閑話ー前編ー
1話にまとめようとしたのにまとめきれませんでした。すみません。
ーーー木下 歩SIDEーーー
「ッ!!!雅風ッ!!!」
俺は雅風にむかって手を伸ばした。しかし、手は雅風に届くことなく、俺たちは転移に巻き込まれた…。
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しばらくして目を開けると俺たちは見慣れない部屋にいた。石造りで床には教室で見たものと同じ紋章が刻まれていた。
「雅風は!?」
俺は周囲を確認した。しかし、どこにも雅風の姿はなかった。
「嘘だろ……。だって、さっきまで普通に話してたじゃないか…。あんなに…笑ってたじゃないか…。」
俺の頬を涙が伝ってきた。俺は雅風を助けることができなかった。
「木下くん……。」
横山さんが俺の背中をさすってくれた。
「ありがとう。でも、辛いのは横山さんだって一緒だろ?俺のことはいいから、無理はしないでくれ。」
「うん……。わかった。」
そういうと横山さんは涙を流した。
俺は横山さんが雅風に想いを寄せていることを知っていた。好きな人がいなくなってしまって悲しまない人はいない。だから、横山さんが無理をしているのはわかった。
「清水さん。横山さんのことお願いしていいか?」
「ええ。勿論。」
清水さん=清水 琴羽は横山さんの親友だ。長い黒髪を後ろでひとつに結んでいる。凛々しい顔立ちで、スタイルもよい。実家が道場で、槍術を習っているらしい。
「頼むな。」
そう言って横山さんを清水さんに任せ、俺は周囲の確認を続けようとした。
そのとき、部屋の奥の方から赤いドレスを着た金髪の女性とその後に10人のローブを着た男たちが歩いてきた。クラスの男子の大半がその女性に見とれていた。勿論、俺もだ。そして、俺たちの前まで来ると頭を地につけた。
「この度は勇者の皆様を我の勝手な都合によりこちらの世界に召喚してしまい、誠に申し訳ございませんでした。決して、許して貰えるなどとは思っておりません。しかし、どうかこの世界のために力を貸して欲しいのです。」
俺たちは黙っていた。いきなりの謝罪をして、いつまでたっても顔を上げない女性に少しだけ困惑したのだ。
「と、とりあえず顔を上げてください。許す、許さないは後にして、今俺たちが置かれている状況について説明してくれませんか?」
そう言ったこのイケメンはクラスのリーダー的存在である、上条 颯太だ。身長175。運動神経抜群。頭脳明晰。彼女は勿論いる。
そんなイケメンの言ったことを聞き、その女性は顔を上げた。
「…そうですね。失礼しました。しかし、説明も少し長くなりますので部屋を移動してからさせていただきます。ご了承ください。」
「わかりました。」
俺たちは女性の後についていく。どうやらさっきまでいた部屋は地下にあったらしく、俺たちはどんどんと上へ登っていった。
すこしして大きな扉が現れた。扉が開かれ、中に入るとそこには玉座に座った、いかにも王様らしい人物がいた。傍には豪華な鎧を身につけた騎士がいる。
俺たちが玉座の前まで来ると、王様(仮)が話し始めた。
「我はグラム王国53代目国王アルバート・グラムである。この度はこちらの勝手な都合により、異世界から呼び出してしまったことを謝罪する。しかし、こちらも一刻を争う状況なのだ。そのため早速説明に入らせてもらうが、構わないか?」
流石に異論はない。
「では、まずこの国、いや世界が置かれている状況から話すとしよう…。」
それから俺たちは王様の話を聞いた。話を聞いた感じだと、どうやらこの世界で数百年も前に封印された魔神に動きがあったというのだ。このままだと、3年後には魔神が復活してしまうらしい。
そのため、急遽この世界にある4つの国の王たちが会議を開いた。そして、その昔魔神を封印した勇者たちを再び召喚するこのことになったようだ。これが、俺たちがこの世界に呼ばれることになった理由らしい。
「これが現在我々が置かれている状況と、勇者を召喚することになった理由だ。何か聞きたいことがあれば好きに聞いてくれて構わん。」
「じゃあ、3つほど質問をさせてください。」
颯太だ。
「なんだ?」
「まずは俺たちは強制的に魔神と戦わせられるのかということ。次に、元の世界に帰る方法はあるのかということ。そして、最後に俺たちはどうやって魔神と戦うのかということ。この3つの質問に対して返答をお願いします。」
さすがイケメンだ。みんなが聞きたいことの大半を聞いてくれた。
「わかった。まず最初の質問についてだが、我は強制してお主らを魔神と戦わせるつもりはない。そして、不自由な生活をさせるつもりもない。そもそもがこちらが勝手にしたことなのだ。それくらいのことはさせて欲しい。
次に二つ目の質問についてだが、我々の知る限りではない。しかし、先代の勇者は魔神を封印すると、元の世界に戻っていったらしい。これは我の推測だが、この世界での目的を果たしたことにより元の世界に戻れたのではないかと考えている。」
「つまり、俺たちが元の世界に帰るには魔神をどうにかするしかないってことですか?」
「そうなるな。」
これを聞いたクラスのやつらは暗い表情となった。それはそうだ。魔神とまともに戦えるのかさえわからないのに、元の世界に帰るには、封印か討伐をしなくてはいけないのだ。
「では、最後の質問に対しての答えだが、お主らはこちらの世界に来ることによってステータスの値が考えられんほどに上がるらしい。勿論、他の策も考えてはいるが基本的にはそのステータスを使い戦うことになるであろう。」
今度はクラスの大半がボケ〜ッとした顔をしていた。まったくいそがいしやつらだ。まあ、俺も人のこと言えないけど…。
「ん?どうしたのだ?」
流石に俺たちの様子がおかしいことに気がついたようだ。
「…もう一つだけ質問いいですか。」
「別に構わんが?何かわからぬことでもあったのか?」
「はい、ステータスのことについてなんですが………。そもそもステータスってなんですか?」
「へっ?」
気の抜けた声が部屋に響いた。
はやく戦闘描写が書きたいです。