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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第3章 サモン大陸編
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気がついたら『憑依』でした

今回も短いですね、はい。すみません。

俺は休養日を貰った……筈だった。しかも5日間だ。これだけあれば異世界に来て擦り減らしてきた精神も少しは回復するだろう。まあ、休むことが出来ればの話だが。

初日はまだ、マシだった。最後にセリカ、リアが来るまでは休みを満喫している気分になれた。だが、その後だ。アスモデウスとの件は別だろう。しかし、2日目以降は本当に酷かった。何と残りの4日間、デート、デート、デート、そしてデートだ。

始まりはアスモデウスの一言。いつもの調子で何気なく話しかけて来た。


「イヅナ様!今日、私と2人でデートしましょう!」


「……まあ、偶には良いか。」


「えっ!?本当ですか!じゃあ、待っててください!今すぐ準備してきます!」


そう言ってアスモデウスは自室へと戻る。

昨日のこともあり、俺は以前よりもアスモデウスに甘くしてしまいそうだ。今の返事が何よりも証拠だろう。辛い思いをさせない為にも彼女の願いを少しは叶えさせてやるべき、と考えてしまうのだ。


「デレ期キターーー!!!」


余りの過剰反応に本当に偶にで良いな、と心に決めたことは秘密だ。

そして2人でデートをしたわけだが、どうやら何人かが俺たちを尾行していた。まあ、大体の目星は付いているのだが。

次の日、横山と琴羽が俺の部屋まで来た。何用かと尋ねると、2人もデートの誘いと言うではないか。まあ、予想はしていたが流石に早いだろ。

アスモデウスの誘いを受けた以上、彼女たちを断ると言うことは俺の中でまずあり得ない。と言うわけでデートをしました、はい。勿論、その日も俺たちの後を付けている者がいるのは承知していた。それが誰なのかも。

そして、又々予想通り、リアが朝早くから城まで来てデートの誘いをする。恐らくだが、リアは横山たちと繋がっている。でなければ一般人に過ぎない彼女が城に来て俺と会うなんてことが出来るわけも無い。

しかし、結果として彼女からの誘いを受けたのは事実。勿論、その誘いは受けた。

さらに次の日、まだ1人重要な人物がいることは忘れていない。俺は着替えをすませると街へと向かう。まだ、辺りは薄っすらとは明るいが、日はまだ上っていない。しかし、そんな中で城に向かい走ってくる人がいる。


「よお。」


「イヅナ!何故ここにいるんですか?」


「デートの誘いを受ける為。」


「そ、それは……どうも。」


可愛い。

とまあこんな感じで俺の休日は、正にリア充爆発しろ、と言われるほど甘いものとなった。ただ、俺も大変であった事は理解してもらいたい。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「これで全員揃ったか。では、これより会議を始める。」


大きな円卓のある会議室。そこにはこの国、世界にとっての重要人物、それに勇者たちが集まっていた。その理由は国王が言った通り会議だ。その内容は今後の俺たちの行動についてだ。とは言っても大まかな事は決まっており、全員には事前に資料が配られている。その為、これは会議とは名ばかりの最終確認に過ぎないだろう。


「それでは今後の行動についてだが、そちらはエルダー国が説明する。エルティナ殿。」


「はいはい、任されたわ。まあ、とは言っても私が説明するわけじゃないんだけどね。ユール。」


「畏まりました。」


青い髪を持つ少女が答える。しかし、俺や元々知っている者以外の者はここで1つの疑問を持つだろう。


『誰?』


と。そして、その疑問は顔に出ていた。


「え?何どうしたの?」


エルティナは訳が分からないと言った様子で驚く顔をする勇者たちの方を向く。しかし、訳が分からないのはどちらかと言えば勇者たちの方だろう。

遂に颯太が挙手をし、質問した。


「今ここにいるエルティナ様は本物ですか?」


「本体ではないけども、本物よ。」


「本体でない、本物?」


颯太はその言葉に更に不思議そうな顔をする。


「あ、そう。貴方たち知らないのね。じゃあ、教えてあげるわ。」


そう言って、エルティナの説明が始まった。

そもそも何故、勇者たちが疑問を持ったのかと言う事だ。疑問を持ったものは颯太、先生、ルネ、アスモデウスの4人だ。他にいる俺、国王、大臣たち、エルティナの秘書、は知っている。

