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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第3章 サモン大陸編
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気がついたら気のせいでした

久しぶりの投稿です。更に短めです。すみません。

今回はイヅナたちの視点となります。

ーーーイヅナ、清水琴羽SIDEーーー


「ねえ、飯綱くん。できればさっきのことをみんなには言わないで欲しいのだけど。」


試練を終え、ダンジョンを先に進んでいると琴羽が声をかけてきた。頰が少し赤くなり、どこか恥ずかしげに見える。


「さっきのこと?泣いたことか?」


「え、ええ。」


泣けたこと自体は彼女からしたら嬉しいことだろう。しかし、だからと言ってそれを人には知られたくはないというわけか。だがな…。


「別にいいが無駄だと思うぞ?」


「何故かしら?」


「目が充血してるし、腫れている。その様子ならすぐにばれるぞ。」


「え、嘘。」


琴羽は慌てて目を隠す。俺に隠したところで今はないと思う。

俺はそんな彼女の様子を見て、この短時間で変わったなと感じた。あれだけ過去にとらわれ、己を知ろうとしなかった彼女をここまで変化させたダンジョンは流石とだな。やり方はあまり良いとは思わないが確実な方法を選んでいるのだろう。

しかし、それにしても琴羽が感情を表に出し過ぎている気もする。


「なあ、琴羽。試練で建前を落としてきたんじゃないか?何というか今のお前を見てると本音しか言ってない気がしてな。」


琴羽はいつもの様に表情を変えずに答える。


「それは確かにそうかも知れないわ。けど、飯綱くんだからこんなに本音を言えてるのよ。私の過去を、本音を知っているあなただから。信用してるのよ。」


琴羽はそう言って笑みを浮かべた。本当にずるい不意打ちだ。不覚にも可愛いと思ってしまう。


(全く、俺はいつからこんなに感情が豊かになったんだろうな。)


不思議だ。日本にいた頃はこんなにも心を動かされたことはなかった。いや、その言い方は不適切か。学校生活を楽しいと思ったことも少なからずあったからな。だが、今の俺の心の中にある気持ちはそう言ったものとは違うのだ。そうなったのは間違いなくこの世界に来てからだろう。

セリカと出会ってからだろうか?もしかしたらそれよりも前からかも知れない。嫌な気持ちではないが、それでも自分の変化は不思議である。俺はもう少し自分の変化について真剣に考えた方がいいのかも知れない。


「飯綱くん?」


「…ん?悪い、考えごとをしてた。」


「別にいいけれど、出来れば私の話をちゃんと聞いて欲しかったわ。」


「悪い。」


「別にいいと言ったはずよ。」


琴羽はそう言って俺の前を歩く。間違いなく怒っているな。それにしても、様子を見る限りもう少し本心を隠す練習をした方が良い気がする。あれでは心配だ。


「他の奴らの前では気をつけろよ。」


「それは本音を言うのは俺の前だけにしろ、と言う意味かしら?」


「そこまでは言ってない。」


「ふふふ、冗談よ。」


「全く。とにかく気をつけろよ?不意な笑顔とかもな。」


「可愛いからよね?」


「………あ、ああ。」


変わって良かったのだろうが、少しは前の琴羽を見習ってほしいものだ。

そんな話をしている間に、長い通路の終わりが見えた。また、鏡だ。恐らくあの先にまた試練が待ち構えているのだろう。


「どんな試練かわからない以上、気を抜くな。」


「もちろんよ。」


琴羽が俺に手を出してきた。


「何だ?」


「逸れる可能性もあるのだから、手を繋いでおいた方が良いと思ったのよ。」


「それもそうだな。」


俺は琴羽の手を離れることのないよう強く握る。これで大丈夫だろう。


「行くぞ。」


「ええ。」


俺と琴羽は鏡の中へと入って行った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ここは。」


「綺麗ね。」


「ああ。」


鏡を通り抜けたその先に待っていたのは宇宙のような空間に星々が浮かぶ美しい光景だった。

俺と琴羽はその中の一番大きな星の上に立っていた。ただあたりの星と比べ、この星だけが地面が凹んでいたりと何かが戦った後のようだ。


「何かいるのかも知れないな。」


「それが次の試練かしら?」


「それはわからない。とにかく注意して進むぞ。」


そうして、俺と琴羽が歩き出そうとしたその時だった。遠くの方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「イヅナ様〜〜〜!!!」


「アスモデウスさん!何があるかわからないのだからもう少し静かにしたらどうだい?」


「イヅナ様〜〜〜!!!」


「だから!」


アスモデウスとルネか。こちらに向かって走っくる。砂埃をあげてながら、あの大声。もう少し周囲を警戒して欲しいものだ。まあ、あれだけ騒いで何も出てこないなら、取り敢えずは大丈夫か。


「2人とも無事だったか。」


「何ですかイヅナ様。もしかして私が心配すぎてそわそわしてたんですか?もお!そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。」


相変わらずだな、この付き人は。


「イヅナくん、すまない。アスモデウスさんをどうにか止めようとは試みたのだけど……ね?」


「うちの付き人が迷惑かけたな。」


「全くだよ。ハハハ。」


ルネには苦労ばかりさせてるな。今度、1人でしっかりと休める時間を与えようるべきだな。

俺が1人ルネへの配慮を考えていると、突然アスモデウスの表情が固まった。


「っ!イ、イヅナ様…。」


「どうした?」


「何でその女と手を繋いでるんですか?」


俺はアスモデウスの視線の先を見る。するとそこにはしっかりと繋がれた、俺と琴羽の手があった。忘れてた。


「あ、そう言えばそうだったな。琴羽、もう良いな?」


「え、ええ、十分よ。」


俺は琴羽と繋いでいた手を離す。しかし、だからと言ってアスモデウスが話題を変えるわけもなく。訳を追求してきた。


「説明してください。」


「あ、ああ。」


俺はアスモデウスのことだ、てっきり、明るく少しうるさいと思うくらいのテンションで声を上げるかと思っていたが、このときのアスモデウスはいつものそんな彼女とは違った。不思議には思ったが、取り敢えず俺はアスモデウスに説明することにした。


「……と言う訳だ。別に恋愛感情があった訳ではないぞ。」


「……そうですか。そうですよね!イヅナ様が愛してるのは私だけですから。」


「そうなのかい?」


「いや、俺も初耳だ。」


「さあ、皆さん!問題も解決したことですし、先にどんどん進みましょう!」


そう行ったアスモデウスは先陣を切って歩き出した。俺はその様子を後ろから見ていた。

その様子は普段の彼女と全く変わらない。明るく、元気で、その妖艶で美しい見た目が少し勿体無く思えてしまう態度だ。しかし、何故だろう。今の彼女がどこか寂しそうに見えてしまうのだ。まあ、気のせいだろう。あいつに限ってそんなことがあるとは思えない。


「何ですか?イヅナ様。そんなに私をジロジロ見て、欲情しちゃいました?」


「やっぱり気のせいだったな。」


俺はいつも通りふざけた付き人とルネとそれに琴羽と共にダンジョンの奥を目指し、進むのだった。











『始まりの森から始まる毛玉物語』投稿開始!!!

↑期待したら駄目です。

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