント、ちょっと来いといつもの上官が食堂まで顔を出した。

残ってるカレーを横目についていくと軍司令部に来ちゃったよ~。


「アムリント武官、魔王兄イレギオン様の黄地方視察の護衛を命じる」

魔界軍アウスレーゼ中将が私をみた。

鱗家の本家筋の竜人な武人は迫力満点だ。

「私は護衛官ではございませんが? 」

「わかっている……イレギオン様のご命令(ごり押し)だ」

アウスレーゼ中将は苦虫を噛み潰した顔をした。


うわー場所ばれたら職権濫用してきたよ。


「それに黄地方は今、大罪人オストロフィスが潜伏してるそうですから魔界軍人の方がいいのです」

黒い短い髪と銀の目の丸い龍人が小型通信機の画面から顔をあげた。


うゎー天才軍師って名高いエリカスーシャ上級士官だ。

なんか丸い軍人がいるなぁと思ってたよ。

どこからオストロフィス情報なんて仕入れるんだろう。


「そうだな……黄地方軍は最弱軍だしな」

アウスレーゼ中将が腕組みした。


地方軍で最強を誇る白地方に比べればどこだって弱いですよ。


なんせ魔界軍エリートを排出する地方軍だしね。

アウスレーゼ中将とかエリカスーシャ軍師とかの出身地ですもんね。

魔王陛下の懐刀は白家ですもんね。


うちの翠地方(すいちほう)だって強いんですよ……主に軍事系じゃない魔力系ですけどね。


「衣装はイレギオン様が準備するそうだ」

「はい……?……軍服ではいけないのですか? 」

「イレギオン様の案に乗りました」

エリカスーシャ軍師の微笑みに嫌な予感を感じた。


翠地方の女装って……面倒なんですが……



黄地方は獣人が沢山住んでいる森林地帯に街のある地域だ。


あの大樹に造られたマンションとか中みたいとベールの陰から透かし見た。


「足元は大丈夫かい? 」

まったく私の手を握って離そうとしないイレギオンを睨みつけた。

あんたがこんな格好させなければバク転しても転がらないわと心の中で悪態をついた。


こんな格好とはつまり翡家の女性用、特に貴婦人用の外出着である。


頭の先から足の先まで覆う緻密に編まれた薄水色のレースのベールは目の部分まで特殊な編み方になっていて外からまったく目がうかがえない。


中から見えるけど視界は当然悪い。

中のドレス……そうドレス(・・・)にいたっては指先まで見せない徹底ぶりで藍色のレースがふんだんに使われている。


ドレスのしたも足先まで見せない靴とレースのタイツだ。


ともかく徹底して見せない晒さない路線が翠地方の男性の趣味だ。


私は貴婦人じゃないもーん。

こんな格好させられたんはイレギオンを助けたあと翠本家の奥苑(オクゾノ)に出入りが許されたっていうか……やつに連れこまれてひたすら綺麗なドレスを贈られて以来だよ。


奥苑の中ではレースのベールは脱ぎますよ。


あんときは恐ろしかった。

イレギオン狙いの上級魔族のお嬢様とかに滅されるかと思った。


だから……イルギス様の軍隊に加わると書き置き残して逃げました。


愛してるのもいつも一緒に居たいのも求婚も遊びなんでしょう? 


なんとか生き延びて出世させてやるという魔王陛下(イルギス様)にどうか下っ端でイレギオンにバレないところでと懇願したら面白がられて今の位置に……持ったほうかなぁ……魔王陛下からは兄上にバレても知らんって笑われてるしね。


