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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第6章 世界大戦編
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〈アフターストーリー〉気がついたらアスモデウスと

お久しぶりです。短いです

 神たちとの戦いが終わったその日、俺たちは魔法学園の建物で休息を取ることとなった。俺の結界に守られていたため、建物自体にそこまで被害はなく、休息を取るには十分であった。

 夕食時までは皆、興奮状態であったため、ワイワイ騒いではいたが、月が綺麗に輝く頃には眠りについていた。疲労も溜まっていたし、当然だ。ゆっくりと休んでほしい。

 静かになった学園の中を俺は一人で歩いていた。とても静かな夜だ。これが戦いの後の静けさというものなのだろう。少し心地よく感じる。

 なぜ、俺がこの時間に外を出歩いているのか?それはアスモデウスに会うためだ。戦いの後、俺はアスモデウスと会う約束をした。ただ、よくよく考えてみると場所を決めていなかったため、彼女がどこにいるのかわからないのだ。そのため、俺は学園内を一人で歩いているわけだが…。


「なかなか見つからないな。」


 一向に見つかる気配がない。そもそも学園程度の大きさなら気配を感じてもいいはずなのだが。スキルを使い見つけても良いがそれはしたくない。


「……どうするか。」


 少し考える。が、すぐに俺はある場所を思い出した。


「あ。あそこか。」


 気配が感じられないということは余程遠いところにいるということ。また、アスモデウスのことと行動力を考えるならば恐らくいる場所は決まっている。

 俺は『瞬間移動』を使い、移動した。そこはとある街を一望できる場所だ。だがそこからは先程まで俺がいたカラドボルグ魔法学園は見えない。

 月明かりが辺りを照らす綺麗な場所だ。そして、そこに彼女はいた。何やら頬を膨らませてこちらを睨んでいる。


「もう遅いですよ!いつまで彼女を待たせるつもりですか!」


「まあ、待たせたのは悪いとは思うが、そもそも場所を決めてなかっただろ?」


「……でも、わかったじゃないですか。」


「それは……アスモデウスが学園離れてまでくる場所なんてここくらいしかないだろ?」


「確かにそうかもしれませんね。」


 ここは俺とアスモデウスにとって思い入れのある場所だ。彼女の気持ちを知り、そして、俺の情けなさを体感した場所でもある。

 俺はアスモデウスの右に並び一緒に月を見上げる。あの日も同じ月夜だった。しかし、違うこともある。俺たちはアスモデウスの左を見た。そこにいて欲しかった人を思い出して。


「……本当にもういないんですね。」


「…ああ。」


 彼の名はルネ・サテライト。俺が知る中で最も強く、勇敢な騎士だ。そして、紳士でもあった。ルネがいたから俺たちの今がある。それは確かめなくとも分かることだ。


「……当たり前だったからこそ、失ってその大きさが分かるんですね。」


「…ああ、だからこそ感謝もしてる。」


 ルネがあの時いなかったら、アスモデウスは俺の隣にはいない。2人で並んで話をする。こんな小さな幸せは彼のアスモデウスを護りたいという大きな意志で叶ったものなのだ。だが、その代償は余りにも大きすぎた。

 アスモデウスの表情は曇っていた。当たり前だ。悲しいのだから。救えるのなら救いたい。会えるのならばまた会いたい。けれどそれはもう敵わないことだ。

 ルネはきっと戦いが終わった後、こうなることが分かっていたのだと思う。だからこそ、俺に託したのだ。自分の気持ちも込めて、そして、アスモデウスを悲しませない為に。

 俺はアスモデウスの手を優しく握った。


「イヅナ様…。」


 俺の意図を読んだのか、アスモデウスもまた俺の手を握り返す。


「ルネは最後にお前を俺に託した。それはルネにとって苦肉の策だったんだと思う。本当は自分が守り、幸せにしたかった。けれどもうどうしようもない。だからこそ、彼は俺にお前を託した。そして、俺はそれに応えたい。」


 俺はアスモデウスの方へと向き直る。


「だけど、勘違いはしないで欲しい。これはルネに対して責任を感じただとか、贖罪だとか、そんな気持ちで受け取ったんじゃない。俺が、俺自身が、アスモデウスを好きだと、愛しているとそう理解したから応えただけだ。」


 俺はやっと気づくことのできた本心を口にした。俺のアスモデウスは対する気持ちは誤魔化すことの出来ないほど、大きなものへと変わっていたのだ。

 アスモデウスは少し驚いた顔をするといつもとは違う優しい笑顔で応えた。


「他の女の子たちにも同じこと言うんじゃないですか?」


「……結果としてそうなるかも知れない。」


「…はあ〜。やっぱりイヅナ様は優柔不断で、女たらしで、最低です。」


 アスモデウスはそう言って、俺に背を向ける。


「けど、私はそんなイヅナ様が大好きです。あ、今私どんな顔してるかわからないんで、こっち見ないで下さい。」


「わかった。すごいにやけてるぞ。」


「何で!見えてるんですか!」


「冗談だったんだが……なんか、わるいな。」


「謝らないで下さいよ!恥ずかしくなるじゃないですか!」


 アスモデウスは必死に顔を隠そうとするが耳まで赤くなっていては元も子もない。そんな様子を見せられては更に揶揄いたくなるがやめておこう。

 俺は恥ずかしがるアスモデウスを横目に月を見上げた。何故か月を見るとルネのことを思い出す。


(ルネ、アスモデウスは無事だ。今、彼女は笑えているよ。そして、俺がこの笑顔をこれからも守り続けて見せる。けどな、ルネ。お前の行動は全て正しかったとは言えない。だってそうだろ?この場にお前がいなければ俺たちは心の底から笑えない。)


 それは不可能なことだったのかもしれない。変えられないことだったのかもしれない。それでもルネと歩むことの出来る未来が欲しかった。


(死人に対してこんなことは言うべきではない。だが、あえて言わせてくれ。)


 俺は溢れそうな涙を堪える。


「馬鹿野郎。後は任せろ。」


「…?イヅナ様、何か言いましたか?」


「…いや、少し遅めの挨拶を送っただけだ。」


「…そうですか。」


 アスモデウスも深くは聞いてこなかった。けれど、彼女にも意味は伝わった筈だ。


「アスモデウス。」


「はい。」


「帰るぞ。」


「はい!ダーリン!」


「そうだな。もう付き人だとは言い返せないのかもな。」


 俺はそんなことを呟きながら微笑む。

 アスモデウスはそんな俺の様子に驚きながらも、感情が昂ったのか頬にキスをした。


「お、おい。」


「へへへのへ…。今くらい許してください。」


「…仕方ないか。」


 俺はアスモデウスに手を差し出しす。アスモデウスはその手を取ると月の方を向き、こう言った。


「ルネ!羨ましかったら生き返るんですよ!良いですか?良いですね!」


「自己解決するなよ。」


「良いんですよ。ルネにはこのくらい言わないと。」


 俺は不覚にも、今までのことを思い出し、確かにと思ってしまった。すまない、ルネ。

 こうして俺たちは月明かりが照らす丘を去って行った。












ルネは個人的にも好きなキャラでした

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