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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第2章 カラドボルグ魔法学園編
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気がついたら挨拶でした

久しぶりの投稿です。

さ、サボってた訳では……あります。すみません。

サモン大陸に向かう前日の朝。俺はその支度をしていた。まあ、支度とは言っても荷物を空間の中に適当に入れるだけの作業だ、すぐに終わる。

20分もしないうちに俺、それにアスモデウスの荷物も収納が終わった。


「これで荷物は大丈夫だな。」


「そうですね。これでいつでもこの学園をされますね。」


「いや、荷物をしまい終わっただけで、まだやることはあるぞ。クラスに行って挨拶したり、俺は手紙も書かないとな。」


「手紙ですか?イヅナ様に手紙を出す相手なんて居ましたっけ?」


「アスモデウス…。お前は俺を馬鹿にしてるのか?」


俺は右拳を強く握り締めながら、アスモデウスに問いかける。


「じょ、冗談ですよ。だからその拳を引っ込めてください!」


「……全く。」


俺は仕方なく、拳を収める。

俺はペンと紙を用意すると、早速手紙を書くことにした。

手紙を出す相手はフィエンド大陸にある2人。リアさんとセリカだ。何故か最初に敬語で話しかけたからかなのか、リアさんのことは“さん”付けで呼んでしまう。


「でも何で手紙なんですか?直接会っちゃえば良いじゃないですか。」


アスモデウスが手紙を書く俺の背中に寄りかかる。


「そんなことしたら、移動時間とかはどう説明するんだ?実際フィエンド大陸に戻るとして、俺は“瞬間移動”使うわけだが、大陸間の移動なんて基本的には船を使うはずだ。明らかに所要時間に差があり過ぎる。」


「まあ、確かにそうですけど。時間なんてイヅナ様どうにでも出来そうじゃないですか?」


アスモデウスの言うとおり、どうにか出来ない訳でもない。マスタースキル『ヨグ・ソトース』を使えば時間操作も出来る。しかし…。


「確かに出来なくもないが、それをする場合、世界全体の時間を操作する必要がある。そこまで大規模なことをすれば、流石に創造神が気付くだろ。」


「確かにそうですね。じゃあ、手紙を書くしかないじゃないですか。」


「だから、今書いてるんだろ?」


そう言って俺は机に向かい、ペンを動かす。元気にしているか?俺はこれからどこに行くか。そんな簡単なことを書くつもりが、いろいろ考え過ぎてしまい、なかなか進まない。

それでも30分ほどで、手紙は完成した。慣れないことだったため、少し時間がかかってしまったが、それなりの出来にはなった。


「まあ、これは夜にでも“瞬間移動”でフィエンド大陸に行って置いてくるか。」


瞬間移動を使ったとしても、誰にも見られなければ問題ない。


「ばれないようにして下さいね。」


「どこか抜けてるアスモデウスでもあるまいし、そんなヘマをする訳ない。」


「アハハハ。イヅナ様面白い冗談ですね。」


「…………。」


優しい俺は敢えてアスモデウスの言葉を無視し、目を逸らした。


「え?ちょ、ちょっと!イヅナ様!何で無視するんですか!?冗談ですよね?ね!?」


アスモデウスは必死になって、俺の方を掴み揺さぶる。俺はアスモデウスを落ち着かせるため、笑顔を作る。そんな俺を見たアスモデウスは冗談だったと思ったのか、アスモデウスもまた笑顔になる。

