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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第3章 サモン大陸編
76/164

気がついたら心配されてました

短めです。


ーーーアスモデウスSIDEーーー



ダンジョン内部のとある広場。そこで私、アスモデウスは座り込んでいました。

座り込んでいたと言っても、怪我をして足に力が入らなくなったとか、気絶しているとか、そう言ったことはありません。視覚が奪われてしまった為、迂闊に動くのは危ないと思い、座っています。

そんな私の周りをヒラヒラと妖精が飛び回っています。先程からずっとこんな様子で私を惑わすようなことを言っては離れて、言っては離れての繰り返し。

そんなことを考えているとまた、あの妖精が近づいてきました。


「イヅナ様ってあなたが近づいていくと、不機嫌そうな顔になるよね。あれって単純に嫌っているからじゃないの?」


「愚問ですね。照れ隠しですよ。ああ、でもしないと恥ずかしくて私と話せないんです。」


「また、個人的な見解だね。」


「いいえ、そんなことはありません。」


私は妖精に対応しながら、この試練を終える方法を探します。視界が奪われる前、この広場には出口がありませんでした。天井も確認できたので上に出口があるとも考えにくいです。だとすれば、脱出の手段はないと言うことですか?まあ、流石にそれはないと思いますが。


「あなたはイヅナ様からどう思われてるか知ってるの?」


「もちろん、相思相愛ですよ。ラブラブです!」


「そう。でも、イヅナ様が本当に好意を寄せてるセリカとあなたとでは全然話し方とか違うよね。」


「だからそれは…。」


「照れてる?確かにセリカさんには照れていたね。でも、あなたに対しては違う。面倒臭そうにあしらっているだけ。」


「分かる人にしか分かりませんよ。」


私は妖精の言葉を軽く流します。イヅナ様のことをしっかりと分かっている私からすれば、そんな言葉気にもなりません。そんなことよりもイヅナ様のもとへ向かわなければ。


「ミカエルのときもそう。あなたには感謝していたけど、それだけ。あのときの気持ち、あれは恋でも何でもなく、ただの御礼。それこそ友情があるかすら分からない。」


「あそこまでしてそれはないですよ。妖精さんって馬鹿ですねえ。」


「ミカエルを必死に追いかけて行った、イヅナ様。でも、もしあれがあなただったらあんなに必死になったかな?ほっとかれるんじゃない?」


「そんなことないです。」


「そう?彼が剣を作るとき、珍しくあなたの知恵が役に立って、それに驚いた彼からあなたをどう思っているか聞いたときだったかな?あなたがショックを受けて、逃げ出した。けど彼はあなたを追いかけては来なかった。」


「それは雰囲気の問題ですよ。」


「本当に?もしかしたらいつでもそうかもしれないよ?」


「……………。」


私は黙り込みます。それを見た妖精が更に言葉を繋ぎます。


「面倒臭い、無関心、一方的な思い、あなたはやっぱり嫌われてるんじゃない?いなくなったところで気にされない。代わりが何人もいるような、取替え可能な道具みたいな物。ふふふ…、やっぱりいらないよあなたは。」


「……………。」


私はまだ口を開きません。妖精はそれを見て、私が精神的なダメージを受けたと思ったのか、畳み掛けるように次々と言葉を浴びせてきます。

そして、私はその言葉の数々に……。


「うるさいですねえ。」


「え?」


遂に我慢できなくなりました。全く、しつこいんですよ。


「あなたが何を私に言おうとも私は私の知っているイヅナ様のことを信じています。あの人が私を捨てるなんてことが出来るほど非情でないことくらいわかってるんです。」


「……ふふ。でも残念、私はあなたの記憶を頼りに作り出された存在。先程まで言ったことをあなたは少なからず思っているはず。」


「はあ〜。」


妖精の言葉を聞き、私は思わずため息を出します。所詮スキルに作り出された存在ということでしょう。


「良いですか?今自分で言いましたよね、あなたは私の記憶を辿りに作り出された存在なんですよね?過去のことばかり言ってきて、私を貶めようとする。けれど、私は過去のことなんてもう知ったこっちゃありません。今の私はそんなことこれっぽっちも思っていませんから。」


私はビシッと指をさします。なかなかカッコ良く決まりましたね。我ながら見事です。

そんな妖精は私を見ながら、動揺しています。


「記憶が今のものかもしれないよ?」


「『今』という瞬間を留めておくことが出来ない以上、あなたが私の記憶から得た知識を口にするときには既に私の考えは変わっています。マイナスのことなんてそこら辺に捨てますよ。」


「………強がりだね。」


「苦し紛れに出た言葉って感じですね。でも、強がりじゃないですよ。」


私は断言します。私がイヅナ様に捨てられることなんてあり得ません。イヅナ様が私のことを考えないなんて、それもあり得ません。

最も身近で見てきたんですから、イヅナ様がどう考えているのかくらい分かりますよ。


「………自覚がないのか、それも1つの形なのか。」


「なんか言いました?」


「いや、何でもないよ。ただ、目を見えるようにしてあげようとしただけ。」


次の瞬間、私の目には弱々しい光が入り込んできました。そして、徐々に視界が回復していきます。石造りのダンジョンや黒い羽を持つ妖精がはっきりと見えます。

妖精はひらりと羽を動かし、近づいてきました。私はまた視界が奪われないように警戒をします。


「大丈夫、もう終わりだから。」


「試練がですか?私まだ何もしてませんけど。」


「やりたいことがあったんだけどね。あなたの心が余りにも強くて出来なかった。幻覚を使ってもあなたにはバレてしまうか使えなかったし。」


「私は優秀ですからね。」


私は胸を張ります。しかし、そんな私を妖精は心配そうな様子でこちらを見ます。私は何か不安にさせることしましたっけ?

妖精は話を続けます。


「けれど、それはあなたがここがダンジョンだとしっかりと認識できていたからと言う理由もある。もしも、現実でイヅナ様からの気持ちを感じられなくなったら、あなたは……。」


「大丈夫ですよ。私はイヅナ様の恋人ですからね。と言うことで、試練が終わったんですから、先に進ませてくださいよ。」


私が頼むと、妖精は右手を振りかざした。すると、私の目の前にどこかで見たことがあるような鏡が出てきました。きっとこれが先へと進む道なのでしょう。


「それでは私は行かせてもらいます。」


そうして私ことアスモデウスは見事試練をクリアして先に進むのでした。


「頑張ってね。」


ん?何か聞こえたような気がしましたが、気のせいでしょう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーーーとある広場ーーー


「頑張ってね。」


妖精は試練を達成した者に言葉を送っていた。

心が強く、何を言おうとも折れなかった。ただ、ひたすらに硬く、曲がることのない物。人をそして、自分を信じることが出来ていた。

しかし、それ故に妖精は彼女の心を折り、立ち直らせることが出来なかった。ダンジョンには力が足りなかった。

だが、妖精は気づいていた。妖精が折ることの出来なかったあの心はある意味ではとても脆いということを。

嘘や幻などは彼女には通用しない。しかし、現実でそれが起こってしまったとき、彼女はどうなってしまうのか。

あれ程の器量を持っていれば、大丈夫だろう。そう信じるしかなかった。

挑戦者に試練を与え、成長させる為のダンジョンは彼女の力に慣れていたのだろうか。

妖精は自分の無力さと、彼女への心配を胸にダンジョンへと吸収されていった。



アスモデウス・・・・『忍耐の試練』クリア?





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