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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第2章 カラドボルグ魔法学園編
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閑話⑤ーセリカ編ー

今年は忙しいので更新速度が落ちっぱなしです。

更新速度を戻せるのは速くても12月頃になりそうです。

それでも書けそうなときがあったら書いていくつまりです。

ーーーセリカSIDEーーー



その日、セリカはいつものメンバーと共に朝早くから依頼を受け、ダンジョン“聖なる祠”へと出発した。依頼内容はレッドテールの毛皮の採取だ。

比較的浅い1〜5層に現れるこの魔物は狐のような見た目の魔物でその尻尾には炎を纏っているのだ。耐熱性に優れたその毛皮を求めた依頼は良くある。前日、他の依頼を受け、疲れが少し見えていた彼女たち。今日は早く切り上げたかった為、セリカたちはこの依頼を引き受けた。依頼は早く終わるだろうと思われていた。

しかし、セリカと同じパーティーのロスターがやらかした。綺麗な鉱石があると言い、それを採取しようと言いだしたのだ。

いつも何かと厄介ごとを引き込むロスターが言い出したこともあり、他のメンバーはその鉱石を無視しようと言うがロスターの耳にその声は届かず、鉱石に向かって行った。そして、事件は起きた。

その鉱石は魔物だったのだ。エメラルドタートル。緑色に輝く鉱石を甲羅につけた亀の魔物だ。全長5mにもなるその巨体から繰り出される一撃は脅威である。また、エメラルドタートルは『ブレス』のスキルを所持していることが多く、風の『ブレス』で攻撃をする。

敵わない相手では無いがそれでも苦労はした。

そんなわけもあり、セリカの体には疲れが見える。幸い明日は休みだ。依頼を完了したセリカは、家に着いた頃には限界を迎え、少し休もうと思い装備だけ外し、ベットに横になるが、そのまま深い眠りについてしまった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「……ん。」


目を覚ますと辺りはすでに暗くなっており、街はとても静かだった。

セリカはゆっくりと体を起こす。すると自分の寝ていたベットのすぐ側に今ここにいるはずのない人物の姿があった。


「……すまん。起こしたか?」


「イヅナ……。」


セリカは考えた。何故ここにイヅナがいるのかと。彼は今、ブリア大陸にあるカラドボルグ魔法学園に行っているはずだ。このような場所にいるわけがない。


「……夢…ですか。」


夢。セリカはそう結論付けた。最近は結構な数の依頼を受け、疲れも溜まっていた。疲れを癒すために体が自分の望むものを形にしようとしてくれたのだろう。そのため、このような夢を見たのだろう、とセリカは考えた。