パートナー次第で外出るときの格好が決まるしね。

魔王妃殿下(ミゼル様)とかはベールとか着てないしなぁ〜。



街の道は木の上と下に立体的に作られている。

そこを黄地方の獣人たちが軽やかに動いてるのが見える。


「こちらはメインストリートでございます」

「賑やかだね」

美しい毛並みの狼獣人の女性……黄本家の次代当主らしい……が微笑んだ。

微妙に私に悪意の目線を感じる。

要注意魔族だな。


魔界軍人だとバレてないと思うけど。

イレギオンには護衛官の格好をさせたハウーラとほんもんの護衛官でアウスレーゼ中将の婚約者のジーさんもつけてるし……


いざとなったら脱げるように最低限の格好はしてるしね。


「あの木彫の髪飾りなんか君に似合いそうだ」

イレギオンが甘く耳元でささやきながら私を気遣うように歩きだした。

この格好に時はあまり声を出さないと打ち合わせたので小首をかしげた。


髪飾りいらないよ。

それよりあっちの武器屋行きたーい。


体術も得意だから今の武器なし状態でも全然大丈夫だけど。

本当は剣士なんですよ、私は


やっぱり短剣の一本は持ってたいよね。

横目で武器のショーウィンドウを見ながら装飾品店に連行された。


黄地方は名物が木工細工らしいことはとってもわかったけどその繊細な髪飾り、このてるてる坊主みたいな格好のどこにつけるんですか〜。


いらないです〜。



大樹を利用して造られた黄地方の屋敷の部屋に入りカーテンを締めてからベールを脱いだ。


イレギオンのやつが一緒の部屋がいいと貴公子かぶりの口調で主張したのでもちろん同じ部屋だ。


防御防音の結界を張った。


「似合ってるよ」

イレギオンが木工細工の髪飾りを私の髪にあてて髪にキスした。

「無駄遣いです」

「そうかな? ドレスに合ってるのに、ライ……ライラリーン、男がドレスを贈るのは」

それを脱がすためだよとイレギオンが肩をつかんできたので蹴り倒した。


「イレギオン様」

「ライさん、やり過ぎると」

ジーさんとハウーラがあわててイレギオンに駆け寄っておこした。


大丈夫だよ、気にしないでと脳天気に言うイレギオンに昔を思い出してムカついた。


「本気じゃないくせに、聞いたんだ」

「ライ? 」

頭をひやしてきますと私はベールを被ってバルコニーに逃げた。


聞いたんだ……遊びなんでしょう?

しょせん混ざり者だもの。


バルコニーから森と建物の融合した街並みが見えた。


まだ、気にしてたんだと思い知る。

私は……少女の頃、イレギオンと出会った。


翠地方の街は男性と他地方の男女が出入り可能な表街と地下通路でつながった翠地方女性が主に暮らしている裏街がある。


裏街にも広場はあるしにぎやかだけど、お父さんに似て元気な私にとってはつまらなかった。



だから……あの日……抜け出した。


表街は裏よりにぎやかで、今考えると魔王後継争いの真っ最中でよけいだったんだろうけど……少女な私は大喜びでかっぽした。


男装してたんですよ、一応。

修練用の服がズボンだったからね。

修練着一式つけてきたんで防具と剣も持ってきちゃってたよ。


海とかげの串焼きにヨダレを垂らしてたら目の前で金の髪の美少年が腕を鎌に変化させた青緑の男に襲われてるのが見えてとっさに護身用の短剣を飛ばした。


咆哮する鎌男の肩に短剣は深々とささった。

腰の剣を抜いて美少年を後ろにかばった。


『クソガキ邪魔するな!!! 』

鎌男が鎌を振り下ろした。

星鉱物の手甲で防御して剣で胴をないだ。

嫌な感触とともに緑色の血が吹き出た。


ぐおおおと鎌男が無茶苦茶に振り回す鎌に首を持って行かれそうになって避けたら肩を切られた。


激痛に気が遠くなりそうだった。

でも……弱いものを護るのが武人だもんね。


迫りくる鎌に剣を振り上げた。

瞬間に何かなんかに当たった。


『小さな姫君、これ以上お転婆は行けないよ』

澄んだ美声がして拘束シールドが鎌男の周りに展開していた。


『若〜』

『ヤファルード』

向こうからかけてくる竜人にしては細身の護衛官を見て私は崩れるように座り込んだ。


ご無事でございますか? 

