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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第2章 カラドボルグ魔法学園編
44/164

気がついたら予選でしたールネ編ー

今回少なめです。すみません。

  “マジックデュエット”の初戦を終えた俺は、死神が運ばれて行くのを確認してから退場した。

 

  「しかし、あれは辞めておいた方が良かったですかね。」


  俺は選手用の通路を歩きながらそんなことを呟いた。あれというのは先ほどの俺の発言のことである。


  『私に勝てると言うのであれば、私はその相手とお付き合いでも何でもしましょう。』


  俺はこの発言をするにあたって、最初は完全に否定してしまえば良いと考えた。しかし、そんなことをすれば男子生徒達のテンションを一気に下げるのではないかと考えたのだ。

  そのため俺は、自分が絶対に負けないことを前提に、この“闘魔祭”ということ大イベントに配慮してあの発言をしたのだ。

  だが、今もう一度考えてみるともしかしたら自分にも負ける可能性がないとは言い切れないのではないかと思った。元クラスメートの勇者達はもちろんのこと、アスモデウスが鍛えたルネもいる。万が一のことあるかもしれない。

  色々な可能性が次々と登場し、頭を今にも埋め尽くそうとしたが……。


  「考えるだけ無駄ですかね。」


  俺は考えることをやめた。言ってしまったことはしょうがない。考えるだけ無駄だ。俺は自分にそう言い聞かせた。

  そんなことをしていると正面からルネが歩いてきた。普通に歩いていれば彼と会うことなく、会場から出れたはずだったが、考えることに集中し過ぎたため、ほとんど進んでいなかったらしい。


  「ルネさん頑張って下さいね。」


  「ありがとう、イヅナさん。相手はFクラスの生徒とはいえ、この学園の生徒だしね。気を抜かずにやってくるよ。」


  「いい心がけですね。ただ、アスモデウスに鍛えられたわけですから、勇者などの特別な存在が相手ではない限り全力は出さない方がいいと思います。」


  「ハハ、分かってるよ。僕も今の自分の力くらい。」


  ルネは苦笑いしながら応えた。この感じだとルネは一度、失敗でもしたのかもしれない。


  「それじゃあ、僕はこれで。」


  ルネはそう言って、通路を進んでいった。そのときのルネの背中を見て俺は少しだけ驚いた。今の彼からは迷いや緊張と言うものが余り感じられなかった。


  「どうやら、成長したのは体だけではないみたいですね。」


  俺はルネが見えなくなるのを確認すると再び通路を歩き出した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  「何をしてるんでしょうか?」


  「さあ、私にも分かりません。」


  観客席に来た俺はアスモデウス達と一緒にルネの試合を見ていた。もちろんミカエルも一緒だ。

  しかし、俺の予想では観客席に着く前にルネの試合は終わっていると思っていたのだが、何やら手こずっているらしい。見た感じだと相手を攻撃することに抵抗があるようだ。

  突然強い力を手に入れたため、相手を傷つけてしまわないか心配なのだろうか。


  「ルネ〜!なにしてるんですか!そんなやつさっさとぶっ飛ばせば良いんですよ!」


  アスモデウスが大声で野次を飛ばす。しかし、状況は変わらない。俺たちはその状況をただただ見ているしかなかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  ーーールネSIDEーーー


  (困った。)


  僕は心の中でそんなことを呟いていた。

 “マジックデュエット”の初戦。相手はFクラス代表の生徒だ。この相手ならきっとアスモデウスさんに拷も……ではなく訓練をしてもらう前でも勝てたと思う。しかし、訓練を受け、強くなった今だからこそなかなか勝てないでいる。

  そう、力加減が出来るか心配なのだ。“マジックデュエット”の代表を決める選考会のあの一件で少しばかり相手を傷つけてしまうのでは無いかと心配になるのだ。戦えば間違いなくどちらかが怪我をする。それはそうなのだが、今の僕ではただの怪我では済まないのでは無いかと思うのだ。


  「Bクラスと言ってもこの程度か、それじゃあそろそろ決めさせてもらうぜ!」


  Fクラス代表の生徒、確か名前は……まあ、そんなことはどうでも良い。仮にFとしよう。そんなFがこちらに向かい詠唱を始めた。


  「“穿て”『ファイヤーランス』!」


  短い詠唱で魔法が放たれた。しかし、この程度の魔法、今の僕には無意味だ。僕は飛んで来た魔法を剣で真っ二つに切り裂いた。


  「!!!、へ、へへ、やるじゃねえか。だが、今のを俺様の本気だと思わねえことだな。」


  明らかに嘘だ。


  (しかし、このままだと試合が終わらないな。)