「…………。」


イヅナはセリカの方を向いたまま何も言わない。セリカはイヅナの胸に飛び込み、そして、抱きついた。


「……イヅナ、私はこれが夢であったとしても、あなたに会えてとても嬉しいです。」


イヅナを見ていると、セリカは落ち着いた。そして、思っていることが口から次々と出てきた。


「私はあなたに助けられ、その背中を見て、あなたの言葉を聞いて、気がついたら惚れていました。」


「……そうか。」


「あなたと一緒にいたときほど、落ち着いて入られたことはありません。常に強くあろうとして、それこそ気が滅入ってしまうほどに気を張っていました。」


「大変だったな。」


「はい。でも、もう大丈夫です。あなたが、イヅナがいるから。例え、離れていたとしても、あなたが守ってくれると信じられるから……。」


イヅナの温もりを感じたい。セリカの手に自然と力がこもる。


「それでも、イヅナがブリア大陸に行くと聞いて、私は悲しかったし、あなたが旅立ってからは寂しかった。信じてはいても、共にいられないのは嫌でした。」


「……悪かった。ただ、セリカ。実は話さなきゃならないことがあるんだが。」


「?」


それからセリカはイヅナから彼のこれからについて聞いた。勇者と共にサモン大陸の“グラム王国”に行くこと。この大陸に戻ってくるのはしばらく先になるだろうということ。

それを聞いたとき、セリカは悲しくなった。しばらく会えなくなると聞いたのだから、当たり前の反応だろう。

セリカは気が付けば夢だと思っていたイヅナの言葉を真実のように受け止めていた。


「……本当にすまない。」


イヅナは頭を垂れ、その視線を落とす。

その様子を見ていたセリカは気づいた。彼もまた自分と一緒なのだと。

共にいたい。言葉を交わしたい。もっと知りたい。セリカ自身が思っていることをイヅナも思っているのだと。

相思相愛。そんな言葉がセリカの頭に浮かび上がり、気が付けば耳まで真っ赤になっていた。


「どうした?体調でも悪いのか?」


先程まで見えなかったイヅナの顔がセリカの目の前まで迫っていた。鼓動が高鳴るのが分かる。


「だ、大丈夫です。ただ……。」


「ただ?」


「イヅナが私と同じことを思っているのだと気づけて嬉しくなりました。あなたも私と離れて少しは寂しかったのですね。」


「!…。ま、まあな。」


イヅナは顔を隠すようにセリカに背を向けた。


「照れてるのですか?」


「………。」


「可愛いですね。」


「あ、ありがとう。」


表情は見えないがイヅナはとても嬉しそうだった。 イヅナは扉の方へと向かって歩き出す。


「もう行くのですか?」


「ああ、あまりお邪魔していても悪いだろうし、それに暗いうちにここを離れておきたいんだ。」


「……そうですか。わかりました。」


とは言ったもののセリカはもっとイヅナと一緒に居たかった。

そして、そんなことを思っていたせいだろうか、イヅナの背を見て感じてしまった。自分と彼との距離を。それは近いように見えて、とても遠かった。見えてはいるが手は届かない。

この距離は日に日に開いていくのだろう。セリカ自身が知らない間にイヅナは自分の目の届かない場所に、世界の果てにまでも行ってしまいそうだった。

求めていても、離れてしまう。離れていては何も始まらない。


「セリカ……。」


気が付けばセリカはイヅナに抱きついていた。涙が頬を伝っていく。離れたくない。もっとこの温もりを感じたい。


「行かないで……。」


必死に絞り出した言葉。それは弱い彼女の心からの願いだった。


「ずるいな、セリカは。そんなことを言われたら行けなくなるだろ。」


「すみません…。」


「謝ることはないさ。セリカが俺を必要としてくれたってことだろ?こんなに嬉しいことはない。」


「イヅナ……。私もイヅナがそう言ってくれて嬉しいです。それに……イヅナと共にいたいという理由でここに留めておくのはおかしい気が少ししてきました。」


「そうか?俺はそうは思わないが…。だが、すまない。俺を待ってくれてる人がいるんだ。ここに居座るわけにはいかない。俺に頼れと言ったくせにこんなことを言うのは駄目だって分かってる。本当に俺は最低な奴だな……。」


