気がついたらやらかしてました
更新が遅れてすみません。
あまりにもダンジョンの階層が多いと考えたので修正を入れました。(7/23)
ーーーイヅナSIDEーーー
「まずは、ダンジョンがどのくらいの規模なのか調べてみるか。」
俺はマスタースキル『ヨグ・ソトース』を使った。
「なるほどな。結構広いな。」
ダンジョン:“聖なる祠”。1階層ごとの広さは様々であり、狭い階層では200㎡程度だが、広い層になると5㎢ほどにもなる。そんなばらつきある層の広さを平均すると約3㎢、階数は1000階層まで続いていた。
「こんなダンジョン、普通の人がクリアできるわけないな。」
このダンジョンの最深部に【神剣エクスカリバー】を残していった勇者は相当な実力者だったことが窺える。
俺はそんなことを考えつつ、ダンジョン最深部を目指して歩き始めた。
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歩き始めて丸一日。俺は変わらず延々と続くダンジョンを歩いていた。
「しかしまあ、全く魔物に合わないな…。」
俺は現在、道に迷うことなくダンジョン第7階層まで来ていた。しかし、これまで俺は1度も魔物にあっていないのだ。もしかしたら魔物がいないのではないかと思い“索敵”の範囲をダンジョン全域にしてみたが、何人かのパーティーの冒険者たちと、たくさんの魔物がいた。特に、800階層を超えた辺りの魔物は強さが桁違いだった。
しかし、こうなるとなぜ魔物たちと出会うことなく、ここまで来ることができたのか不思議だ。
「もしかしたら野生の勘でも働いたのか?」
適当に言ったことだったが、実際はその通りだった。このダンジョン内にいる魔物たちは、俺の(隠しているつもりの)雰囲気、オーラとも言えるものを感じ取っていたのだ。
さらに、それは魔物たちだけではなく、現在、ダンジョン内にいる冒険者たちのパーティーは、無意識に俺のいる場所から離れて行っていた。
「このままだと1度も魔物と戦わないってこともありそうだな……。よし、こっちから魔物の所に行ってみるか。」
俺は早速、“索敵”に反応がある中で1番近くの魔物たちを見つけた。
「ん?冒険者もいるな。まあ、いいか。」
そして、俺は“瞬間移動”でその場所へと向かった。このダンジョン内で最も不幸な魔物と冒険者たちの下へ…。
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ーーー冒険者SIDEーーー
冒険者。それは、ギルドに所属し依頼を受け、その報酬を生業とする者たち。
簡単な依頼を受け暮らしていくもよし。自分の力を信じ討伐依頼などを受けるもよし。ダンジョンに潜り一攫千金を狙うもよし。まさに、自由に生き、夢を追いかける、それが冒険者だ。
そんな冒険者の中でも特に、Sランクを超えた者たちは高い実力を持ち、一流の冒険者に部類される。彼らは難易度の高い討伐依頼や、高レベルダンジョンの攻略などを行なっている。
現在、この“聖なる祠”にいる冒険者たちも、そういった一流の者たちだけだ。その中でも、さらに実力が飛び抜けた者たちがダンジョン第7階層にいた。
「レシィ!!!援護を頼む!!!」
「はい!」
パーティーメンバーは全員で5名。
パーティーリーダーの“フォード・グスター”。
前衛担当の“ロスター・ジャイル”と“セリカ・アイル”。
後方支援の“シルビア・ニーア”と“レシィ・イングレス。
これがこのパーティーの構成だ。
「後ろから新たに二頭のボーンミノタウロスが来ますわ。」
シルビアの呼びかけにロスターが反応する。
「任せとけ!」
ロスターは双剣使いの名手だ。彼は二頭のボーンミノタウロスの方へ向かう。
「モ"ォォォォォォ。」
ボーンミノタウロスは手に持った錆びた斧をロスターに向かって振り下ろす。
「遅えな。」
そう言うと、ロスターは斧の一撃を躱すとほぼ同時に凄まじい剣戟を繰り出した。
「うおりゃー!!!」
あっという間にボーンミノタウロスたちの骨は砕けちり、そこには残骸だけが残っていた。
「一丁あがり!レシィ!そっちはどうだ?」
