気がついたら冒険者たちのピンチでした
更新が遅れてすみません。できる限り、こういった事が無いように努めます。
それと、話が過去に行くときなどに文の間に
「〜〜〜〜」を入れる事にしました。
ーーー冒険者SIDEーーー
「まず、あの馬型の魔物は我々のパーティーが受け持つとする。また、セリカはAランク以下の冒険者達に呼びかけ、一般人の避難をしてくれ。ただし、遠距離攻撃に長けているものやSランク以上の冒険者がいたらこちらに回してくれ。」
「分かりました。」
セリカはフォードの指示を聞くと素早く行動に移った。
「レシィとシルビアは、様子見を兼ねてあの魔物に攻撃を仕掛けてくれ、ロスターはタイミングを計り、俺と共に攻撃を仕掛ける。いいな?」
「「「はい(よ)。」」」
パーティーメンバー達はそれぞれの役割に移る。
「シルビアさん。まずは、当たる事を優先したいので、風魔法で先制攻撃を決めましょう。」
「分かったわ。」
レシィとシルビアは空にいる魔物目掛け、風魔法『ウィンドランス』を放った。しかし…。
「ヒヒィーーン!!!」
魔物はその魔法を一蹴りで粉砕する。
「まさか、僕たちの魔法を物理攻撃で壊すなんて……。」
レシィはその光景に驚いた様子だった。しかし、シルビアは違った。魔物が魔法を蹴りで壊したとき、足に魔力をまとっていたのをしかと見ていた。
「いいえ。物理攻撃で壊したわけではなくてよ。先ほど、魔法を破壊するときに足に魔力をまとっていたわ。おそらく、今あの魔物が翼も持たないのに宙に浮いているのはその応用でしょう。」
シルビアの言う通りだった。馬型の魔物=“スレイプニルホース”はスキル“空歩”を使う事によって空を飛んでいる。このとき、足には微量の魔力の放出が見られるのだ。
「どちらにせよ、厄介な相手には変わりないですね。」
「そうね。それでも、一般人の避難が終わるまでは、魔法で援護するわよ。」
「はい。」
レシィとシルビアは再び“スレイプニルホース”に向け魔法を放ち始めた。
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ーーーイヅナSIDEーーー
「あの魔物結構強いな。」
「そうですね。」
現在、俺とアスモデウスは民家の屋根の上から“スレイプニルホース”と冒険者達、それに先ほど到着した王国騎士団の様子を見ている。
「イヅナ様。」
「何だ?」
俺はアスモデウスの質問に耳を傾ける。
「あの人たちは弱すぎじゃないですか?」
アスモデウスはそう言いながら、冒険者達、つまりフォード達を指差した。
「そうだな。でも、あれでも人間の中じゃ強い方だぞ。」
「え!?そうなんですか?私たらてっきりあの人達は足止め任された新兵かと…。」
俺の言葉に驚くアスモデウス。
「さすがにそれは酷いだろ。まあ、初めて人間を見たわけなんだし、無理もないか。」
「そうですね。無理もありません。」
「それでも、自分で言うのはどうかと思うぞ。」
そんな事を言っていると、“スレイプニルホース”が魔力を貯め始めた。どうやら、少し強めの魔法を放つようだ。
「あれ撃たれたら、あの人達助かりませんね。」
「そうだな。よし、アスモデウス。あの魔法どうにかしてくれ。」
「分かりました。では、行ってきます。」
アスモデウスはそう言うと“スレイプニルホース”の方へと向かった。
「俺も一応近くまで行っておくか。」
そして、俺もアスモデウスの後を追うようにして、移動を始めた。
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ーーー冒険者SIDEーーー
「くそっ!あの野郎一切降りて来ねえぞ。」
悪態を吐くロスター。
「仕方がない。今の内はレシィ達に頼るしかないだろ。」
現在、フォードとロスターは“スレイプニルホース”の下で降りてくるのを待ち構えていた。最初はレシィ達の魔法で簡単に落ちてくるだろうと思っていた2人だったが、思っていたよりも“スレイプニルホース”は強く、びくともしなかった。
何もできず、ただまたフォードとロスター。するとそのとき、2人の下に王国騎士団長である“ガゼル・ハイヤー”が駆けつけた。
「フォードさん、ロスターさん。ただいま、王国騎士団は到着した。」
「ガゼルか。助かる。しかし、現在、魔物は上空に待機していて我々には魔法以外打つ手がない。魔法騎士団はまだ来ていないのか?彼らの魔法なら奴にもダメージを与えられるはずだ。」
