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気がついたら魔神でした  作者: ヴァル原
第6章 世界大戦編
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気がついたら最終ラウンドでした

 

「イヅナ様!誰ですか!その女は!」


 アスモデウスの声が戦場にこだまする。まあ、確かに見ず知らずの女性が現れたら誰だと思うことは当たり前だ。だが彼女の言葉には別の意味がある。


「また!また!新しい女ですか!私というものがいながら何でそうも増やすんですか!ほら!リアもセリカも言ってやりなさい!この女誑し!」


 と言うわけだ。説明してやるべきなのだろうが創造神たちがいつ攻めてくるかわからない。俺は横目で奴らの様子を伺う。

 創造神たちはその場から動かず、こちらを見ている。その目は俺とヴィシュヌに対する警戒が半分、アスモデウスの言葉に呆れ半分と言った様子だ。

 だからといってあの2柱の神を前に会話を続ける訳にもいかない。


「アスモデウス、ヴィシュヌについては後でしっかりと説明する。だから今は少し待ってくれないか?」


「そーやって逃げようたってそうはいきませんよ!」


 お前はこの状況を理解してるのか?


「いや、あの神たちを倒したらしっかりと説明するからな?優先順位くらいわかるだろ?」


「………。」


 俺の言葉に顔をむすっとしながらも、納得がいかないと言いたそうにしながらも、今すぐ説明しろとこちらに目で訴えかけてきてはいるけれど、アスモデウスは渋々、首を縦に振った。


「わかりました。優先順位は間違えなく、そのヴィシュヌとか言う女の方が上ですが。今は我慢しましょう。だから…。」


 アスモデウスは立ち上がり、俺の方を掴むとくるりと回した。そして背中を軽くポンと叩く。


「今度こそ倒しちゃってください。皆、信じてますから。」


「……ありがとう。任せろ。」


 俺はゆっくりと歩を進める。前には創造神とシヴァ、横にはヴィシュヌ、後ろには仲間たちがいる。一度は負けた相手。一度は守れなかった仲間たち。一度は忘れてしまった女神。どれもこれも苦い記憶だ。だが俺にはもう一度だけやり直せるチャンスが回ってきた。これを逃すわけにはいかない。

 どんなに無様だって良い。どんなに情けなくたって良い。だから必ず勝って、ここにいる全員で明日を迎えてみせる。

 俺にかかる重圧は凄いのかもしれない。だが不思議と今は何も感じない。創造神たちを目の前にしても強敵と感じないのだ。神になっておかしくなってしまったのだろうか?まあ、そのおかげで冷静でいられる。今はそれで良しとしよう。


「イヅナよ、貴様がまさかヴィシュヌと繋がっていたとはな。流石の我も予想出来んかったぞ。」


「そうだよねー。まさか、ヴィシュヌが生きてるとは思わなかったよ。……で?君たちは何をしにここに来たのかな?」


 自分たちの勝利を疑っていない奴らはまだ余裕だ。それは当たり前のことであり、少しのイレギュラーが起きた程度では変わらないことである。そう、少しのイレギュラーならばな。

 俺は奴らに近づく内にあることに気がついた。この世界で数多くの敵と戦い、その中で相手と自分の戦力の差を見抜ける目が自然と身についてきていたのだ。

 これまでは自身よりも強い相手に出会ったことはほとんど無かった為、気づかなかったが、シヴァとの絶望的な戦力差を感じてから実感した。

 そして今、俺は再び、シヴァと対面している。だから、わかるのだ。


「ヴィシュヌ、少し下がって……いや、後ろの仲間たちを守っていてくれないか?」


「ほう。」


 シヴァが目を細め、こちらを睨む。

 それを見てヴィシュヌは慌てる。


「何を馬鹿なことを言ってるの。」


 ヴィシュヌの言ってることは正しい。今の一言は馬鹿な発言だ。敵はあの創造神と破壊神。神になったばかりの俺がたった1人でどうこうできる相手ではない。

 しかし、それでも問題ないと俺は思えた。だから俺はヴィシュヌの目を見てこう言った。


「…信じてくれ。」


「…………。」


 信じてはいる。それでも頷くわけにはいかない。それがヴィシュヌの気持ちだろう。

 間違っているのは俺だ。勝てる勝てないの問題じゃない。1人で戦うべきじゃない。1人よりも2人、2人よりも3人。人数が増えただけ強くなれることを彼女はよく知っているのだ。


