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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第2章 カラドボルグ魔法学園編
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閑話③ー前編ー

今回は自称騎士“ルネ・サテライト”の話です。

  僕の名前はルネ・サテライト。カラドボルグ魔法学園に通うエリートだ。幼い頃から何不自由なく育ってきた僕。もちろん、生まれてこのかた後悔なんてしたことはなかった。僕はそんな言葉とは無縁だと思っていた。あの日までは。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  「ねえ、君達。」


  この言葉が全ての始まりだったと思う。僕は今までに見たことのないほど美しい2人の女性を見た。

  そのときの僕は夢中だった。普段の僕なら知らない人にいきなり声を掛けるなどしなかっただろう。

  僕は少しでも長く話そうと必死だった。しかし、そんなことも虚しく、彼女達は行ってしまった。(実際は僕が逃げたわけだが。)


  「いやあ、参ったな。まさか、Aクラスだったとは。これでは話しかけにくくなってしまった。」


  俺は再度チャンスをうかがった。そして、俺は平然を装って、廊下でたまたまあったかのようなシチュエーションを作ることに成功した。しかし…。


  「あ!そうだイヅナ様!この方に勇者を倒して貰えば良いんじゃないですか?」


  ここからが悪夢の始まりだった。慣れないナンパなどするのではなかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  なぜか分からないが、勇者と戦うことが決まってしまった、僕。断ろうにも、断れる様子ではなかった。


  「何で僕がこんな目に合わなきゃいけないんだ。」


  僕はアスモデウスさんに言われた通り、学園最南にある広場に6時に到着した。


  「あれ?アスモデウスさんいないじゃないか。」


  仕方なく僕はベンチに腰をかけ待った。30分ほどたっただろうか。ようやく、アスモデウスさんが姿を現した。


  「アスモデウスさん。遅刻だよ。」


  僕が笑顔でそう言うと、返事の代わりに何かが僕の頰をかすめた。何か赤い液体が頰を伝っていく。

  このとき、僕は瞬時に感じた。彼女は強いと。心の奥底の本能的なものが感じ取ったのかもしれない。


  「アスモデウスさんではない!」


  「えーっと、それじゃあ何て呼べばいいんだい?」


  「アスモデウス教官と呼べ!ルネ訓練兵よ!」


  「……。そ、それじゃあ、アスモデウス教官。危ないんだけど!血出てるよ!分かる?血!」


  「これからもその程度の出血で済めばいいがな。」


  「……………。」


  僕は、きっと自分は死ぬんだ、そう思った。


  「それでは先ず最初にこいつの攻撃から逃げ切って見せよ。」


  アスモデウスさんがそう言うと地面に赤い魔法陣が浮かび上がった。そして、その中から3メートルほどのミノタウロスが出てきた。片手には斧を持っている。


  「紹介しよう。ミノ太君だ。」


  「宜しくな。少年。」


  「しゃ、喋った!?」


  僕は今まで言葉を話す魔物など見たことがなかったのだ。それは驚くだろう。


  「ん?別に普通ではないか。なあ、ミノ太君よ。」

 

  「そうですね。アスモデウス様。」


  「…………。」


  僕はもう既に1人置いていかれてる。


  「では、始め!」


  「え?」


  「行くぞ!少年!」


  その瞬間、ミノ太君は目にも止まらぬ速さで突進をしてきた。僕はミノ太君が突進する直前、体が勝手に動き、何とか回避に成功した。

  ミノ太君はベンチに盛大に突っ込んだ。


  「あ、危ないじゃないか!死ぬところだったぞ。」


  「気をつけろよ訓練兵。まだくるぞ。」


  「へ?」


  僕はミノ太君の方へ振り向く。しかし、そこにミノ太君の姿はない。

 

  「い、いったいどこへ。」


  「訓練兵よ。上だ。上からミノ太君だぞ〜。」


  僕は上を向くことなく、その場から離れる。次の瞬間、先ほどまで僕がいた場所にはクレーターができていた。


  「なかなか良い動きだな。少年よ。では、まだまだ行くぞ!」


  僕はこの後も、必死にミノ太君から逃げ回ったのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  「はあ、はあ、はあ、はあ。」