  僕はFの攻撃をかわしつつ、Fに怪我を負わせず、勝つ方法を考える。


  (そう言えば、イヅナさんが竜巻で相手を上に吹き飛ばして勝った、とかどうとか。)


  僕はそこで考えた。相手に怪我を負わせずに勝つ方法を。

  僕はFの攻撃をかわし、Fの後ろに一瞬で回った。そして、Fが僕を探している間に、Fを掴み、そして……。


  「“我が風、道となりて我を導きたまえ”『ウィンド』」


  魔法の力を上乗せして、Fを空高く投げた。


  「うわぁぁぁ…………。」


  「おおーっとこれはすごい!ルネ選手がエフ選手を空高く放り出した!」


  どうやら、彼の名前は本当にエフらしい。そんなエフを空に投げ飛ばしたのは、落下する彼を受け止め、負けを認めるまでそれを続けるためだ。

  そんなことをするなら、後ろに回り込んだときに剣を首筋に当たるなどした方が速いと思う人がいるだろうと僕は思う。僕もそう思う。今考えると僕もそう何でこの方法を取ったのかわからない。

  いや、この方法に似たような方法を取った、イヅナさんに憧れているからだろう。あの人は素晴らしい。どこかのアスモデウスさんとは大違いだ。

  そんなことを考えていると、エフが落ちて来た。 僕はすかさずエフを受け止めた。


  「やあ、エフくん。もしも負けを認めると言うなら僕は……ん?気絶してるのかい?」


  エフは白目を向いていた。


  「試合終了!!!勝者はBクラス代表“ルネ・サテライト”選手だ!!!」


  何はともあれ僕は勝った。まあ、本当に厳しい戦いになるのはここからだろう。

  僕はアスモデウスさんたちを見つけ、一礼した。そして、会場を後にした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーーーイヅナSIDEーーー

 

  「イヅナ様。私ちょっとルネに用事が出来たので言って来ます。」


  そう言ってアスモデウスは観客席をたちとルネの元へと向かった。


  「ルネ。どうか無事で。」


  俺はルネの無事を祈る。


  「ねえねえ、イヅナちゃん。」


  いつの間にかソーマが俺の隣に来ていた。


  「何でしょうか?」


  「アモちゃんとBクラスのルネ?だっけ、どういう関係なの?」


  ソーマは目を輝かせながら聞いてきた。


  「あ、それ私も気になる。なんか少し前に2人で歩いてるところを見たって子がいて少し噂になってたよ。2人は付き合ってるって。」


  ニエーゼが言う。

  アスモデウスとルネの関係は周りから見ればそんな仲に見えてしまうのか。ルネがとても可哀想だ。

  彼と彼女の関係は恋人と言うような温かい関係ではない。血にまみれた、鬼教官と訓練兵という関係なのだ。


  「イヅナちゃん?」


  「あ、すみません。」


  どうやら、俺は自分の世界に入っていたらしい。


  「2人の関係でしたね。付き合ってはいませんよ。それに愛とかいうものは今の2人には芽生えないと思います。」


  「本当かな?」


  「はい、本当です。」


  俺は自分の思っていることをありのまま伝えた。ソーマはどこか疑っている様子だったが、俺の目をしばらく見て、嘘はついていないと気づいたのか、俺の言葉を信じてくれた。


  「本当っぽいね。じゃあ、2人は付き合っていないと。」


  「そうなんだ。お似合いなのにね。」


  ソーマとニエーゼはがっかりした様子だった。


  「ま、まあ、これからくっつく可能性も有りますよ。」


  「「そうだよね!!」」


  今度はソーマとニエーゼは2人揃って満面の笑みをしてそう応えた。


  「そうとなればあの2人をくっつけちゃおう!」


  「私も興味あるな〜。」

 

  「よし!そうと決まればアモちゃん達のところへ向かおう!」


  「そうだね。」


  「え?え?え?」


  カレッタだけは話についていけていないようだ。


  「行っくぞー!!!あ、ミカちゃんも行くよ。」


  「……私も…。」


  「細かいことはいいから。」


  ミカエルはニエーゼに右手を掴まれ、そのまま連れていかれてしまった。


  「面白くなってきたな〜。」


  「ふ、2人とも待ってください。」

 

 そして、3人組+ミカエルは2人の元へと行ってしまった。


  「私はどうしましょうか。」


  1人残された俺は悲しくポツンとその場に座っていた。

 


 

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