「…俺が間違ってた。側にいてくれ。」


「…そうよ。しっかりしてよね。」


「ああ。」


「我の前で余裕ではないか、イヅナよ。」


 それは一瞬の出来事だった。シヴァは俺の真横に転移をした。その右手には魔法陣が展開されており、燃え盛る手が俺の顔に向けられた。

 もしも、邪神であったときの俺がこの一撃を受ければ少なからず傷を負っただろう。そのため、転移を駆使し、何とか回避を試みるしかなかっただろう。


「死ぬがよい。」


 炎の拳が俺の顔を捉える。ヴィシュヌは咄嗟に魔法陣を展開し、炎を防ぎ後ろに下がる。しかし、防ぎきることは出来ず、腕に少しの火傷を負った。


「イヅナ!」


 ヴィシュヌは俺の名を叫ぶ。自身が防いだにも関わらず傷を負った攻撃を俺は正面から受けてしまった。無事だとはとても思い難かった。


「警戒するだけ無駄であったか。」


「そうだな。警戒したところでどうにもならない。」


「何だと?」


 俺はシヴァの腕を掴み、自身に引き寄せる。バランスを崩したシヴァは前のめりの体制となった。


「取り敢えずくらえ。」


 俺は全力の拳をシヴァの顔へ叩き込む。シヴァは体を回転させながら、吹き飛んでいく。俺の手には千切れた右腕だけが残った。


「イ、イヅナ?無事なの?」


 ヴィシュヌは心配そうに問いかける。


「大丈夫だ。」


 俺は笑顔で答えるとヴィシュヌはホッと息を吐く。

 創造神は先程までならばその様子を見ていられたであろうが、シヴァが吹き飛ばされてしまい、それどころではなかった。創造神は必死にシヴァの後を追いかけた。


「シヴァ!大丈夫?何飛ばされてるの!」


「……ゆ、油断しただけだ。慌て…がはっ!」


「説得力なさすぎでしょ。」


 シヴァは血を吐きながらも両足に力を込め、何とか立ち上がる。そして憎悪を含んだ瞳で俺のことを睨む。だがシヴァのことだ。今の一撃で理解しただろう。何故、自身が吹き飛ばされ、ダメージを負ったのかを。


「『破壊之神』!」


 シヴァはマスタースキル『破壊之神』を使用する。その能力はその名の通り破壊の掌握。だが、その程度の力では俺にダメージを与えることが出来ないことは奴も理解している。では、一体何を破壊しようとしているのか?それはこの世界のシステムだ。


「流石はシヴァだ。一撃を受けただけで俺とお前とのステータスの差の原因を理解したみたいだな。」


「それはどういうこと?」


 ヴィシュヌが首をかしげる。まあ、ヴィシュヌは頭は良いがどこか抜けていたり、気づかないことがある。シヴァたちの注意がこちらに向いていないことだ、しっかりと説明しても良いだろう。


「この世界にはステータスなどのシステムが適用された。それは知ってるよな?」


「それは勿論。」


「でだ、その理由は神たちのお遊びの為だ。そして、この世界には奴ら以上の力を持つものがいなかった。だから自分たちにもシステムを適用した。システム内にわざわざ自分たちを入れたんだ。だが、それはシステムという枠組みの中でしか力が発揮出来ないという事になる。それがシステムというものであり、限界だ。

 システムを作る中で何処かしらに限界は生じてしまった。だから、“測定不能”という文字が出たとしてもその何処かに限界はあった。

 だが今の俺は違う。ステータスという括りから抜け出した存在。つまり、システムの限界を超えて力を発揮できる。そのため、シヴァとの間には大きなステータスの差が生じたんだ。そして、これを理解したシヴァは『破壊之神』を使用し、システムを破壊しようとしてる。」


「成る程。って!それなら早く止めないと。」


「その必要はない。既に手は打ってある。」


 俺は会話などの少しの時間を使い、自身のソーズスキル『イヅナ』について調べていた。ソーズスキル、それはスキルの根源とも言える原初のスキルだ。以前、俺が所持していた『アザトース』はこの世界にある全てのスキルの原点とも言えるものであった。

 では、『イヅナ』とはどのようなスキルなのか。その説明はこうだ。


『イヅナ』・・・・真神の記憶をスキルとして具現化し、力とする。


 意味不明、と言うのが最初に思ったことだった。今までのスキルは説明を見ればある程度のことは理解できた。けれどこれは違った。

 簡単に説明をするとすれば、記憶をスキルとして具現化する、つまりは俺の記憶がスキルになるというスキルであった。

 だがだからと言ってその記憶からどのようなスキルが生まれるのかは見当もつかなかった。その為、幾つかのスキルを作成しておいた。そのうちの1つが『異世界』だ。

 このスキルは俺がこの世界にやってきた。いや、俺がこの世界という記憶を元に作成したスキルだ。一応、マスタースキルということになっている。その能力は“概念固定”。簡単に言うと固定して何の干渉も受けなくすることができるものだ。そして、俺はこのスキルをこの世界のシステムに使用した。つまり…。


「シヴァにシステムを破壊することは不可能だ。」


 俺の言葉の通り、シヴァの発動したスキルは俺のスキルの力によって弾かれてしまう。無論、ここにも先ほど言ったシステム内と外の力の差が出ているのだ。

 あの神たちは既に籠の中の鳥も同然というわけだ。だが決して油断はしない。俺の全力を持って倒してみせる。


「くそ!何故なのだ!」


「ねえねえ、シヴァ。これって結構ヤバくない?」


 2柱の神たちにも焦りが見え始めている。


「覚悟しろよ、お前ら。」


 俺の言葉に反応し、創造神たちはこちらを睨む。幾らでも睨むと良い。俺はそれだけのことを今からお前たちにするのだから。

 俺は空間に手を入れると1つの剣を取り出す。そして、奴らにその先を向ける。

 さあ、最終ラウンドの開幕だ。













次回の投稿についてですが、いつになるかわかりません。ただ、『気がついたら魔神でした』を終わらせずに小説を書くことを止めるつもりはありませんのでどうか気長に待っていただければと思います。

身勝手な作者ですがこれからもどうぞよろしくお願いいたします。

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