  僕は広場に大の字になって倒れていた。、


  「それでは今日の訓練はここまでとする。また、明日必ずくること!」


  アスモデウスさんはそれだけ言うと広場を後にした。


  「こんなんじゃ命がいくつあっても足りないよ。」


  「心配するでない、少年よ。殺さぬように手加減くらいしている。」


  「あれ?ミノ太君はアスモデウスさんについていかなくて良いの?」


  「問題ないぞ。むしろアスモデウス様にはここにいて少年の話し相手になってやれと言われた。」


  「それはどうも。」


  僕は思わず苦笑いした。


  「して、少年よ。何故お主は訓練に励んであるのだ?」


  どうやら、ミノ太君は目的も知らずに俺に攻撃を続けていたようだ。


  「実は……。」


  僕は何故か勇者と戦うことになってしまったこと、その際で無理やりアスモデウスさんに訓練を受けさせられていることを話した。


  「ふむ。成る程な。少年もアスモデウス様に振り回されているようだな。」


  「も?ってことはまさかミノ太君、君も。」


  「うむ、実は我も幼き頃、アスモデウス様に鍛えられた所存なのだ。」


  「と言うことは、意外とミノ太君は若いのか。」

 

「若いと言えば若いな。まあ、それはさておき、当時我は同族達と比べても群を抜くほど弱かった。しかし、あの方に言われたのだ。“悔しいか?憎いか?辛いか?悲しいか?”と。」


  僕は気がつけばミノ太君の話に釘付けになっていた。


  「そのとき、我はもちろん肯定した。しかし次の瞬間、我はビンタをくらった。」

 


「さすがはアスモデウスさんだ。容赦がない。きっと僕もこれからその調子でボコボコになるだろうな。ハハハハ。」


  「勝手に話を進めるでない。まだ、続きがある。」


  「す、すまない。」


  「我にビンタをした後、アスモデウス様はこうおっしゃった。“あなたはそんな事を思えるほど、努めてきたのですか?”とな。そのあとは少年、君と同じだ。我の有無など聞かず、訓練の日々だ。」


  「やはりそこに落ち着くのか。」


  「そうだな。しかし、我はそのおかげで強くなれた、今では同族達は我に手も足もでない。」


  「それはそれは。」


  僕は素直に驚いた。そして、僕もこれからこうなるのかと思いながら、ミノ太君を眺めた。


  「まあ、つまりは今は少年の意志がなかったとしても、いつか必ずこの訓練が役立つ時がくる。」


  「本当に僕にそんなときがくると思ってるのか?ミノ太君は?」


  「うむ、必ず。」


  (そんなときがくるとは到底思えないな。)


  僕はこの後しばらくベンチに腰をかけながら、ミノ太君の話に耳を傾けた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  「後ろだ。訓練兵。」


  「くっ!」


  訓練を始まり3日ほどたった頃、僕はミノ太君と戦っていた。もちろん、僕のステータスではまともに戦うことが出来ないので、アスモデウスさんに魔力による身体強化、それに少しだけ上質という剣も貰っている。


  「受けてみよ!我が斧の力!」


  ミノ太君のその言葉と共に、斧が赤く輝き始めた。


  「ア、アスモデウス教官。何だ、あれは?」


  「斧だな。」


  僕はそんな事を聞いている訳ではない。


  「そうではなく。」


  「魔力を纏わせた斧だな。訓練兵よ。君もやってみたまえ。」


  「僕にあれをやれと?」


  「訓練兵。余所見は良くないぞ。」


  今更感があるその言葉に、僕は反応しミノ太君の方へ体を向ける。ミノ太君はいつの間に僕の目の前まで移動していた。


  (しまった。)


  頭上から斧がゆっくり落ちてくるように見えた。きっと、僕の最後の瞬間だからだろう。

  次の瞬間、景色が回った。


  (あれ?何で空が下にあるんだ?何で僕の身体あんな所に?)


  崩れ落ちていく自分の体を見ながら、僕は意識を失った。








  「…………ん?」


  目を覚ますと目の前に牛がいた。


  「うお!?」


  「ん?気がついたか少年よ。」


  「何だ、ミノ太君だったか。」


  辺りを見まわすと日は沈み、すっかり夜になっていた。


  「ところでミノ太君。いつの間に夜になったのかな?僕の記憶が正しければまだ日は沈んでいなかったはずなのだけど。」


  「ああ、うむ。何というかだな……。」


  ミノ太君はそのまま黙ってしまった。僕はそんなミノ太君をじっと見つめていた。そのとき、広場の奥の方からアスモデウスさんが歩いて来ているのが見えた。


  「ん?あ、起きたんですね。」


  「え?あ、ああ。つい先ほどね。」

 