その女の子が助けてくれたから


少し会話が遠い……細身の竜人がしゃがみこんで私の様子を覗き込んだのはわかった。


『ライ? 』

『お父さん……』

細身の竜人、父親がいればあとは大丈夫と私は意識を手放した。


次に目が覚めたとき病院でお母さんに泣かれた。

お父さんには複雑な顔で褒められてやっぱり怒られた。


その時、美少年は翠本家の次代当主イレギオンだと知った。


ノックがされて母親が開けて固まった。


純粋な上級人型魔族同士の血を引く雲の上の存在と出会った。


『小さな姫君、助けてくれてありがとう』

麗しい高位魔族はわざわざ裏街の女性用の病院に……家族の男と女性しか入れないはずの病室に権力を使って入り込みやがった。


上級人型魔族なのにお母さんは気絶寸前だった。



その後、翠本家に招かれてきらびやかな世界にクラクラしたよ。


イレギオンに贈られたドレスの山と甘い言葉にクラクラして浮かれてたといえば浮かれてたけど。


奥苑の廊下をなれないドレスでイレギオンに会いたくて足早に歩いていたら見慣れた金髪を石造りの中庭風ホールの噴水の前でみつけた。


声をかけようとすると豪奢な金髪の美女が噴水の影から現れてイレギオンの腕に絡みついた。


『小さな私の姫君と呼んで下賤な混ざり者を寵愛なさっているそうですわね』

『あれは遊び……』

イレギオンが言いかけたところで聞いていられなくなって家に逃げ帰った。


その数日前の高位人型魔族のお嬢様にお前なんて滅すればいいと叫ばれて殺されかけたのも……あと引いてた。


あの時イレギオンが助けてくれなければ、いくら上級未人型魔族メイン竜人でも未熟だった私は滅してた。


まあ、あの魔王位争奪戦争でかなり高位の魔族を滅したり魔王様が対抗馬を滅したりした時も最側でなぜか戦ってたし、今は魔王様直属の平武人なんで今ならあのお嬢様ヤれるよ、さくっとね。


ちなみに魔王様にその後スカウトされて翠地方を出たのでその後どうなったかは知らない。


魔王近衛兵士長とか魔王軍将軍とかイルギス様が恐ろしい地位を用意してくれたけど……それすればイレギオンが手に入るかとちょっとだけ思ったけど……


過ぎたる力は身を滅ぼすもん。

速攻で断ったらイルギス様に笑われた。


その後の平和な生活……見つからなければ、こんなに悩むことなかったのに……


まだ、あきらめきれないなんて……


森に囲まれた家々の明かりをみてため息をついた。


「ライ」

甘い美声が後ろから聞こえる。

もう聞くこともないとおもっ……あれ……なに?


大樹の上になんかいる。

燐光? 幽霊? 


