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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第2章 カラドボルグ魔法学園編
36/164

気がついたら涙でした

この度更新が遅れ、本当に、本当に、すみませんでした。

  俺はミカエルと友人になってからと言うもの、色々なことを知った。

  まず、この学園でのミカエルの名は“ミカ・エル”。驚くほどそのままだった。そして、クラスはBクラス。ルネと同じクラスだった。ミカエルは体が弱いと言うことになっているらしく、模擬戦などの授業は全て出ておらず、テストのみ参加しているようだ。まあ、それでもあのステータスだ。成績は悪くは無い筈だ。

  それにしても、数日間でよくこれだけのことを知れたものだ。これも、俺がミカエルと良い仲を築けている証拠だろう。

  俺がそんなことを考えていると…。


  「イヅナ様。」


  横からアスモデウスの声が聞こえてきた。


  「何ですか?」


  「『何ですか?』じゃないですよ!今は“闘魔祭”の話し合いをしてるところじゃないですか。」


  そういえば、そうだった。

  “闘魔祭”。毎年、この時期に行われる行事の1つだ。クラス全員で取り組むものから、クラスの代表者が競い合うものまで、数多くの種目がある。まあ、言ってしまえば、魔法を使う体育祭みたいなものだ。


  「そうでしたね。」


  「全く、イヅナ様は…。だから、あんなことになっちゃうんですよ…。」


  アスモデウスはそう言うと、黒板の方を指差す。俺はそれを目で追う。


  マジックデュエット:イヅナ・ルージュ


  俺はいつの間にか代表者に選ばれていた。


  「アスモデウスさん。何故、私の名前が描かれているのですか?」


  「代表者に選ばれたからですね。」


  そんなことはわかっている。


  「そうではなくて…。」


  「ああ、理由のほうですか?それはですねぇ。ダンさんと委員長さんがイヅナ様を推薦したからです。」


  俺はそう言われ、ダンの方を向いた。すると、ダンは満面の笑顔でこちらに手を振ってきた。俺は仕方なく、手を振り返す。

  次にムハル(委員長)の方を向く。こちらも似たような反応だ。


  (あの2人。余計なことを……。)


  文句を言いたいところだったが、そもそもの原因が俺が話を聞かずに、ミカエルのことを考えていたことにある為、そんなことは出来ない。

  こんなことになるくらいなら、しっかりと話を聞いているべきだった。

  ちなみに俺が代表者になった“マジックデュエット”と言うのは、それぞれのクラスの代表者を1人だし、その代表者が魔法や体術などを使い、模擬戦をすると言うものだ。模擬戦といっても、いつもとは違い、ダメージをしっかりと受ける。そのため、毎年けが人が出るそうだ。


  「あのやはりここは私ではなく、Aクラス内で最も強い方にするべきだと思います。」


  俺は何としてでもこの競技に出ないため、最もらしいことを言った。しかし、それに対して……。


  「だから、イヅナさんなのですよ。」


  と、ムハルは答えた。


  「イヅナさん達がAクラスに転入してくるまでは、ダンが“マジックデュエット”に出場する予定でした。しかし、そのダンにあっさりと勝ってしまう人物がいたのなら話は変わってきます。」


  「…………。」


  俺はその返答に何も言うことができなかった。まさか、あの脳筋のようなダンがAクラス最強だったとは。とんだ誤算だ。


  「と言うことで、イヅナさん。優勝は無理でも3位くらいは目指して頑張ってください。」


  「いや!イヅナ殿ならば、1位も夢ではないでござるよ。」


  どうやら、もう決定してしまったらしい。


  「はあ〜。」

 

  トントン。俺が気を落としため息をしていると、誰かが肩を叩いてきた。この時点で俺は後ろに誰がいるか、大体の予想はついた。俺はゆっくりと振り向く。すると、そこには予想通りアスモデウスがいた。それも満面の笑みを浮かべながら。アスモデウスは右手の親指を立て、グっと前に突き出し……。

