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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第3章 サモン大陸編
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気がついたら成長でした

明けましておめでとう御座います。今年も『気がついたら魔神でした』をよろしくお願いします。

朝食を取る俺の前にはルネが着席している。その様子はまるで昨日何もなかったのように自然なものだった。

昨夜、ルネと手合わせをしたわけだがそこで1つ問題が生じた。いや、正確に言えば問題ではなく予想外の事態が起きた。それはルネのステータスについてだ。

俺はルネとの会話を終えるとすぐに剣を交え、ルネの鍛錬につきあう。しかし、そのときのルネの動きが明らかに学園のときよりも鋭く、正確なものへと変化していたのだ。

勿論、普段からアスモデウスにしごかれているルネのこと、ステータスが上昇しているのは当たり前のことかもしれない。だが、それを差し置いても目の前で起こっていることは異常だった。剣の速さは既に人の目には映らないものとなり、その重さは地面を凹ませる程である。難なくその剣を受け止めてはいるが、弾き返すのは俺以外では難しいと思う。

俺はそんな異常であるルネのステータスを確認する。


【ルネ・サテライト】

種族:半神半魔

性別:男

レベル:£°*;52

攻撃力:1200000000(+500000)

防御力:3400000000(+500000)

魔攻撃:1400000000(+500000)

魔防御:3600000000(+500000)

魔力:3400000000(+500000)

俊敏:5700000000(+500000)

運:5

【能力】

マスタースキル

『風星之神』

『黄泉之神』

エクストラスキル

『剣王レベル100』

スキル

『風魔法レベル100』

ギフトスキル

『邪神の剣』

『邪神の寵愛』


俺は言葉を失った。もう何を言えば良いかわからない。ルネは方法はわからないがダンジョンから今日までの内にステータスを跳ねあげたようだ。

この値は1桁アスモデウスには及ばないものの“マスタースキル”の使い方によっては充分ダメージを与えられる程にはなっている。そしてその“マスタースキル”だが…。


『風星之神』・・・・風、星の掌握。

『黄泉之神』・・・・状態異常の掌握。


と簡単にしか表記されない。だが、これはとてつもない能力だ。まず『風星之神』だが、このスキルには風を操るのに制限が無い。つまり、本人の限界に達しなければ、無限に風を操れるのだ。極端な話、風速1000mなど本来は発生することのない風を操ることが出来る。

また、特殊な使い方では、魔法を搔き消すことも可能だ。魔法はどのような事象を起こそうと、その核は魔素である。魔素は待機中に漂っている。また、体内にある魔素の総量が魔力となるのだが、詳しいことは置いておこう。

魔法は魔素に形を持たせたものであり、形が変われば属性が変わり、強力なものを放とうとすると必要な魔素の量が増え、制御も難しくなる。つまり、どれ程強力な魔法でもその形を崩せばただ魔素なのだ。

ここで話を最初に戻す。俺はルネは魔法を搔き消すことが出来ると言った。これは『風星之神』を使用することにより、風を起こすことで魔素を乱すことが出来るからである。まず間違いなく魔法を主体として戦う者には負けることはないであろう。ただ、似たスキル、例えば『水氷之神』等のスキルを使われればそれは魔法ではない為、搔き消すことは出来ない。

しかし、それを差し置いたとしても強力なスキルだ。それに加えてルネは『黄泉之神』と言った状態異常を操るスキルも習得している。普段、自分を紳士と言うルネだがなかなかに嫌らしい戦い方が出来るようになったものだ。

俺は1人、昨夜のルネの強さを思い出しながら、自分の意見に納得するかのように頷いていた。が、その動きは止まる。

俺はルネのレベルの表記の欄が不自然に表されていたことを思い出す。数字ではなく、記号が混じっている。これは一体どう言うことだろうか。今まで鑑定をした相手のステータスはどれも数字で記されていた。例外は俺のみで『測定不能』と表記されることだ。だが、ルネは俺とは違う。明らかに鑑定出来ていない。俺のステータスでさえ、数値化した時に値で記すことが出来ないと意図した形で記されている。しかし、ルネの場合は記そうとして失敗しているのだ。それが何故なのかは俺には分からない、ただルネの身に何かが起こっていると考えた方がいいだろう。理由が解らない以上、場合によっては俺が対処しなければならない事態になるかもしれない。


