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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第1章 フィエンド大陸編
28/164

気がついたら3週間後でした

 

  「はあ〜。」


  大きなため息をついた俺は今、ギルドにいる。なぜ、大きなため息をついたかと言うと、これから学園で女として生活しなければならなくなったからだ。


  「どうしたんですか?イヅナ様。ため息なんかついて。」


  「言わなくてもわかるだろ?」


  「そうですね。女装のこと以外考えられませんね。」


  「そう言うことだ。」


  俺はそう言って、机に顔を伏せた。


  「でも、良いじゃないですか。学園にタダで行けるんですよ?楽しい学園生活が私たちを待っているんですよ?」


  「楽しければ良いがな。」


  「絶対楽しいですよ!!!」


  「全く、どこからその自信が湧いてくるんだか…。」


  俺はそんなアスモデウスを見て、見た目は良いが、中身が本当に残念だと思った。


  「ところでイヅナ様。」


  「何だ?」


  「いつ学園に行くんでしたっけ?あと、必要なものとか準備しなくて良いんですか?」


  「お前は国王の話を聞いてなかったのか?」


  「いいえ。聞いていたけど忘れました。」


  「………。」


  あまりにも残念な発言に俺は何も言えなかった。


  「はあ〜。しょうがない俺がもう1度説明してやるから、今度は忘れるなよ?良いな。」


  「はい。」


  「よし。じゃあ、まずは学園に行く日時についてだが、入学式の1週間後までに学園についていれば良いらしい。だから、今日から3週間後までに俺の“瞬間移動”で学園の近くまで行く。つまり、まだ日時は決めてない。」


  「駄目じゃないですか…。」


  「細かいことは気にするな。そして、学園で必要なものだが、もうすでに学園の方に準備してくれているらしい。」


  「なら、大丈夫そうですね。」


  「そうだな。しかし、3週間もまだあるのか…。やはり、暇だな。」


  「私達って、すぐこうなりますよね。」


  「そうだな。」


  俺はそう言いながら、ギルド内にある時計を確認した。午後9時半。


  「よし、必要ないがたまには寝るとするか。」


  「私も寝たいです。あ、あと水浴びしたいです。それにケーキも食べたいです。」


  いちいち注文の多い付き人だ。


  「水浴びまではしても良い。」


  「ケーキは……。」


  「明日にしろ。」


  「イヅナ様のケチ。」


  「勝手に言ってろ。」


 俺はそう言いながら立ち、ギルドを後にする。そして、路地裏に回ると、いつか作った“部屋”へと入る。


  「何ですか?ここは?」


  「ん?あ、そう言えばお前をここに連れてきたことなかったな。ここは俺が異空間に作った、まあ家みたいなものだ。」


  「そうなんですか。」


  「じゃあ、俺はもう寝る。あとは好きにしてくれ。」


  「あの、水浴びはどこですれば良いんですか?」


  「そこの部屋が風呂場になってる。そこで、水浴びでも、何でも好きにしてくれ。」


  「わかりました。では、おやすみなさい。」


  「ああ、おやすみ。」


  そして、俺は寝室に入るとベットにダイブし、そのまま眠りに落ちた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  午前6時。俺は起床した。


  「久しぶりに寝たからか、疲れが取れた気がするな。」


  やはり、睡眠は大切だ。俺はそう思いつつ、ベットから降りようとしたとき、右手に何かが触れた。


  「ん?」


  俺はそれを確認する。すると、そこには下着姿のアスモデウスがいた。


  「……ん?あ、おはようございます。イヅナ様。」


  「アスモデウス。お前は一体何をしてるんだ?」


  「添い寝です。」


  「それは見ればわかる。だから、なぜこんなことをしたのか聞いてるんだ。」


  「だって、昨日イヅナ様、“何でもしていい”みたいなこと言ってたじゃないですか。」


  「……。確かに言ったな。」


  全く。昨日の俺はとんでもないことを言ってくれたものだ。そんなことを思っていると、急にアスモデウスがにやけながらこちらに迫ってきた。


  「ははあ。そう言うことですか。イヅナ様ったら私の体を見てドキドキしちゃってるんですか?」


  「いや、確かにそういう体つきは好きなはずなのだが、アスモデウスだとドキドキしたりとかは無いな。」


  「…イヅナ様、それは流石に私でも傷付きますよ。」


  アスモデウスが涙目になり、本当に傷付いた様子だったので、流石に俺も焦った。


  「す、すまん。冗談だ。少しくらいはドキッとした。」


  「やっぱり、そうですか。イヅナ様ったらお子様ですね〜。」


  俺は謝ったことを後悔した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  俺たちは準備を済ませ、街に出てきていた。まだ、歩いて30分も経っていないのだが、すでにケーキ屋を4店回っている。アスモデウスには困ったものだ。そんなことを考えている俺の前で、アスモデウスはケーキを頬張る。