 

  「イヅナ様なら、大丈夫ですよ。頑張ってくださいね。」


  と言ってきた。全く、俺の強さを知っているならば、そんなことで気を落としているのではないことくらい気づいてほしいものだ。

  俺はアスモデウスの言葉により、さらに気を落とすこととなった。


  「はあ〜。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  授業が終わり、早速ミカエルの元へ向かおうとした俺が、それは阻まれた。


  「お〜い。イヅナちゃ〜ん。」


  声のした方を向くとそこにはソーマがいた。もちろん、ニエーゼとカレッタも一緒だ。


  「何ですか?」


  「僕たちこれからカフェに行くんだけどね。イヅナちゃんもどうかな〜、と思ってさ。」


  「その、すみません。実は先に約束をしている方がいまして…。」


  「え?そうなの?意外だな〜。僕ったら、てっきりイヅナちゃんって僕たち以外友達いないと思ってたよ。ハハハ。」


  それはどういう意味かと問いただそうかと思ったが、大人な俺は何とか我慢した。


  「そ、そういうことなので、私はこれで。」


  俺はそう言って、今度こそミカエルの元へ向かおうとしたが、再びそれは阻まれた。


  「ちょっと待ったー!!!」


  ニエーゼが、サッカーのスライディングのような動きで俺の進路をふさいだ。


  「どうせならさ、そのイヅナちゃんが約束してる子も一緒に行こうよ。」


  俺はその提案を聞き、ミカエルをこの3人と友好的な関係に出来れば、心を戻すための鍵になるかもしれない、と考えた。その様子を笑顔で見つめる3人組。


  「……それならいいかもしれませんね。」


  「じゃあ、決まりだね。」


  ニエーゼが嬉しそうに応える。


  「はい。3人は先にそのカフェに行っていてください。私は約束している方をお連れしてきます。」


  「オーケー。ちなみにイヅナちゃん。カフェの場所って分かるの?」


  「あ、そういえば、知りませんね。」


  「じゃあ、私たち東門の所で待ってるから。そこには来てくれるかな?」


  「わかりました。それでは、また後ほど。」


  「また後で。」


  そうして、俺は今度こそミカエルの元へと向かった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  時は少し流れ、俺とミカエル、ニエーゼにカレッタ、そしてソーマの計5人は目的のカフェにいた。

  しかし、思っていたよりもミカエルを連れてくるのが大変だった。きっと軽くついて来てくれるであろう、と思っていたのだが、何故かいつもの場所からなかなか離れようとしてくれなかったのだ。15分程度の説得の末に何とか連れて来た次第だ。


