表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第2章 カラドボルグ魔法学園編
38/164

気がついたら飛び出しました

祝ブックマーク数200突破!!!

 

  「イヅナ様。ついにこの日がやってきましたね。」


  「そうですね。」


  現在、俺とアスモデウスはいつもと同じように教室へ向かう廊下を歩いている。しかし、1つだけいつもとは打って変わったことがある。アスモデウスだ。

  アスモデウスが普段では考えられないほど真剣な表情を浮かべているのだ。


  「この日のために私がどれほど苦しんだことか。」


  「特に苦しんでいた様子はありませんでしたけどね。」


  「そんなことはありませんよ。今日だって徹夜ですし。」


  「それを言うなら今日だけですよ。」


  「………まあ、細かいことは気にしなくていいんですよ、イヅナ様。」


  「そうですか。」


  そう言ってアスモデウスは再び、真剣な表情になる。なぜ今日に限ってこんな表情になっているのかと言うと、学力テストが実施されるためだ。毎年、“闘魔祭”の1週間前の今日にテストが実施されているのだ。なぜ、“闘魔祭”の前にやるのかと思ったが、きっと教師達がテストで酷い思いをするであろう生徒達の為にこのようなスケジュールを組んだのだろう。


  「魔法陣の公式はこうで、魔力量が2になるから……。」


  隣でブツブツ言っているアスモデウスもきっと、酷い思いをすることであろう。何せ、テスト勉強をしていないのだから。

  ちなみに俺もテスト勉強はしていない。まあ、俺には『ネクロノミコン』あるので問題はない。平均少し上くらいを目指して頑張る予定だ。

  そんなことを考えているうちに、いつの間にか教室に着いていた。中に入るといつもとは違う雰囲気が漂っていた。流石はAクラスの学生達だ。勉強への意気込みが違う。果たしてこの中でアスモデウスは生き残れるのだろうか。


  「アスモデウスさん。」


  「な、何ですかイヅナ様。今公式を覚えるので忙しいんですが。」


  「せいぜい頑張って下さいね。」


  「イヅナ様。その発言、絶対に私を馬鹿にしてますよね。」


  「…………。」


  「せめて何か言って下さいよ!」


  「イヅナちゃん、アモちゃん、おはっよ〜。」

 

  アスモデウスをいじっていると、ニエーゼがこちらにやってきた。


  「おはようございます。ニエーゼさん。」


  「おはよう…。ニエーゼ…。」


  「ん?アモちゃん、元気ないね。どしたの?」


  「うぅ。察して下さいよ。」


  アスモデウスがマジな方で泣きそうだ。


  「あ、ああ。なんかごめん。」


  ニエーゼはどこか申し訳なさそうに謝る。


  「ま、まあ、このテストを乗り切れば“闘魔祭”だし、頑張ろうよ。」


  「……はい。」


  ニエーゼの励ましも今のアスモデウスにはほとんど効果が無いようだ。


  「イ、イヅナちゃんはどう?」


  「私は…。」


  「イヅナ様は学年1位取るって言ってましたよ。」


  俺の言葉を遮るようにアスモデウスが言った。


  「え!?本当に?と言うことは委員長にも勝つつもり?凄いなあ、イヅナちゃん。流石だね。」


  「え?」


  「そうです。何たってイヅナ様ですからね。1位取れなかったらこの学園やめるって言える程ですからね。」


  俺が会話に入れないでいるうちに



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 

  「さあイヅナ様!気持ちを切り替えて“闘魔祭”に向けて張り切っていきましょ〜う!」


  これがテストを終えてからのアスモデウスの最初の言葉である。


  「その様子ですとテストは……。」


  「テスト?何ですかそれ?美味しいんですか?」

 

  これは酷い。俺はそんなアスモデウスを見ていられず、“闘魔祭”の話題に乗っかることにした。


  「ちなみにアスモデウスさんは何かの種目に出るんですか?」


  「私は何ちゃらシューティングに出ますよ。」


  競技名くらい覚えて欲しい。ちなみに、“闘魔祭”には全員参加の種目が2つ、それ以外に3つの種目がある。種目数はあまり多いとは言えないが、これだけでも充分と感じるほど盛り上がるらしい。