フォードが言った魔法騎士団はとは通常の騎士団とは違い、主に魔法を使えるものが集まる団だ。
「いや、彼らも到着している。そろそろ、攻撃が始まると思うが…。」
ガゼルがそう言っていると…。
「放て!!!」
大量の炎の球や氷の槍、それに雷など、様々な魔法が“スレイプニルホース”目掛け飛んでいく。
「ヒヒィーーン!!!」
流石の数に“スレイプニルホース”も対処しきれず、直撃は間逃れなかった。
「やったか!?」
フォードはそう言いながら、魔物を覆う煙が晴れていくのを見つめる。
しかし、煙が晴れたとき、そこにいたのは無傷の“スレイプニルホース”だった。
「あれでも、駄目かよ!」
再び、悪態を吐くロスター。そのとき、“スレイプニルホース”が魔力を貯め始めた。“スレイプニルホース”の周りを突風が吹き荒れる。
「!あれは不味いな。総員退避!!!」
「レシィ!シルビア!逃げろ!!!!」
フォードとロスターは部下、仲間に逃げるよう伝える。しかし、それは叶わず、“スレイプニルホース”の風魔法が放たれた。それは、まるで龍のように唸りながら進んでいく。
「これは流石の僕たちでも死んじゃうかな?」
「かも知れないですわね。」
レシィ、シルビア、騎士団員達は死を覚悟した。そのとき、
「何諦めてるんですか?全く、だらしない人たちですね。」
目の前に1人の美女が現れた。そして、その美女はこちら目掛け向かってくる風の龍に手を向ける。
「どうせならカッコ良くしたいなあ。」
こんなときに何を言っているんだ。アスモデウス以外のこの場にいた全員がそう思った。
「“アスモデウスの名の下に命じる。風よ。その矛先を変え、我が敵を穿て!”」
アスモデウスがそう唱えると、驚くことにこちらに向かって来ていた風の龍が“スレイプニルホース”目掛け進行方向を変えたのだ。
「ヒヒ!?」
“スレイプニルホース”は自分の魔法にやられ、あっけなく吹き飛ばされ街へと落ちていく。
その様子を見ていたもの達は呆然と立ち尽くしていた。そして、我に戻った者達はアスモデウスへと視線を向ける。
「あ、貴女は一体何者なんですか?」
レシィが恐る恐る聞く。
「何者かですか…。そうですね〜。イヅナ様の付き人?恋人?あれ?どっちだっけ?ねえねえ、貴方はどっちだと思う?」
「え?え〜っと…。こ、恋人ですかね?」
意味のわからない質問に答えるレシィ。
「なら、恋人でいいかな。それじゃあ、役目も終わったし、私イヅナ様の所に戻るから。じゃあね。」
そう言うとアスモデウスはその場から去って行った。
「な、何だったんですか彼女は…。」
「さ、さあ。何だったんでしょうかね?」
レシィとシルビアはそんな事を言いながら、その場に立ち尽くしていた。
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ーーーイヅナSIDEーーー
「やるな。アスモデウスの奴が幹部って話もあながち嘘じゃないかも知れないな。」
俺は吹き飛ばされた“スレイプニルホース”を追いかけらがらそんな事を呟く。
「今更な感じもするがアスモデウスと“スレイプニルホース”のステータスでも確認しておくか。」
早速、俺はアスモデウスとスレイプニルホースのステータスを確認する
【アスモデウス】
種族:悪魔
性別:女
レベル:69580
攻撃力:56000000000
防御力:53000000000
魔攻撃:60000000000
魔防御:62000000000
魔力:58000000000
俊敏:56000000000
運:80
【能力】
マスタースキル
『色欲之神』
エクストラスキル
『全武術レベル100』
『全属性魔法レベル100』
『未来予測・予知レベル100』
『魔力索敵レベル100』
【スレイプニルホース】
種族:天魔馬
性別:雄
レベル:5300
攻撃力:3000000
防御力:2800000
魔攻撃:3000000
魔防御:3010000
魔力:2600000
俊敏:2500000
運:100
【能力】
エクストラスキル
『黒風魔法レベル20』
『石化魔法レベル10』
スキル
『索敵レベル80』
アスモデウスは壊れていた。スレイプニルホースも強いはずなのだが、とてもそうは思えない。
「スレイプニルホースはステータスの値は高いがスキルの方は微妙だな。」