俺は立ち上がり、アスモデウスに背を向ける。


「よし、手紙を出すのは後にして、教室にでも行くか。別れの挨拶と行こう。どこか抜けてるアスモデウス。」


軽く揶揄ってやろうと言った言葉だったが、アスモデウスが涙目になり、俺の服の裾を掴んできた。


「イヅナ様〜。」


泣くほど『どこか抜けてる』と言われたのが嫌だったのか。予想外だった。


「じょ、冗談だ。」


「本当ですか?」


アスモデウスのうるうるとした瞳を俺に近づく。


「本当だ。」


アスモデウスは先程の顔が嘘のように満面の笑みを浮かべる。


「それなら良いです。さっさと教室に向かいましょ〜う。」


アスモデウスは扉の方へと駆けて行く。しかし、俺はその場に立ったままだ。


「どうしたんですか?」


アスモデウスが不思議そうにこちらを見てくる。俺は何でもないと言うそぶりを見せ、アスモデウスを先に行かせる。

部屋に1人となった俺は呟く。


「………不覚にも可愛いと思ったな。」


先程の涙目のアスモデウス。俺の心にぐっとくるものがあった。


「まあ、見た目だけなら美人だしな。仕方がない。」


そう言って、俺も教室へ向かうのであった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



授業が始まる前の少しの時間。俺とアスモデウスが勇者たちと共に旅立つと言う話を聞いた、ネイティー先生が最後に別れの挨拶をする時間を取ってくれた。しかし…。


「何だ……何ですか?この状況は?」


教室に着いて最初の一声がこれだ。最近、普段の口調で話す機会が多かった為、思わず男口調で話してしまうところだった。

しかし、俺がこんな一言を呟いたのには、教室に広がる異様な光景が原因だった。

男子生徒全員が教室中で倒れ込んでいるのだ。何かに襲われたのかと考えたが、女子生徒全員の無事な様子とアスモデウスが教室に既にいたことを考慮するとそれはないだろう。

だが、だとしたら何故。


「アスモデウスさん。どうしたんですか?」


「イ、イヅナ様じゃないですか。ど、どうしたんですか?こんな所で?」


この慌てた様子。間違いなく犯人はこいつだ。


「アスモデウスさん。何をしたのですか?」


俺は笑顔でアスモデウスに圧をかける。


「じ、実はその……。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



俺はアスモデウスの話を一通り聞いた。その話を簡単に説明するとこうなる。



1.アスモデウスが教室に着き、旅立ちのことを生徒たちに伝える。


2.それを聞いた男子生徒たちがイヅナおれに告白すると言いだした。


3.それを聞いたアスモデウスが絶対に失敗すると言い、男子生徒たちが訳を聞く。


4.アスモデウスが俺が男だと言う。


5.男子生徒全滅。



ということらしい。

アスモデウスは最後の最後でやらかしてくれた。


「イ、イヅナ殿。貴殿は本当に男であるのか?」


いつの間にか俺の後ろまで歩いて来ていたダンがふらふらしながら俺に聞いてきた。

ここで女だと嘘をついたとしても何とかなる気がするが、また、アスモデウスが何かやらかす気もする。俺は覚悟を決め、本当のことを言うことにした。


「ああ、俺は男だ。分け合って、この学園に女として入学した。」


ドサ…。


「あっ。」


ダンは倒れた。よく見ると泡を吹いている。そこまでショックだったのか?俺はダンの横でしゃがみ、顔をつつく。本当に気絶しているようだ。

よくよく周りを見ると男子生徒全員が泡を吹いて、気絶している。とんだ地獄絵図だ。


「ねえねえ、イヅナちゃん、じゃなくて“くん”か。」


ソーマが俺に声をかける。彼女は男子生徒とは違い、いつも通りの態度だ。男子諸君には彼女を見習ってほしい。


「何だ?」


「イヅナ君は本当に男なのかな?」


「そうだが、それがどうかしたのか?」


「どうかするんだよ。だって、イヅナ君はアモちゃんと同じ部屋で生活してたんだよね?」


「それが…。」


「どうしたとは言わせないよ。だって、年頃の男女が1つ屋根の下で何日も過ごしてた訳だよ。もう、僕の言いたいことはわかるよね?」


なるほど、この学園のラスボスはソーマだったのか。まあ、ソーマの言いたいことは分かった。しかし、この付き人に対してそんな邪な感情が湧くわけが………あるかもしれないが、俺が手を出すわけがない。

しかし、そんなことをソーマが簡単に信じてはくれないだろう。ここは1つアスモデウスに協力して貰うとしよう。


「アスモデウス。」


「何ですか?イヅナ様。」


アスモデウスを俺の側に移動させる。


「ソーマを説得するために協力してくれ。決して余計なことは言うなよ。」


「分かりました。」


アスモデウスは俺にいい返事をすると、ソーマの方を向く。お願いだから余計なことはしないでくれ。


「アモちゃん。学園の中でイヅナ君と何かにあった?」


「そうですね。このイヤリングを貰ったくらいですかね。」


そう言ってアスモデウスは俺がミカエル対策としてステータスを隠蔽する用途で渡したイヤリングをソーマに見せる。

俺はこの瞬間、悟った。アスモデウスがまた何かやらかすだろうと。


「綺麗だね。」


「はい!私のお気に入りです!」


「他には何か無かったのかな?例えば夜に。」


「そうですね〜。」


アスモデウスは考えるそぶりをしながら俺の顔を見る。その顔は何か企んでいますよと言わんばかりの笑みを浮かべていた。

こいつに頼んだ俺が馬鹿だった。最近、俺に助言をしてくれたりと色々あった為に忘れていた。アスモデウスはこう言うやつだった。


「あ、とびっきりのヤツがありました。」


「なになに?僕、その話がとっても気になるな〜。」


「ふふふ。実はですね。昨夜、イヅナ様が私が寝ているベッドにそーっと入り込んで来たんですよ。」


もちろん、俺はそんなことはしていない。フィクションだ。


「それで?」


ソーマはアスモデウスの話に食いつく。本当に楽しそうだ。


「私はイヅナ様に言います。


『どうしたんですか?』


イヅナ様が答えます。


『俺は今まで気づかなかった。でも、この学園で気づくことが出来たんだ。俺の本当の気持ちに。』


『何を急に言ってるんですか。』


『お前のことが好きだアスモデウス。』


イヅナ様はそう言って、私にそっと抱きつきます。イヅナ様の息が私の耳を優しく撫でます。


『あっ。』


『アスモデウス、俺はもう我慢できない。』


『そんな、イヅナ様待って…。』


『無理だ。』


『あっ…。』


と言うことがありましたよ。」


いつの間にか先程まで気絶していた男子は復活し、女子たちと共に顔を赤くしている。


「それはそれは良い体験をしたんだね、アモちゃん。」


「はい、それはもう。ふふふ…。」


してやったり。言葉に出さなくともアスモデウスの顔がそう語っている。


「はあ〜。最後くらい普通にお別れをさせてくれ。」


この後、一応別れの挨拶をしようとしたが、アスモデウスの話の内容を全員から聞かれ、俺は何も出来なかった。

クラスメートへの挨拶は最悪な形で終わった。

アスモデウスのやつは後でお仕置きだ。










次回の投稿は6/23です。もしかしたらもう少し早くなるかも…。

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