気がついたら気がついてました
最終話!皆さん!今まで付き合っていただきありがとうございます!
神たちとの戦いから一月が経った。激しく辛い戦いであったが終わってしまえば戻ってくるのはいつも通りの日常だった。
そもそも、あの戦いの場にいた者以外神たちが自身たちを玩具にしていたと言う実感が湧いていないと言うのが正直なところである。
確かに映像を見せることで恐怖するもの、神たちに勝利し、喜ぶ者もいた。だが時が流れるにつれほとんどの者たちが思った。あれは現実だったのだろうか?と。
だがそれは最もな反応なのだろう。実際にこの世界の真実を知っており、戦った者たちならば兎も角、何も知らずに今まで幸せに生きてきた者たちには信じることなど到底できない。結局、悪い夢を見ていたのだ程度で終わってしまうのだ。
鳥籠の中で飼われている鳥たちからすれば餌をくれる飼い主が誰になろうとも変わらない。だからこそ、彼らの生活は変わらず今も幸せそうに暮らしているのだ。
しかし、あの戦いが影響を及ぼしたこともある。それは魔神教や創造神を崇める者たちだ。魔神教徒たちにとってあの戦いは魔神の再臨を意味していた。だが魔人は敗れた。未だに魔神は復活すると言うものも多少はいるらしいが、それでもその活動は衰退している。
創造神を崇めていたものたちは二分化してしまった。あれが本物の創造神だと信じたものと、偽物としたものだ。結果として創造神を崇める教団は残った。だが魔神教同様その規模を減らしてしまったのだ。
けれどそれもきっと時が解決してくれる問題。些細なことでしかなかった。
世界からは魔神は消えた。これだけが事実として受け継がれた。だがそれだけでもいいのだ。不安が一つ払拭されただけでも増える笑顔はきっと多いのだから。
これが戦いの後の世界についてだ。
次に仲間たちについて話そう。まずは勇者たちだ。勇者たちは魔神が消えたと言うこともあり、元の世界に帰ることとなった。帰れると知ったとき、全員が喜んでいた。涙を流すものもいた程だ。何だかんだで寂しかったのだろう。ちなみに歩も泣いていたので笑ってやった。
各国の王たちはそれぞれの国に戻り、それぞれが仕事に明け暮れた。だがその仕事量の差は大きかった。カラドボルグ魔法学園のあるブリア大陸は戦いの場となったとだけありその被害は大きかった。俺もある程度は協力したが、それでも神たちの攻撃の余波などは大きかった。それに比べ、エルティナやラフィーエたちは特に被害もなく、普段から仕事をしていないらしく、ゆっくりと毎日を過ごしているらしい。エルティナから『暇だから遊びに来てもいいわよ。』と言われたときは仕事でも与えてやろうかと思った。
巫女は自らその地位を降りた。何でも神と直接対等したことにより、巫女の存在が不要だと感じたらしい。巫女の周りに仕えていたものたちが反対するかと思ったが、彼らも巫女の意見を尊重していた。結果として巫女やそれに伴う組織は解体された。その後は各々の道を歩んでいるようだ。因みに巫女は昔から学園に通いたいと思っていたらしく、カラドボルグ魔法学園へ入学した。いつか制服姿を見て欲しいとお願いされたので俺もまた、魔法学園を訪れることになるだろう。
魔法学園と言えば、ミカも再び、学園へ通うこととなった。勿論、生徒たちの記憶は元に戻し、彼女は楽しい学園生活を送っている。まだ、固いが少しずつ笑顔が見られるようになってきた。些細な変化ではあるが俺にはそれが嬉しかった。また、闘魔祭を一緒に周りたいものだ。
セリカとリアはフィエンド大陸へと戻っていった。俺は彼女たちにまた会いに行くことともう一つあることを伝えた。
それはヴィシュヌの能力のことだ。俺が、彼女たちが愛してしまった原因は確実にヴィシュヌにある。感情を大きくする力により、些細なことから彼女たちは恋心を煩ってしまった。そのことを知った彼女たち、俺は何を言われても仕方が無いと覚悟を決めていた。だが彼女たちは俺に礼を言ったのだ。素敵な感情をありがとうと。だから、俺とその気持ちに応えた。まあ、詳しい話はまた今度にでもしよう。
次に悪魔たちだが、彼らはダンジョン“聖なる祠”へ戻ることとなった。魔神が消えたとしても悪魔たちは人間にとって恐怖の象徴だ。流石に地上を我が物顔で歩くわけには行かないのだ。そのため、慣れしたんだ場所でゆっくりと暮らしていくことを選んだ。無論、例外もいる。
ヴィシュヌは神たちに代わり、この世界を見守ることとなった。世界がこの先も繁栄できるようにするとのことだった。まあ、よく俺のところに遊びにきており、アスモデウスと口論になっているが、大丈夫なのだろうか?まあ、きっと大丈夫なのだろう。しかし、アスモデウスとは何故か仲が悪いように見える。まあ、理由は何となくわかるのだが、俺は口出ししないほうが身の為だろう。
後、俺と説明していない者についてはまとめて話そう。まず、俺は一度、元の世界へ戻った。そして、それについてきたのがアスモデウスとベルゼブだった。一方は…。
「恋人が離れるなんて考えられません!ついて行きます。」
もう一方は…。
「むー(暇つぶし)。」
とのことだった。まあ、本人たちがそれで良いならともちろん俺は了承した。家に帰ったとき、父と母にどう説明しようか悩んだものだ。ちなみに地球に戻ったとき、俺たちが召喚された時間帯に戻れるように調整をした。
それと同時に俺はこの世界から先生や山田の存在を抹消することにした。酷い行いだとは思う。だが異世界に行って彼らが死んだなどと伝え、誰が信じるだろうか?