ここにいる者たちは全員エルティナの存在は知っている。しかし、その認識の仕方が違った。

疑問を持った者たちの中でエルティナは金髪で鋭い目つきのスレンダーな女性だ。学園で目にした時はそうだった。

だが、目の前でエルティナと名乗った女性、いや少女は青く長い髪を持つ、垂れ目の優しいそうな印象の女の子だ。頭の上にはてなマークが出る訳である。

結論から言うと彼女は“人形”だ。ただその中身がエルティナなのである。

それは『憑依』と呼ばれるもの。何種類かのスキルを使用する事で出来る技術だ。これは人の精神を“人形”に移し、行動できると言うもので、エルダー国ではこの技術が発達している。五感を再現し、人形のとかに得た情報は全て本体にも送られると言うものだ。だが……。


「これって結構、魔力使うのよ。世界随一の技術を用いてもね。だから、本当はこんなことしたくないのよ。」


そうなのだ。この人形を1つ使うのにそれこそ宮廷魔法師と呼ばれる魔法のエキスパートの魔力を何人分か必要とする。更に行動するときにも魔法によるサポートが必要であり、情報を得られるこの会議に出席するにもわざわざ用いる必要はない。それこそ人形が破壊されようとも本人に影響がないというメリットがあったとしても、この世界の人々のレベルで考えるならば『憑依』に必要な者たちを護衛とし、本人が直接出向く方が良い。それだけの実力を持った護衛を通り越し、攻撃することなど不可能に近い。

費用にしても護衛たちに掛かるものよりも、人形などの維持費の方が高い。しかし、そうだとしても彼らには『憑依』を使わざるを得ない理由があるのだ。

それは前回の魔神との戦いが原因であるとされている。過去の戦いで魔神やその配下たちに多大な被害を与えた者たちがいた。それは勇者たちを含む、英雄たちだ。その中でも彼がいなければ魔神を封印することは出来なかったと言われるほどの人物がいる。


英雄“ケリア・ブラディリス”


彼は吸血鬼と呼ばれる種族だ。その不死性は同じ種族と比べても異常。魂さえ無事ならば体を幾らでも再構築できる。しかし、そんな彼がいても魔神の絶対的な力を前にしては対抗する手段がなかった。そこでケリアは考え、自分が魔神と同化し、その力を抑え込むと仲間に伝えた。勿論、それに賛同する者はいなかった。だが、それ以外の手段を見つけることはできない。

ケリアは仲間たちを振り切り、魔神へ向かった。そして、自らを犠牲に魔神の力を抑え込むことに成功した。そして、その後勇者たちにより無事魔神を封印することが出来た。だが、魔神もただやられる筈もなく、魔神は最後に、力を封じたケリアの種族“吸血鬼”、そして、彼の故郷にいた“エルフ”や“獣人”たちを1つの島へと転移させると彼らをその島へ閉じ込めてしまった。結界を貼られたのだ。

それ以降、“吸血鬼”、“エルフ”、“獣人”がその島から出れば体は朽ち、死んでしまうようになる。

だが、彼らは研究を重ね、人形に意識を移し、別の体として動かす『憑依』と言う唯一の島からの脱出の手段をえたのだ。これがエルティナがわざわざコストのかかる『憑依』を使う訳である。


「とまあ、こんな感じだけど、他に質問あるかしら?」


「……ありません。」


颯太がこたえる。


「そう。じゃあ、続けるわよ。」


そうして、今後の行動についての最終確認が始まった。



次回の投稿は土曜日となります。お楽しみに。

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