  アスモデウスさんがいつものおかしな口調ではなく、普段通り?の話し方をしたので僕は少しだけ新鮮な感覚を覚えた。


  「よかったです。首が飛んだときはどうなることか…。」


  「アスモデウス様!し〜っ!」


  「首が飛んだ?」


  確かに今思うと気を失う直前、首の無い僕の体が見えたような気がした。


  「どういうことかな?アスモデウスさん?」


  「こ、言葉のあやってやつですよ。そうでした、そうでした。ルネは確かミノ太君の斧が後頭部に当たって気絶したんですよ!」


  「そ、そうなのだ。我としたことがついつい力を入れすぎてしまったな。」


  「…………。」


  僕は疑いの眼差しで2人を見つめる。


  「な、何ですか、その目は。もしかして、私達が嘘をついてると思っているんですか?」


  「もちろん。」


  「わ、我々がそんな事をするわけが無いだろう。」


  「ミノ太君のいう通りです。」


  僕はこのままでは拉致があかないと思い、何か決定的な証拠になるものを探した。


  「なら、いくつか質問をさせてくれ。」


  「いいですよ。どんときなさい。」


  「では、最初に何故僕のきている服は血まみれなのは何故?」


  「我の斧が後頭部に当たったからだな。」


  「では、次にあそこにできている、血だまりは何?」


  「それはルネの首からドパーっと。って、言っちゃった。」


  つまりはこういう事らしい。ミノ太君の攻撃を受けきれなかった僕は剣ごと首を持っていかれたそうだ。そのまま放っておけば間違いなく死んでいた。

  しかし、アスモデウスさんが身体強化の応用で僕の自然治癒能力を極限まで高めたらしい。その結果、僕は何とか生きながらえたわけだ。


  「ということは、僕は一回死んでるわけか。」


  「そうですね。」


  「そうだな。」


  「…っておい!そうだなじゃないだろ!」


  「いや、まあ生きてるんだし、良いじゃないですかあ。」


  「うむ、“終わり良ければ全て良しというやつ”だな。」


  「…………。」


  僕はこの瞬間悟った。この人達には何を言っても無意味なのだと。


  「まあ、よかったじゃないですか。これで全力でやっても大丈夫なのが分かった訳ですし、これからも死ぬまで練習しましょう。いや、するぞ!訓練兵!」


  そうして、僕は“いつか死ぬかもしれない”練習ではなく、“毎日死ぬ”練習を受けるようになった。

  ちなみに僕の首が飛んだ後、どう治した聞いたところ、身体強化を少し自然治癒の力に集中したらどうにかなったらしい。僕はそれを聞き、もはやそれは身体強化ではない、そう思った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  僕は来る日も来る日も処刑……ではなく、訓練を受けた。体が裂けたり、吹き飛んだり、酷い時には木っ端微塵になった。

  しかし、気がつけば僕の体は元どおりに治っており、そして次の日も訓練を受けるそんな日々を過ごしていた。

  ただの学生の僕がそんな訓練を毎日受け続け、強くならないはずがなかった。1週間も経つ頃には僕はミノ太君と互角に戦えるようになっていた。

  ただ、その日から徐々に身体が動かなくなるような感覚を覚え始めたが、僕は気にせずに訓練を受け続けた。

  そんなある日のこと。その日は午後に用事があるため珍しく朝練をしていた。そのときアスモデウスさんがこんな事を呟いた。


  「ルネ。あなたもう勇者に勝てるんじゃないですか?」


  つい最近、教官という役所に飽きたようで、普通に話仕掛けてくるようになった。


  「何をふざけた事を言っているんだ。確かに僕は相当強くなったと思うけど、それでもさすがにそこまでは。」


  僕にはその言葉がとてもではないが、信じられなかった。ただの学生の僕が勇者を、超えるなどそんなことがあるわけがない。


  「そうですか。まあ、クラスの人達よりは強くなっているんじゃないですか?」


  「クラスの人ね〜、ハハハハ。」


  僕は引きつった顔で笑った。実はルネのクラスには1人だけ飛び抜けた生徒がいるのだ。その生徒の名は“テーべ・ガイアート”。上級貴族、ガイアート家の長男だ。彼は魔法の才能に恵まれなかった(とはいえ一般の人と比べれば話は変わってくる。)ためAクラスには、入らなかった。しかし、もしもAクラスの生徒が彼と戦えば、彼に勝てるのはほんの数人だけだろう。

  それほどの実力を持つ彼がいるのだ。クラスの人達よりは、確かに強いとは思うが、彼には勝てる気がししない。


  「ま、まあ、今日は午後に“マジックデュエット”の選考会があるし、そこで訓練の結果がわかるよ。」


  先ほど言っていた用事とはこのことだ。

 

「選考会があるんですか?なら、1つアドバイスです。」


  「一体、何だい?」


  「全力を出さないように。」


  「は?それは僕に負けろと言ってるのかい?」


  「違います。まあ、説明はめんどくさいで早く行ってください。」


  「?」


  僕はアスモデウスさんの言った言葉の意味もわからず、学園へと向かったのだった。


 

 


 


 

 


 

ルネのキャラがあまり定まっていなかったので、少し不自然だったかもしれません。

すみませんでした。

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