  「それで、ミカちゃん。注文は決まった?」


  「………………。」


  「まだかあ。」


  カフェに来店してから、10分と少し。ミカエルはずっとこの調子だ。


  「ミカミカって恥ずかしがり屋さんなのかな?ねえ、教えてよ。」


  「………………。」


  ソーマがグイグイくるがそれでも反応がない。


  「あ、あの、み、ミカさん!好きな食べ物とかってありますですか?ん?ですか?でしょうか?でしょうですか?あれ?」


  カレッタは1人でこんがらがっている様子だ。


  「ミカちゃん。」


  「ミカミカ〜。」


  「ミカさん〜。」


  3人の言葉をついに無視しきれなくなったのか、俺の方を向いてきた。


  「………イヅナ………どうすれば……良いのですか?」


  俺に聞かれても困る。


  「聞かれたことに応えればいいんじゃないですか。」


  「………分かり…ました。」


  とても心配だ。


  「それじゃあ、ミカちゃん!」


  ニエーゼだ。


  「好きな食べ物って何?」


  「あ、それ私の質問…。」


  カレッタがえ?、という顔をしながらそんなことをいう。


  「……特に……ないです。」


  「そ、そうか。」


  ミカエルの回答に困るニエーゼ。


  「それじゃあ、次僕ね〜。」


  手を挙げながらそう言ったのは、ソーマだ。


  「どこの出身なの?得意な魔法は?運動はできる?友達はどのくらい?」


  「……ここ……回復……できない……イヅナ。」


  「へえー。そうなのね。」


  ミカエルの回答に場が静まる。


  「ミカちゃ〜ん。もう友達なんだから、もっと喋ってくれてもいいじゃん。私、怒るぞ〜。」


  ニエーゼは机に倒れ込みながらそう言う。


  「……友……達?」


  ミカエルはやはり友達という言葉に反応する。ミカエルは席を立ち、顔をニエーゼに近づける。


  「うおっ!?な、何?」


  突然のことに驚くニエーゼ。


  「質問……です。」


  「は、はい。」


  「何故、私とあなたは……友達……なのですか?」


  「え?そ、それは友達の友達だからでしょ。」


  「?その言葉は……理解……しかねます。……イヅナが言うには……友達……とは……感情を……共感し合えないと……いけません。……なので……あなたと……私……友達とは……言えません。」


  まさかここで俺の言葉が裏目にでるとは思っていなかった。


  「そ、そうなの?それじゃあ今から共感しよう。私とカレッタとソーマとさ。それで、友達!ね?」


  「…それは……良いの……ですか?」

 

  ミカエルは俺に聞いてきた。


  「……良いと思いますよ。良かったですね、ミカエル。これでまた友達が増えましたよ。うれしいですね。」


  「嬉……しい?」


  「そうです。」


  『嬉しい』という言葉に首をかしげるミカエル。やはり、そう簡単には感情は芽生えないのだろう。


  「そうと決まれば、今日は楽しも〜!」


  「お、オ〜、です。」


  「そうだね〜。」


  「ミカエルも。」


  「お……オー。」


  こうして、ミカエルに新しい友達が出来たのであった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  「それじゃあ、またね〜。」


  「ま、また明日学園で。」


  「バーイバーイ。」


  俺とミカエルはニエーゼ達と別れの挨拶をし、学園の方へと歩き始める。


  「今日は楽しかったですか?」

 

  「……わか……らない。」


  「…そうですか。」


  俺はミカエルのその言葉を悲しく思った。分かってあげたい。そうは思っている。しかし、実際に感情を失ったことのない俺が、そんなこと出来るわけがなかった。もしも、軽く『わかるよ。辛いね。』などの言葉を掛けても、それはあまりにも無責任であろう。

  俺が地面を見ながらそんなことを考えていると、ミカエルが口を開いた。


  「……でも……胸が……痛かった。……とても……とても……。……奥から……出てこようと……しているみたいに……。」


  俺はその言葉に大きく目を見開いた。


  「それって……。」


  「パフェ……食べ過ぎて……。」


  「………。」


  確かにミカエルはニエーゼ達にパフェを次から次へと食べさせられていた。


  「今度からはゆっくり食べましょうね。」


  ミカエルはその言葉にゆっくりと頷いた。


  (はあ〜。まさか、パフェのこととは。てっきり、何か感情が芽生えたかと思った。)


  少し期待していた自分が少し馬鹿みたいに思えてしまった。


  「それでは、私はこれで。」


  「……それじゃあ……また……明日。」


  俺は心を落胆させながら、寮へと続く道を歩いていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  〈ミカエルSIDE〉


  ミカエルはイヅナと別れた後、いつものベンチに腰を掛けていた。


  「……今日は……楽しかった……だろうか……。」


  ミカエルはそんなことを呟きながら、今日の出来事を思い返していた。自分以外の全員が笑っていたあのカフェのことを。


  「……何も……感じない……感じられない……。」


  ミカエルは自分自身の変化に気づいていなかった。自分が感じられない事を悲しんでいることに。自分の奥底から何かが誕生しようとしていることに。

 

  「……………。」

 

  学園のとある広場。そこには、月明かりに涙を光らせる、1人の少女の姿があった。


 


 



 


 


 

 

 

 

次回から更新ペースを上げていきます。

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