  「あ、そう言えばルネもイヅナ様と同じ種目に出るらしいですよ。」


  「そうですか。」


  自称騎士様と当たるのは少しばかり楽しそうだ。そんなことを考えていると、3人組がこちらにやってきた。


  「やあ、お二人さん。“闘魔祭”の話題かい?」


  「あ、ソーマ。それに2人も。」


  「そうなんです。丁度、練習でもしようかと話していたところで。」


  「そうだったのかい。2人は代表に選ばれちゃったから大変だねえ。僕は頑張って応援してるよ。」


  「もう、ソーマも棒倒しとかには出るんだから、しっかり練習して下さいよお。」


  「そう言えば、そうだったねカレッタ。ははは。」


  「しっかりして下さいよお。」


  カレッタは少し頰を膨らませながら、ソーマの方を向く。全く、微笑ましい状況だ。


  「でも、イヅナちゃんは大変だね。」


  ニエーゼがこちらに振り向きながら言った。


  「何故ですか?」


  「だって、今年は“マジックデュエット”にだけ、特別枠で勇者様達が出場するんだよ。」


  「え?そうなのですか?」


  「うん。何でも勇者様達と戦って良い成績を出すと、勇者様達の戦いに同行させてもらえるんだって。いいよねえ。」


  「いいことなのですか?」


  「当たり前じゃない。何たってあの勇者様よ。その方達と同じ道を歩める何て、光栄以外のなにものでもないは。」


  どうやら、この世界ではこの考え方が普通らしい。地球育ちの俺にはよくわからない。


  「それにもしかしたら勇者様達との旅を終えればさ、国王とかからお金がたんまりと貰えるかもしれないじゃない?」


  ニエーゼの場合は勇者達と共に歩むという栄誉よりも、その結果貰えるであろう大金への興味が上回りそうだ。

 

  「まあ、私は“マジックデュエット”に出るわけでもないし、そんなことはありえないんだけどねえ。」


  「そ、そんなことないですよ。ニ、ニエーゼはとても強いですよ。」


  「やさしいね、カレッタは。」

 

  「そ、そんな、わた、私にゃんか……。」


  カレッタはニエーゼの言葉に顔を赤くしている。


  「まあ、お二人とも頑張ってねえ。もちろん、イヅナちゃんは優勝ね。」


  「ゆ、優勝ですか?」


  ソーマが俺にとんでもない目標を掲げた。


  「そうだよ。だって、三年生といい勝負をできるダンを軽くあしらったんだからね。」


  どうやら、ダンはそうとう強かったらしい。こんなことになるくらいならダンに負けておけばよかった。俺はできることならばあのときに戻りたいと思った。そのとき…。


  「ん?」


  「?どうかした?」


  「い、いえ、何でもありません。」


  「そう?ならいいけど。」


  俺は突然のことに少しだけ声を出してしまった。“できることならあのときに戻りたい”、そう思った瞬間『アザトース』がスキルをピックアップしたのだ。


  (まさか、過去にも戻れるとは。本当に何でもありだな。)


  俺はピックアップされたスキルを確認しなかった。と言うよりも確認せずとも俺にはどのスキルがピックアップされたのか大体予想できたのだ。


  (どうせ、『ヨグ・ソトース』だろうな。)


  俺は再び、会話の中へと戻る。


  「それでね、今日から食堂のメニューにパフェが追加されるらしいの!!!」


  「そうなんです!!!それは必ず行かなくては。」


  どうやら、俺が抜けている間に話題は変わったらしい。


  「行きましょう!イヅナ様!」


  「いえ、私は…。」


  「行きましょう!!!」

 