  「あ〜ん。ん〜〜!!!」


  本当に美味しそうに食べる。


  「そんなに美味いのか?」


  「イヅナ様もいります?」


  「それじゃあ、一口。」


  俺がフォークを新しく取り出し、ケーキを少し貰おうとすると、アスモデウスがケーキを引っ込めた。


  「くれないのか?」


  「私が食べさせてあげますよ。」


  「いや、良い。」


  「そんな遠慮しなくて良いですって。はい、あ〜ん。」


  これはアスモデウスに従うしか無いと悟った俺は仕方なく、アスモデウスから食べさせてもらった。


  「どうですか?」


  「うん、確かにこれは美味いな。」


  「それはそうですよ。最後に愛情という隠し味を投入しましたから。」


  豊満な胸を張り、自慢げに言うアスモデウス。


  「よし、それじゃあそろそろ行くか。」


  「軽くスルーしないでくださいよ。」


  「まあまあ、そんなことよりアスモデウス。これから少し行きたい場所があるんだが良いか?」


  「良いですよ。もう、何言っても無駄そうですから。」


  「そうか。」


  「それで、どこに行くんですか?」


  「フォートレスの街だ。」


  俺はそう言うと、周囲を確認し、フォートレスの街へと“瞬間移動”をした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  「あの壁、久しぶりに見たな。」


  久しぶりと言っても、1週間と少ししかまだ経っていない。


  「私は初めて見ました。」


  「知ってるよ。」


  わざわざ言わなくてもそんなことは知っている。


  「まあ、良い。とりあえず、街に入るとするか。」


 そうして、俺たちはフォートレスの街へと入っていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  今回はギルドカードを持っていたので、前のように偽の身分証を作ることなく、街に入れる。と、思っていたが、ここで問題が発生した。アスモデウスのギルドカードが無いことに気づいたのだ。