『まおう……まおう……マオウのニオイ……』

重なるささやきのような声がする。

『にくい……カタキ……にくい』

ブワーと拡がる燐光の人型が襲いかかってきた。

光が弾け雷光が走る。


イレギオンに向けて一直線に飛び込む人型に白目がないのが印象的だった。


「ライ! 」

「イレギオン下がって」

私はベールを脱ぎ去り燐光に叩きつけた。

『お前じゃま』

幽霊? が私を意識した。

「ならば排除すればいい」

ふっと笑って挑発してバルコニーの手すりに立った。

『ジャマ〜〜〜』

牙の沢山ある口をパカっと開いて突進してきた幽霊? をかわして地面に飛び降りると案の定ついてきた。

『ナンでナンでナンでジャマする〜』

幽霊? が爪を出してめちゃくちゃに攻撃してくるのをかわしてスカートを動けるように引き裂いて物入れから剣を引きずり出した。


「そりゃあ、幼なじみだしね」

爪をなぐとキンと音がした。

『あいづまおう〜一族メッシだ~』

「ならば私がカタキだ」

私は首を狙って切り込んだ。

『なぜ? 』

魔王様(我が君)の牙、魔王様(我が君)の爪、魔王様(我が君)の盾が私、アムリントだからだ! 」

わからないくらい滅した……幾万幾億と……

この手は……


てきてきてき〜てキーと燐光が喚く。

メッシて~一族のカタキ〜と燐光がふわりと浮き上がって突進する。


爪が私の脇に刺さるのも気にせず燐光の首に剣を叩き込んだ。


燐光が輝き光が拡散して消えた。

脇の痛みを自覚して脇を抑えるとかなりの勢いで血が出てた。


ライ〜とイレギオンが近づいて来るのに気を抜いた。

たしかイレギオンは治療術とか得意だったはずだ。

後ろからハウーラもジーさんもついてきてる。


そういえば燐光幽霊? にイレギオンが魔王じゃないと言うこと言わなかったなと思った瞬間に背中に寒気を感じた。



「ふーん魔王の狂竜戦士があんたか」

背中に寒気する声がする。

大したことないなとあざ笑う声が聞こえる。

脇を押さえて振り向いた。


月に照らされた大樹の上で燐光に照らされたトラ耳の男が立っていた。


ヒラヒラと燐光がトラ耳男に集まってくる。

せっかく恨みつらみの強い奴を選んだのになぁと一つの燐光をつかむとにぎりつぶした。


「お前……」

「えいえいおー龍とちがって可愛げがない」

睨みつけると大樹の上から指さされた。


え、えいえいおー龍? 誰さそれ。


オストロフィス様、まだあんたあのへっぽこ龍に執着してたんですか〜と木陰から太い尻尾の誰かが突っ込んだ。


ああ、雷獣で大罪人オストロフィスっていうのがやつか……滅しても多分魔王様は気にしない。


「ライ、すぐに手当を」

金の長い髪の美青年が近づいてくる。

魔王様(我が君)……滅して来ます」

地面を強く踏んで反動をつけて大樹の上に魔力とともに剣をふるった。

葉が幾枚も巻き込まれた。

「あぶねー」

オストロフィスがすんでで避ける。

舌打ちしてケリを入れた。

オストロフィスがいて〜とわめきながら大樹から飛び降りた。

追いかけて地面降りる。


その間に大罪人に大鎌が襲いかかった。

薄紫色の竜人、ジー護衛官だ。


「今日は竜人祭りかよ、俺はちび炎蜥蜴(サラマンダー)の照り焼きを食いに来ただけなのによ~」

大罪人が燐光を集めて放った。

そこここで小さな爆発がおこって気がついたら影も形もなかった。


オストロフィス様〜とたぬきみたいな獣人が木陰から逃げてハウーラとジーさんがおっていった。


たぬき汁って美味しいのかな?