「うるさいな。今やるところだよ。 フォードさん!セリカさん!いきますよ!」
前方の魔物たちを相手にしている二人は後退する。
「“炎よ、荒れ狂う渦となりて敵を穿て。『フレイムサイクロン』”!!!」
まるで、炎でできた大蛇のような魔法が魔物たちを包み込む。
「ギェーー………。」
魔物たちの声は消えていった。
「ふう〜。これでひと段落だな。」
近くに魔物がいない事を確認するとフォードたちはその場に腰を下ろした。
「たくよ〜。なんで今日はこんなに魔物がたくさんいるのかね。全然進めねえよ。」
「そうですわね。いつも通りなら今頃、第10階層に着く頃ですもの。」
ロスターにシルビアが応える。
「もしかして、魔物が急に大量発生したんですかね?」
「だったら、戦わねえとな。」
ロスターは不敵な笑みを浮かべた。
「ロスターは黙ってて。」
「おい、レシィ。黙れとはなんだ!だいたい俺の方が先輩だろうが!」
「本当にうるさいな。僕は敬意を払うに値すると思った人たちにしか敬語は使わないようにしてるのさ。」
「な、何だと〜!!!」
レシィの発言にロスターは爆発寸前だ。
「二人ともここはまだダンジョン内ですよ。もう少し静かに。」
セリカに言われ、二人は黙った。
「よし、では今後の方針について話す。」
「「「「はい(よ!)」」」」
「本当ならこれから8階層へと降って行くのだが、7階層に着いてから魔物の数が異常だ。なので、安全第一に考え、これから王都に帰還する。異論はないな。」
「僕は構いません。」
「私ももちろん良いですわ。」
「私も右に同じです。」
「正直、戦い足りねえが、まあ良いぜ。」
「良いなら、素直に良いって言えば良いのに全く、これだからロスターは…。」
「何だと!!!」
「静かにしろ、レシィ、ロスター。」
「「すいません…。」」
レシィとロスターがフォードに謝っていた、そのときだった。
「ギシャー。」
「「「「「!!!!」」」」」
壁から突然魔物が襲いかかって来た。おそらく擬態していたのだろう。魔物の爪がフォードの首めがけて振りかかる。
「フォードさん!!!」
「くそ!!!」
咄嗟に反応するレシィとロスターだがとてもでは無いが間に合わない。
(ここまでか…。)
そんな事を考えるフォードだったが、次の瞬間、
「ギシェッ!?」
魔物は空中で無残にバラバラに吹き飛んだ。
「一体何が起こったんですの?」
その場の全員がバラバラになった魔物の死体を見ていたときだった。
コツコツ…。
ダンジョン内に一つの足音が響く。
「何かくるぞ。」
「僕たちが“索敵”を発動しているのに一切引っかからないなんて、よっぽどの相手ですよ。」
フォードたちは陣を組み、向かってくる謎の存在に備えた。
コツコツ…。
足音がどんどんと近づいてくる。パーティー全員に緊張が走る。
しかし、いくらたっても、その姿が見えない。
「……?来ないですね。それに、足音もしない。」
セリカがそう言う通り、何かがくる気配はなく、いつの間にか足音もしなくなっていた。
「へッ!所詮俺たちにビビって逃げるような。奴だったんだろ。大した事ねえな。」
「そんなこと言って、ロスター汗ビッショだよ。」
「こ、これは違うぞ。何だ、そのあれだ。」
「全く分かんないよ。」
パーティー全員がとりあえずの危機は去った。そう思っていたときだった。
トントン。
ロスターの背中に何かが触れる。
「ん?」
振り向くとそこにはフードを深くかぶった何かがいた。そして、その何かが口を開いた。
「よお。」
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ーーー雅風(イヅナ)SIDEーーー
俺は今困っていた。とりあえず軽いコンタクトを取った方が良いと考えた俺は、先ほどの様子から1番雰囲気の明るく元気なやつを選んで声をかけたのだ。
ん?なぜ後ろ声をかけたのかだって?そんなの攻撃態勢を取られた正面から行くのが面倒くさそうだったからに決まっているだろう。
しかしさっきから、相手の人たちは一切反応する様子がない。もしかてわざと無視しているのか?