  急遽、偽の身分証を作り、何とかアスモデウスも連れてくることができた。


  「そう言えば、お前ってギルドカード持ってなかったな。」


  「そうですよ。もう、しっかりしてください。」


  元はと言えばアスモデウスのせいの気もするが、そんなことを言っても余計に面倒なことになりそうなので俺は黙った。


  「ところで、この街に来たのは良いんですが、何か用事でもあるんですか?」


  「ああ。王都での用事が済んだら戻って来いと言われていてな。それで、今日はその人に会いに来たってわけだ。」


  「そうなんですか。ちなみに、その会いに来た人ってのは誰何ですか?」


  「ギルドの人だ。」


  そう応えると、アスモデウスが何かを疑うような目でこちらを見てきた。


  「な、何だ?」


  「また、女の人ですか?」


  「そうだが、何か問題でもあるのか?」


  「大有りです!!!全く、イヅナ様は。私やセリカさんと言う人がありながら、まだ、飽き足らずに女の人に手を出すんですか?」


  「そんなつもりはない。それに、セリカはともかく何でアスモデウスが入ってるんだ?」


  「だって、彼女…。」


  「付き人な。」


  俺はアスモデウスが言い切る前に言葉を遮った。


  「イヅナ様酷いです。」


  「よし、それじゃあギルドに行くか。ついでに、アスモデウス。お前のギルドカードも作りに。」


  「作ってくれるんですか!やった!それじゃあ早く行きましょう!」


  そう言って、アスモデウスはスキップをする。本当に単純な奴だ。


  「お〜い。道わかるのか?」


  「わかりませ〜ん。」


  「全く。」


  俺はアスモデウスの前に出て、ギルドまで歩いて行く。ギルドまではもう目と鼻の距離だったので、すぐに到着した。


  「ここだ。」


  「王都よりも小さいですね。」


  「当たり前だ。」


  そう言って俺達はギルドの中へと入った。すると、まず最初にアニスさんの姿が目に入った。俺はアニスさんの下へと駆け寄る。


  「アニスさん。言われた通り、できるだけ早く戻ってきたぞ。」


  俺は後ろからそう話しかけた。アニスさんは少し驚いた様子で振り返った。


  「?どちら様ですか?」


  「え?あ、そうか。フード被ってるからわからないのか。」


  俺はそう言うと、フードを外した。


  「!イヅナさん!お久しぶりです。随分早いお帰りですね。」


  「まあな。それで、リアさんはいるのか?」


  「リアならいます。連れてきますので、少々お待ちください。」


  そう言うとアニスさんは受付の方へと向かった。


  「まさか、すでに2人もいるんですか?」


  アスモデウスが言う。


  「だから、違う。」


  どうやら、うちの付き人は主人の言葉が信じられないらしい。困ったものだ。

  そんなことを思っていると、奥からアニスさんがリアさんを連れてやってきた。


  「イヅナさん。お久しぶりですね。」


  「そうだな。久しぶり、リアさん。」


  「もう、リアで良いですよ。」


  「あ、私もアニスで良いです。」


  「そうか。じゃあ、そうさせてもらう。ところで、仕事の最中そうだったが、大丈夫なのか?」


  「はい。私とアニスは別の人に交代して貰ったので問題ありません。立ち話も何ですし、座って話しましょう。」


  「そうだな。」


  俺たちはテーブル席に座る。


  「ところで、イヅナさん。」


  リアが笑顔でこちらを見る。


  「何だ?」


  「お隣にいる方は誰ですか?」


  まだ、リアさんは笑顔だが、目だけは笑っていない。


  「こ、こいつは…。」


  「私はイヅナ様の恋人のアスモデウスと言います。どうぞ、よろしくお願いします。」


  よくも毎回やってくれるものだ。


  「イ〜ヅ〜ナ〜さ〜ん〜?」


  可愛く見えたリアの笑顔も、今は恐怖の対象でしかない。


  「ご、誤解だ。」


  そうして、俺はアスモデウスの関係と王都に行ってからのことを話した。


  「そうですか。それじゃあ、アスモデウスさんはただの・・・付き人何ですね?」


  「ああ、そうだ。」


  「イヅナ様酷いです。一緒のベットで寝た仲じゃないですか。」


  「一緒のベット?」


  リアさんが顔を真っ赤にする。


  「お前は黙ってろ。」


  俺はアスモデウスの口を押さえた。


  「確かに同じベットで寝たが、それはこいつが俺の寝ていたベットに勝手に入ってきたからだ。」


  「…それじゃあ何もしてないんですか?」


  「リア。男の人が同じベットに女の人が入ってきて何もしないわけないじゃない。」


  「それじゃあ、やっぱり。」


  「アニス。お願いだから、冗談言うのやめて貰えないか?」


  俺は泣きそうになった。


  「すいません、イヅナさん。ほんの出来心です。」


  アニス。恐ろしい子。


  「まあ、そう言うことで本当に何もしていない。」


  「そこまで、言うなら私は信じます。」


  やっと、リアが信じてくれた。


  「それで、戻ってきて早々悪いんだが。実は俺とアスモデウスは用事があって、またすぐこの街を出るんだ。」


  「……またですか。」


  アニスが少し呆れたような顔をする。


  「すまない。国王からの依頼でな、断れないんだ。」


  「…それじゃあしょうがないですね。せっかくイヅナさんと会えたのに。」


  「リア、そんな言い方ないでしょ。」

 

  「だって……。」


  リアは俯いてしまった。


  「もう2度と会えないわけじゃない。だから、そんな顔するな。」


  「イヅナさん…。」


  「そうですよ。そんな調子じゃ、私がイヅナ様を貰っちゃいますよ。」


  「それはない。」


  「やっぱり、酷いです。」


  そんな俺とアスモデウスの会話を聞いて、リア達は少し笑った。


  「そうですね。こんな顔してる場合じゃないですね。」


  「そうだな。」


  リアはいつもの調子に戻ったようだ。


  「よし、私決めました。」


  「何をだ?」


  「私、イヅナさんが戻ってくるまでに、ギルド員のリーダーになります。」


  「いつもやる気のないリアが、大きく出たわね。」


  アニスが嬉しそうに言う。


  「ギルド員のリーダーになるのは難しいのか?」


  「難しいです。」


  俺の質問にアニスが応える。


  「そうか、頑張れよ。」


  「はい!」


  「それじゃあ、俺たちはこれで。」


  「イヅナさん。期待しといてくださいよ?」


  「ああ。期待してる。」


  こうして、俺たちはギルドを後にした。そして、路地裏に回ると王都に向け、“瞬間移動”をした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  俺たちは王都へと戻った。夕日が沈みかけており、街を赤く照らしている。