恐らく誰も信じなどしない。頭がおかしくなったのだと病院に送られるのがオチだ。
だから俺たちは先生たちの存在をこの世界から消した。けれども俺たちは先生たちのことを忘れない。
俺たちは後日、先生と山本のお墓を作った。忘れさせてしまった俺たちにはその義務があった。誰からも悲しまれなくなってしまった彼女たちを俺たちが弔わなければならない。
その日、俺たちは泣いた。悲しさ、罪悪感、色々な理由があった。そして、思った。どうか安らかに眠ってくださいと…。
その後は俺たちには異世界に転移する前の日常が訪れていた。まあ、俺らのクラスにアスモデウスとベルゼブが転校生としてやってきたことを除けば更に変わったことはない。だが、初日は酷かった。
美女2人が転校してきたということで学校で話題になっていたのだが、その2人が俺に付きっきりで、更にアスモデウスに至ってはとある男子が『何であんな奴に。』と呟いたのを聞き、その男子の胸ぐらを掴むと…。
「今、何て言いました?」
「い、いや、俺は…。」
「何も言って無く無いから聞いてるんです。」
「わ、悪かっ……。」
「悪いと思うなら最初から言わないでください!全く、貴方なんかイヅナ様の足元にも及ばないんですから口すら開かないで頂きたい。だいたいなんですか?え?何であんな奴?あんな奴なんかじゃありませんよ!良いですか!まずイヅナ様は優しいです!普段は照れてちょっと冷たく当たってしまうこともありますが、ええ!優しいです!それにカッコイイです!貴方みたいなモブ顔じゃありませんしね!声もいいです!性格もいいです!貴方がイヅナ様に勝ってることなんて、そのひねくれた性格だけです!そんなもの私が矯正してあげますよ!ほら!先ずは謝る!早く!」
そう言って胸ぐらを掴んだ手を振るアスモデウス。そんな状況で謝れるわけもなく、彼は俺が止めに入るまでやらされ続けた。
と言うように問題があったとしてもこの程度の笑えるような話しかない。俺たちは以前とは少し違う日常を過ごしている。
そして今日、俺たちは久しぶりに異世界を訪れていた。場所はカラドボルグ魔法学園、集まるならここがいいと俺が進言した。
「1月前のことなのに懐かしく感じるな。」
「わかります!イヅナ様との生活が濃密すぎて、1月が100年にも感じられてしまいます!昨夜もあんなに私を求め……。」
「求めてないからな?」
「むー(いつもの)。」
今は俺とアスモデウスとベルゼブの3人だ。他の連中は先に会場へと向かっている。何でも主役は最後に来るべきだと学園を回ってくるように言われたのだ。別にそんなことをしなくてもと思ったが、素直に従っておいた。だが、お陰でこの世界のことを振り返る時間ができた。
「アスモデウス、ベルゼブ。」
「はい!なんですか?プロポーズですか?」
「むー?(何?)。」
俺はアスモデウスを無視して話を続ける。
「今だから言えるが『やっぱり、プロポーズですか?』俺はこの世界にこれて良かったと思う。」
俺はこの世界のことを思い返す。
「確かにつらいことや、悲しいこともあった。だが、楽しいこと嬉しいことも同じくらいあった。こんな経験、なかなか出来るものじゃない。」
「ですね。私もおかげでイヅナ様と出会えましたし、悲しい思いもしましたけど、その全てが今思えばいい思い出だったと思えます。」
「むー(右に同じく)。」
「そうか、そう言ってもらえると俺も嬉しい。」
この世界に来た俺たちは幸運であったのかもしれない。素晴らしい仲間ができ、大切なものが増え、そして、忘れることのない記憶ができた。
辛いこともあった、悲しいこともあった。けれどもその全てが俺たちにとってかけがえの無いものになっている。そして…。
「ん?何ですか?」
「むー?(どうした?)。」
隣を見れば笑顔を振りまく、彼女たちがいてくれる。
「何でもない。そう言えばもう結構、時間経ったよな?そろそろ行ってもいいんじゃないか?」
「あ、そうですね!行きましょう!ほら!イヅナ様!ダッシュですよ!ダッシュ!」
「むーむー(急ぎ過ぎ)。」
「確かにな。でも、アスモデウスらしい。」
「むー(全く)。」
いつもの会話、いつもの仲間、いつも通りの時間。そんな中で、いや、そんな中だからこそ、気がつける。俺は今、幸せなのだと。
「気がつけて良かったよ。」
ーーー終わりーーー
『気がついたら魔神でした』の本編はこれをもって終了いたします。読者の皆さん、長い間お世話になりました。作者、初めての小説ということもあり、文章がおかしかったり、急な展開があったりと色々めちゃくちゃしてたと思います。
忙しくなり、更新ペースも落ちてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
それでも楽しみにしてくださる方がいてとても嬉しかったです。
今後は後日談などを投稿していこうと考えてます。また、別の小説も書こうかなと考えております。いや、更新ペースが遅くなるのはわかっていても小説を書くのが好きなので書きたくなってしまうんですよね。ちなみに新しく書く小説は『その者ゆえに勇者なり』という作品を投稿しようと思っております。気になる方はすぐに一話だけ上げようと思ってるので、読んでみてください。次の話がいつ上がるかは未定ですけどね。
はい、それではこれで終わりにしようと思います。皆さん、本当にありがとうございました!