ため息まじりにイヅナは言った。


「そんなことはありません。そもそも私が悪いんです。あなたを独り占めしようとしてるのですから。」


セリカはゆっくりとイヅナから離れた。

それに合わせイヅナはゆっくりと振り返る。


「本当に良いのか?」


「はい。あなたをこれ以上引き止めておくわけにはいきません。それに……もう決めたしたから。」


辛い決断をさせてしまったことをイヅナは後悔する。しかし、今は決断をしてくれたこと自分自身を行かせてくれることに感謝する。


「……セリカ。ありが…」


イヅナはその思いを伝えようとした。しかし、そんなイヅナの唇をセリカのそれが上からふさいだ。


「行ってらっしゃい。」


「……行ってきます。」


顔を赤くしながら、イヅナはそう言うと、扉に手を掛ける。


「また、会おう。」


イヅナは扉を出ると周りに誰もいないことを確認し、“瞬間移動”を使った。そのとき、気のせいかもしれないがセリカの言葉が耳に届いた気がした。


「はい。今度はサモン大陸で会いましょう。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



次の日。セリカはパーティーメンバーを集めた。場所は全員の家からの距離が一番近い食堂だ。ミーティングをするときは決まってここに集まる。


「今日は皆さんに大事なお話があります。」


セリカが大事と言うほどのことだ。パーティーメンバーは余程のことと思い、話を聞く。


「この度、私はサモン大陸に行こうと思います。その為、皆さんとはしばしの別れとなります。」


「う、嘘だろ!?セリカさん!冗談だよな?」


ロスターは席を立ち上がり、戸惑いを隠せない様子だ。そんな、ロスターにセリカは冷静に応える。


「ロスター、冗談ではありません。そもそも私が冗談でこのような話をする筈がないでしょう。」


ロスターはセリカのその言葉が全て本当のことであると理解した。ロスターは力が抜けたかのように席に着く。


「理由を聞こうか。」


パーティーのリーダーであるフォードがセリカに尋ねた。


「はい。実はイヅナから手紙が届きました…。」


「続けてくれ。」


「手紙の内容はイヅナが勇者様達とサモン大陸の“グラム王国”に行くというものでした。」


「それが今回のことを決断させたのか。しかし、いったい何故?」


「……彼と共に居たいからです。そうしないと彼が手の届かないところまで行ってしまう気がするんです。」


セリカは顔を伏せて居た。今自分が言った言葉が頼ってきた仲間を裏切る行為に感じたのだ。必要でなくなったから捨てる、そうまるで道具のように…。

セリカは仲間たちの顔を見ることが出来なかった。しかし、予想外の返答にセリカは思わず顔を上げるのだった。


「………そうか。まあ、セリカ自身が決めたことに口出しをする気は無い。仲間が一人居なくなるのは少し厳しいが何とでもなる。」


「え?」


「私は応援するわよ。セリカの恋。」


「僕も寂しいけど、セリカさんがそうしたいと言うなら全力で背中を押します!」


「…………。」


仲間たち(1名を除く)からの温かい言葉を聞き、セリカは思わず涙を流す。

自分は本当にいい仲間に出会えたのだと心から思えた。


「皆さん。本当にありがとうございます。」


それからセリカは今後について話した。旅立ちの日は3日後にすること。それまでは今までのようにこのパーティーで過ごしたいこと。

船でサモン大陸まで行くため、セリカは港町へと向かった。仲間たちはセリカについて行き、移動中にできる依頼を受け、行動を共にする。

セリカの言葉に必死で応えてくれたのだ。しかし、ロスターだけは時折ぼっーとしているときがあったが、レシィに揶揄われ口喧嘩になり、セリカに怒られるといういつもの流れになってパーティーに笑いを生んだ。

そして、気づけば港町に到着し、旅立ちの日を迎えていた。


「皆さん。本当にありがとうございました。私は今日まで皆さんと冒険が出来たことが何よりの思い出です。」


セリカは見送りに来てくれた仲間たちに礼を言う。


「何別れの挨拶みたいなこと言ってるのよ。もっとまた会えそうな挨拶にしましょうよ。」


「シルビアさん。」


シルビアはいつものように明るく話しかける。その雰囲気は別れの悲しさを紛らわしてくれた。


「達者でな。」


「フォードさん。」


短い言葉だがフォードの言葉には力を感じる。背中を押しくれる。


「セリカさん、今だから言いますけど、手加減してくれてるのはわかるんですけど、セリカさんの拳って意外と痛いんですよ?」


「ふふふ、すみません。」


レシィはいつも面白い冗談(レシィは冗談のつもりはない)を言ってくれる。少し、悪戯好きなところはあるがいい仲間だ。


「……………。」


「ほら、ロスターもなんか言いなよ。」


「ロスター先輩だろ!ったく。…………。」


先程まで黙っていたロスターはゆっくりとセリカの前に出て来た。顔を真っ赤にし、緊張しているようだ。


「よし!」


そして、覚悟を口を開こうとしたが。


「セリカさ……。」


「ごめんなさい。」


「はやっ!てか俺まだ何も言ってないんですけど!」


ロスターはあまりの返答の速さに驚きまくっていた。


「そりゃあ、セリカさんはあいつのことを好きって知ってて言ったことだし、振られるのは分かってたけど。」


「でも、その気持ちは素直に嬉しいです。ありがとうございます。」


「……!い、いえ……。」


セリカの笑顔に照れるロスター。


「そろそろ出発の時間ですね。」


セリカはそう言って、船に乗った。そして、甲板から仲間たちの方を向く。


「皆さん!行ってきます!」


セリカは手を振る。それを見た仲間たちは大きく手を振る。

それは互いの姿が見えなくなるまで続いたのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



セリカを乗せた船が見えなくなってからもフォードたちは暫く海を眺めていた。しかし、ふっとレシィがロスターに思ったことを伝える。


「てか、ロスター告白なんてして良かったの?セリカさんとまた冒険することになったら気まずくない?」


「………。」


そのときの何かに気づいたロスターの顔は今まで見た中でも1番の酷い顔だったと、後のレシィは語っている。
















「ここで作者から本作の主人公であるイヅナさんに質問です。」


「何だ?」


「何故セリカさんの部屋に勝手に侵入していたのでしょうか?」


「……セ、セリカの顔が見たかったからだな。」


「そうですか。では、次の質問です。何故、セリカさんが起きたとき、ばれずに逃げることが出来たのにそれをしなかったのですか?」


「俺に気づいて欲しかった。あわよくば話したかった。」


「アスモデウスに色々言っておきながらですか。」


「………。」


「と言うことで以上、作者から犯罪者予備軍イヅナさんへの質問でした。」


「おい。」

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