  「ですから…。」


  「行きますよ!!!」


  「ちょっと…。」


  そうして、俺はアスモデウスに連れられて教室を後にした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 

  「美味しかったですね。」


  「いや、私食べてませんよ。」


  俺とアスモデウスはイスに腰を掛けていた。


  「そうでしたっけ?」


  「ええ。アスモデウスさんが10秒もたたないうちに全て召し上がってしまいましたからね。」


  「そんな訳ありません。20秒はかかっていたはずです。」


  どちらにせよ、早いことに変わりない。


  「そういえばイヅナ様。」


  「何ですか?」


  「マジックデュエットには勇者達が出場するんですよね?」


  「そうですが、それがどうかしまいましたか?」


  俺がそう聞くと、アスモデウスはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


  「実はですね。ルネも“マジックデュエット”に出場するらしいんですよ。」


  「そうなんですか。」


  「……イヅナ様。まだ、分かりませんか?」


  「何がですか?」


  「はあ〜。」


  アスモデウスはあたかも俺への当て付けのように大きなため息をついた。学園に来てからアスモデウスの行動がいちいち頭にくる。


  「じゃあ、ヒントを出します。ヒント!何故私がルネを鍛えているでしょうか?」


  「………あ。」


  「流石のイヅナ様もここまで言われればわかったみたいですね。」


  「ええ。つまり、ルネが勇者を倒すいい機会だと言うことですね?」


  「その通りです。」


  そう、ルネはもともと勇者(杉本)を律する為にアスモデウスが鍛え始めたのだ。つい先ほどまで忘れていたが、確かにアスモデウスの言う通り“マジックデュエット”は絶好の機会だ。しかし…。


  「ルネさんは勇者に勝てるのですか?」


  カラドボルグ魔法学園の生徒とはいえルネと勇者達のステータスには大きな差があった。いくら、アスモデウスが指導をしたからと言って、勝てるとは思えない。


  「大丈夫です!何せこの私が育て上げたんですから。」


  そこが心配なのだ。


  「まあ、戦力の問題は良いとして、どうやって、ルネと杉本を戦わせるんですか?」


  「?杉本って誰ですか?」


  「そういえば名前はまだ知りませんでしたね。杉本はあのときの騒動の中心人物ですよ。体が大きくて、怒鳴り散らしていた。」


  「あ、あのうるさくて、でかくて、無礼で、とても勇者とは思えない、今度あったらただじゃおかないと思っていたあいつですか!」


  「え、ええ。おそらく。」


  どうやらアスモデウスはそうとうあのことを根に持っているらしい。


  「まあ、その辺も考えはありますよ。」


  「本当ですか?」


  「本当です。まあ、見てて下さいって。早速手を打って来ますから。」


  そう言うとアスモデウスは席を立つと何処かへ走って言ってしまった。


  「本当に大丈夫でしょうか。」


  俺はアスモデウスの後ろ姿を見ながら、思わずそう呟いた。


 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 

  今、俺の視線の先に天井がある。


  「……………暇だ。」


  俺はアスモデウスと別れた後、ミカエルの元へと向かった。しかし、いつもならばミカエルが座っているベンチには人影はなく、辺りを探してもその気配はなかったのだ。そして俺は、仕方なく寮に戻ってきたと言うわけだ。


  「本当にやることないな。………。」


  俺は何をするわけでもなく、ただただ天井を眺めていた。そして、知らぬうちに俺の意識は沈んでいく……筈だった。


  「ただいま戻りました、イヅナ様〜!!!」


  その声と同時に俺の体に衝撃が走った。


  「ぐふ!?」


  「聞いて下さい、イヅナ様。」


  ベットの上になる俺のさらに上にアスモデウスが乗っている。


  「アスモデウス。邪魔なんだが。」


  「実はですね。食堂を後にして、校舎内をぐるぐる走り回っていたらですね。」


  「だから、どいてくれないか?」


  「何と先生達が…って…イ、イヅナ様。き、急にお姫様抱っこなんて。…もう、大胆ですねえ。」


  俺は俺の手の中で喋るアスモデウスを無視し、窓の方へと歩く。


  「あのイヅナ様?そっちは窓何ですが。」


  「………。」


  俺は再度、無視をする。そして窓の前に立ち、ようやく口を開いた。


  「アスモデウス。」


  「はい。」


  「お前のステータスは高いよな。」


  「それはまあ。この学園の生徒に比べれば。」


  「よし!なら大丈夫だな。」


  「大丈夫って何……うわぁぁぁぁ!!!!」


  その日、とある寮の窓から、これまたとある悪魔が飛び出した。



 


 


 

どうも皆さん。ヴァル原です。この度、『気がついたら魔神でした』のブックマーク数が200を突破しました。感謝感激です。本当にありがとうございます。

どうぞこれからも宜しくお願いします。


ーー追伸ーー

最近、日常パートばかりですみません。後2、3パートで“闘魔祭”に突入できると思います。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