「ライラリーン……」

魔王様(我が君)、申し訳ございません」

私は地面にひざまずいた。

「ライラリーン、僕は魔王様じゃないよ」

魔王様(我が君)が……違うイレギオンがしゃがみこんだ。


ああ、脇が痛い……戦闘が終わったとたん傷が主張しだした。

いつもと同じだ……だから狂竜戦士って言われたんだ。

しかもイレギオンを魔王様(我が君)と勘違いするなんて……


「君はいつもこんな無理を」

イレギオンが私を抱き上げた。

あの〜痛いから早く治してください。

首にアマガミする間があったら手当して欲しい。


「まあ、何がありましたの? 」

黄地方当主な狼獣人が白々しく出てくるのが見えた。


「……イレギオン愛してる」

このまま滅するなら言っておきたい。

「ライラリーン死ぬな」

イレギオンが私に口づけたところで意識が遠くなった。

このままイレギオンの腕の中で滅せれば幸せなのかもしれない。




気がつくとイレギオンの腕の中じゃなかった。

ここ、どこだろう、動けない。


「本当に忌々しい」

「オストロフィスに危害を加えられました」

「どのようにいたしましょうか? 」

三人の女の声がする。

動けない……身をよじると激痛が脇に走った。


「まあ、お目覚め? 」

狼獣人の爪が見えた。

殺られると思った次の瞬間身動きが取れるようになった。

拘束が解かれたらしい。

起き上がると医務室で例のタヌキ獣人と白衣のヤギ獣人が狼獣人といた。


「オストロフィスを逃して」

「せっかく潜入してたのにおいて行かれました」

「治療術かかりづらいほど怪我なさったのね? 」

三人の女性獣人に見つめられてこ、コロサレルと本気で思った。

とくにヤギ先生怖いです……その実験結果見る目で見ないでくださーい。


「あ、あの」

「でもまあ、狂竜戦士殿にあえて嬉しいわ」

……どんなに私我慢したとおもいますの。

狼獣人当主に抱きつかれた。

「ご当主様、狂竜戦士さんにメロメロだからね」

「助けられたとかでしたかしら」

のほほんとたぬきがパイプ椅子をだしてヤギ獣人が拘束してた包帯を拾い出した。


ああ、本物の〜となんか嗅がれてるよ。

なんでも魔王交代の騒乱のとき反対勢力に滅せれそうになった時に私が助けたらしい。


あのころ感情の起伏を捨てまくってたし覚えてないんですよ。

燐光幽霊は対抗一族の怨念で滅した場所が荒らされてたのでタヌキ獣人がオストロフィスになんとか接触して魔界軍と連携して捕まえようとしたらしい。


あの時態度が変だったのは私に触りたいのにさわれないジレンマがさせたらしいんだよね……ああーモフモフ気持ちいいー。


脇腹いたいけど、何とか血が止まってるしね。

病衣だからモフモフダイレクトだね。


パタンと音がしてイレギオンが入ってきた。


「僕の恋人を返してもらうよ」

「あら、振られまくってるくせに」

イレギオンに狼獣人があざ笑った。


「恋人? 」

「愛してるって言っただろ」

はてと首を傾げるとなぜか甘く微笑まれた。


そういやいったね。


「狂竜戦士殿にこんな傷をつける人になんて渡せない」

「つけたの燐光幽霊……」

「お前だって見逃しただろう」

狼獣人とイレギオンが睨み合う。


次の瞬間に殴り合いって喧嘩パや過ぎませんか?


二人は知り合いらしい……私が知らないドラマとかあるんだろうな。


たぬきさんが仲裁に入ったのを見届けて足をベッドの下におろした。

脇の傷は痛いけど動けないほどじゃない。


「とりあえず、帰ります」

よっこいせとベッドから降りた。


作戦は大失敗だけどあの蹴ったときにマークはつけた。

おそらくオストロフィスは紅地方に移動している。


「ライ〜」

「イレギオン、またね」

たぬきさんの木の葉術におさえられたイレギオンに手を振って同じく木の葉術におさえられた狼獣人とたぬきさんとなんか楽しそうなヤギ獣人(研究者)に頭を下げて廊下にでた。


ハウーラが軍服の上着を渡してくれたので羽織った。


平武官のままのんきな魔界生活を送りたいけどそういうわけに行きそうにない。


「このまま魔王城に帰還します」

私は緊急帰還用の魔法陣符を投げながらハウーラとジーファイラ護衛官を見た。

二人がうなづいて魔法陣に入った。


帰還の魔法陣が起動する。

移動中の魔法の波動の中で思った。


イレギオンの腕の中で最後を迎えられるほど魔界最強の狂竜戦士の生命力は甘くないらしい。


この手は汚れている……平穏無事に終焉がむかえられないほど……

そして身体は沢山の怨嗟と呪いに侵されている。


傷が治らないのは……まあ、治療術のかけすぎで治りきらないだけだけどね。


魔王様の執務室に出た。

護衛官がかまえたのを魔王様が目で止めた。

ジーさんとハウーラはビックリしてる。


悪いことしちゃったなぁ……

魔王様(我が君)の前での前でひざまずいた。


ジーさんとハウーラも慌てて続く。


魔王様(我が君)

「オストロフィスを逃したか……」

申し訳ございませんと頭を下げる。


「兄上のせいで色ボケたか」

クスクスと魔王様(我が君)が笑う。


背筋が寒くなった。


「これ以上色ボケたら魔界大将軍につけるよ」

「それは……」

すごく嫌なんですが……私は寒気に悩まされた。


嫌なら魔界軍で作戦立ててあの子虎を捕まえておいで

イレギオンによく似た妖艶な笑みに見える冷たい笑みを浮かべて魔王様(我が君)が告げた。


私は深く頭を下げうけたまわった。


ああ、またこの手は何かにまみれる。


私はイレギオンにふさわしくない。

どんなに好きでも……

読んでいただきありがとうございますヽ(=´▽`=)ノ


申し訳ありません、誤字を直したせいか一時期尻切れトンボになっておりました(T_T)

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