「あつっ!?」


俺が考えているとルネがスープをこぼした。何故、あれだけのステータスでそれを防げないのだ、と思うかもしれないが、意外と咄嗟の判断の時にはああなってしまう。俺も多分なる。


「何やってるんですか。罰として今日は地獄の特訓part3に決定ですね。」


「1、2はどこに言ったんだい?」


ルネとアスモデウスの会話に周りのみんなは笑う。ただ俺は笑うことなく、ルネをじっと見つめる。

その目はまるで敵に負けるようなものであった。そして、知る由もない。このときの俺の考えが自分のものでは無かったのだと……。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「準備完了です!」


出発の前日、俺が部屋(異空間に作った俺の家)で寛いでいるとアスモデウスがやってきた。以前、彼女にはいつでもこの空間に入れる権限を与えたのだが、一度俺のいないときに家をボロクズにしたことがあった為、今は俺がいないと出入りは出来ない。

因みに、そのとき一応言い訳があるか聞いたのだが…


『イヅナ様……私って裁縫はしない方が良いと思うんですよ。』


とのことだった。もはや言い訳ですらない。

そんなアスモデウスだが今日ここに来たのは明日にこの国を発つ為、必要な荷物を運んで来ていたのだ。今はその終了報告。


「おお、偉いな。アスモデウスが前日に準備を終わらせるとは………明日は雷が降るな。」


「私と言う雷に当たって恋に落ちるってことですか?もう、イヅナ様ったら。」


「お前、その頭の回転をもっと別の場所でいかせたらな。」


恋に落ちている以上、否定はしないでうまく交わすしかない。

しかし、この国は学園と比べるとあまり滞在しなかった。仲間たちとの出来事を抜けばこの国での出来事はダンジョンくらいしかない。

ダンジョンと言えば、【聖剣グラム】を手に入れたのは颯太だったな。あいつ、あれから毎日特訓に励んでる。だが、そうでもしなければ【聖剣】を扱うなんてことは出来ないし、担い手として認めてもらえない。

歩も颯太と一緒に行動してる。地球にいた頃は俺といつも一緒にいてくれたんだが、俺の周りにも人が集まって来たことで歩も安心したのかもしれない。それでも少し寂しいな。

横山と琴羽は何やら会議をしているようだが、その内容は知らない。まあ、何となく予想は出来るが俺が知らない方が2人のためにもなる筈だ。

もともと仲が良かった2人だが、ダンジョンから帰って来たからと言うもの更にその仲は深まっている。それは琴羽が本心を言えるようになったからであろう。1つの壁が消えたことで隔てる物は無くなった。この国は彼女たちにとって精神を成長させ、絆を深める場所となった。

杉本は善人になり過ぎてお前誰だよ、とツッコミを入れたくなったくらいか。ともかく良いやつになったな。うん。

そう言えば先生も何か変化があったようだ。学園を出たからと言うものずっと何かに悩まされている様子で心配していたが、問題なさそうだな。誰にでも平等に振る舞い、笑顔が素敵な良い先生で高校の先生たちの中ではどちらかと言えば好きな方だ。勿論、俺以外の生徒たちからの人気も高かった。

そんな先生から笑顔が消え、生徒たちが心配しないわけがない。彼らも心の何処かで先生のことを考えていただろう。だが、それは過去の話だ。以前の笑顔を取り戻した先生は生徒たち、勇者たちの心の靄を晴らす。ようやく万全の状態になったわけだ。勇者たちはもう大丈夫。そう確信できる状況になった。

俺の仲間たちはどうだろうか。ルネは全員の中で最も成長した。それは肉体的にも精神的にもだ。彼は数ヶ月前まで少し優秀な学生に過ぎなかった。しかし、それが今では世界の頂点にいる者たちに手が届くところまで来ている。アスモデウスを想い、彼女を守る為に得たその力は既に俺に測れるものでは無くなった。頼もしい仲間であり、警戒しなければならない人物でもある。