そんな事を呟きながら歩いていると…。
「ん?スレイプニルホースが飛んだ先に誰かいるな。この反応はフォードとか言う奴のパーティーメンバーの1人だな。」
最近、索敵で随分と細かいことまで分かるようになってきた。
「これは流石に分が悪いな。しょうがない。助けに行くか。」
俺は歩く速度をやや上げ、運悪くスレイプニルホースと出会ってしまった冒険者の下へと向かった。
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ーーーセリカSIDEーーー
「何でこんな所に飛んでくるんですか…。」
セリカは一般人の避難を終え、フォード達に合流しようとしていた。そのとき丁度、吹き飛ばされてきた“スレイプニルホース”に出くわしてしまったのだ。
「ヒヒィーーン!」
スレイプニルホースはセリカに向かって突進をする。
「くっ!」
躱そうとするセリカだが、回避は間に合わず、右足に一撃を受けてしまう。
「あ、足が…。」
その激痛に悶絶するセリカ。しかし、そんな事を構いなくスレイプニルホースは魔力を貯める。
「そんな簡単にやられはしません。」
セリカは懐から“閃光弾”を出しすかさず“スレイプニルホース”目掛け投げつける。そして、“閃光弾”は強烈な光を出し破裂する。
「ヒヒィーーン!!!」
“スレイプニルホース”はその光に眼をやられ、さらに、溜めていた魔力も失われてしまう。
この隙に逃げ出すセリカ。しかし、いくらステータスが高いと行っても片足が折れた状態では、たいした距離を移動することは出来ない。
「はあ……はあ…。」
懸命に逃げるセリカ。しかし、その後ろで“スレイプニルホース”は徐々に視力を取り戻す。
「ヒヒィーーン!!!」
そして、ついに完全に視力が回復した“スレイプニルホース”はセリカを再び、とらえた。
そして、今度はセリカに向け、“石化魔法”を放つ。
「なっ!?左足が。」
セリカの左足がみるみると石になっていく。そして、石化は腰のあたりまでくると止まった。しかし、両足を封じられたセリカにもはや攻撃の回避など不可能だ。
“スレイプニルホース”は再び、魔力を貯め始める。
「私は結局、弱いままですか…。」
そんな事を呟くセリカ。しかし、この呟きにはセリカの様々な感情が込められていたのだ。
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本名セリカ・シア・アイリア。彼女はカラド王国の貴族、アイリア家に生まれた。幼い頃から勉強の毎日。家から出る事も許されず、籠に入れられた鳥と何ら変わらない生活を送られていた。
そんなある日のことだった。勉強が終わり、自分の部屋に戻る途中、兄が中庭で剣術を教わっているのを見た。
「美しい…。」
セリカは無意識にそう呟いていた。剣術の型。流れるような動き。セリカはそう言ったものに魅了されてしまったのだ。
それからと言うものセリカは勉強が終わるとこっそりと剣術の練習をした。兄が教えて貰っている様子を観察し、それを部屋に戻って練習する。セリカはそれだけで、どんどんと剣術を自分のものへとしていった。
そして剣術の練習を始めて数ヶ月が経った頃、セリカは誰かにその剣術を見て欲しいと思った。早速、父親と母親を呼び、自分の剣術を見せた。セリカは始めて、見せた剣術にどんな反応をしてくれるのだろうとわくわくしていた。
しかし、
「お前は何をしているんだ!!!」
セリカは父親に叱られた。
「いや、でも……。」
「でもでは無い!お前は将来、どこかの貴族と我々を結びつける大切な道具だ。マメができたり、傷がついたりしたらどうする。それに、か弱い女のお前が剣術なんぞ身につけたところでどうにもならん。分かったら、2度と剣に触れるんじゃ無い!!!」
セリカはこのとき初めて、自分がこの家で道具と扱われていることに気がついた。
何で私には自由が無いのか。なぜ囚われらければならないのか。
幼いセリカはそればかりを考えていた。そして、自分なりの答えを導き出す事が出来た。
「私が女だから。弱いからこんな事になっているんだ。」
と。それから彼女は変わった。親に言われた事を完璧にこなし、優雅に振る舞う。誰から見ても素晴らしい女性になっていった。
しかし、それは表向きだった。セリカは剣術をやめていなかった。それどころか、前に増してより剣術に没頭するようになった。手にマメができたときは手袋をし、バレないようにした。そして、彼女は強くそして完璧な女性へとなっていった。