 

  「よし、やることもやったし、そろそろ学園の方に行くか。」


  俺のこの発言にアスモデウスは不思議そうな顔をする。


  「学園に行くって言っても、まだ、3週間後ですよ?」


  「問題ない。まあ、とりあえず“部屋”にでも入っていてくれ。」


  そう言って俺はアスモデウスと共に部屋に入る。


  「まさか、3週間ここにこもるんですか?」


  「そんなわけ無いだろ。少し、待ってろ。」


  そう言って俺はアスモデウスを静かにさせた。そして、2分がたった。


  「そろそろいいか。よし、アスモデウス。出るぞ。」

 

  「え?まだ、3週間経ってませんよ。」


  「いいからこい。」


  そして、俺達は部屋から出る。そして、アスモデウスがある異変に気付く。


  「あれ?さっきまで夕方だったのに、朝になってますよ。」


  「それはそうだ。俺が時間の流れを変えて、3週間経過させたからな。」


  「…なんてことするんですが。」


  アスモデウスが真剣な目で俺を見る。もしかしたら、俺は思っていた以上にやばいことをしてしまったのかもしれない。

  そう思っていた俺だったが…。


  「3週間もあったら、一体幾つのケーキを食べれたと思ってるんですか!!!」


  この言葉を聞いてそんなか考えも吹き飛んだ。


  「1日、5台食べたとしたら105台ものケーキを食べ損ねたことになるんですよ」


  こいつは一体ケーキを幾つ食べるつもりだったのか。“台”で数えていると言うことは、ホールケーキの状態のケーキを言っているのだろう。もしや、こいつのスキルは『色欲之神』ではなく、『暴食之神』なのでは無いだろうか。

  そんなことを考えていると、後ろから声をかけられた。


  「イヅナ。」


  「セリカ。」


  俺とセリカは互いに見つめ合う。

 

  「この3週間どこに行ってたんですか?」


  「少し用事があってな。」


  「そうでしたか。でしたら、教えてください。そうでもしてくれないと、私は心配で夜も眠れません。」


  セリカの目の下に少しだけくまがあるのがわかる。


  「すまない。」


  「本当です。気をつけてください。そして、もう1つ。イヅナ、聞いた話によればあなたは“カラドボルグ魔法学園”に通うらしいですね。」


  「ああ。」

 

  「いつ戻ってこれるのですか?」


  悲しそうな顔をするセリカ。


  「わからない。」


  「そうですよね。」


  少しの静寂が俺たちを包む。そして、とても長く感じられた静寂のあと、セリカがこちらに近寄ってきた。そして……。


  「イヅナがいつ帰ってくるのかわからないと言うのなら、私は寂しく無いよう、今のうちにたくさん触れておきます。」


  そう言うとセリカは俺と唇を重ねた。とても暖かく、そして、心地良かった。この時間が永遠に続いてもいい。俺はそう思った。そして、唇が離れ、再びお互いを見つめ合う。


  「気をつけて…。」


  「ああ。」


  このとき、俺はある1つのことを確信した。


  (そうか。やはり俺はセリカに惚れているんだ。)


  人から魔神、邪神となり、少し鈍くなっていた、人の頃の感情。しかし、そんな俺の感情はセリカの暖かく、優しい思いによって動かされたのだ。


  (俺は邪神である前に、やはり人でもあるんだな。)


  人によって動かされる自分に気づきそうとも思へた。そして、自分は、まだ人でもある、そう考えるとなぜか急に笑顔になった。


  「何、ニヤついてるんですか?」


  アスモデウスが言う。ニヤけるではなく、笑う、と言って欲しい。


  「何でもない。それよりも、行くぞ。つかまれ。」


  「ちょっと、待ってくださいよ!」


  アスモデウスは俺には触れた直後、俺達はその場から姿を消した。この世界に来て、第二の大陸“ブリア大陸”へと向かったのだ。


 

 

 


 


 


 



 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

次回は勇者sideの話になります。

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