アスモデウスは精神的に追い詰められていた。俺がもう少し早く気付ければ良かったんだが、そうもいかなかった。今は俺の前で笑顔でいてくれる。けど、もしも何処かで選択を間違えていたら、この笑顔は失っていたのかも知れない。

そう考えると俺は急にアスモデウスが側にいることが奇跡のように思えてしまった。そして、思わず。


「アスモデウス。」


「何ですか?イヅナさ……え?」


抱きしめていた。


「な、な、な、何ですか?イヅナ様?あ、成る程。私への溢れる想いを抑えきれなくなったんですね?全く、仕方のない恋人ですね〜。ほら、もっと甘えても良いんですよ?」


「そうだな。そうするよ。」


俺は更に力を込め、アスモデウスを抱きしめる。


「え、え、いや、その…さっきのは冗談といいますか………その……嬉しいんですけど……あの……。」


予想外の展開にアスモデウスはたじたじだ。見えない顔は恐らく彼女の髪のように赤くなっているだろう。

アスモデウスの体から力が抜けていくのと同時に少し俺も冷静になった。何故、こんなことをしている?

出来るだけ側にいたいと思ったからだ。

彼女の気持ちに答えていないのに?

答えは決まっている。だが、それはまだ伝えられない。

勇者も、ルネも、アスモデウスも成長したのに俺は俺のままだ。結局、人のことを考えてらようで、自分を押し付けてる。

知ってる。だから、これで最後にする。

最後になるかな?

してみせる。

約束できるのか?あの約束も思い出せない俺に?

あの約束?

そう。彼女との大事な約束を……。


『そう。私との約束を……。 けど私は待つわよ。イヅナ…。』


俺の頭響く声。また、あの声だ。仕方なく先送りにしてきた問題。だが、心の何処かでいつもそれを後悔していた………。

一番、成長しなければならないのは俺だな。課題は多過ぎるが地道にこなしていくしかない。

次から次へと巡る思考。俺の頭はフル回転していた。が、ここでアスモデウスが今の状況を思い出させてくれる。


「イヅナ様。そろそろ良いですかね?」


「……あ、ああ、すまない。」


アスモデウスはゆっくりと俺から離れる。やはり、その顔は赤く染まっていた。


「「…………。」」


気まずい。衝動的な行動であることが、更に俺を辱める。


「わ、私、もう行きます。では、イヅナ様!ご、御機嫌よう!」


「お、おう。」


アスモデウスは走り去っていった。

その様子を見送った後、俺は先程まで考えていたことよりも何故、あんなことをしたのかと言う自身の新たな黒歴史のことを考えてしまう。


「アホだな。俺は。やることを増やしすぎた……。シヴァ…それもこれもお前がこんな力くれたせいだ。確かにそうしなければ死んでたさ。それでも、迷惑な力だよ。うるさい付き人が出来て。親友に再会できて。かけがえのない仲間が出来て。自分が変われるチャンスを掴めて……。全く……ありがとな。」


今は亡き破壊神に言葉を送る。


「だから、まあそうでなくともだが。必ずブラフマーの野郎を倒してやるよ。」


こうして成長に成長を重ねたサモン大陸の冒険は幕を閉じたのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



〈???SIDE〉


とあるダンジョンの奥深く。


「今頃、アスモデウスは役に立てているだろうか。」


「むむむ〜。」


「何を言う。このダンジョンから私が離れることなど出来ない。アスモデウスが外に出ているのは例外としてイヅナ様に連れ出して貰ったからだ。」


「むむむ?」


「外に召喚した魔物は確かに魔法自体は私がしたことだが、結界に干渉したのはイヅナ様だ。」


「む〜む〜。」


「何?ならばお前が行くだと?不可能なことを言うな。それにお前はここに残っていろ。反旗をひるがえすその時まで我々が創造神に姿を見られるわけにはいかない。」


「むむむ。」


「何だと!?イヅナ様が結界に開けた穴がまだ残っているだと!?何故、それを報告しなかったのだ!」


「むむ。」


「ついさっき見つけた!?」


「むむ。」


「もう閉じそうだから行くだと?おい待て!」


「むーむー。」









最後の人物は一体誰なのか。

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