ある日のことだった。いつも通り誰にもバレないよう、剣術の練習をしていると…。
「セリカ。少し話があるんだけどいいかな?」
「はい。兄様。」
このときのセリカの兄は唯一、セリカが剣術を続けている事を知る人物だった。また、その事がバレないように努めてくれてもいた。そのため、兄はあまりセリカに話しかける事が無かったのだが、その日は珍しくわざわざ、練習をしているときに話しかけてきた。
「セリカ。この事はまあ、君がくだらないと思ったら聞き流してくれても良い。ただ、最後まで聞いて欲しい。」
「分かりました。」
セリカは兄の話に耳を傾ける。
「セリカは剣術をしているのが父上達にバレて以来、強くなろうと必死だったね。」
「そうですね。」
「僕はそれ自体はとてもすごい事だと思う。親にあそこまで言われて、それでも自分の思いを突き通して剣術を続ける。僕には到底できない事だ。」
「……。」
セリカは黙って兄の話を聞く。
「そして、今ではもしかしたら僕以上の強さを持ち、そして、正しい振る舞いのできる完璧な女性になったかもしれない。」
「はい。」
「でもね、セリカ。僕はそれをとても悲しく思うよ。」
「なぜですか?」
「何て言えば良いんだろうな?“完璧が故の不完全な所”とでも言うのかな?」
「兄様。それは矛盾しています。」
「確かにそうだね。僕もそう思うよ。でも、そうとしか僕には言えないな。セリカは完璧で1人で何でもこなせてしまう。それは、いい事だ。でもね、それだとセリカは孤独になってしまう。」
「それに何か問題がありますか?」
「僕にはその返答が問題だと思う。」
「……。私には分かりません。」
「だろうね。それでも、いつか分かって欲しいな。だから、セリカ。僕は君には誰かに頼って欲しいと思う。そして、あわよくば、完璧な君を守れる人と出会って欲しいと思う。そうすれば、さっきの話の内容が少しは分かるんじゃ無いかな。」
「そうですか?」
「うん。そうだよ。」
「……。」
このときのセリカには、兄の話を余り理解できなかった。そして、最後にセリカは兄に質問した。
「兄様。」
「何だい?」
「兄様は何故、こんな話を私にしたんですか?」
「……う〜ん。そうだな。妹にもう少し普通の女性になって欲しかったからかな。完璧じゃなく、強くも無い。そんな普通の女性に。そうすれば、セリカは少しは幸せな人生が歩める気がするんだ。ただの感だけどね。だから、セリカ。最後に一つだけ、お願いを聞いてくれないか?」
「何でしょう?」
「この先長い人生の中で苦しいとき、1人になってしまいそうなとき、強くないセリカになってくれ。」
「?それは、どう言う意味でしょうか?」
「今はわからなくても良い。その場面に出くわしたときにこの言葉を思い出してくれればそれで…。」
この兄の言葉を聞いた翌日、親が勝手に決めた婚約の事を知り、家を飛び出した。そして、フィエンド大陸に渡り、程なくしてフォードたちと出会い、今のパーティの一員となった。
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そして、現在。セリカは絶対絶命の危機に瀕していた。そして、あの日の兄の言葉を思い出していた。
(何故こんなときに兄様の言葉を思い出すのでしょうか…。)
そんな事を思うセリカ。そこに“スレイプニルホース”は風で出来た槍を打ち込む。風の槍がみるみると距離を縮める。
(兄様。結局私は兄様の言葉の意味が分かりませんでした。)
セリカが自分の死を確信したそのときだった。突然、目の前まで来ていた風の槍が消えた。そして代わりに、見覚えのあるフードを被った人物がいた。
「よお。助けに来たぞ。」
そう、ダンジョンで見かけたあの怪しいフード被る人物が。
〈おまけ〉
本日もスキル紹介のコーナーです。今回はアスモデウスのマスタースキルについて説明します。
マスタースキル
『色欲之神』・・・・目標、標的の掌握。
このスキルの能力は目標、標的の掌握です。つまり、今回、アスモデウスがしたように“スレイプニルホース”がレシィたちを標的に攻撃をしたものの、標的を“スレイプニルホース”に変更したため、攻撃は“スレイプニルホース”に向かって方向転換したと言うわけです。
もちろん、限界はあります。