「聞いてるか?」
俺は再度、声をかけた。すると、今度は全員ハッ!とした顔をすると再び攻撃態勢をとる。
「貴様!何者だ!」
リーダーらしき人物が声をかけてきた。
「え〜っと…。通りすがりの冒険者かな…。」
間違ったことは言っていない。
「その冒険者が一人こんな所で何をしている。」
「いや、人影を見かけたものだから声をかけた方が良いかなと思ったんだ。」
「たくっ!ふざけた奴だぜ。」
さっき俺が声をかけた男が悪態を吐く。
「ロスター、やめなよ。そんなんだから僕は君に敬語を使いたくないのさ。」
「何を〜!!!レシィの分際で生意気な!!!」
全く戦闘の後といい、今といい、よく喧嘩する二人だ。そんな事を思っていると、一人の女性、セリカが二人の頭を打った。
「いって〜。」
「ッ…。」
「二人とも反省してください。」
「「…はい。」」
とりあえずこれで話ができそうだ。
「それで、君はどうやって俺たちの“索敵”に引っかからず、ここまで来れたのかね?」
「そんなの俺の方が強いからに決まってるだろ。」
「…。なるほど。教えたくないと言うことか。」
一体何をどうしたらそんな解釈ができるのか。
「“索敵”を回避するすべを教えない、フードで顔を隠し正体も教えない。」
「何が言いたいんだ?」
御託を並べてないで、さっさと本題に入って欲しい。
「1冒険者として、そんな怪しい奴を見逃すわけには行かない。もしかしたら、他国のスパイか何かかも知れないからな。」
スパイがこんな所にわざわざ来るわけないだろ。俺はどうやら面倒くさい奴らに声をかけてしまったらしい。早くここから離れた方が良さそうだ。
「はあ〜。面倒くさい奴だなお前。」
「何ですの、その物の言い方は。」
「だって、そうだろ?声をかけただけで、こんなことになったんだ。こんな事なら、さっさと800階層に行ってれば良かった。」
「「「「「!!!」」」」」
俺が何となく言った、この発言にその場にいたパーティー全員が驚いていた。今言った事の中に何か驚くような事があっただろうか。
「貴様。今、何階層に行くと言った。」
「?800階層だ。そんな驚く事か?あ、後と貴様って呼ぶのやめてもらっても良いか?一応、イヅナって言う偽名があるんだ。」
「分かった。では、イヅナ。貴様は今、800階層に行くと言ったな。」
「ああ。」
「しかし、現在このダンジョンの最高到達地点は第78階層だ。そして、予想されているダンジョン最深部は第100階層だと言われている。」
「え?そうなのか?」
そう言う事か。つまり、俺はやらかしたわけだ。つい俺は、ダンジョンの階数くらい誰でも知っているものだと思っていた。が、どうやら違うらしい。
「なぜ、貴様はそこまで階層がある事を知っているんだ?」
「え、いやその〜。……感、かな。」
「感と言えるレベルではないだろう。」
やばい。俺は今とんでもない危機に瀕している。記憶操作でもすれば簡単にこの場を切り抜けられるだろうが、そう言った事をやるのはあまり気が進まない。
こうなったら奥の手しかない。俺は深呼吸をし、心を落ち着かせる。
「分かった。話すよ。」」
「ああ、頼む。」
「じゃあってうわ!あんな所に魔物が!!!」
「何!?」
フォードたちは一斉に振り向く。しかし、そこには魔物はいない。
「おい魔物なんて何処にも…って、あいつがいねえ!?」
これぞ、奥の手“逃げるが勝ち”だ。俺は周りに被害が出ない程度の全力でその場から立ち去った。
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俺はしばらくして後ろに誰もいないのを確認するとその場に立ち止まった。全く、散々な目にあったものだ。もしも、王都であいつらとあったら、どうにか言って王に匿ってもらおう。
「色々あったが、予定通り800階層に行きますか。」
そうして俺は“瞬間移動”を使い、800階層へと向かった。